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人の挑戦が紡がれる。国家のR&Dとしてのスタートアップの意義

    あむろ

    この選択は、本当に正しかったのだろうかー
    整っていない組織環境、思うように伸びない事業数値、理想に追いつかない日常、離れていく人たち、そして大手企業で安定して働く友人たちの姿。

    スタートアップにいると、日々の激動の中で、ふとそんな迷いが頭をよぎる瞬間があるかもしれません。

    しかし、スタートアップが今、カオスの中で奮闘しているその時間は、日本経済にとって決して無駄ではありません。

    なぜなら、マクロな視点で見たとき、スタートアップとは、国家という巨大な人の集合体で、未来の可能性を切り拓くのR&D(研究開発)そのものだからです。
    R&Dにおいては、あらゆるチャレンジは、次につながる貴重な礎になります。

    2025年3月以降、東証の上場維持基準に関する「経過措置」が順次終了し、市場からの退出ルールが厳格化されます。特にグロース市場では、流通株式時価総額「5億円以上」という最低ラインが厳格に適用されるだけでなく、上場10年超の企業には「時価総額40億円以上」という高い成長ハードルも課されます。

    日本では未上場のまま大型化する資金調達環境が未成熟なため、スモールIPOを選ばざるを得ないのが実情ですが、上場後も成長し続けなければ市場に留まることすら許されません。その結果、ユニコーン企業(評価額10億ドル以上)が生まれる確率は依然として極めて低いのが現実です。

    このように、スタートアップ個社の盛衰では、厳しい目が向けられていますが、それは個々の企業の勝敗であって、エコシステム全体で見れば、スタートアップの挑戦はイノベーションを創出していくためのプロセスです。

    今回は、なぜスタートアップの挑戦が日本経済にとって不可欠なのかを一つの見解を述べます。


    (1)リスクテイクが経済の血流を良くする


    日本経済が「失われた30年」と呼ばれる長期停滞に陥った主因の一つは、市場の硬直化にあります。

    文部科学省 科学技術・学術政策研究所『科学技術指標2025』によれば、日本の開業率は4.4%と、主要国と比較して最も低い水準にあります。同調査の国際比較では、英国が12.4%、フランスが11.3%、米国が9.3%、ドイツが7.2%となっており、日本は欧米主要国の半分以下の開業率にとどまっています。

    廃業率も3.1%と最も低く、英国の11.1%、ドイツの9.5%、米国の9.4%と比較すると、日本の市場の新陳代謝が極めて停滞していることが明らかです。

    さらに、中小企業庁『2025年版 中小企業白書』によれば、2023年度の国内の開業率は3.9%、廃業率も3.9%と横ばいで推移しており、企業の入れ替わりが依然として低水準にあることが確認されています。

    より深刻なのは、生産性の低い企業、いわゆる「ゾンビ企業」が延命されやすい構造です。

    帝国データバンク『ゾンビ企業の現状分析―2025年1月最新版』によれば、国際決済銀行(BIS)が定める基準(3年連続でインタレスト・カバレッジ・レシオが1未満、かつ設立10年以上)に基づくゾンビ企業数は、2024年11月末時点で推計22万8000社に達しています。

    こうした企業では、本業の利益で借入金の利払いさえまかなえない状態が続いており、人や金といったリソースが固定化され、成長性の高い企業や新規参入企業に限られたリソースが回らない構造が生まれています。

    この市場の硬直化は、日本の生産性低迷にも直結しています。

    日本生産性本『労働生産性の国際比較2025』によれば、2024年の日本の時間当たり労働生産性は60.1ドルで、OECD加盟38カ国中28位と低迷が続いています。

    G7では引き続き最下位記録を更新し続けており、市場の新陳代謝不足が経済全体のパフォーマンスを引き下げている実態が数字に表れています。

    ここに風穴を開けるのが、スタートアップの挑戦です。

    イノベーションという概念を生み出した経済学者シュンペーターは、経済発展の本質を「創造的破壊」と定義しました。

    古い産業構造が新しいイノベーションによって淘汰される痛みは、進化につながるプロセスです。

    スタートアップがリスクを取って挑戦することで、市場には強烈な競争圧力が生まれます。
    新しい技術やビジネスモデルが既存企業を脅かすことで、既存企業もまた変わらざるを得なくなる。
    これにより、経済の新陳代謝が促進されるのです。

