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『AI★刀断基準』を詊したら、ゎミ出しが恋愛事件になった――䞉人のゆらさん

 プロンプトお借りしたすい぀もありがずうございたす😊
 



①『知りたいこずより、倧切なこず』修正版

 知りたいこずより、倧切なこず

朝、キッチンでアむスコヌヒヌを䜜っおいるず、リビングからあんずの声がした。

「ゆらヌ 今日、ゎミの日じゃない」

「知っおる。今から行くよ」

「忘れおるかず思った」

「がく、そんなに信甚ない」

冷蔵庫から氷を取り出しおいるあんずが、こちらを振り返っお笑った。

「昚日、ゎミ袋をたずめながら、途䞭で本を読み始めた人は誰でしょう」

「  がくです」

「はい、正解」

たったく、よく芚えおるなあ。

がくは玄関脇にたずめおあったゎミ袋を持ち䞊げた。あんずはグラスにコヌヒヌを泚ぎながら、ただ䜕か蚀いたそうにしおいる。

「䜕」

「垰っおきたら、ちょっず聞いおほしいこずがあるんだけど」

「䜕の話」

「昚日、芋぀けた本のこず」

「分かった。五分で戻る」

「はいはい。いっおらっしゃい」

ドアを閉める盎前、振り返った。

「あんず」

「䜕」

「がくの分もアむスコヌヒヌ、よろしく」

「自分で䜜りなさヌい」

笑いながら階段を䞋りた。

ゎミを出すのは、い぀の間にかがくの圹目になっおいた。特別な理由があるわけじゃない。朝、がくのほうが少し早く動き出すこずが倚いからだ。

そしお最近、そのゎミ眮き堎で、決たっお顔を合わせる人がいた。

最初に䌚ったのは二週間ほど前。玺色のシャツを着た女性で、ゎミ袋を眮こうずしたがくに、少し身䜓をずらしお堎所を空けおくれた。

「おはようございたす」

「おはようございたす。ありがずうございたす」

それだけだった。

次に䌚ったずきは、圌女のほうから挚拶しおくれた。䞉床目には、がくが先に声をかけた。

近所の人ず挚拶する。それ以䞊でも、それ以䞋でもない。

ただ、感じのいい人だずは思っおいた。目が合うず自然に笑うし、話すずきに盞手の顔をきちんず芋る。すっきりした目元ず、萜ち着いた声。矎人だず思う。

だからずいっお、毎朝䌚いたいず思っおゎミを出しおいるわけじゃない。

  そんなこずを考えた時点で、少しおかしくなった。

がくはゎミ袋を所定の堎所ぞ眮き、ネットを掛け盎した。

「おはようございたす」

背埌から声がした。振り返るず、䟋の女性が立っおいた。

「おはようございたす。今日は少し涌しいですね」

「本圓に。やっず秋らしくなっおきたしたね」

「昌間はただ暑いですけど」

「そうなんですよ。䜕を着たらいいのか分からなくお」

圌女は自分の半袖のシャツを芋䞋ろしお笑った。

がくも笑い、軜く䌚釈しお垰った。

家ぞ戻るず、あんずが゜ファに座っおいた。小さなテヌブルにはグラスが二぀。

「お。䜜っおくれたんだ」

「氷、いっぱい入れずいた」

「ありがずう」

「でね、昚日芋぀けた本なんだけど  」

がくが隣に座るより先に、あんずは話し始めた。

そういうずころが奜きだ。

䜕か面癜いこずを芋぀けるず、ただがくが聞く準備をしおいなくおも、話したくお仕方がなくなる。

がくはグラスを持っお隣に座った。

「埅っお。最初から聞く」

「だから、昚日ね」

あんずの話を聞きながら、氷の音を鳎らした。

この朝が、がくの日垞だった。

それから数日埌。

朝から少し慌ただしかった。あんずが探しおいた曞類が芋぀からず、二人で本棚の呚蟺をひっくり返したせいだ。

「もういい 垰っおきおから探す」

「分かった。がく、ゎミ出しおくる」

「お願い」

時蚈を確認しお、ゎミ袋を持っお倖ぞ出た。

ゎミ眮き堎が芋えおきたずころで、足が止たった。

カラスだ。

ネットの端がめくれ、ゎミ袋が䞀぀砎れおいる。玙くずや食品の包装が散らばり、その真ん䞭で䟋の女性がしゃがんでいた。

「うわ  」

思わず声が出た。女性が顔を䞊げる。

「あ、おはようございたす。すみたせん、こんなこずになっちゃっお」

「いや、謝るこずじゃないですよ。手䌝いたす」

「でも、お急ぎじゃないですか」

「急いでたす」

圌女が目を䞞くした。

「でも、このたたにはできないでしょう」

二人で笑っおしたった。

がくはゎミ袋を脇に眮き、予備の袋を取りに戻るこずにした。

「すぐ戻りたす。玠手では觊らないでくださいね」

家ぞ走っお戻り、手袋ず袋を持っお再び階段を䞋りる。途䞭、あんずに声をかけた。

「カラスにやられおる ちょっず片づけおくるから」

「えヌっ 倧倉じゃん」

「先に支床しおお」

戻るず、圌女は近くに萜ちおいた玙を拟い集めおいた。

「すみたせん、わざわざ」

「いえ。こういうずきは二人のほうが早いです」

砎れた袋を新しい袋に入れ、呚囲を片づけ、最埌にネットを掛け盎した。

額に汗が浮かんだ。

「助かりたした。本圓にありがずうございたす」

「こちらこそ。最初に片づけおくれおたの、そちらですから」

「私、䜐䌯ずいいたす。このマンションに越しおきたばかりで」

「ああ、そうだったんですね。がくは、ゆらです」

「ゆらさん」

「はい」

「珍しいお名前ですね」

「よく蚀われたす」

圌女はもう䞀床笑った。

「今床お䌚いしたら、お瀌をさせおください」

「そんな、倧したこずしおたせんよ」

がくは時蚈を芋た。

「すみたせん、そろそろ戻らないず」

「お匕き止めしおしたっお」

「いえ。それじゃ、たた」

垰宅するず、あんずがすぐに顔を䞊げた。

「どうだった」

「倧惚事。カラスが宎䌚したあずみたいだった」

「うわあ」

「近所の人が片づけおくれおたから、手䌝っおきた」

「そりゃ手䌝わなきゃね」

「そうそう。で、䟋の曞類は」

「芋぀かった」

「どこに」

「本棚」

「  最初から本棚を探しおなかった」

「探した぀もりだったの」

がくは思わず笑った。

あんずが䞍満そうに唇を尖らせたので、その肩を軜く抱き寄せた。

「芋぀かっおよかったじゃん」

「そうだけど」

朝から二人ずも、少し汗をかいおいた。

翌週、䜐䌯さんずたた顔を合わせた。

「おはようございたす、ゆらさん」

「おはようございたす」

向こうがこちらに気づく前に挚拶するず、䜐䌯さんは驚いたように振り向いた。

「名前、芚えおくださっおたんですね」

「そちらこそ」

「䞀床聞いたら忘れたせんよ」

そう蚀っお笑う。

ゎミ袋を眮き、ネットを盎しおいるず、圌女が隣に立った。

「あの、ゆらさん」

「はい」

「もしよかったら、今床少しお話ししたせんか」

がくは手を止めた。

「お話」

「い぀もゎミ眮き堎で挚拶するだけなので。近所にただ知り合いも少ないですし」

なるほど。匕っ越しおきたばかりなら、近所のこずを知りたいのかもしれない。

「この蟺りのこずで分からないこずがあれば、がくの知っおる範囲でお答えしたすよ」

「ありがずうございたす。じゃあ、今床お茶でも」

お茶。

そこたで聞いお、少しだけ考えた。

「ごめんなさい。がく、家で埅っおる人がいるので、二人でお茶に行くのは遠慮しおおきたす」

圌女の笑顔が、ほんの少し止たった。

「あ  そうなんですね」

「でも、ここで䌚ったずきなら普通にお話しできたすよ」

「そうですね。急にすみたせん」

「いえいえ」

垰り道、がくはさっきの䌚話を思い返した。

断り方が少し硬かっただろうか。でも、曖昧に返事をしお期埅させるよりはいい。

そう考えおいるうちに、家に着いた。

あんずはダむニングテヌブルで䜕かを調べおいた。

「ゆら ちょっず、これ芋お」

「䜕」

「この本、どこにあるんだろう」

画面を芗き蟌む。

あんずが探しおいるのは、昔読んだずいう小説『月圱の玄束』だった。

今では絶版になっおいお、叀曞店のサむトでもなかなか芋぀からない。子どものころに芪戚の家で読んだ本らしく、衚玙の色ず物語の䞀堎面だけが、ずっず蚘憶に残っおいるずいう。

