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面接官の教科書ー採用で会社の未来を変える「人を見る技術」


    採用は、人を選ぶ仕事ではない。

    会社の未来を選ぶ仕事である。


    はじめに

    「面接には自信があります。」

    採用担当者向けの研修で、私は時々こんな質問をします。

    「これまで採用した人の中で、“この人は間違いない”と思った人が、期待どおりに活躍した割合はどのくらいですか?」

    返ってくる答えはさまざまですが、多くの人は少し考え込んだあと、こう答えます。

    「半分くらいでしょうか。」

    では、逆に質問を変えてみます。

    「面接ではあまり評価できなかったけれど、入社後に大きく成長した人はいましたか?」

    すると、ほとんどの人が笑いながら言います。

    「います。むしろ、そういう人のほうが印象に残っています。」

    この答えに、採用の難しさが凝縮されています。

    私たちは面接で「未来」を見ようとしています。

    しかし、実際に見えているのは、その人の過去です。

    履歴書には経歴が書かれています。

    職務経歴書には実績が書かれています。

    資格証には取得した資格が並んでいます。

    そして面接では、準備された自己PRと志望動機を聞きます。

    つまり、面接官が目にしている情報のほとんどは、「これまで」の話です。

    しかし、会社が本当に知りたいのは違います。

    知りたいのは、

    「この人は、入社後に活躍するだろうか。」

    その一点です。

    過去を見ることと、未来を予測することは、似ているようでまったく違います。

    だから採用は難しいのです。

    ⸻

    私はこれまで、多くの採用現場に立ち会ってきました。

    店長として面接を担当したこともあります。

    採用担当者の教育に携わったこともあります。

    何百人、何千人という応募者と向き合う中で、一つだけ確信したことがあります。

    「面接が上手な人」と、「仕事で活躍する人」は、必ずしも一致しない。

    流暢に話す人が成果を出すとは限りません。

    第一印象が良い人が長く働くとも限りません。

    反対に、緊張でうまく話せなかった人が、職場では誰よりも信頼される存在になることもあります。

    採用に携わる人なら、一度はそんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。

    だから私は、面接で最初に「話し方」を評価することをやめました。

    代わりに見るようになったのは、

    「その人は、どのような行動を積み重ねてきたのか。」

    という事実です。

    人は言葉を飾ることができます。

    しかし、行動の積み重ねは簡単には偽れません。

    この本では、そうした「行動から人を見る技術」を軸に、採用の本質をお伝えします。

    ⸻

    もちろん、面接に魔法はありません。

    一度の面接で、その人のすべてが分かることはありません。

    どれほど経験豊富な面接官でも、採用で失敗することはあります。

    だからこそ重要なのは、勘や経験だけに頼るのではなく、再現性のある考え方と技術を身につけることです。

    近年では、採用に関する研究も大きく進みました。

    「第一印象だけでは将来の活躍は予測できない」

    「構造化された面接のほうが評価の精度は高い」

    「認知バイアスは採用判断を大きく歪める」

    こうした知見は、世界中の企業で活用されています。

    本書でも、現代の採用理論をできるだけ分かりやすく取り入れながら、現場で本当に役立つ形で紹介していきます。

    ただし、理論だけでは終わりません。

    現場では、理論どおりにいかないことが数多くあります。

    だから本書では、実際の面接で起こり得るケースを交えながら、「なぜその判断をしたのか」「どう考えればより良い採用につながるのか」を一緒に考えていきます。

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    採用は、会社にとって未来への投資です。

    しかし同時に、応募者にとっても人生の大きな転機です。

    面接のわずか30分、あるいは1時間が、その人の数年後、十数年後の人生を左右することもあります。

    だから面接官は、単に「人を選ぶ人」ではありません。

    人の可能性と、会社の未来、その両方に責任を持つ仕事なのです。

    この本を書こうと思った理由も、そこにあります。

    面接の技術だけではなく、「なぜ採用をするのか」という原点まで立ち返りたい。

    そんな思いで、一冊を書き上げることにしました。

    もしこの本を読み終えたあと、あなたが次の面接で質問を一つ変えたくなったなら。

    応募者を見る目が少しだけ変わったなら。

    そして、一人でも多くの「入社後に活躍する人」と出会えたなら。

    著者として、これ以上うれしいことはありません。

     
     

    anms

     
     
    地方スーパーの現場と経営を30年見てきた、ルポライター/翻訳家です。店長・本部・人事・経営者が、数字の裏にある「人と店の変化」を読み、次の一手を決めるための記事を書いています。採用、店長育成、在庫、人時生産性、店舗DX、50代からのAI仕事術を、現場の言葉で解説します。

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