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Photo bykosuketsubota

Case 1 私のお母さんをきちんず看お

    蒌韍 葵

     総文字

     私は新人から倩囜に䞀番近い病棟こず、呌吞噚内科に所属しおいた。
     䜕故䞀番時間倖勀務が倚く、連日の劂く空ぞ旅立぀方をお看取りする病棟ぞ行ったのか。それは先茩である母が教えた蚀葉だった。

    「看護垫で、ずっず同じ堎所にいるずかたわ䜿えないになるから、若いうちに埪環噚、脳神経、呌吞噚のいずれかはマスタヌしなさい。あず、あんたが望む慢性期に行きたいんだったら、最䜎幎は急性期にしがみ぀きなさい」

     私は有名人だった母のお陰で最初から倧手私立病院ぞ就職した。しかも、脳神経倖科は怖い先茩しかいない、埪環噚は自分が持病抱えおいるのであの心電図を勉匷するだけでノむロヌれになりそう。
     そうなるず、消去法で呌吞噚内科しか遞択肢が無かった。面談でもはっきりず第䞀垌望「呌吞噚内科です」第二垌望は  「えっず、内科 」ず蚀っおいる。私が死しおなお尊敬しおいる圓時のH郚長は爆笑した。「今幎の新人さんはえらい勉匷熱心だねえ」ず。いや、そういう意味で呌吞噚垌望だったわけじゃないんだ  。


     私の䞭で呌吞噚内科における幎半は実に充実しおいた時間だった。
     先の話で、私が初めお「急倉」に圓たった話を蚘茉したが、少しず぀実際にあった考えさせられる話に぀いお玐を解こうず思う。
     圓時は私の曞き方が悪かったせいもあり、偶然ホヌムペヌゞを発芋した倧嫌いな担任に呌び出しされおしこたた怒られたがもう時効だ。
     むしろ、私が実際に患者様家族から蚀われた蚀葉は、今埌もし本気で看護垫を目指す人にはぜひ芚えおいお欲しいものが倚いから発信する。
     
     ヌヌこれは、倉態看護垫 葵が実際に芋聞きしたノンフィクションだ。



     新人から幎目になるず先茩看護垫の県は新しい新人さんぞ向く。私ず同期二人はのらりくらりず”そこそこ”慣れた仕事で淡々ず業務をこなしおいた。
     病棟線成があり、倩囜に䞀番近い病棟は階䞋ぞず䞋がった。オヌプンスペヌスのナヌスステヌションは四方八方どこからでも䞞芋えだ。膝䞊の癜衣で、しかも足を組んでみたりがに股で仕事をしおいる埌茩を䜕十回泚意したか。あれはわざずだったのだろうか
     私が就職する前から肺癌で抗がん剀治療を続けおいたずある奥様が急倉し、脳メタ脳転移しお蚀葉が発せられなくなった。しかも圌女には歳の嚘様ず、ただ䞭孊生の嚘様がいた。
     お父さんは自営業でほが䌑みなく働いおいる。母の芋舞いに来るのは殆どがこの二人の姉効だった。私はこの患者さんが喋れた頃から偶然関わっおいたが、圓時の次女さんは口数も少なく、病院に来るこずさえ嫌っおいたのだが、日に日に悪化する母を芋お毎日無蚀で来るようになった。
     実際面䌚時間の制限は時たでずあるのだが、圌女らは若い。い぀たで母ず䞀緒に過ごせるか分からないず圓時から感じおいたず思う。

     倜勀でAチヌム圌女のいる方の郚屋に圓たる時、い぀も嚘さん達に挚拶された。怖い垫長が郚屋呚りに行くず「面䌚時間終わりだからそろそろ垰っおね」ず蚀われるが、私は黙認しお時たではほっずいた。実際、甚事で遅くに来る患者さんの家族は結構いたし、急倉を芋られなければ別にいいず思っおいたので、圌女らが消灯ギリギリにこそこそ垰ろうずする時は、裏の階段から行くように䌝えおそのたた正面玄関に抜けおもらった。

     月日が過ぎ、少しず぀抗がん剀が効かなくなり、母は蚀葉を閉じた。目は右䞊を向いたたた、瞬きも自分ではできない。
     呌吞も悪くなり、気管切開も䜙儀なくされた。食事も自分では食べられず、口もあかないので時間点滎の人生ぞず倉わった。
     圌女は瞬きが出来ないのず、自分で身䜓を動かす事が出来ないので、時間ごずに圌女のずころぞず向かう。流石に凊眮が増え、圌女を倧郚屋で看るのが難しくなり、人郚屋ぞ移動しおもらった。ここでもかなり悶着があったがするず、ひずり郚屋だからいいよねず長女さんが䜕ず病院に寝泊たりするようになったのだ。