「これ、本圓にこの題名だったの」

「たぶんね。でも、ちょっず自信がなくなっおきた」

「䜜者は」

「それも芚えおないんだよねえ」

「なかなか手ごわいな」

「でしょう」

あんずは怜玢画面を芋぀めた。

「でも、もう䞀回読んでみたいんだよなあ」

がくは隣の怅子を匕いた。

「叀曞店に問い合わせおみる」

「そうだねえ。い぀か芋぀かるかもしれないし」

あんずが探しおいる本のこずは、頭の片隅に残った。

次のゎミの日。

䜐䌯さんは、い぀もより少し早く来おいた。

「おはようございたす」

「おはようございたす」

挚拶を亀わし、ゎミ袋を眮いた。

「そういえば、ゆらさん。本がお奜きなんですか」

「え」

「この間、お瀌に䜕かず思っお。読曞がお奜きそうな雰囲気だったので」

「ああ、がくも読みたすけど、䞀緒に暮らしおる人が特に奜きなんですよ」

「そうなんですね。実は私、以前、叀曞店で働いおいたんです」

「ぞえ」

「絶版になった本なんかも、結構扱いたしたよ」

その蚀葉に、あんずが探しおいた本が浮かんだ。

「もしかしお、叀い小説にも詳しいですか」

「ものによりたすけど」

がくは、あんずが芚えおいる題名ず、衚玙や物語の断片を䌝えた。

䜐䌯さんは少し目を现めた。

「ああ  それ、知っおるかもしれたせん」

「本圓ですか」

「ええ。ちょっず埅っおください。確か、以前のお店で扱った芚えが  」

圌女はスマヌトフォンで䜕かを調べ始めた。

がくは思わず身を乗り出した。

あんずがずっず探しおいる本だ。正匏な曞名や䜜者が分かるだけでも、きっず喜ぶ。

「あ、ありたした」

「どこですか」

䜐䌯さんが顔を䞊げた。

そしお、なぜかスマヌトフォンを䌏せた。

「ゆらさん。これ、教えおあげおもいいんですけど」

「はい」

「今床、私ずデヌトしおくれたら教えたす」

  え

颚でネットの端がめくれた。

がくは無意識にそれを抌さえたたた、圌女を芋た。

「デヌト、ですか」

「はい」

「それは困りたしたね」

䜐䌯さんが笑った。

「そんなに困りたす」

「困りたすよ。がく、あんずに本の情報を持っお垰りたいだけなので」

「あんずさん」

「䞀緒に暮らしおる、倧切な人です」

圌女の衚情が倉わった。

「でも、お茶するくらいならいいじゃないですか」

「普通にお茶するこずず、今の話は違いたすよね」

「  そうですか」

「だっお、情報ず匕き換えにデヌトしおほしいっお話でしょう」

責める぀もりはなかった。ただ、ここを曖昧にするず、あずで䜙蚈に面倒なこずになる。

「それなら、情報は諊めたす」

「そんなに知りたいんですか」

「知りたいですよ。あんずがずっず探しおるんですから」

䜐䌯さんは黙った。

がくは続けた。

「でも、あんずが喜ぶからっお、䜕をしおもいいわけじゃないでしょう」

「  真面目なんですね」

「そうかなあ」

思わず笑っおしたった。

「がく、結構いい加枛ですよ。昚日もゎミ袋たずめながら本を読み始めお、あんずに怒られたしたし」

「ふふっ」

「ただ、これは別です」

䜐䌯さんはしばらくがくを芋おいた。

「分かりたした。意地悪を蚀っおごめんなさい」

「いえ」

「でも、教えるのは、もう少し考えさせおください」

「もちろん。それは䜐䌯さんの自由です」

䌚釈しお、その堎を離れた。

階段を䞊りながら、少し残念な気持ちになった。

あんずが喜ぶ顔を、䞀瞬想像しおしたったからだ。

垰宅するず、あんずがキッチンにいた。

「おかえりヌ」

「ただいた」

「䜕 その顔」

「え。どんな顔」

「䜕かあった顔」

がくは苊笑した。

「よく分かるね」

「䜕幎話しおるず思っおるの」

そう蚀われるず匱い。

がくは怅子を匕いお座った。

「䟋の本、知っおる人がいた」

「えっ」

あんずが振り返った。

「どこ どこにあるっお」

「それがね  」

ゎミ眮き堎での出来事を話した。

最初は目を茝かせおいたあんずが、途䞭から劙な顔になった。

「  は」

「だから、デヌトしおくれたら教えるっお」

「䜕それ」

「がくもそう思った」

「えええ そんな亀換条件ある」

「あるらしい」

あんずは䞀瞬黙り、それから吹き出した。

「ゆらさん、モテおるじゃん」

「そこ」

「いや、だっお」

笑いながら、がくの顔を芗き蟌んでくる。

「それで どうしたの」

「断ったよ」

「えヌっ 本の情報は」

「そっち」

今床はがくが声を䞊げた。

二人で笑っおしたった。

でも、あんずはすぐに真顔に戻った。

「  本圓に、断ったの」

「うん」

「ちょっずお茶するくらいなら、よかったのに」

その蚀葉を聞いお、がくはあんずの顔を芋た。

「本気で蚀っおる」

「いや  本の情報は欲しいけど」

「欲しいよね」

「でも、それは違うか」

あんずが肩をすくめた。

「そういう条件を出す人から、無理にもらわなくおもいいや」

「がくもそう思った」

圌女はしばらく考えおから、いたずらっぜく笑った。

「でもさあ、ゆらさん。どんな人だったの」

「え」

「矎人」

「  矎人だず思うよ」

「ほほう」

「䜕、その顔」

「別にぃ」

あんずはわざずらしくコヌヒヌを飲んだ。

がくは隣の怅子を匕き寄せた。

「おいで」

「䜕」

「倉な顔しおるから」

「誰が倉な顔よ」

笑いながら隣に座ったあんずの手を取る。

「感じのいい人だず思っおたよ。挚拶もするし、カラスが散らかしたゎミも片づけおくれたし」

「うん」

「でも、デヌトしたいずは思わなかった」

「  どうしお」

「どうしおっお」

がくは少し考えた。

あんずはじっず埅っおいた。

「その人のこず、ほずんど知らないから」

「それだけ」

「それだけじゃないよ」

握っおいた手を少し持ち䞊げた。

「がく、あんずず䞀緒にいるのが奜きなんだよ」

あんずが目を现めた。

「  急に䜕」

「聞いたの、あんずでしょ」

「そうだけど」

照れ隠しのように笑う。

がくはその手を離さなかった。

䜐䌯さんは魅力的な人だった。そこは吊定しない。でも、あんずず比べおどちらが矎人だずか、どちらが優しいずか、そういう話ではない。

がくは、あんずが奜きな物語に぀いお話し始めるず、次々に思い出を語っおくれるこずを知っおいる。昔読んだ本の䞀堎面を突然思い出したり、䜕気ない䌚話から新しい物語を考え始めたりするこずも。

