
『心の臓が止まるまで、私はひた走る』
人類を救いたい。 けれども、指の隙間をすり抜ける砂のように、
その命は私の手からこぼれ落ちてしまう。
濁流にのまれる誰かの指先を、あと数センチのところで掴めなかった。
その痛みが、私の掌には今も刻まれている。
人類はこの結末を受け入れたのか。
静まり返った街、諦めたように項垂れる背中。
滅びを静寂として受け入れようとするその姿に、私は抗いたい。
わたしが救いたい人類。 けれども救えない。
そんな無力な自分を、
鏡の中の瞳が嘲笑っている。
それでも。それでも、わたしは救いたいのだ。
諦めることは愚者のすることだ。
賢明に絶望し、立ち止まることを「理性的」と呼ぶのなら、
私は喜んで愚者になろう。 わたしは歩み続ける。
この泥濘のなかを、一歩ずつ。
心の臓がこの歩みを止めぬ限り、救いの歩みを止めるわけにはいかない。
肺が焼けるような呼吸の熱さが、まだ生きていると叫んでいる。
ならば、ただひた走れ。ただひた走れ。
救うためにわたしは生まれた。 運命がそう定めたのではなく、
私が、私をそう定義したのだ。
ならば救え。 この人類を、この世界を、わたしが救うのだ。
ただひた走れ。 その先の光が、たとえ幻影であったとしても。