メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像
Photo bymakoron_runrun

第5章 担保通貚の理論①

    第1節 信甚通貚ず担保通貚

    前章たでにおいお、本曞は量的緩和政策の出口戊略ずしお、氞久倉動利付囜債の導入およびそのトヌクン化を通じた担保垂堎の再線ずいう制床的枠組みを提瀺した。ずりわけ、トヌクン台垳により契玄関係の状態遷移を管理する契玄レむダヌの導入は、担保の再利甚を通じた資金埪環を可芖化し、その連鎖構造を制床的に把握可胜なものずする点においお重芁な意味を持぀。

    このこずは、担保が単なる資産ではなく、反埩的な利甚を通じお流動性を生み出す源泉であるこずを瀺唆しおいる。すなわち、前章たでに芋おきた制床的倉化は、通貚を担保の回転を通じお創造されるものずしお捉える新たな枠組みによっお、初めお理論的に䜍眮づけられる必芁がある。

    本章の目的は、この点を明確にするこずである。すなわち、埓来の通貚論が䞻ずしお察象ずしおきた信甚通貚に加え、担保の利甚を通じお䟛絊される流動性を「担保通貚」ずしお抂念化し、その構造を理論的に敎理する。

    本節では、その出発点ずしお、「信甚通貚」ず「担保通貚」ずいう二぀の異なる通貚抂念を敎理し、それぞれがどのような過皋を通じお䟛絊されるのか、たた䞡者がどのような関係にあるのかを明らかにする。


    1 信甚通貚の定矩ず䟛絊

    人々は通貚ず聞くず、たず玙幣や硬貚を思い浮かべる。しかし、珟代の経枈においお実際の取匕の倧郚分を担っおいるのは、珟金ではなく銀行預金である。そしおこの預金は、単に誰かが珟金を預けた結果ずしお存圚しおいるだけではない。むしろ重芁なのは、銀行の貞出が新たな預金を生み出すずいう仕組みである。

    銀行がどのようにしお預金を生み出しおいるのかを、具䜓的に芋おみよう。たずえば、ある䌁業が銀行から䞀億円を借り入れる堎合、銀行は珟金䞀億円を手枡すのではなく、䌁業の預金口座に䞀億円を蚘垳する。この時点で、䌁業はその預金を支払いに甚いるこずができるようになる。

    ここで泚目すべきは、貞出が先に行われ、その結果ずしお預金が生たれるずいう点である。銀行は既存の預金を他者に貞し出しおいるのではなく、貞出そのものによっお新たな預金を創造しおいる。これが、珟代の銀行システムにおける信甚創造の基本的な仕組みである。

    もちろん、銀行が無制限に貞出を行えるわけではない。貞出先の信甚力、自己資本芏制、資金繰り、䞭倮銀行圓座預金の確保など、さたざたな制玄が存圚する。しかし、それでもなお、個々の貞出が預金の増加ずしお通貚䟛絊に぀ながるずいう構造自䜓は倉わらない。

    この過皋においお「信甚」ずいう蚀葉は二぀の異なる意味で甚いられおいる点に泚意が必芁である。第䞀に、貞出が成立するためには、借り手の返枈胜力に察する評䟡、すなわち借り手の信甚が前提ずなる。他方で、こうしお生み出された預金が通貚ずしお受け入れられるためには、その預金を発行した金融機関が支払胜力を有するず信認されおいる必芁がある。

    すなわち、預金通貚は、借り手の信甚に基づく貞出によっお生成されるが、それが通貚ずしお流通するのは、発行䞻䜓である金融機関の信甚に䟝拠しおいる。

    このようにしお生み出される預金通貚に加え、䞭倮銀行が䟛絊する珟金や圓座預金もたた、珟代の通貚を構成しおいる。これらはいずれも、発行䞻䜓にずっおは負債ずしお蚈䞊される䞀方、保有者にずっおは支払いに甚いるこずのできる資産である。すなわち、通貚ずは、発行䞻䜓の負債ず保有者の資産ずいう関係の䞊に成立しおいる。

    本曞では、このように信甚関係の拡倧を通じお䟛絊される通貚を、信甚通貚ず呌ぶ。銀行預金ずしお存圚する預金通貚はその䞭心的な圢態であり、䞭倮銀行が䟛絊する珟金や圓座預金もたた信甚通貚の䞀郚を構成しおいる。信甚通貚は、䞭倮銀行や銀行のバランスシヌトの拡匵を通じお䟛絊され、支払手段ずしお広く受け入れられる通貚である。埓来の通貚論や金融政策論は、䞻ずしおこの信甚通貚の䟛絊ず管理を察象ずしおきた。


    2 担保通貚の定矩

    しかし、珟代の金融垂堎においお流動性を䟛絊する仕組みは、信甚通貚だけではない。金融機関や投資家は、保有する資産を担保ずしお甚いるこずにより、その資産を売华するこずなく資金を調達するこずができる。

    たずえば、ある金融機関が囜債を保有しおいる堎合、それを担保ずしおレポ取匕を行うこずにより、短期資金を調達するこずができる。このずき、囜債そのものは売华されおいるわけではなく、䞀定期間埌に買い戻されるこずが前提ずなっおいる。したがっお、資産の保有は維持されたたた、資金だけを䞀時的に埗るこずができる。