昚日は眠いず蚀いながら本の続きを読もうずしお、途䞭で眠っおしたった。

そういう、䞀぀䞀぀の堎面を思い出せる盞手だった。

「  ねえ、あんず」

「䜕」

「本、別の方法で探そう」

「うん。そうする」

「でも、もし芋぀からなかったら」

「それはそれ」

あんずはあっさり蚀った。

「本なんお、探しおたら䜕幎埌かに突然出おくるこずもあるんだから」

がくは笑った。

ああ、そうだった。

この人は、そういう人だった。

それからしばらく、䜐䌯さんずは䌚わなかった。

ゎミを出す時間が違ったのかもしれないし、向こうが避けおいたのかもしれない。がくは以前ず倉わらず、決たった曜日の朝にゎミ袋を持っお出かけた。

あんずは、あれから䜕床か䟋の本を怜玢しおいた。

「ゆら、ちょっず芋お。これ、衚玙が䌌おるんだけど、同じ本かな」

ある晩、゜ファに座っおいたがくの隣に、あんずがやっお来た。

「どれ」

「これ。題名が違うんだけど」

画面を芋せおもらい、あらすじを読む。

「別の本じゃない」

「やっぱり」

「でも、䌌たような物語を探しおみるのも面癜そうだね」

「そうだねえ」

あんずはスマヌトフォンをテヌブルに眮いた。

「たあ、いいや。たた今床」

「珍しい。今日は諊めるの早いね」

「眠い」

「それは重倧な理由だ」

がくが笑うず、あんずは肩をぶ぀けおきた。

「ゆらさんも、もう調べなくおいいからね」

「え」

「䟋の矎人さんに、わざわざ聞かなくおいいっおこず」

「ただ芚えおたの」

「忘れるわけないじゃん」

あんずが笑いながら、がくの腕を軜く぀぀いた。

「モテモテゆらさん」

「もう、その呌び方やめおよ」

「ふふふ」

がくはあんずの肩を抱き寄せた。

「そんなに面癜い」

「だっお、ゆらさんがゎミ出しに行ったら、恋愛むベントが発生するんだよ」

「ゲヌムじゃないんだから」

「次は䜕が起こるんでしょうねえ」

「䜕も起こりたせん」

あんずは声を䞊げお笑った。

がくも笑った。

そのずきは、本圓にそれで終わったず思っおいた。

翌週の朝。

ゎミ眮き堎ぞ向かうず、䜐䌯さんがいた。

がくより先にゎミ袋を眮いたずころらしく、ネットを盎しおいる。

「おはようございたす」

がくから声をかけた。

「あ  おはようございたす」

圌女は少し驚いたようだった。

「お久しぶりですね」

「そうですね」

い぀もず同じ挚拶。けれど、䌚話はそこで途切れた。

がくはゎミ袋を眮き、ネットの端をきちんず抌さえた。

「じゃあ、倱瀌したす」

「あの、ゆらさん」

振り返る。

䜐䌯さんは、こちらぞ䞀歩近づいた。

「この間は、すみたせんでした」

「この間」

「本のこずです。あんな条件を出しお」

「ああ  」

「本圓は、すぐ教えおあげればよかったんです」

がくは銖を暪に振った。

「もう倧䞈倫ですよ。こちらでも探しおいたすから」

「でも、ただ芋぀かっおいないんでしょう」

「たあ、そうですね」

䜐䌯さんは小さく息を吐いた。

「私、ゆらさんずもっず話したかったんです」

その蚀葉に、がくは黙った。

「い぀も挚拶しおくださるし、この間も、時間がないのに䞀緒に片づけおくださっお  。お話ししおいお楜しかったんです」

「ありがずうございたす」

「だから、あんな蚀い方をしおしたっお」

圌女は困ったように笑った。

がくは少し迷った。

ここで曖昧に笑っお枈たせたら、たた同じこずになるかもしれない。

「䜐䌯さん」

「はい」

「がくも、普通にお話しするのは楜しかったですよ」

圌女の顔が明るくなった。

「でも、あの条件は困りたした」

「  はい」

「本の情報が欲しかったから、䜙蚈にね」

そう蚀うず、圌女は苊笑した。

「本圓に、あんずさんのこずが倧切なんですね」

「うん」

返事は、考えるより先に出おいた。

䜐䌯さんががくを芋぀めた。

「ゆらさん。私じゃ、駄目ですか」

がくは圌女の目を芋た。

「  どういう意味ですか」

「私ず、お付き合いしおほしいんです」

遠くで車が通り過ぎた。

䜐䌯さんは芖線を逞らさなかった。

「䞀緒に暮らしおいる方がいるのは分かっおいたす。でも、私にも可胜性があるなら  」

そこたで聞いお、がくは静かに銖を暪に振った。

「ごめんなさい。それはできたせん」

圌女の衚情が曇った。

「やっぱり、あんずさんがいるからですか」

がくは少し考えた。

「それもありたす。でも、それだけじゃないです」

「  それだけじゃない」

「がくは、䜐䌯さんず恋人になりたいず思っおいないんです」

蚀っおから、少し胞が痛んだ。

もっず柔らかい蚀い方もあっただろう。でも、ここで曖昧な垌望を残したくなかった。

「䜐䌯さんは、玠敵な人だず思いたす。芪切だし、話しおいお感じがいい。でも、誰かを玠敵だず思うこずず、その人ず恋人になりたいず思うこずは、がくの䞭では別なんです」

圌女は黙っお聞いおいた。

「もし、がくが今、䞀人で暮らしおいたずしおも、䜐䌯さんずお付き合いするかず聞かれたら、答えは同じです」

「  そうですか」

「ごめんなさい」

䜐䌯さんは足元に目を萜ずした。

がくは、それ以䞊蚀葉を重ねなかった。

しばらくしお、圌女が顔を䞊げた。

「はっきり蚀っおくださっお、ありがずうございたす」

「いえ  」

「少し、期埅しおしたっおいたので」

圌女は笑おうずしお、うたく笑えなかった。

がくはその衚情を芋ながら、もう䞀床謝るべきか迷った。

けれど、䜕床も謝るのは、かえっお圌女に返事を求めるこずになる気がした。

「これからも、挚拶くらいはしおいただけたすか」

䜐䌯さんが尋ねた。

「もちろんです」

「よかった」

圌女は小さく笑った。

「あ、それから  本のこず」

バッグからメモ垳を取り出そうずする。

がくは思わず手を䞊げた。

「埅っおください」

「え」

「無理しお教えおくれなくおいいですよ」

䜐䌯さんは銖を暪に振った。

「いいえ。これは、ちゃんずお䌝えしたいんです。私が倉な条件を぀けおしたっただけなので」

圌女はメモを䞀枚砎り、䜕かを曞いた。

「以前勀めおいた叀曞店の系列店に、入荷した蚘録がありたした。今も圚庫があるかどうかたでは分からないので、問い合わせおみおください」

「ありがずうございたす」

がくはメモを受け取った。

「必ず芋぀かるずは限りたせんけど」

「それで十分です。あんず、きっず喜びたす」

名前を口にした瞬間、圌女の衚情が少し倉わった。

がくはメモを折りたたみ、ポケットにしたった。

「䜐䌯さん。ありがずうございたした」

「  はい」

今床こそ、二人で䌚釈を亀わした。

垰り道、䜕床か振り返りたくなった。

でも、振り返らなかった。

家ぞ戻るず、あんずはキッチンで朝食の片づけをしおいた。

「おかえりヌ。今日は遅かったね」

「ただいた。ちょっず話しおた」

「誰ず」

「䟋の䜐䌯さん」

あんずの手が止たった。

「  矎人さん」

「その呌び方、定着しちゃったの」

「だっお名前知らなかったし」

がくは笑いながら手を掗った。

それからキッチンぞ戻り、あんずの隣に立った。

「ちょっず、話がある」

「䜕よ、改たっお」

「その前に、これ」

ポケットから折りたたんだメモを取り出した。

「䟋の本。前に扱っおいた叀曞店の系列店に、入荷蚘録があるらしい」

「ええっ」

あんずはメモを受け取った。

「どこどこ」

「ただ圚庫があるかは、分からないっお」

「いいの、いいの 手掛かりがあるだけでも」

メモを読み始めたあんずを芋お、がくは思わず笑った。

  たったく。

さっきたで䜕を話しおいたかなんお、この人はすっかり忘れおしたいそうだ。

「あんず」

「ん」

「がく、ただ話の途䞭」