     圓時も蚀われたが、圌女がご぀ご぀の床に寝泊たりし、時間ごずに効ずバトンタッチした時にお颚呂や買い出しに䞀旊家ぞ垰る。母はもう蚀葉を発するこずはなく、ただ生かされおいるだけ。それでも、圌女達にずっおはたった䞀人の「母」なのだ。䟋えどんな姿であろうず、もう䞀床話しかけおくれなくおも、圌女らにずっおはかけがえのない家族の時間だった。
     段々看護に慣れおくるず、倱瀌な態床が目に぀く。それは新人ちゃんも同じだった。同じ人を毎日看おいるず正盎な話、私も「慣れ」が出おしたい、蚘録も昚日ず同じような事曞いおるなあ ず電子カルテを入力する。

     ある日、若い呌吞噚内科の医者ず新人ちゃんがげらげら笑っおいる声しかも消灯前にあり、私は巡芖の間に慌おおナヌスステヌションぞ戻った。これはあたりにも非垞識だ。目の前の郚屋は党お「状態の悪い人」しかいない。瀟長さんや個人的な理由で特宀や䞀人郚屋を奜む人もいたが、はっきり蚀っお看護の郜合で䞀人郚屋に入っおもらった人の方が倚い。隣にあるリカバリヌ宀なんおたさに凊眮のオンパレヌドだった。

    「あの、楜しいお話は倖でお願いしたす。たたは䌑憩所で。非垞識ですよ」

    「はぁいなんだよ、このくそ先茩たたうっせええなあ」

     埌茩の間延びした声に目配せする研修医。心の声はだだ挏れである。
     䜕床もこの埌茩のチャラチャラ感は説教しおきたが、䜕床蚀っおも呜に察する責任感がなかった。私ず倜勀を組むず圓たり前のように腹痛を蚎えおトむレぞ逃げ蟌んでみたり、急倉があるず手順をすっ飛ばしお䜕もできなくなる。それでも、顔が可愛いずいう理由だけで医者たちからは絶倧な人気だった。
     仕事が出来なくおも、顔が可愛いだけで看護が出来るんだったらがろい商売だよなず思い぀぀、私は土偶のたた黙々ず仕事をこなす。二床目の埌茩の笑い声にブチ切れたのは私よりも䟋の患者さんの家族からだった。
     
    「ちょっず、あんたたち。私達家族がこんな぀らい思いしおお母さんのそばにいるっおのに、䜕がおかしいの恥ずかしくないの、倧局な仕事しおいるフリしお。そうやっお圱でバカにしお、ふざけないでよちゃんずお母さんを看お頂戎」

     ただ歳の圌女は泣きながらナヌスステヌションに飛び蟌んできた。黙りこくった新人ず研修医はひたすら圌女に「すいたせんでした」ずわびおいたが、それも䞀蹎。

    「私に詫びるくらいだったら、真面目にきちんず看護やっおお母さんに謝っお頂戎、あんたにもうお母さんを看おもらいたくない二床ず郚屋に入っおこないで」

     圌女の怒りはごもっずもだった。圓時リヌダヌをしおいた私は圌女の郚屋に行き、声を殺しお泣いおいた長女さんの背䞭をさすった。

    「悔しい、悔しいよ。〇〇さんはさ、ちゃんずお母さんに毎回話しかけおくれるじゃない。私が芋おないず思ったあの子達、本圓にうわべだけで、あんな心のない奎らにお母さんに觊れお欲しくないもう、本圓に嫌なの」

     ああ、そうだった。私は自分が新人の頃から携わった患者さんには朝必ず挚拶に行っおいる。リヌダヌ業務が始たっおからは分以䞊早めに出勀しお、倜勀からの申し送りがある前に必ず党郚屋を確認するのが習慣だった。圌女は寝泊たりしおいるので、私がデカい図䜓で郚屋に入っおきおもそりゃあ気づく。目が充血しおいたら点県凊方しおもらったり、蒞しタオル持っお行ったり、そんな些现な事が長女さんずはがっちり信頌関係を結んでいたらしい。
     しかし問題はこの埌だ。研修医は圌女の逆鱗に觊れ、二床ず芋せおもらえなくなり、笑っおいた新人は毎日お詫びに行ったが結局長女さんずは口もきいおもらえなかった。
     ただ、䞀床倱った信頌関係は取り戻せない。たしお、口だけで枈むなら本圓に譊察はいらんだ。
     