    つまり、スタートアップの挑戦は、個社の成功のためだけではなく、停滞した日本企業全体を強制的に動かすための刺激として機能しています。

    そのリスクテイクこそが、経済の血流を回すポンプの役割を果たしているのです。

    (2)社会実装のスピードを上げる仮説検証

    「画期的な技術」や「優れたアイデア」があるだけでは、社会は変わりません。

    それが現場で使われ、人々の行動変容が起きて初めて価値になります。
    しかし、エリック・リースが提唱した「リーン・スタートアップ」のような、未完成品(MVP)を市場に出して高速で改善するアプローチは、多くの雇用を抱えてブランド毀損の懸念を持つ大企業には極めて困難です。

    また、既存慣習の変革には、顧客の生活習慣や業務フローに入り込む泥臭いプロセスが不可欠です。

    ここで、スタートアップの実行力が必要となります。

    大企業がリーチしきれないニッチな課題や、規制・商慣習の壁がある領域に対し、スタートアップは以下のような役割を果たしています。

    ①ニーズ検証:
    未知のビジネスアイデアを市場に投入し、ニーズの有無を検証する。

    ②利用支援:
    カスタマーサクセスやプロダクトマネジメントで顧客の利用が進むサポートを実行する。

    ③市場啓蒙:
    固定観念を解きほぐす新しい価値観を啓蒙する。

    これらは、既存企業が合理性を担保するまで避けなければならない労働集約的かつ高負荷なプロダクトマーケットフィット作業です。

    しかし、誰かがこのファーストペンギンとして未踏の可能性に飛び込み、可能性を証明しなければ、社会全体の生産性は底上げされません。
    スタートアップの日々のテレアポや、顧客への細やかなフォローアップは単なる作業ではなく、日本社会にイノベーションを実装するための、最も重要な検証実験と言えます。

    (3)人の成長を加速させる登竜門

    スタートアップは常に「人・モノ・金」が不足しています。

    しかし、逆説的ですが、この圧倒的なリソース不足こそがキャリアにおけるチャンスを生み出します。
    大企業であれば、稟議書を回し、根回しを行い、30代後半〜40代でようやく経験するような「意思決定」や「マネジメント」が、スタートアップでは実力者であれば20代のうちから回ってきます。

    厚生労働省『令和6年賃金構造基本統計調査』によれば、大企業の課長平均年齢は48.7歳、部長は52.8歳です。つまり、管理職として意思決定に関与するまでに20年以上のキャリアを要するのが現実です。

    リクルートワークス研究所のデータによれば、大企業では管理職昇進者の約8割が35〜54歳に集中していることに対してスタートアップでは、成果次第で6か月〜1年程度で給与テーブルが見直され、20代後半で事業責任者、30歳でCTO、マネージャー昇格といった事例もあります。

    大企業が年功序列と階層的評価を重視するのに対し、スタートアップは成果主義と半期評価(例:リクルートのミッショングレード制)を採用し、若手でも裁量と責任を早期に獲得できる傾向があります。

    リソースがないからこそ、実力者が裁量を持ち、自分の責任で対せざるを得ない構造があるのです。

    日経『NEXTユニコーン調査(2023)』によれば、有望スタートアップの平均年収は約710万円、対して上場企業全体の平均は約650万円です。

    特に資金調達額が大きいIT・SaaS・AI・Fintech領域では、マネージャー以上で800〜1,500万円、役員クラス以上では2,000万円超も珍しくありません。

    大企業と比較して住宅補助や退職金など金銭的な福利厚生が手薄な場合もありますが、柔軟な働き方、リモートワーク、自己裁量の大きさなど、金銭以外の報酬が充実している企業も多くあります。

    このように報酬面でも実力次第で充実させることができるため、優秀層のスタートアップ参入も増えて、人から学ぶ循環も形成されつつあります。

    内閣府『イノベーション人材の流動化に係る要因調査(2020年3月)」では、大企業からスタートアップへの出向(ローンディール)や兼業が、次世代リーダーの育成と組織の柔軟性向上に寄与することが示されています 。

