スタートアップの組織化を読んでみて
業績が伸びていて、チームも回っているが、未来が見えない。
「社長が社長をしていない」、「マネージャーがマネジメントをしていない」と強烈な問題提起から、組織のマネジメントシステムの重要性を説いているのが、小松 裕介さんの著書『1+1が10になる組織のつくりかた チームのタスク管理による生産性向上』です。
小松 裕介さん
2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。
2014年12月に当社の前身となる株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より、国土交通省PPPサポーター。
2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し、2022年1月に上場会社の子会社化を実現。
2022年12月に、株式会社スーツを新設分割し、当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。
マネジメントシステムを整備せず、無意識に組織づくりが疎かになっていると、過去の延長で日々の業務を“まわす”ことはできていても、本来の組織の力を引き出せていない企業の実態が、著者の企業再生や経営経験のリアルとともに描かれています。
本稿では、そのお勧めポイントをまとめています!
Point①:日本の生産性が低い原因は暗黙の了解文化にある
「日本のサラリーマンの優秀さこそが、生産性低下の要因」という逆説が印象的です。
雑な指示でも、黙って形にしてくれる。
問題を飲み込んで頑張ってくれる。
だからこそ、組織化や仕組み化をしなくても、チームが回ってしまう。
多くの会社は、景気、営業・マーケティング、ファイナンスには関心が高いが、会社が回っていることで、組織やマネジメントシステムに関心を持たないことが多いとの著者の警鐘に、観点を見直すことができます。
「会社がお客様に提供する商品・サービスが、社員一人によって提供されたものであっても複数人に分業されて提供されたものであっても、お客様からすれば商品・サービスの提供を受けられて、なおかつ、それが対価を支払うに値する満足する品質であれば問題はない。そのため、ビジネスにおいて、組織は十分条件であって必要条件ではない」との一節がとても学び深い。
Point②:属人化の放置による静かな破綻
社員が集まれば自然と組織が形成され、機能していくものだと錯覚しがちだが、ただ人がいるだけでは「組織」とは呼べない。
共通のルールを定め、互いの役割や責任を共有し、仕組みによって動くようにしなければ、それは単なる「人の集まり」にすぎない。
との前提の提示が振り返りのポイントになります。
特に、属人化が進むと、業務のブラックボックス化が起こり、その特定の社員しかできない仕事ができて「自分の存在価値を高める手段」として機能してしまうことで、さらに暗黙知が深刻化するとの解説に組織構造を意図的に設計することの重要性を考えさせられます。
日常は問題なく回っているように見えても、内部では重大な機能不全が進行している。
しかもそれが可視化されないまま蓄積されていくからこそ、事態が深刻化したときには手遅れになりかねない。
だからこそ、属人化を許さず、組織としてナレッジを蓄積・共有し、再現性ある成果を目指すための仕組みが不可欠であると、緊急度が低いように見えて重要度の高いイシューを振り返ることができます。
Point③:ケイパビリティ(組織の実行力)を高めるタスク管理
どんな戦略を描いても、ケイパビリティ(組織の実行力)がなければ、絵に描いた餅でしかない。
実行力とは、挨拶がある、ゴミが落ちていない、会議に時間通りに全員が集まる、タスクを設定し期限を守るといった「当たり前のことを、当たり前にやる」文化そのものだとの解説から組織とは何か?を考えさせられます。
「チームで働く」とは、単に人が集まって働くことではなく、タスクを“個人管理”から“組織管理”へと移行していくこと。
タスクを正しく設定できるということは、業務を全体から把握し、会社の方針を理解し、それを論理的・時系列的に分解できている証。
タスク設定ができる社員の存在そのものが、ケイパビリティの高さを象徴すると、組織づくりの切り口がとても学びになります。
また、システム導入が失敗するのは、システム=魔法の杖の期待値が高くなる一方で、システム導入に伴う新しい業務オペレーションに慣れることが社員目線では追加業務に感じられることが起因した抵抗にあり、「業務要件や文化が整備されていないからだ」という観点も実践的な示唆があります。
以上、本書では、組織が”まわっている”に甘んじず組織マネジメントシステムを築くことの重要度が痛烈に描かれています。
「時価総額100億円以下の新興市場の上場企業を含めて大半の日本企業にはこのマネジメントシステムがなく、会社が展開する事業領域の中で、社員がそれぞれ一人の力で仕事をしているのが実態だ。」
この一節からも多くの企業の成長に組織マネジメントシステムが必要であることを気付かされる重要な視点です。
自社の組織をより良くしていきたいリーダーにとって、お勧めの書籍の一冊です。