     私は圌女ず圌女家族に拒吊られおいる埌茩に泣き぀かれ、しょうがなく䞀緒に謝りにいった。䞀発目から「なにしにきたの」ず県鏡の奥から鋭い瞳で睚み぀けられ、ちびりそうになったが、ここで埌茩が成長するには逃げちゃいけないシヌンだ。

    「䞍愉快かもしれないけど、圌女の話を䞀床でいいから聞いおやっおもらえる」

     圌女は腕を組んだたた怒っおいたが、埌茩のお詫びず心から看護の姿勢を倉えるずいう蚀葉を信じおくれたのか、それから環境敎備、枅拭の支揎に䞀緒に入らせおもらえるたで回埩し、埌半はきちんず郚屋もちもさせおもらえるようになった。
     埌茩は私ず違っお若者なので、歳の嚘さんずそりゃあ話があう。私はただのオタクなのでさっぱり䌚話に参加できなかった  

     そもそも、圌女も私のこずを歳人の子持ちず認蚌しおいたので、「〇〇さんはほんっず頌れる先茩だよね、あんた埌茩ちゃんも芋習いなさいよ」ず激を飛ばしおいた。

     うん、すっごく嬉しい蚀葉なんですが、私ずその子、幎しか違わないのよ。そしお、そんなに頌れる先茩でもないんだ。



     月日が倉わり、圌女の脳転移は悪化し、けいれん発䜜の回数が増えた。い぀呌吞停止しおもおかしくない、もう抗がん剀を出来る身䜓ではないので、察象療法ぞず切り替わった。二人の嚘さたは真摯にその蚀葉を受け止め、䞀緒にたった䞀床だけ郚屋の倖でわんわん泣いた。お母さんには絶察に芋せない涙を䞀緒に共有した。
     毎日のラりンドで、ふず次女さんが私に話しかけおきた。圌女は本圓に口数が少なくお、おねえちゃんの圱に隠れおいる子だ。

    「あの、〇〇さん。おねえちゃん、結婚する予定だったんです」

     唐突な報告に、私はどう返しおいいか悩んだ。え、そんな倧事な話を圌氏もいない葵さんに蚀っおいいのか

    「おかあさんが、元気になったら結婚匏挙げる぀もりだったんです。でも、おねえちゃんが党郚抱え蟌んだから、おねえちゃん、おかあさんの為に自分の人生犠牲にしお」

     そこたでしか聞けおいなかったが、次女さんは姉に党お背負わせた事を負い目に感じおいたらしい。結婚する予定だった男ず別れた、ずいう話を軜快に笑い飛ばしお䞀緒に身䜓を拭いおいた時に母ぞ報告しおいたのは聞いたが、たさかそういう事になっおいるずは思わなかった。
     ただ歳の圌女は本圓に匷かった。今自分が出来る最倧のこずを、党お母の為に時間を費やしたのだ。同じ立堎であれば私には到底できない。たしお、次女さんもただ孊生だ。青春を謳歌したい幎頃だず蚀うのに、毎日孊校が終わっお母の病態を芋るだけ。䞀方的な話を目を芋開いたたた過ごす母ぞ䌝えるのだ。
     
    「぀らい、けど、おかあさんには、生きおお欲しい」

     それが次女さんの本音だった。涙を芋せない圌女の意志は匷かった。


     さらに月日がたち、今床は圌女が傟眠がちになっおきた。時間心電図管理ずなり、時々心拍数が急䜎䞋する。呌吞がピタリず止たるず郚屋から長女さんが飛び出しお「〇〇先生呌んで」ず声を荒げる。
     長い闘病生掻に疲れおいたのは圌女らだけではない。我々看る偎も段々『ロシアンルヌレット』ずいう最䜎の呌び名を぀けおいた。

     この、亡くなった時に䞀番面倒くさい察象を誰が看取るのか

     ふざけた話だず思いたすよね。

    ですが、毎日数名亡くなる病棟では来た時にあの郚屋の誰が危ない、あの郚屋はきちんず巡芖しお、あの郚屋はサポヌト、受け持ち倉曎ずきちんず申し送りをしおからの巡芖をする。
     この残念なネヌミングの「ロシアンルヌレット」に圓たるず本圓にその日の仕事が終わらない。䞋手するず日付が倉わっおしたい翌日も仕事をこなす日も倚々あった。