    若手がスタートアップで経営判断・事業開発・組織マネジメントの経験を積むことで、将来的に大企業でも、あるいは自ら起業する際にも活用できる汎用的な経営スキルが形成される可能性にも注目が集まっているのです。

    このスタートアップ環境ならではの経験の早期化は、人材市場において人の能力を高め、限られた人的リソースの生産性を向上させます。

    経済産業省『スタートアップによる経済波及効果調査(2024年7月)』では、スタートアップが創出する雇用創出は52万人、所得創出は3.17兆円に達すると試算されています 。

    こうしたエコシステムの拡大は、若手人材にとって経営経験を得る機会の増加を意味します。

    (4)成功も失敗も資産になるエコシステムの循環

    スタートアップは「短期間で急速に成長する組織体」として、構造上、赤字を掘り続けながら成長を追求します。資金調達にも限度があり、限られた資金が尽きる前に事業を軌道に乗せなければ会社は潰れてしまう。

    そんな綱渡りの中で挑戦するからこそ、「会社が潰れたらどうしよう」という不安は常に頭をよぎることものです。

    しかし、スタートアップのエコシステムにおいては、人的ネットワークや情報伝承、ビジネスモデルの改良、市場アプローチタイミングの学習を通じて、成功も失敗も次につながる資産となります。

    たとえば、PayPalマフィアと呼ばれるPayPal創業メンバーたちは、その後、テスラ、LinkedIn、YouTube、Yelpなどを次々と創業しました。

    象徴的な事例が、米国のオンライン食料品配送サービス「Webvan」です。

    1999年にIPOで3.75億ドルを調達し、企業評価額は12億ドルに達しました。
    しかし、最初の市場で成功を実証する前に26都市への急速拡大を進め、1件あたり3,000万ドルの自動倉庫を複数建設するなど、「速さ」を優先した結果、2001年に破産。2,000人の従業員が職を失いました。

    それでも、この失敗は無駄にはなりませんでした。 

    Amazon創業者のJeff Bezosは、Webvanの失敗から4つの重要な教訓を学び、AmazonFreshに活かしました。

    ①失敗した幹部を採用する:
    WebvanでCOO、マーケティング責任者などを務めた4名をAmazonFreshのチームに迎え入れた。失敗から学んだ人材こそが、何を避けるべきかを熟知している。
    ②失敗企業の技術を買収する:
    Webvan元幹部のMick Mountzが創業した倉庫ロボット企業Kiva Systemsを7.75億ドルで買収。Webvanで開発された技術を改良し、Amazonの物流効率化に活用した。
    ③魅力的なマイクロセグメントに集中:
    Webvanは広域展開で失敗したが、Amazonは2007年にシアトルの限定地域から開始し、人口密度の高いエリアのみに段階的に拡大した。
    ④成功実証前の拡大を避ける:
    最初の市場でビジネスモデルを確立するまで、他地域への展開を我慢する戦略を徹底した。

    同様に、2012年創業のInstacartもWebvanの教訓を活かしました。自社で在庫を持たず既存スーパーと提携し、配送員をクラウドソーシング化することでリスクを外部化。わずか2年でユニコーン企業となり、2021年には評価額390億ドルに達しています。

    Webvanという市場調査の先行事例があったからこそ、後続企業はより少ないコストとリスクでイノベーションを実現できたのです。

    日本でもリクルート出身者や、メルカリ出身者などが、起業したり、他のスタートアップの幹部として再チャレンジをしています。

    また、会社の失敗(倒産や事業撤退)は個人のキャリアの終わりを意味しません。

    日本でも、スマホシフトのタイミングが早過ぎたり、ニッチ戦略が後の成長の制約となったり、資金調達力とマーケティング投資の差が足枷になったり、先行者が啓蒙した後に後発に刈り取られたり、さまざまな事例があります。

    それでも、それらのスタートアップの修羅場をくぐり抜けた経験が評価され、他のスタートアップやベンチャーキャピタル大企業のCVC、DX推進責任者や新規事業担当として高待遇で迎えられるケースも一般化しつつあります。