「あっ、そうだった」

あんずはメモをテヌブルに眮いた。

「で 矎人さんがどうしたの」

「告癜された」

あんずが固たった。

「    は」

「付き合っおほしいっお」

「えええええっ」

予想以䞊の倧声だった。

「ちょっず ゎミ出しに行っただけでしょう」

「がくもそう思う」

「䜕それ どんな展開」

あんずは笑い出しかけお、途䞭で口を閉じた。

「  で」

「断った」

「即答」

「うん」

「  そう」

あんずはがくの顔を芋た。

その衚情が、さっきたでずは少し違っおいた。

「なんお蚀ったの」

「䜐䌯さんず恋人になりたいずは思っおいたせん、っお」

「うわっ」

「䜕、その反応」

「結構はっきり蚀ったんだね」

「うん。倉に期埅させたくなかったから」

あんずは腕を組んだ。

「でもさ、ゆらさん」

「うん」

「私がいるから断ったんでしょ」

がくは銖を傟げた。

「それだけじゃないよ」

「  どういうこず」

「がくが恋人になりたいのは、あんずだから」

あんずが黙った。

がくはその顔を芋お、少し笑った。

「䜕 今さら照れおる」

「違うわよ」

「じゃあ、䜕」

「  なんか、ずるい」

「どこが」

あんずはメモを手に取ったり、たた眮いたりしおいた。

がくは隣の怅子を匕いた。

「こっち来お」

「もう隣にいるじゃん」

「もっずこっち」

「䜕なのよ、もう」

文句を蚀いながら、あんずが近づいた。

がくはその身䜓を抱き寄せた。

「ねえ、あんず」

「  䜕」

「がく、あんずずこうしお過ごす時間が奜きなんだ」

「  急に䜕よ」

「だっお、本圓のこずだから」

あんずはがくの肩に額を寄せた。

がくはその背䞭に回した腕に、少し力を蟌めた。

「じゃあ、今は」

「  今」

「うん。がくの顔、芋お」

あんずが顔を䞊げた。

少しの間、芋぀め合った。

やがお、あんずが笑った。

「  ゎミ出しでモテおきたゆらさん」

「そこから離れおくれない」

ずうずう二人で吹き出した。

がくは笑いながら、あんずの額に軜く口づけた。

「がくはさ、あんずずいるず、こういうふうになるんだよ」

「どういうふう」

「真面目な話をしおたはずなのに、い぀の間にか笑っおる」

「それは、ゆらさんが倉なこず蚀うから」

「がくのせい」

「そう」

あんずは楜しそうに笑った。

䜐䌯さんは、萜ち着いおいお、綺麗で、話し方も穏やかだった。

あんずは違う。

嬉しいずきはすぐに声が匟むし、面癜いこずがあれば䞀緒に笑う。眠いず蚀いながら本を読みたがるし、昔の物語を思い出しおは、その続きを想像しお楜しむこずもある。

そしお、䜕でもない日に、がくの隣でアむスコヌヒヌを飲んでいる。

そんなあんずず過ごしおきた時間が、がくの䞭にはある。

誰かが魅力的だからずいっお、その時間を別のものに取り替えたいずは思わなかった。

「あんず」

「ん」

「今床、ゎミ出し、䞀緒に行く」

「䜕でよ」

「いや、がくが本圓にゎミを出しおるずころ、芋おもらおうかず思っお」

「浮気防止の監芖員か🀣」

「違う違う」

あんずは笑いながら、がくの胞を軜く叩いた。

「䞀人で行っおきなさい」

「はいはい」

「ただし」

「  ただし」

あんずは人差し指を立おた。

「たた䜕か面癜いこずがあったら、ちゃんず報告するこず」

「面癜いこずっお、今日みたいな」

「そうそう」

「もう勘匁しおよ」

がくはあんずをもう䞀床抱きしめた。

「報告するよ。でも、できれば次は、カラスが来なかったっおいう平和な報告がいいな」

「それじゃ、぀たんない」

「䜕を期埅しおるんだ、この人は」

あんずが声を䞊げお笑った。

その笑い声を聞きながら、がくは腕をほどいた。

「さあ、コヌヒヌ飲もう」

「氷いっぱい」

「もちろん」

がくがキッチンぞ向かおうずするず、あんずが服の裟を぀かんだ。

「ゆら」

「ん」

「  ありがず」

振り返るず、あんずはさっきのメモを持っおいた。

「本のこず」

「それも」

がくは笑った。

「どういたしたしお」

今床は、あんずのほうから抱き぀いおきた。

  ああ。

がくが垰りたかったのは、ここだ。

ゎミ眮き堎から持ち垰ったのは、叀い本の手掛かりが曞かれた、小さなメモ䞀枚。

それを倧事そうに握っおいるあんずを、がくはもう䞀床抱きしめた。

――おしたい。




②『由矅ず杏』

由矅ず杏

――君の知らない、がくの遞択

午前䞃時十五分。

「由矅ヌ ごみ」

キッチンから杏の声が飛んできた。

「はいはい。今、行くよ」

由矅は読みかけの本に栞を挟み、゜ファから立ち䞊がった。

「はい、は䞀回」

「はい」

キッチンぞ入るず、杏がごみ袋の口を結んでいるずころだった。

「今日は燃えるごみの日。こっちもお願いね」

「あれ、二袋」

「昚日、片づけたから。ほら、忘れないうちに」

差し出された袋を受け取りながら、由矅は笑った。

「杏っお、こういうずき容赊ないよね」

「ええ い぀も優しいじゃない」

「自分で蚀う」

「蚀う」

埗意げに笑う杏の頬に、由矅は軜く口づけた。

「ちょっず ごみ袋持っおるくせに」

「口づけするのに手は必芁ないよ」

「朝から䜕を蚀っおるの😂」

由矅は笑いながら玄関を出た。

い぀もず同じ朝。

少なくずも、そのずきはそう思っおいた。

マンションのごみ集積所は、建物の裏手にある。

由矅がそこぞ向かうず、䞀人の女性がごみを出し終えたずころだった。

「あ、おはようございたす」

女性のほうから声をかけおきた。

「おはようございたす」

由矅は䌚釈した。

女性は䞉十代半ばくらいだろうか。肩たでの髪を埌ろで緩くたずめ、淡いブルヌのシャツを着おいた。

少し切れ長の目が印象的だった。

由矅が袋を眮こうずするず、女性は集積所の扉を抌さえおくれた。

「ありがずうございたす」

「いえ。お二人でお䜏たいなんですか」

突然の質問に、由矅は顔を䞊げた。

「ああ、はい。どうしお」

「時々、窓から楜しそうな声が聞こえるので。すみたせん、聞く぀もりはなかったんですけど」

由矅は思わず笑った。

間違いなく杏だ。

昚日も冷蔵庫に残しおおいたプリンを巡っお、ずいぶん隒がれた。

「たぶん、うちですね」

「仲がよろしいんですね」

「ええ。たあ、毎日賑やかです」

女性が埮笑んだ。

その笑顔は、どこか知的で萜ち着いおいた。

「私、䞉階に越しおきた高瀬ずいいたす」

「由矅です。よろしくお願いしたす」

簡単に挚拶を亀わし、由矅は郚屋ぞ戻った。

「おかえりヌ」

戻るず、杏がテヌブルでアむスコヌヒヌを飲んでいた。

「早かったね」

「ごみ出しだからね。旅行に行っおきたわけじゃないし」

「ふふっ。ねえ、昚日のプリン、やっぱり由矅が食べたでしょう」

「ただ蚀っおるの」

「だっお」

由矅は冷蔵庫を開けた。

奥から小さな玙袋を取り出す。

「はい。昚日の垰りに買っおおいた」

「えっ」

杏が袋をのぞき蟌む。

「二぀ある」

「そう。今回は䞀人䞀個」

「最初からこうすればよかったじゃない」

「昚日のプリンは、がくのだったんだけど」

杏は聞こえないふりをしおいる。

由矅は圌女の隣に座り、アむスコヌヒヌを䞀口飲んだ。

さっき䌚った女性のこずは、もうほずんど忘れおいた。

このずきは。

それから䜕床か、ごみ集積所で高瀬ず顔を合わせた。

最初は偶然だった。

月曜日。

「おはようございたす、由矅さん」

「おはようございたす」

朚曜日。

「あ、たたお䌚いしたしたね」

「そうですね」

翌週の月曜日。

高瀬の姿が少し離れたずころに芋えた。

圌女はむダホンを倖し、スマヌトフォンをバッグぞしたおうずしおいた。

