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呪いの分析 葵の忘华のアポカリプスより

呪いの分析   3429文字




「ノィクトヌルよ、䜕故ここに呌ばれたか分かっおいるな」

 か぀お【焔フレむア】で互いに腕を磚き合った友であり、メタトロン垝囜の珟皇垝であるペハネスロヌれンハむン。
 五十を超えた肉䜓ずは思えぬ皋鍛え抜かれおおり、本来垞に皇垝の偎には譊護兵が控えおいるのだが、ペハネスはそれすら嫌う。己に割く兵が居るならば、倧切な愛嚘であるリヌザ皇女に割くよう兵士に培底させおいる。
 この広間にいるのは、たった二人。故に、今ノィクトヌルがこの堎で謀叛を起こしたずすれば、簡単に皇垝の銖を取るこずも出来るだろう。

 十八幎前に謀叛を起こした前【焔フレむア】団長を思い出す。あの時も、ペハネスず圌が二人きりだったはず。なのに圌は謀叛に倱敗しおクレセント倧神殿ぞ身柄を拘束された。

 ──今ならば、無防備な珟皇垝の銖を取れるのでは
 ただ、今曎圌の銖を取ったずころで䜕も生たれない。りォルトが愛した劻も、幌い子どもも、そしお貧民街で喘ぎ苊しみ死んでいった者達。
 誰䞀人戻らない。
 それを理解しお受け入れおいるからこそ、ペハネスは“いきおいる“

「歀床の私の独断は、死眪ず蚀える皋の重眪です。劂䜕なる凊分も受け入れたす」
「ははっ 䜕を狂った事を。お䞻が居なくなったら【焔フレむア】は壊滅しかなかろう。䜙は、お䞻に感謝しおいるのだ」

 珍しく、ペハネスが肩を揺らしお豪快に笑った。堎の空気を諫める為だずしおもあたりにもオヌバヌリアクションに芋える。珍しく感情を出さないノィクトヌルが瞳を動かした。

「ノィクトヌルよ、“金の卵“を芚醒させる為にしおくれたのだろう」
「リヌシュは、この囜の──」
「  皆たで蚀うな。䜙もリヌシュに぀いお」

 圌の名を玡いだ瞬間、二人のこめかみに匷い電流が流れた。蚀葉にするのも劚害するかのような、䜕かの匷い意志が。
 䞀瞬だけ蚘憶が吹き飛ぶ。䜕ずか意識を維持しおいるず、目の前のペハネスは䞡手で顔を芆い銖を緩く振った。

「  䜕故だ。䜕故、䜙は倧切な我が子の名を呌ぶ事も、抱きしめる事も叶わぬのだ。倧倩䜿メタトロンよ、これ以䞊䜙に䜕を望む」

 完党にリヌシュの存圚がペハネスの蚘憶から抜け萜ちたわけではないらしい。倖郚からの干枉で、リヌシュ皇子の名を玡ぐ事すら拒絶されおいるようだ。
 メタトロン垝囜の創立に尜力した創䞖神の生たれ倉わりず呌ばれる少女に鍵があるのかも知れない。ノィクトヌルの掚枬はほが固たった。どのみち【焔フレむア】にりォルトを戻したい。圌なき階士団は芇気に欠ける。぀いでにクレセント倧神殿の内情を探れたら。

「ノィクトヌルよ、お䞻に頌みたい事がある」
「はっ  䜕なりず」
「圌奎にかけられた呪いの分析を進めお欲しい。“金の卵“は、この囜を救う力ずなろう」

 “招かれざるもの“ず察峙したリヌシュはメタトロン垝囜西偎の貧民街に向かう途䞭、Sクラスの敵ず察峙し、クレセント倧神殿の巫女むリアに救われた。
 リヌシュが纏っおいたのはほが原型を留めおいない【焔フレむア】の魔法鎧ず、酞で焌き切れた青いマントの切れ端。そしお黒い泡で溶けた銬の死骞。その堎で䞀䜓䜕が起きたのか想像は容易い。圌女が居なければリヌシュは傷が塞がっおいようずも死んでいた。
 珟堎に駆け぀けたノィクトヌルにむリアは蒌い瞳に涙を浮かべたたた、

『お願い、リヌシュにかけられた呪いを解く方法を䞀緒に探しお』

 ポロポロず砕け散る宝石の涙を流すむリアにずっお、巫女ず䞀介の階士ずいう関係よりもリヌシュは特別な存圚だず悟る。
 ずは蚀え、圌女ずリヌシュの接点は謎のたた。巫女の倖芋はかなり若くただ二十代ず思われるが、実際は遥か昔からアルカディアの歎史を芋守っおいるず蚀われおいる。

 䜕故クレセント倧神殿に籠っおいる圌女が地䞊から遞ばれたリヌシュを知っおいるのか。それずも、圌が゚デンに来るこずは既に星読みによっお定められた事なのか。
 ノィクトヌルの答えは決たっおいた。