    挑戦したという事実と、そこで得た「なぜ成功/失敗したか」という経験値は、エコシステム全体の共有知となります。

    その人材流動のサイクルこそが、国家のレジリエンスを高めうるのです。

    (5)組織づくりの思想をアップデートする実験場

    多くの日本企業は、いまだに過去の日本的経営の成功体験で過去の慣習で動いている側面があります。

    終身雇用、年功序列、企業別労働組合、過剰な階層構造、対面重視、ハンコ文化。これらは高度経済成長期には最適でしたが、変化の激しいVUCA時代には機能不全を起こしています。

    しかし、大企業がいきなりOSを入れ替えるのはリスクが高いため、新しい日本的経営にトライすることは極めて難しいと言えます。

    そこで、スタートアップが「新しい組織のあり方」の実験場(サンドボックス)となれることにも価値があります。

    スタートアップは試行錯誤している手法は、未来の日本のスタンダードになり得るものです。

    たとえば、下記のような事例があります。

    ①OKR(目標管理手法)
    GoogleやIntelといったシリコンバレー企業で採用されていたOKR(Objectives and Key Results)は、日本ではメルカリやSansanなどのスタートアップが先駆けて導入しました。組織全体の目標と個人の目標を透明化し、チャレンジングな目標設定を促すこの手法は、現在では花王やKDDI、富士通など大企業でも広く採用されるようになっています。

    ②リモートワーク・フルフレックス制度
    RevComm(総務省テレワークトップランナー選出)などのスタートアップは創業時から「フルリモート×フルフレックス」を実践し、優秀な人材獲得に成功しました。コロナ禍を経て、この働き方は富士通のスーパーフレックスタイム制導入やサイバーエージェントの「リモデイ」など、大企業にも急速に広がっています。

    ③1on1ミーティングと心理的安全性
    スタートアップで一般的だった上司と部下の定期的な1対1対話は、ヤフーが2012年に全社導入して話題となり、楽天やテモナなど多くの大企業へと波及しました。Googleが「心理的安全性」の重要性を発表したことも相まって、今や日本企業の人材育成における標準的な手法となっています。

    ④副業・複業の解禁
    スタートアップでは当初から柔軟に認められていた副業・複業制度は、サイボウズの「100人100通りの働き方」として注目を集め、2018年の政府のガイドライン発表を契機に、リクルート、トヨタ、NTT、みずほフィナンシャルグループなど大手企業でも次々と制度化されました。2024年時点では60%以上の企業が副業を認めるまでに普及しています。

    ⑤アジャイル型組織運営
    ソフトウェア開発におけるアジャイル手法は、スタートアップで実践されてきましたが、現在ではLIXILやKDDIなどの大企業が組織全体の意思決定や業務プロセスにアジャイルの考え方を取り入れ、変化への適応力を高めています。


    「どうすれば人は生き生きと働けるか」という問いに対する社会実験を、スタートアップは最前線で行うことができるのです。

    (6)異才を開花させる解放区

    経営学の研究において、多様性(ダイバーシティ)はイノベーションの必須条件とされています。

    しかし、既存の日本の大組織は、新卒一括採用と終身雇用により同質性が高く、異物を排除する免疫機能が強く働きがちです。
    学閥や男性社会、年次主義、理系・文系の壁などが最たる例です。

    スタートアップは、この構造的欠陥を補完する異才の受け皿になります。

    英語を公用語化することでグローバル人材を受け入れる企業も増えていれば、学歴や職歴のレールから外れたとしても努力と実力一つで評価されることで非連続なキャリアのチャンスが得られる環境もあります。

    既存の固定観念にも潰されない人の可能性を引き出す実力社会がスタートアップでは築かれやすいため、異才を開花させる解放区としての役割もあります。

    (7)雇用を創出して世界の富を呼び込む

    スタートアップの経済効果は、単なる一企業の売上にとどまりません。
    カリフォルニア大学バークレー校のエンリコ・モレッティ教授の研究によれば、ハイテク産業における雇用は、地域に強い乗数効果をもたらします。

    ハイテク産業の雇用が1つ生まれれば、その周辺(医師、弁護士、飲食、サービス業など)に約5つの雇用が追加で生まれるとされています。

    モレッティ教授の研究では、Apple社の例で、クパチーノに12,000人の従業員を雇用することで、乗数効果により同じ大都市圏全体で60,000以上の追加サービス業雇用を創出しています。