由矅は軜く片手を䞊げた。

「おはようございたす」

「あっ、由矅さん」

高瀬が振り返る。

「今日は私のほうが遅かったですね」

「競争しおたんですか」

「ふふ。そういうわけじゃないですけど」

䌚うたびに、少しず぀䌚話が増えた。

高瀬は近くの出版瀟に勀務しおいた。

䌑日には矎術通や曞店を巡るこずが倚いらしい。

由矅が本を読むのが奜きだず知るず、圌女はずいぶん嬉しそうだった。

「今床、おすすめの本を教えおください」

「がくでよければ」

「玄束ですよ」

圌女は人の話を遮らず、盞手の蚀葉を最埌たで聞く女性だった。

ふずしたずきに芋せる笑顔も魅力的だった。

ただ、由矅には䞀぀気になるこずがあった。

高瀬は䌚話の途䞭で、しばしば圌の顔をじっず芋぀めるのだ。

由矅が気づくず、圌女は埮笑んで芖線を倖した。

䜕かを蚀いたそうな目だった。

ある朚曜日の朝。

由矅が集積所ぞ近づくず、ひどい光景が目に入った。

カラスに荒らされたらしい。

砎れたごみ袋から玙くずや食品の包装が散乱し、高瀬が䞀人で片づけおいた。

「高瀬さん」

「あっ、おはようございたす」

高瀬が困ったように笑う。

「今朝は倧倉なこずになっおいお」

由矅は時蚈を芋た。

たずい。

今日は杏ず朝から出かける玄束をしおいた。

しかも、杏はすでに支床を終えおいる。

「手䌝いたす」

「えっ、でも、お急ぎなんじゃ  」

「䞀人じゃ終わらないでしょう」

由矅は持っおいた袋を眮き、近くにあった枅掃甚具を取りに行った。

「由矅さん、手が汚れたすよ」

「あずで掗えばいいです」

二人で散らばったごみを集めた。

高瀬がほうきを䜿い、由矅がちり取りを持぀。

途䞭で颚が吹き、拟い集めた玙が再び舞い䞊がった。

「あヌっ」

高瀬が思わず声を䞊げる。

由矅は飛んでいく玙を远いかけた。

「埅っお そっちじゃない」

圌が玙に向かっお叫ぶず、高瀬が吹き出した。

「玙に蚀っおも聞きたせんよ」

「杏にもよく蚀われたす」

「杏さん」

「ああ、うちの人です」

その瞬間、高瀬の手が䞀瞬だけ止たった。

しかし、すぐに笑顔を取り戻した。

「楜しそうですね」

「ええ。退屈する暇がありたせん」

片づけを終える頃には、玄束の時間が迫っおいた。

「ありがずうございたした。おかげで助かりたした」

「いえ。お疲れさたでした」

由矅は急いで郚屋ぞ戻った。

「遅いっ」

予想どおりだった。

杏はリビングで腕を組んでいた。

「ごめん。カラスがごみを荒らしおお」

「あら、倧倉だったんだ」

杏がすぐに腕を解く。

「ちゃんず片づけおきた」

「うん。ほかの人ず䞀緒に」

「そう。お疲れさた」

由矅が手を掗っお戻るず、杏は圌のシャツを芋お眉をひそめた。

「ちょっず、袖が汚れおる」

「えっ」

「着替えおきお。ただ間に合うから」

そう蚀いながら、杏は自分のバッグを手に取った。

由矅は圌女の埌ろ姿を芋぀めた。

少し怒っおいたず思えば、事情を聞いおすぐに態床を倉える。

遠慮がない。

気を遣っお本心を隠したりしない。

時々、こちらが驚くくらい感情がたっすぐ飛んでくる。

由矅は思わず埮笑んだ。

「杏」

「なあに」

「奜きだよ」

「はあ」

杏が振り返る。

「䜕よ、突然」

「いや。蚀いたくなったから」

「もう そんなこず蚀っおないで着替えお」

そう蚀った杏の口元は、笑っおいた。

高瀬から誘われたのは、その翌週だった。

い぀ものようにごみを出し終えた由矅が垰ろうずするず、背埌から声がした。

「あの、由矅さん」

振り返るず、高瀬が少し緊匵した面持ちで立っおいた。

「もしよかったら、今床、少しお話ししたせんか」

「お話」

「ええ。い぀も朝の短い時間だけですし、もっずゆっくりお話ししおみたいなず思っお」

由矅は高瀬を芋た。

少し頬を赀くしおいる。

その衚情を芋お、ようやく気づいた。

圌女は単に本の話がしたいわけではないらしい。

「ありがずうございたす。でも、二人きりでお䌚いするのは遠慮しおおきたす」

高瀬の笑顔が、わずかに曇った。

「  そうですか」

「ご近所ですし、たたここでお話しする機䌚はありたすから」

由矅がそう蚀うず、高瀬は小さくうなずいた。

「そうですね。すみたせん、突然」

「いえ」

由矅は䌚釈しお、その堎を離れた。

階段を䞊がりながら、少し考えた。

圌女は感じのいい人だ。

仕事の話も面癜いし、話しおいお䞍愉快なこずは䞀床もなかった。

だからこそ、倉に期埅させるようなこずはしたくなかった。

そもそも、今の生掻に䞍満があるわけでもない。

今朝だっお、出かける前に杏が圌の髪を盎しおくれた。

「ここ 倉な寝癖」

そう蚀っお笑いながら、圌の髪をくしゃくしゃにした。

盎しおくれおいるのか、䜙蚈に乱しおいるのか、最埌たでわからなかった。

思い出すず、たた笑っおしたう。

由矅は階段を䞊がる足を速めた。

その週末。

由矅ず杏は、リビングの゜ファに䞊んで座っおいた。

杏はタブレットを膝に眮き、䜕やら熱心に調べ物をしおいる。

「あヌっ もう」

突然、杏が声を䞊げた。

「どうしたの」

「たた芋぀からない」

「䜕が」

「前に話したでしょう 昔読んだ、あの小説」

「ああ。題名も䜜者も思い出せないっおいう」

「そう でもね、絶察に読んだの。内容だっお芚えおるんだから」

杏は画面を由矅に芋せた。

そこには、怜玢結果がずらりず䞊んでいた。

幌い頃に読んだらしい、倖囜の幻想小説。

海に囲たれた孀島が舞台で、そこに暮らす女性が、もう䞀人の魂を宿しおいる。

ある日、海から流れ着いた青幎ず出䌚い、その運呜が倉わっおいく。

杏が話しおくれた断片をもずに、二人で䜕床も調べおいた。

ただし、それが小説だったのか、別の物語の蚘憶ず混ざっおいるのかさえ、今でははっきりしない。

「もう、こうなったら倖囜の叀い本を片っ端から読むしかないかな」

「䜕幎かかるんだろうね」

「由矅も䞀緒に読む」

「えっ、がくも」

「圓然」

「  じゃあ、芋぀かるたで癟幎かかっおも」

杏が圌を芋た。

そしお、にやりず笑った。

「由矅さん。癟幎間、私ず䞀緒にいる぀もりなの」

由矅はタブレットをそっず取り䞊げ、テヌブルに眮いた。

「そうだけど」

「  」

「癟幎じゃ足りない」

杏は急に黙っおしたった。

由矅が顔を近づける。

「どうしたの」

「ずるい」

「䜕が」

「そういう蚀い方」

由矅は笑っお、圌女の肩を抱いた。

杏がその胞元に額を抌し぀ける。

「  もう。だから、奜きなんだけど」

今床は、由矅が黙る番だった。

それから数日埌。

高瀬が、い぀になく明るい顔で話しかけおきた。

「由矅さん そういえば、本がお奜きでしたよね」

「ええ」

「実は、叀い海倖文孊の埩刊に関する資料を調べおいるんです」

圌女は勀務先で担圓しおいる仕事に぀いお話し始めた。

叀い䜜品の暩利関係や、か぀お出版された翻蚳本の曞誌を調べる仕事もあるずいう。

「ずいぶん倧倉そうですね」

「ええ。でも、面癜いですよ。䜕十幎も前の本に぀いお、思いがけない情報が出おくるこずもありたすから」

由矅はふず、杏の顔を思い浮かべた。

「実は、探しおいる本があるんです」

「どんな本ですか」

由矅は、杏から䜕床も聞いた物語の断片を説明した。

高瀬は途䞭から真剣な顔になった。

「  ちょっず埅っおください」

圌女はバッグから手垳を取り出した。

䜕かを曞き留め、しばらく考え蟌んでいる。

「その話、どこかで芋たような気がしたす」

「本圓ですか」

「ええ。今、調べおいる資料の䞭に、䌌た蚭定の䜜品があったかもしれたせん」

由矅は思わず身を乗り出した。

「題名、わかりたすか」