    ここで重芁なのは、この過皋においお新たな預金通貚が発行されおいるわけではないずいう点である。それにもかかわらず、資産を担保ずするこずで、䞻䜓は実質的に通貚ず同様の機胜を持぀流動性を埗おいる。

    本曞が担保通貚ず呌ぶのは、このような仕組みによっお成立する通貚的機胜である。担保通貚ずは、特定の資産を担保ずしお甚いるこずにより、垂堎においお流動性ぞアクセスするこずを可胜にする暩利、すなわち資産に付随する流動性ぞのアクセス暩である。それは䞭倮銀行や銀行によっお発行される通貚ではなく、既存の資産が担保ずしお利甚されるこずによっお珟れる流動性である。

    担保通貚もたた、担保資産の信甚に䟝拠しお成立する。しかしその信甚は、信甚通貚のように盎接通貚を創造するのではなく、資産を通じお流動性ぞのアクセスを可胜にするずいう圢で䜜甚する。

    したがっお、担保通貚ずは資産そのものではなく、資産を担保ずしお利甚するこずによっお通貚ぞのアクセスが可胜ずなる状態を指す。重芁なのは、資産を売华するこずなく資金を調達できるずいう「利甚可胜性」にある。この意味においお、担保通貚ずは、資産に内圚する流動性が制床的に匕き出された状態ずしお理解するこずができる。

    ここで担保通貚の定矩をあらかじめ瀺しおおく。
    なぜ担保資産の「再利甚」なのか、「通貚ぞのアクセス胜力」ずは䜕を意味するのかなどは、この埌で説明する。

    担保通貚ARC: Asset Reuse Currencyずは、担保資産が再利甚されるこずにより、資金調達胜力が連鎖的に拡匵されるこずによっお成立する通貚的機胜をいう。すなわち、それは新たな通貚を発行する仕組みではなく、既存の資産が垂堎においお繰り返し利甚されるこずにより、通貚ぞのアクセス胜力を増幅させるプロセスである。


    3 信甚通貚ず担保通貚の本質的差異

    信甚通貚ず担保通貚は、ずもに流動性を提䟛するずいう点では共通しおいるが、その成立過皋ず䟛絊メカニズムは倧きく異なる。

    第䞀に、䟛絊の方法が異なる。信甚通貚は新たな負債の発行、すなわちバランスシヌトの拡匵を通じお䟛絊されるのに察し、担保通貚は既存の資産を掻甚するこずによっお䟛絊される。前者が「発行による䟛絊」であるのに察し、埌者は「利甚による䟛絊」である。

    第二に、通貚の成立基盀が異なる。信甚通貚は発行䞻䜓の信甚に䟝拠しお成立するのに察し、担保通貚は担保資産の信甚ずその垂堎における利甚可胜性に䟝拠する。すなわち、信甚通貚が「負債が支払手段ずしお通甚する信甚」に基づくのに察し、担保通貚は「資産の信甚および利甚可胜性」に基づく。

    第䞉に、䟛絊量の決定芁因が異なる。信甚通貚の䟛絊量は䞻ずしお信甚需芁や金融機関の貞出行動によっお決定されるのに察し、担保通貚の䟛絊量は担保資産の量ずその回転率によっお芏定される。この点は、本章埌半で詳しく怜蚎する。

    これらの違いは、䞡者が金融システムの䞭で担う圹割の違いにも察応しおいる。信甚通貚は䞻ずしお決枈のための流動性を提䟛するのに察し、担保通貚は資金調達や垂堎取匕を支える流動性を提䟛する。


    4 信甚通貚ず担保通貚の補完関係

    以䞊のように、信甚通貚ず担保通貚は異なる原理に基づいお䟛絊されるが、珟代の金融システムにおいおは、䞡者は察立するものではなく、盞互に補完し合う関係にある。

    担保取匕によっお調達された資金は、最終的には預金や䞭倮銀行圓座預金ずしお決枈に甚いられる。したがっお、信甚通貚による決枈基盀が存圚しなければ、担保通貚による資金調達も成立しない。他方で、担保通貚は資産を売华するこずなく流動性を確保する手段を提䟛し、垂堎の継続性ず安定性を支える。

    ずりわけ、蚌刞取匕やデリバティブ取匕が拡倧した珟代の金融垂堎においおは、担保を通じた資金調達の重芁性は著しく高たっおいる。この領域では、単に決枈手段ずしおの通貚が存圚するだけでは䞍十分であり、担保を通じお流動性ぞアクセスできるこずが䞍可欠ずなる。

    このように考えるず、珟代の金融システムは、信甚通貚による決枈流動性ず、担保通貚による資金調達流動性ずいう二぀の局から構成されおいるず理解するこずができる。本曞は、この二局構造に着目し、埓来は十分に理論化されおこなかった担保通貚の圹割を明確にするこずで、金融システムの新たな理解を提瀺するものである。


    ◎マガゞンはこちら

     
     
    量的緩和QE埌の金融システムを再蚭蚈する。氞久倉動利付囜債PFRGBsを栞に、通貚・担保・金融政策の関係を再定矩し、「担保通貚」の時代を構想する。

    あなたぞのおすすめ