「畏たりたした。リヌシュにかけられた呪いの研究は【嚁ストラテゞヌ】で進めたしょう。䞁床、リヌシュに瞁のある者が入ったずころです」
「ふむ、その蟺りは任せる。もうじき星が動く。そのタむミングでリヌザをシャルムずの亀枉に向かわせようず思うおな」
「皇女を、ですか」

 意倖だった。垞に第䞀線で行動するペハネスが、敵囜シャルムずの亀枉に最愛の嚘であるリヌザ皇女を出すず蚀うのだ。
 勿論、リヌザ皇女が出るずなれば護衛が必芁。果たしお今の【焔フレむア】にそこたでの戊力があるかどうか。黙考するノィクトヌルに、ペハネスは圢の良い眉を動かした。

「居るではないか、最匷の護衛が」
「たさか──」
「この時の為にりォルトをクレセント倧神殿に預けたようなものよ」

 りォルトの身柄を倧神殿に移したのも、党おペハネスの蚈画通りだったらしい。ノィクトヌルは深々ず頭を䞋げ、リヌシュの呪いを解く方法の暡玢ず、リヌザ護衛の件に぀いお快諟した。




◇



「──で、俺の凊分はなしっお事か」
「皇垝の寛倧さに感謝しろ。それで、動けるのか」

 【嚁ストラテゞヌ】が運営しおいる“招かれざるもの“を研究する斜蚭に移送されたリヌシュは、淡いグリヌンの䞈の長いロヌブを着甚しおいた。軟犁ずは蚀え、䞡腕の枷は逃げる事を蚱さない。
 Sクラスの“招かれざるもの“に遭遇しお生き延びたケヌスは今の所りォルトのみだ。回目の生存者であるリヌシュは【嚁ストラテゞヌ】の栌奜の逌だった。

「よくわかんねえ男があれこれ怜査しおいるんだよ。そい぀に聞けよ」
「──珍しいですね、【焔フレむア】の階士団長様が、このような所たで足を䌞ばされるずは」

 噂をしおいるず䜕ずやら。ディオギスは人の良い笑みを浮かべたたた、真っ盎ぐにノィクトヌルの瞳を芋返した。
 二人の間にある確執があるずすれば、ディオギスの逊父に圓たるマむデン卿が圓時の【嚁ストラテゞヌ】党暩を担っおおり、あの日Sクラスの“招かれざるもの“襲来の日、刀断を誀った。
 圌そのものに眪は無いのだが、今もこうしお懺悔も蟌めお埌方支揎ず研究に死力を泚いでいる。圌は、りォルトの謀叛の埌に地䞊に降りたず蚀われおいたが、リヌシュが゚デンに来たタむミングでこちらに戻ったのか。

「リヌシュが必芁になった」
「ふっ  皇垝の尖兵は盞倉わらず郜合の良い。リヌシュくんは“招かれざるもの“に玠手で立ち向かっおいるのですよ、貎方は、いえ──【焔フレむア】は圌を切り捚おたしたよね。虫が良すぎるず思いたせんか」

 正論を突き぀けられお䜕も蚀い返せないノィクトヌルは唇を真䞀文に瞛った。圌の名前がリヌシュ皇子ず同じであるこず、そしお圌がセラフクラむムを継承した事、党おノィクトヌルの予想通り、䞀応賭けに勝ったのだ。
 ずころが埌凊理を気に食わんずするディオギスは真っ向から反論した。

 圌はクレセント倧神殿の巫女によっお䞀呜を取り留めたにすぎない。䜕か悪い状態であれば、【焔フレむア】に属するこずそのものが危険ず蚀われたのだ。

「危険は癟も承知。セラフクラむムを振るわせない事を条件ずしたい」
「䞞腰にしお戊いに挑たせるのですか 貎方は人ずしおの──」
「皆を守る為に、人間ずしおの心はずうに捚おおいる」
「その倧を埗る為に小を切り捚おるずいう考えが気に入らないからこそ、リヌシュくんも私の研究に賛同しおくれおいるのですよ。今の゚デンは䞍平等過ぎる  」
「それを倉える為にも、シャルムず停戊しなければいけない」

 ノィクトヌルの瞳の色は党く倉わらない。このたた口論したずころで、力づくの行動に出られたらリヌシュを守る事は䞍可胜。この研究所を壊されおも困る。
 わざず倧きなため息を぀いたディオギスはリヌシュの䞡腕に぀いた鎖をあっさりず倖した。

「──いいですか、リヌシュくん。君はただセラフクラむムを䞊手く扱えない。絶察に、無理はしない事。䞇が䞀、死地に赎いた時は必ず  生きお垰る事。いいね」
「んだよ、芪父みたいにベラベラず  俺は死なねえ。倧切な奎を  あい぀を、守りたいんだ」

 リヌシュの䞍平等な゚デンを壊す、ずいう意思に迷いはない。
 あの時、゚デンぞ向かう芚悟を決めた時ず同じ県差しで圌は先を芋据えおいた。




 ──メタトロン歎、幎。
 リヌザ皇女、二十歳の誕生日のち、圌女は二人の【焔フレむア】階士を共に、クレセント倧神殿ぞず旅立぀。





 敵囜シャルムずの、長き戊いに終止笊を打぀為に。

いいなず思ったら応揎しよう