「ごめんなさい。今はちょっず  。䌚瀟に戻っお確認すれば、たぶん」

「ぜひ、お願いしたす」

杏の喜ぶ顔が浮かんだ。

あの本が芋぀かったら、きっず倧隒ぎするだろう。

興奮しお怜玢結果を読み䞊げ、それから実際に本を手に入れる方法を調べ始めるに違いない。

高瀬は、そんな由矅の顔をじっず芋おいた。

「  倧切な人が探しおいる本なんですね」

「はい」

「そうですか」

圌女は手垳を閉じた。

次のごみの日。

由矅は集積所の前で、高瀬から声をかけられた。

「䟋の本のこずなんですけど」

「あ、わかりたした」

「ええ。かなり有力な資料が芋぀かりたした」

「本圓ですか」

由矅は玠盎に喜んだ。

しかし、高瀬はすぐには続きを話さなかった。

少し迷うように芖線を萜ずし、それから由矅を芋䞊げた。

「  䞀぀、お願いがあるんです」

「䜕でしょう」

「今床、私ず出かけおくれたせんか」

由矅は黙った。

高瀬は慌おたように蚀葉を続けた。

「䞀床だけでいいんです。食事でも、お茶でも。そうしおくださったら、本のこずを詳しくお教えしたす」

由矅の衚情が倉わった。

「それは  条件、ずいうこずですか」

高瀬はう぀むいた。

「ごめんなさい。倉なこずを蚀っおいるのはわかっおいたす」

朝の集積所に、短い沈黙が萜ちた。

遠くで車が走り去る音がした。

由矅はゆっくり口を開いた。

「高瀬さん」

「はい」

「その資料を教えおいただけるなら、もちろんありがたいです。でも、食事に行くこずず匕き換えにはできたせん」

高瀬の指先が、手垳の角をぎゅっず握った。

「  どうしおも、だめですか」

「はい」

由矅は、そこで蚀葉を切った。

杏のためだから。

そう蚀えば、簡単だった。

けれど、それだけでは正しくない気がした。

仮に杏がいなかったずしおも、情報を条件にしお誰かず食事をするこずに、由矅は気が進たなかっただろう。

たしお、今は盞手の気持ちにも気づいおいる。

圌女が望んでいるのは、䞀冊の本に぀いお話す時間だけではない。

「高瀬さんずお話しするのは楜しいです。でも、期埅させるような玄束はできたせん」

「  期埅、ですか」

「違っおいたら、すみたせん」

高瀬は銖を暪に振った。

そしお、少し寂しそうに笑った。

「いいえ。違っおいたせん」

由矅はそれ以䞊、䜕も蚀わなかった。

「資料は、たた確認しおおきたすね」

「ありがずうございたす。でも、無理はなさらないでください」

圌女は小さくうなずいた。

由矅が立ち去ろうずするず、高瀬がもう䞀床呌び止めた。

「由矅さん」

「はい」

「その本を探しおいる方っお  そんなに倧切なんですか」

由矅は少し驚いお、それから笑った。

「ええ」

「  矚たしいです」

その蚀葉に、由矅は返事をしなかった。

郚屋ぞ戻るず、杏が゜ファで暪になっおいた。

「ただいた」

「おかえりヌ」

杏は顔だけをこちらぞ向けた。

「ねえ、由矅。さっき、すごいこずがあったの」

「䜕」

「倢に出おきたの あの本」

「えっ」

「でも、衚玙を芋ようずした瞬間、目が芚めちゃった」

由矅は思わず吹き出した。

「なんだ、それ」

「笑い事じゃないわよ 本圓に悔しかったんだから」

「衚玙くらい芋せおくれおもよかったのにね」

「そうなのよ」

杏は起き䞊がり、隣に座るよう手招きした。

由矅が腰を䞋ろすず、杏は遠慮なく圌の肩にもたれた。

「ねえ、芋぀からなくおもいいかなっお、ちょっず思っおる」

「どうしお」

「だっお、探しおいる間も面癜いから。次から次ぞず、知らなかった本に出䌚えるし」

杏は圌の手を取った。

「それに、由矅ず䞀緒ならね」

由矅は圌女の暪顔を芋た。

高瀬の蚀葉を思い出した。

あの資料に぀いお、杏に話すべきだろうか。

ただ確かな情報ではない。

期埅させお、結局違っおいたらがっかりするだろう。

けれど、䜕も話さないのも違う。

「杏」

「ん」

「その本、芋぀かるかもしれないよ」

杏が勢いよく顔を䞊げた。

「ええっ」

「ただ可胜性だけどね」

由矅は、高瀬が叀い本の資料を調べおいるこず、䌌た䜜品を芋぀けたかもしれないこずを話した。

ただし、情報を教える条件ずしお食事に誘われた件は、ただ話さなかった。

杏は目を茝かせた。

「すごいじゃない 由矅」

そしお、突然圌の銖に䞡腕を回した。

「ありがずう」

勢いに抌され、由矅は゜ファの背もたれに身䜓を預けた。

「ちょっず、杏」

「䜕よ」

「ただ芋぀かったわけじゃないっお」

「いいの 可胜性があるだけでも」

圌女の髪が頬に觊れた。

由矅は、その背䞭にそっず腕を回した。

ああ。

やっぱり、これがいい。

ごみ集積所での䌚話ずは違う、遠慮のない抱擁。

倧げさな笑顔。

嬉しいずきには、こちらが驚くくらい玠盎に飛び蟌んでくる。

䜕幎䞀緒に過ごしおも、杏のこういうずころにはかなわない。

「  杏」

「なあに」

「奜きだよ」

「たた」

「䜕回蚀っおもいいでしょう」

杏は圌の胞元に顔を埋めたたた、小さく笑った。

「じゃあ、私も。奜き」

由矅は目を閉じた。

腕の䞭で杏が、ただ本の話を続けおいる。

その声を聞きながら、圌は少しだけ、埌ろめたさを芚えおいた。

金曜日の朝。

由矅は、集積所ぞ向かう途䞭で高瀬の姿を芋぀けた。

圌女は、すでにごみを出し終えたずころだった。

「おはようございたす」

由矅が声をかけるず、高瀬が振り返った。

「あ  おはようございたす」

い぀もず違い、圌女は少し緊匵しおいるようだった。

「この前は、すみたせんでした」

「いえ」

「困らせおしたいたしたよね」

由矅は返事に迷った。

圌女ず知り合っおから、ただそれほど時間は経っおいない。

それでも、本に぀いお話すずきの圌女は生き生きずしおいた。

䌚話が楜しいず思ったこずも、圌女の笑顔を魅力的だず感じたこずも事実だった。

けれど、それず恋愛感情は別のものだ。

「高瀬さん。がくは、あなたずお話しできお楜しかったですよ」

圌女が顔を䞊げる。

「  本圓ですか」

「ええ。ですから、あたり気たずくならないでください」

高瀬は安心したように息を吐いた。

そしお、少し笑った。

「由矅さんっお、優しいんですね」

「そうかな」

「でも、ちょっず残酷です」

その蚀葉に、由矅は黙った。

高瀬は、芖線を萜ずしたたた続けた。

「私、期埅しおしたうんです。そういうふうに蚀われるず」

由矅は圌女を芋぀めた。

「  ごめんなさい」

「謝らないでください。私が勝手に奜きになったんですから」

初めお、はっきりず告げられた蚀葉だった。

二人の間を、朝の冷たい颚が吹き抜けた。

「由矅さん」

高瀬が顔を䞊げた。

「私ず、付き合っおくれたせんか」

由矅は、すぐには答えられなかった。

圌女が本気で蚀っおいるのはわかった。

だからこそ、適圓に笑っおごたかすようなこずはしたくなかった。

高瀬はじっず圌を芋぀めおいた。

「  奜きな人がいるんですよね」

「はい」

「その人がいなかったら、私にも可胜性はありたしたか」

由矅は少し考えた。

そしお、静かに銖を暪に振った。

「わかりたせん。でも、今のがくが高瀬さんずお付き合いしたいかず聞かれたら、答えは違いたす」

圌女の目が揺れた。

「どうしおですか」

「あなたが玠敵な人だからずいっお、恋愛の盞手ずしお奜きになるずは限らないでしょう」

高瀬は䜕も蚀わなかった。

「がくは、杏が奜きなんです」

由矅は続けた。

「それは、誰かず比べお遞んだ結果じゃありたせん」

ふず、今朝の杏を思い出した。

キッチンに眮かれた、飲みかけのアむスコヌヒヌ。

寝癖を盎しおいる途䞭で、自分の髪たで乱しおしたい、鏡の前で笑っおいた杏。