     肉䜓疲劎が抜けないず粟神面も疲れおくる。私はたしおよくかかわった人のお看取りに遭遇する率が高いので、「葵さんず倜勀したくない」ずい぀もスタッフから嫌われおいた。仕方がないじゃないか、別に私の看護が悪いわけじゃなくお、みんな私に看取っお欲しいっお蚀うんだもん  。

     このロシアンルヌレットが発動された時、私は同期ず倜勀だった。先茩から「今日圓たるかも」ず蚀われおその日の仕事内容をタむムスケゞュヌルに起こしお同期ず蜜に話し合った。

     そしおその日、日付が倉わった埌の倜䞭に圌女は息を匕き取った。
     最埌の最埌たでご䞻人ず、嚘様二人がそばにいお、途䞭う぀らう぀らず長女さんは眠られおいたが、最埌の瞬間、医者が蚺断した時に長女さんが発狂した事は倚分、私の看護垫人生の䞭で忘れる事はないず思う。
     人の喪倱䜓隓ずいうものは蚈り知れない。
     ぀らい人に「぀らいね」ず蚀うのは決しお簡単ではない。私は肩代わりするこずもできなければ、あくたで他人なのだ。
     がんばったねずいう蚀葉は今も嫌いだ。確かに圌女ず嚘様達が぀ないだ話ははたから芋るず「生きるこずを頑匵った」蚘録だ。けれども、圌女らは頑匵ったのではなく、ただありのたたにその日䞀日䞀日を倧切に家族ず過ごしおいただけだ。決しお頑匵ったわけではない。倚分、圌女らが蚀われお䞀番いやな蚀葉だず思っおいたので、私は看取ったあの日も蚀わなかった。

     悲しいねず蚀う人ず共に泣くこずはできる。
     蚀葉を倱っお背䞭を震わせる人の背䞭をさするこずはできる。
     冷たくなった手を握りしめお、感謝を述べるこずはできる。

     時間以䞊、圌女の郚屋から獣の咆哮のような鳎き声は収たらなかった。憔悎しきっお出おきた長女さんは母の死埌凊理をさせおくれず、朝たでこのたたそばにいたいず蚀っおきた。時間が経぀ず死䜓から色々な内容物が排泄されるので、ちょっずそれはたずいず思い、私は圌女に遞択させた。

    お母さんを綺麗にしお家に連れお垰ろう。

     死埌凊理は家族ずやるこずはタブヌだったので、流石に長女さん達には䞀床出おもらった。せっせず䞋準備だけ終わらせ、長女さんにメむクをしおもらい、綺麗に着食ったおかあさんの最埌をみお、長女さんは「お母さん、綺麗じゃん」ず笑った。あたり芋舞いに来なかったご䞻人も「なんだ、おめえ、えらいべっぎんになったな」ず錻を啜っおいた。
     


     圌女が亡くなっお日が過ぎ、突然長女さんが病棟にやっおきた。寝泊たりしおいた頃ずは別人の綺麗な容姿で。

    「〇病棟の皆様に、長い間母が倧倉お䞖話になりたした」

     圌女ず話をした時に、次なる恋を求めお自分なりのスタヌトを切ったそうだ。母に玹介したかったフィアンセずは別れたが、結果ずしおその埌に自分をもっず磚くきっかけにもなったそうだ。
     介護の資栌たで取っおいたので、もしかしたら圌女はスキルを掻かしおバリバリどこかで働いおいるかもしれない。

     患者ヌ家族ヌ医療埓事者の信頌関係は䞀床こじれるず修埩が難しい。
     たしお、医療埓事者も医者も、巧な蚀葉を吐いおうたく信甚させおいくスキルが高い私にはありたせんが


    「おかあさんを、きちんず看お」


     私はもう病棟で働いおいない身だが、看護垫ずいう仕事はどのステヌゞで戊っおいおも同じだ。

     きちんずひずりの人間を人間ずしお看れない看護垫はクズでしかない。
     看護垫の「身代わり」なんお星の数ほどいる。その䞭で、誰かに必芁ずされ、そしおひずの心に寄り添える看護垫がこれから増えおくれるずいいなず切に願う。

     心の䞍安ず葛藀が入り混じれる呌吞噚内科だけでなく、抗がん剀治療に携わる病棟に。


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    珟圚過去䜜ブラッシュアップし぀぀2025.12月〜ネトコン、2026.2月〜恋愛小説投皿のためなろうずアルファポリスメむンに党力でいきたす。こちらは初期版ず掻動報告。BLは「アルファポリス」母䜓に倉曎、その他過去䜜「小説家になろう」「カクペム」楜しんでいただけるず嬉しいです🍀

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