    つまり、Appleの地域経済への最大の貢献は、ハイテク雇用そのものではなく、その周辺に生まれる5倍の雇用にも及ぶと示されていました。

    現在、日本は「世界デジタル赤字(海外ITサービスへの支払い超過)」が拡大し、富が流出しています。2024年のデジタル赤字は6.7兆円と過去最大を更新し、10年前の2014年と比較して3倍以上に拡大しました。

    日本のデジタル赤字はOECD加盟国で最大規模とされ、世界最大のデジタル赤字国となっています。特にクラウドサービスやシステム構築などのITサービスで海外への支払いが急増しており、日本企業のIT投資が増えるほど、海外サービスへの資金流出が加速する構造になっています。

    GAFAMが米国のGDPを押し上げたように、日本のスタートアップがグローバルで勝てるサービスを作り、外貨を稼ぐようになれば、それは国全体の豊かさに直結します。

    事実、経済産業省『スタートアップによる経済波及効果調査(2024年7月)』では、スタートアップが創出するGDPは直接効果10.47兆円、間接波及を含め19.39兆円に達するという試算もあります。

    スタートアップの会社が大きくなることは、株主が儲かるだけでなく、日本という国家に「稼ぐ力」を取り戻させ、次世代に豊かな社会を残すための直接的な貢献となります。

    (8)日本のインターネット史

    日本のイノベーションを象徴するインターネット史は下記のような変遷があります。

    A.黎明期(〜2005年)

    日本のインターネットは1990年代後半から本格的に普及を開始しました。2000年代初頭にはモバイルインターネット技術が登場し、携帯電話でのネット接続が可能になりました。
    2005年頃にはWEB2.0という概念が生まれ、それまでの一方向的な情報発信から、ユーザーが積極的に参加・投稿できる双方向型のインターネットへと大きく進化しました。
    web2.0ブームは日本のネット文化に革命をもたらし、ブログやCGM(消費者生成メディア)が活発化しました。

    B.SNS時代の到来(2006年〜2010年)

    2006年頃からFacebookやTwitterなどのSNSが登場し、米国発のソーシャルメディアが日本でも急速に普及し始めました。
    日本ではmixiが先行して人気を博し、その後グローバルプラットフォームが台頭。
    人々のコミュニケーション方法が大きく変化し、情報拡散のスピードが飛躍的に向上しました。リアルタイム性とネットワーク効果により、SNSは社会インフラとしての地位を確立していきました。

    C.クラウド基盤の確立(2008年〜2010年)

    2008年〜2010年にかけて、AWS、Google Cloud、Microsoft Azureなどのクラウドサービスが台頭し、企業のITインフラが根本から変化しました。
    従来の自社サーバー運用から、クラウド活用へと移行する企業が増加。初期投資を抑えながらスケーラブルなシステム構築が可能になり、スタートアップの参入障壁が大幅に低下しました。
    この基盤がその後のSaaSビジネスの爆発的成長を支える土台となりました。

    D.スマートフォン革命(2007年〜2017年)

    2007年のiPhone誕生は、モバイルインターネットの歴史を大きく変えました。翌2008年にはAndroidが登場し、スマートフォン時代が本格的に幕を開けました。
    2010年代にはスマホ・ソーシャル・クラウドが融合し、新たなビジネスモデルが次々と誕生。
    2011年〜2017年にはLINEやメルカリなどの日本発のスマホネイティブアプリが急成長し、モバイルファーストの時代へと移行しました。
    同時期の2011年〜2013年頃には、GREEやモバゲー(DeNA)などのソーシャルゲームプラットフォームがブームとなり、日本独自のモバイルゲーム文化が花開きました。
    2015年頃からは中国のTencent(騰訊)やAlibaba(阿里巴巴)などの巨大プレイヤーも存在感を増し、アジア市場での競争が激化しました。

    E.SaaSバブル(2015年〜2022年)

    2015年頃から、クラウド技術の成熟とサブスクリプションモデルの普及により、SaaS(Software as a Service)ビジネスが急成長しました。
    freee、SmartHR、Sansanなど、日本発のSaaSスタートアップが相次いで登場し、大型資金調達や株式上場を実現。
    業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の波に乗り、企業向けクラウドサービス市場が拡大しました。
    2020年のコロナ禍でリモートワークが普及すると、ZoomやSlackなどのコミュニケーションツール、各種業務支援SaaSの需要が爆発的に増加し、SaaSバブルはピークを迎えました。投資マネーが大量に流入し、SaaS企業の評価額は高騰しました。