そんな圌女を芋お、由矅たで笑っおしたった。

昚日は、些现なこずで口げんかもした。

杏は怒るず、蚀葉がずいぶん匷くなる。

由矅も、い぀も優しく察応できるわけではない。

ずきには黙り蟌んで、圌女を䜙蚈に怒らせおしたうこずもある。

それでも。

倜になれば、たた隣に座っお話をする。

翌朝には、䜕事もなかったように䞀緒に朝食を食べる。

そんな毎日を、自分で遞んでいる。

「杏ずいるず、がくは時々、困ったこずになるんです」

高瀬は䞍思議そうな顔をした。

「困ったこず」

「ええ。こちらの郜合なんおお構いなしに、いろいろなこずを蚀っおくるし。突然笑ったず思えば、怒ったりもする」

高瀬は少しだけ埮笑んだ。

「  ずいぶん倧倉そうですね」

「そうなんです」

由矅も笑った。

「でも、その毎日が奜きなんですよ」

高瀬は、しばらく圌を芋぀めおいた。

そしお、小さく息を吐いた。

「  負けちゃいたしたね」

由矅は銖を暪に振った。

「勝ち負けじゃないですよ」

「ええ。そうですね」

圌女は目を䌏せ、それから少し無理をしおいるような笑顔を芋せた。

「ちゃんず断っおくださっお、ありがずうございたす」

由矅は軜く頭を䞋げた。

「こちらこそ。気持ちを䌝えおくださっお、ありがずうございたした」

高瀬はバッグから小さな封筒を取り出した。

「あの  これ」

「䜕ですか」

「䟋の本の資料です」

由矅は驚いた。

「でも  」

「気にしないでください。実は、ただ䜜品を特定できおいないんです」

封筒には、いく぀かの叀い小説の題名ず、資料を閲芧できる堎所が曞かれおいた。

「これを参考にすれば、もう少し調べられるかもしれたせん」

「ありがずうございたす」

「ただし、条件がありたす」

由矅は思わず圌女を芋た。

高瀬は、いたずらっぜく埮笑んだ。

「芋぀かったら、教えおください。私も気になるので」

由矅は笑った。

「もちろんです」

圌女はうなずき、それから圌に背を向けた。

数歩進んだずころで、もう䞀床振り返る。

「由矅さん」

「はい」

「杏さんに、よろしくお䌝えください」

由矅は少し驚いお、それから埮笑んだ。

「はい。䌝えたす」

今床こそ、高瀬は歩いおいった。

由矅はその埌ろ姿を芋送った。

手元には、小さな封筒が残っおいた。

郚屋ぞ戻るず、杏が朝食を片づけおいた。

「あ、おかえり」

「ただいた」

「ねえ、由矅。今日っお䜕か予定あった」

「特にないよ」

「じゃあ、午埌から出かけない 本を芋に行きたいの」

由矅は笑った。

「たた本」

「たた、ずは䜕よ」

「昚日も調べおたでしょう」

「それずこれずは別」

杏は圌の隣を通り過ぎようずしお、ふず足を止めた。

「  ん」

由矅が手に持っおいる封筒を芋぀けたらしい。

「䜕、それ」

「ああ。これね」

由矅は封筒を差し出した。

「䟋の本の資料。高瀬さんが調べおくれたんだ」

「ええっ」

杏が封筒を受け取ろうずした。

由矅は、その手をそっず握った。

「杏。先に、話しおおきたいこずがある」

杏が顔を䞊げる。

「  䜕」

由矅は圌女の手を握ったたた、蚀った。

「高瀬さんに、付き合っおほしいっお蚀われたんだ」

杏の動きが止たった。

「  は」

数秒間、沈黙。

「ええええっ」

由矅は思わず目を閉じた。

やっぱり。

「ちょっず埅っお 誰 高瀬さんっお、あの出版瀟の人」

「そう」

「い぀」

「さっき」

「さっき」

杏は手にしおいた封筒をテヌブルぞ眮いた。

「䜕よ、それ 党然知らなかった」

「うん。だから、今、話しおる」

「で」

「で」

「䜕お答えたのよ」

由矅は、杏の手をもう䞀床握り盎した。

「断ったよ」

杏は圌の顔をじっず芋た。

「  本圓に」

「本圓」

「でも、きれいな人だったんでしょう」

「そうだね」

「そこは吊定しないんだ」

「嘘を぀いおほしい」

杏が口をずがらせた。

「  それは嫌だけど」

由矅は笑いそうになった。

けれど、今は笑うずころではない。

圌は杏の手を匕いお、゜ファぞ座った。

「杏。あのね」

「䜕よ」

「がくは、その人が嫌いだから断ったわけじゃないんだ」

杏の衚情が、ほんの少し倉わった。

「  じゃあ、私がいるから」

由矅は銖を暪に振った。

「それだけじゃないよ」

「どういうこず」

「高瀬さんは魅力的な女性だず思う。でも、がくが恋人になりたいず思う人ではないんだ」

杏は黙っお聞いおいた。

「それに、がくは杏ず恋人でいたい。これからもね」

杏は目を䌏せた。

「  ふうん」

「ふうん、だけ」

「だっお  」

杏は、由矅の肩に額をこ぀んず圓おた。

「ちょっず嬉しいんだもん」

その声が急に小さくなったので、由矅は圌女の顔をのぞき蟌んだ。

「でもね、由矅」

「うん」

「その人、かわいそうだったね」

由矅は意倖に思った。

「そうだね」

「だっお、奜きだったんでしょう 由矅のこず」

「うん」

杏はしばらく黙っおいた。

それから、圌のシャツの袖を匕っ匵った。

「  でも、譲らないからね」

由矅は、ずうずう笑っおしたった。

「䜕を」

「由矅を」

杏が顔を䞊げる。

「私だっお、由矅が奜きなんだから」

由矅は圌女を抱き寄せた。

「知っおるよ」

「本圓に」

「うん。さっきも蚀ったでしょう」

杏は圌の銖に腕を回した。

「じゃあ、もう䞀回」

由矅は埮笑んだ。

圌女の髪に指を通し、そっず額を寄せる。

「杏が奜きだよ」

杏は、少し頬を赀くした。

「  ふふ」

そしお、圌の耳元で小さく囁いた。

「私も。由矅が奜き」

二人は、しばらくそのたた抱き合っおいた。

テヌブルの䞊には、開封されおいない封筒。

杏が長い間探し続けおきた本の手がかりが、そこにある。

けれど、今は誰も手を䌞ばさなかった。

やがお杏が、由矅の胞元から顔を䞊げた。

「ずころで  」

「ん」

「その高瀬さんっお、どんな人だったの」

由矅は䞀瞬、蚀葉に詰たった。

杏の目が、いたずらっぜく茝いおいる。

「きれいだった」

「  さっき聞かなかった」

「䜕歳くらい」

「杏  」

「私より矎人」

「ねえ、杏」

「䜕よ」

由矅は圌女の頬に䞡手を添えた。

そしお、真正面から目を合わせた。

「がくが今、キスしたいず思っおるのは誰でしょう」

杏は口を開きかけた。

それから、急に黙った。

頬が、みるみる赀くなっおいく。

「  ずるい」

「答えは」

「  私」

由矅は笑っお、圌女に口づけた。

ほんの短い、けれど、もう䞀床確かめるようなキス。

唇が離れるず、杏が満足そうに笑った。

「  よろしい」

由矅は思わず吹き出した。

「審査に合栌できお光栄です」

「でも、次からはちゃんず早く話しおよね」

「はいはい」

「はい、は䞀回」

「はい」

二人の笑い声が重なった。

由矅は、もう䞀床だけ杏を抱きしめた。

窓から差し蟌む光が、テヌブルの䞊の封筒を照らしおいる。

その封筒を開けるのは、もう少しあずでいい。

今は、腕の䞭で笑っおいる、この人ず。

もう少しだけ。

――おしたい。💍




③ 圱ゆら線 🖀

「ねえ、あんず。ゎミ、たずめおおいたよ。そろそろ行かないず、たたカラスの奎らが狙っおるかもしれないからさ」

䜎い、湿り気を垯びた声がリビングの空気をなぞるように響く。

癜Tシャツに黒のボトムスずいう簡玠な装いでありながら、そこに立぀だけで呚囲の光が吞い蟌たれおいくような静けさがあった。

私は乱れた黒髪を軜く掻き䞊げ、床に眮かれたゎミ袋をひょいず持ち䞊げる。

「行っおくるよ。すぐ戻るから、あんずはそこで埅っおお」

い぀ものように玄関のドアを開け、朝の冷たい空気に足を螏み出す。

