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担保通貨の時代

    本書は、量的緩和政策の出口を単なる中央銀行バランスシートの縮小としてではなく、金融システムの構造そのものの再設計として捉えることから出発した。その具体的な方策として、本書は永久変動利付国債の導入を提案し、それを基礎とする担保市場の再構成を通じて、新たな流動性供給の枠組みを構想してきた。

    そこでは、満期を持たず価格の安定性を備えた国債が、担保利用に最適化された資産として設計される。そして、それを中核とするPFRレポ市場が制度的に整備されることにより、担保資産は分断されることなく市場に供給され、継続的に再利用される。このとき、担保資産の供給量とその回転構造が結び付くことによって、資金調達流動性は安定的に拡張される。

    このような制度を前提とするならば、金融システムは従来とは異なる構造を持つことになる。すなわち、担保の再利用によって生成される担保通貨が資金調達流動性を担い、銀行負債として創造される信用通貨が決済流動性を担うという形で、流動性の機能が分化しつつも相互に補完し合う構造が形成される。

    この構造のもとでは、金融政策の枠組みも変化する。金利という価格の操作に加え、当座預金残高の供給を通じた決済流動性の調整と、担保資産の供給を通じた資金調達流動性の調整とを一体として行う必要がある。加えて、担保の回転構造が流動性供給に与える影響を踏まえれば、回転率という時間的要素もまた政策の視野に入ることになる。すなわち、金融政策は価格、量、時間の三つの次元にまたがるものとして再構成される可能性がある。

    財政運営もまた、この構造の中で異なる意味を持つ。永久変動利付国債を前提とする場合、財政の持続可能性は元本償還ではなく利払いの継続能力に依拠することとなる。したがって、財政はストックの管理からフローの管理へと重点を移しつつ、利払い継続性を確実にする制度として位置付けられる。このとき、国家は担保資産の供給主体であると同時に、その信用を維持する主体として、金融システムの基盤に関与することになる。

    もっとも、本書で描いてきた担保通貨の姿は、あくまで制度を純化した形における思考実験でもある。担保資産の完全な同質化や市場の完全な統合、回転構造の安定的な維持といった条件は、現実において必ずしも満たされているわけではない。

    しかしながら、その萌芽はすでに現れている。レポ市場は日々活発に取引され、担保の再利用を通じた資金調達流動性の確保は、現代の金融システムにおいて不可欠な役割を果たしている。そこではすでに、担保が単なる保有資産ではなく、流動性を生み出す基盤として機能し始めている。

    この意味において、担保通貨はまったく新たに出現する現象ではない。それは現在の市場に部分的に立ち現れている構造を、制度の中に自覚的に位置付ける試みである。

    担保通貨の時代は、すでに始まっている。そしてその帰結は、これから決まる。


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    量的緩和(QE)後の金融システムを再設計する。永久変動利付国債(PFRGBs)を核に、通貨・担保・金融政策の関係を再定義し、「担保通貨」の時代を構想する。

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