世界標準の採用を読んでみて
採用とは何か?
この問いに対する思考を深めるエッセンスが凝縮されている書籍が小野壮彦さんの『世界標準の採用』です。
※ 小野壮彦さんについて
新卒でアクセンチュア入社後、1999年プロトレードを起業。M&Aにより楽天へ事業譲渡後、楽天社長室にて勤務。イタリア留学後、ヴィッセル神戸に経営参加。デザイン家電ベンチャー役員を経て、2008年エグゼクティブサーチファーム大手のエゴンゼンダーに入社。経営陣へのアセスメント、コーチングおよびヘッドハンティングを実施。2016年パートナー就任。2017年よりZOZOに参画。ZOZO SUIT事業の責任者としてプライベートブランド立上げ、および国際展開をリード。2019年末、グロービス・キャピタル・パートナーズ入社。早稲田大学商学部卒、ミラノ・ボッコーニ大学MBA。
時価総額すら引き上げてしまうパワータレントが市場には存在する。
採用とは、単なる「人材補充」ではなく、自社の未来の利を共につくる仲間に出会う活動として、採用活動を経営戦略として解説されている本書は、人と組織の重要度を再考できる実践的な内容となっています。
本稿では、そのお勧めポイントをまとめています!
Point①:世界と日本の歴史から紐解く採用革命
2000年代中盤、Googleの採用手法が瞬く間にシリコンバレー中のベンチャーキャピタルやスタートアップに伝播して採用の常識を塗り替えたことや、LinkedInによってダイレクトリクルーティングという新たな採用のインフラが誕生したことで、アメリカで先駆けて採用革命が起きた歴史が解説されています。
その流れに続いて、日本国内で静かに起きているスタートアップや大企業の採用観の変化も解説されています。
そして、それらの背景にあるエクイティ・インセンティブ文化や、人材の流動性など文化・制度・技術の面も解説されていることで、採用革命を突発的な現象ではなく、必然の進化として、これからの採用力を思考することができます。
Point②:著者の経験から紐解く採用投資
本書では、採用を「後回しのToDo」として扱ったり、「短期的なKPI」に縛られた企業が、必要な人材を確保できず、組織は成長機会を逃し、ジリ貧に陥っていく構図が描かれます。
対照的に描かれるのが、採用を経営の最重要テーマに据えたGoogleの姿勢です。
創業者ラリー・ペイジ自身が採用委員会に頻繁に参加し、厳格かつ一貫した選考基準を世界中で徹底する方針が、トップタレントを継続的に惹きつける構造を生み出しました。
印象的なのは、採用は単なる人員補充のプロセスではなく、企業の魅力が外部に伝播し、有望な候補者がさらに有望な人材を引き寄せる連鎖反応を引き起こす「採用の自己増殖性」との捉え方です。
採用の効果は短期的には数値化できない要素が、未来につながるとの経営投資の考え方が参考になります。
Point③:仕組みから紐解く採用システム
採用をTA(Talent Acquisition)という仕組みとして捉える視点は、本書の醍醐味の一つです。
従来の人事機能よりも、新しい時代の採用は営業に近いとして、情報の非対称性を解消するエージェント連携や候補者ソーシングなど、市場における競争力を意識した仕組みが解説されています。
たとえば、日本では楽天を先駆者として取り上げています。
下記のようなフレームワークも取り上げられ、採用=人事の仕事ではなく、経営が管掌する仕事として、情報・スピード・体験設計などを科学した企業が、ウォー・フォー・タレント(人材獲得・育成競争)を制すると重要な示唆に富んでいます。
(1)世界標準の採用システム
①TAシステム
②探索システム
③面接官育成システム
④エンゲージ・システム
⑤ホリスティック・システム
(2)TAチームの業務
①戦略的人員計画
②ブランディング
③ソーシング
④アセスメント&アドバイス
⑤エンゲージメント
⑥ プロセスマネジメント
⑦オンボーディング
⑧ダイバーシティ&インクルージョン
⑨テクノロジー活用とデータ分析
⑩継続的改善
以上、本書では、採用は短期コストではなく、未来に対する投資だと、採用活動のマインドセットを根本から変える発想が示唆されています。
・従来の採用:「足りないから補充する」「必要最低限のスペックで十分」
・TAの発想:「将来を見据えて、今はまだ余力に見える人材にも投資する」
世界と日本では、構造的な違いから若手のうちから個々の人材レベルの差となる複雑で曖昧な状況で意思決定を重ねる場数が違うため、より採用力が企業の競争力に直結することが解説されています。
先進企業に共通しているのは、経営が採用の“本丸”に立っていることであり、自社の人材も常に外部から獲得される対象であることから、育成で何とかしようとして、採用が遅れることは、そのまま経営の遅れに直結することが警鐘されています。
人と組織に真剣なすべてのリーダーにとって、お勧めの書籍の一冊です。