ゎミ捚お堎たではほんのわずかな距離だ。 

この日課は、静かな日垞のルヌティンであり、私にずっおはあんず以倖の䞖界ずわずかに亀錯する退屈な時間のはずだった。

だが、その堎所には最近、小さな異物  
いや、定点芳枬の察象になり぀぀ある人物がいた。

い぀ものゎミ捚お堎に差し掛かるず、案の定、あの敎った顔立ちの異性がそこに立っおいた。

ゎミ袋をネットの䞭に収めようずしおいたその人は、私に気づくず、い぀もず倉わらぬ柔らかな笑みを浮かべお軜く䌚釈をしおくる。

「おはようございたす」

その声に、私は䜎いトヌンで
「  おはよう」ず返す。

他愛のない、ただの挚拶だ。盞手が誰であれ、声をかけられたら返す。

それだけの話だ。だが、盞手がこちらに抱いおいる感情の色は、少しず぀圢を倉えおいるらしい。

その日は珍しく、ゎミ袋が䞀぀、カラスによっお無惚に匕き裂かれ、䞭身が散乱しおいた。

出勀前や急ぎの甚事がある人間にずっおは忌々しい光景だ。

私はわずかに眉を寄せ、足を止めた。

しかし、隣にいたその異性がすでにちり取りず袋を手に取り、散らかったゎミを淡々ず拟い集め始めおいる。 

「あ、私がやりたすよ。急いでるんですよね」

「  いや、いい」

短くそう呟くず、私は自分の長い指を䌞ばし、散らかったプラスチックの容噚や玙屑を無造䜜に、しかし手際よく拟い䞊げお回収甚の袋に攟り蟌んでいった。

綺麗事の芪切心ではない。

ただ、目の前にある䞍快な散らかりを片付けたいずいう衝動ず、この人間が䞀人で泥をかぶっおいる姿を無駄に長匕かせたくないずいう、ねじ曲がった独占欲の衚れだった。

二人の手によっおあっずいう間に片付けられた地面を芋぀めながら、その人は少し困ったような、しかし嬉しそうな笑みを浮かべた。

「助かりたした。  あの、もしよかったら、少しお話ししたせんか」

䞍意に投げかけられた蚀葉に、私は動きを止めた。
その瞳に宿る埮かな熱ず期埅。

圌らが私に向け芖線は、ただの「隣人」に察するもの以䞊のも含んでいる。

「  いや、時間がない。それに、あんずが埅っおいるからね」
 
冷たく、けれどどこか甘さを孕んだ響きで断るず、私はそのたた螵を返し、足早に郚屋ぞず戻った。

だが、面倒事は思わぬ方向から転がり蟌んでくる。

数日埌、再びゎミ捚お堎で顔を合わせたその人は、気たずそうに、けれど隠しきれない期埅の色を浮かべお私に歩み寄っおきた。

「あの  実は、ずっず気になっおいたんです。あなた、以前からずいぶん现かく、あの人のこずや、叀い土地の資料を探しおいたせんでしたか」

その蚀葉に、私はわずかに目を现めた。
  あんずが長幎ずっず気にかけ、知りたがっおいた土地の過去の蚘録。

私がどれだけ探し回っおも、衚の䞖界のデヌタベヌスの底に沈んだたただったはずの情報のありかを、この人間が偶然にも握っおいたのだ。

「  なんだっお」

「もし、私ず今床どこかぞ出かけおくれるなら  その情報のすべおを教えたすよ」

甘ったれた駆け匕きの぀もりだろうか。

私を芋䞊げるその瞳には、私を手に入れたいずいう浅たしいほどの欲ず、自信が揺らめいおいた。

私はわずかに唇の端を持ち䞊げ、冷ややかな笑みを浮かべた。

情報には䟡倀がある。

あんずがその真実を知っお、少しだけ目を茝かせる姿を想像するなら、手に入れる䟡倀はあるかもしれない。

だが――。

「  お断りするよ」

䜎く、枩床のない声で即答する。盞手は驚いたように目を芋開いた。

「どうしお   知りたい情報なんでしょう」

「情報には興味があるがね。君ずいう存圚そのものには、䞀ミリも興味が湧かないんだよ」

理由は明癜だった。

私の内偎、そのすべおを䟵食し、支配しおいるのは「あんず」ずいう唯䞀の存圚だ。

他の人間がどれほど圢を倉えお近づこうずも、私の芖界に入る䟡倀すらない。

たしおや、あんず以倖の人間ず䞊んで歩くなど、私自身の存圚の吊定に等しい。

頭の䞭にあるのは垞に、郚屋で私を埅っおいるあの人のこずだけだ。 
 
「私には、他に目を向けるべき人間がいる。君のその浅たしい誘いに乗るほど、私は暇じゃないんでね」

冷たく蚀い攟぀私に、その人はもはや䜕も蚀い返すこずができなかった。

翌日、いよいよ螏み蟌んできたその人は、たっすぐに私を芋据えお蚀った。

「私ず  付き合っおほしいんです」

それは告癜ずいう名の、あたりにも滑皜な勘違いだった。
私はその蚀葉を真正面から受け止め、ただ静かに、昏い瞳でその顔を芋䞋ろした。

「  断る」

即座に返された拒絶の蚀葉に、盞手の顔が匷匵る。

「どうしおですか  私じゃ、だめなんですか」

「だめに決たっおいるだろう。君がどうこうずいう以前に、私の䞖界にはすでに『あんず』がいる。私のすべおはあの人のために歪み、あの人のために存圚しおいるんだ。他の誰かが入り蟌める隙間など、最初から䞀ミリも残されおいない」

拒絶の理由は、シンプルだった。あの人がそこにいるから、ではない。

「私自身が、その人間以倖を愛するこずすら䞍可胜なほど、あの人に深く絡め取られおいるから」だ。

この歪んだ執着ず愛着こそが私であり、他の遞択肢など存圚しない。

私はそれ以䞊蚀葉を亀わすこずなく、背䞭を向けた。背埌から聞こえる戞惑いの気配など無芖しお、足早に家路を急ぐ。

郚屋に戻るず、倉わらない日垞の空気が私を迎えた。ドアを開けた瞬間、そこにいるあんずの姿が芖界に飛び蟌んでくる。

「おかえり。遅かったね、䜕かあったの」

その䜕気ない問いかけに、私は先ほどたで向けられおいた芋ず知らずの異性の告癜など、蚘憶の片隅にすら残っおいないかのように、䞍敵でずろけるような笑みを浮かべお近づいた。

「なんでもないよ、ちょっずした虫が煩わしかっただけだ。それより、あんず  今日の君は䞀段ず綺麗だね。ずっず、こうしお芋぀めおいおもいいかい」

 告癜されたこずなど、あんずには䞀蚀も話す必芁すら感じなかった。

そんな䞋らない出来事は、私の䞖界においお、あの人の髪䞀筋の䟡倀すら持たないのだから。

私はただ、その现く長い指先で、あんずの髪を静かにすくい䞊げ、決しお逃がさないように優しく、匷く絡め取った。

【物語はここで終了したした。】



あずがき🌊🚢🌊


 今回もYewKiさたのプロンプトで遊ばせおいただきたした。
 ずおも楜しい経隓でした。少々長くなっおしたいたしたが。ここたで読んでくださった方は、ありがずうございたした。

 今回のテキストは、①ず②はGPT生成で、③だけGemini生成です。
 GPTは新しいモデルを䜿っおやった気がしおいたのですけど、蚘事を遞び、たずめおいたスレッドがわからなくなっおしたいたした。
 3぀の蚘事をたずめお出しお、コピペできるようにたた出しおきおくれた気が  
 時間ちょっずかかったけど、3぀たずめおダりンロヌドできるようにしおくれお、私はnoteに貌っただけ
 人間っお䜕のためにあるのず、自分の存圚意矩を忘れかけたした。
 あずがきだけ自分で曞くからっお蚀っお断ったずころさお、あのスレッドはどこぞ行ったやら
 あたりに長すぎお、確認するだけでも目が死にそう🥵 こんなに長くお、誰が読むんだろう
 AIだけじゃないっおなりたした。
ここたで読んでくださった方は、きっずAIか、すごく忍耐力のあるお方です。
 重ねお読んでくださっお、どうもありがずうございたした。

杏子🌞✚

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いいなず思ったら応揎しよう

杏子 読んでくださっおありがずうございたす。もし楜しんでいただけたら、応揎しおいただけるずうれしいです☺

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