    F.暗号資産・Web3時代(2017年〜2023年)

    2017年以降、Bitcoinを始めとする暗号資産(仮想通貨)が注目を集め、ブロックチェーン技術が急速に発展しました。
    2021年頃にはNFT(非代替性トークン)ブームが到来し、デジタルアートやゲームアイテムが高額で取引されました。
    web3という分散型インターネットの概念が広まり、中央集権型プラットフォームからの脱却を目指す動きが活発化。「次世代のインターネット」として多額の投資が集まり、デジタル資産の所有権やインターネットの新たな形が模索され始めました。

    しかし、2022年以降、Web3ブームは急速に失速しました。主な要因として、暗号資産取引所FTXの破綻をはじめとする度重なるスキャンダル、暗号資産価格の大幅下落(ビットコインが最高値から70%以上下落)、NFT市場の急激な冷え込み(取引量が90%以上減少)、そして実用的なキラーアプリケーションの不在が挙げられます。
    投機的な側面ばかりが注目され、本来の分散型技術としての価値提供が不十分だったことが明らかになりました。さらに、高い取引手数料(ガス代)、複雑なユーザー体験、環境負荷への批判なども普及の妨げとなりました。
    現状では、Web3は一部のゲーム分野(ブロックチェーンゲーム)やDeFi(分散型金融)、企業のブロックチェーン基盤技術として開発が続いていますが、当初の「インターネット革命」という熱狂は控えめ、再燃のきっかけが待望される分野です。

    G.生成AI革命(2022年〜2024年)

    2022年末のChatGPTの登場を皮切りに、生成AI(Generative AI)の時代が本格的に到来しました。
    2023年〜2024年には、OpenAIのGPT-4、GoogleのGemini、AnthropicのClaudeなどの大規模言語モデルが相次いで登場し、生成AI革命が本格化。
    テキスト、画像、音声、動画など、あらゆるコンテンツをAIが生成できるようになり、クリエイティブ産業からビジネス、教育、医療まで幅広い分野で活用が進んでいます。
    SaaS企業もAI機能を組み込んだ次世代サービスへと進化し、「AI-powered SaaS」が新たなトレンドとなりました。
    Web3の失速とは対照的に、生成AIは実用性と即効性が評価され、企業や個人の業務に深く浸透し続けています。
    日本のインターネットは新たな技術革新の局面を迎え、AI時代の到来により社会全体が大きな変革期に入っています。

    これらの変遷の中で、たくさんのスタートアップ、人の挑戦が繰り広げられ、イノベーションの連鎖が続いています。

    まとめ:人の挑戦は紡がれる

    スタートアップの挑戦は、前人未踏の荒地を開拓するようなものです。

    想定外の障壁が事業の側面でも、組織の側面でも、そして個人の人生の側面でも立ち塞がります。

    それでも、あらゆるチャレンジが、国家のR&Dとして可能性を引き出して、仕事の一つひとつが、停滞した日本を動かすための小さな振動となるのです。

    2024年の経済産業省の『スタートアップによる経済波及効果調査』では、下記のデータが調査されています。

    <日本の現状>
    ・GDP創出:22.33兆円(日本全体の約4%)
    ・雇用創出:58万人
    ・投資額:0.9兆円(対GDP比 0.02%)
    ・ユニコーン企業:8社

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    この差は日本のスタートアップエコシステムの成長余地です。

    スタートアップが今日採用した一人、育てた一人が、10年後には別のスタートアップを立ち上げ、さらに100人を雇用するかもしれません。

    それは、新しい未来が生まれる可能性です。

    スタートアップの価値は、人の挑戦が紡がれて、イノベーションとして社会変革を起爆剤となっていくことにあるのではないでしょうか。

     
     
     
    学生時代にスタートアップに魅了されてスタートアップ村10年以上。人と組織をテーマに仕事しています。最近のHOTはAI×組織論のAX組織※発信内容は私見

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