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ケース33. アンカリング〜右肩上がりの成長を促進する人材開発〜

    あむろ

    ▶︎基準の個人差はなぜ生じるのか?

    会社と個人は成果と報酬の等価交換関係であることが原則である以上、期待と成果をすり合わせることが必要です。
    一方、目標が高いのか、低いのか目標設定の基準の感じ方は人によって差があることに難しさを感じることはないでしょうか?

    経営の視点:
    ・高い水準の成果を追求してほしい
    ・個人に適正な目標数値の判断が難しい

    現場の視点:
    ・右肩上がりの成長していきたい
    ・非現実的な目標を追いかけると疲弊する

    アマゾンが毎年120%を継続している要因の一つとして、高い目標設定の仕組みをあげているように、目標設定は経営と個人のどちらにおいて大事なフローです。

    人は達成可能なストレッチ目標に対しては、達成後の自己成長や報酬のイメージが動機づけとなり努力できるものの、どれだけの努力を重ねても達成が不可能だと感じると動機づけがなく、「どうせ無理だ」が続くと学習性無力感に陥り、燃え尽き症候群になってしまうことに注意が必要です。

    そこで、今回はアンカリング効果を用いて、個人の成長につながる目標設定の運用を考察します。

    ▶︎アンカリング効果

    始めに受け取った情報が基準点(アンカー)として次の情報を評価・判断する基準となり、意思決定に影響を及ぼす心理学的な現象


    例えば、ショッピングの際に、先に2万円の服を眺めていると、1万円の服が安く感じられ、先に5,000円の服を眺めていると1万円の服が高く感じられるといった現象です。
    先にどんな情報に触れるか次第が、その後の主観と行動を変えることになります。

    アンカリング効果は営業やマーケティング、採用、評価などさまざまなビジネスシーンでも表出されますが、人材開発の分野ではどんな情報を届けるか、どんなコミュニケーションを取るのかで人の目標に対する見え方が変わるとの観点で重要視すべきモチベーションマネジメントの一つです。

    それでは、アンカリング効果を実践するために、どのような工夫ができるのでしょうか?

    ▶︎習熟度に応じた基準の提示

    どんな情報が”先”に入るかがアンカリング効果を左右するとの原則に立つと、表彰や成功事例の共有は工夫しなければ、向上心や焦りから「あれくらいやらないと駄目だ」と非現実的な目標が掲げられたり、他者比較では「〇〇さんに比べて自分は全然できていない」と自己肯定感が下がったり、と想定外の波及効果が生じます。

    そのため、習熟度に応じてどの程度の水準がどれだけ凄いのかをグレードなどの区分で示したり、点で現在だけを捉えるのではなく線で過去からのステップアップを伝承することが有効です。

    つまり、一人ひとりの解釈に任せるのではなく、具体的な基準を提示することがその後の考え方を左右します。

    例)グレードに応じた区分がない状態の表彰
    30代前半、入社1年目で月間の売上ランキング1位を取るAさんの姿を見て、20代前半で新卒2年目のBさんが焦る
    →前提の経験差を考慮できてない

    例)グレードに応じた区分がある状態の表彰
    30代前半、入社1年目だかグレード3のAさんが月間の売上ランキング1位を取る姿を見て、20代前半、新卒2年目でグレード2に上がりたてのBさんが次のステップアップのためにグレード2の中で一番の成果を出すことを目指す
    →現在地から差分を理解して目先の目標を考えられる

    目標設定の初期段階で、何を根拠にした目標値にしているのかを確認して、要素を分解して実現可能な目標とアクションプランにすり合わせるフローを抑えることが、その後のアンカリング効果をポジティブに作用させることになります。
    人は小さな成功体験を重ねることでより成長が加速していくため、アンカリング効果を活用して成功体験の実感を得やすいサイクルをつくることがポイントです。

    ▶︎ロードマップをすり合わせてラダーを設ける

    アンカリング効果を考慮すると初期目標の設定が次の目標に対する感じ方を左右するため、ロードマップをすり合わせてラダーを設計していくことが右肩上がりの成長を加速します。
    人は期待されていると感じていることと、自分の成長実感のギャップが大きくなると、不安が募り、気力が沈んでしまいます。
    このギャップは時間が経過するほど「いつまで経っても成果が出せない」と深刻度を増していくため、「いつまでにどこまでの成果を出して、今の段階をクリアして、次に進むのか」と時間軸の整理がポイントになります。

    その整理に有効なフレームワークがSMARTの法則に基づく目標設定です。

    ①Specific(具体的に)
    明確で具体的な表現や言葉になっているか
    ②Measurable(測定可能な)
    目標の達成度合いが客観的に判断できるよう定量化して表せているか
    ③Achievable(達成可能な)
    希望や願望ではなく、達成可能な現実的な目標か
    ④Related(経営目標に関連した)
    組織の目標や期待されている役割と関連する内容になっているか
    ⑤Time-bound(時間制約がある)
    目標達成の期限が設定されているか


    アンカリング効果は目標設定の基準とセットで、フィードバックの基準にも影響するため、SMARTの法則で「いつまでにどこまでの成果を出して、今の段階をクリアして、次に進むのか」と時間軸の整理がなされていると、連続性が強まり、フィードバックの質が高まります。

    Googleの目標管理では下記のCSRがセットで必要とされており、目標はその後のコミュニケーションの在り方が重要となります。

    ・Conversation:対話
    ・Feedback:フィードバック
    ・Recognition:承認

    たとえば、

    ・成果目標:上期のチーム売上2億円達成のために、2Q末迄に2,000万円の売上を作り、単価を上げることで前年対比120%の成果を出す
    ・行動目標:単月で〇〇に困っている顧客と10社商談する
    ・学習目標:〇〇に困っている顧客に提案できるように、△△に関して3ヶ月間朝活で勉強する
    ・目標管理:週次で行動目標と学習目標の実行状況をマネージャー⇄メンバー間でモニタリングしてアクションの精度を高めていく。□□ができれば次の行動目標と学習目標を検討することを握る

    といったように、具体的な目標管理がポイントです。

    目標設定とフィードバックにおけるアンカリング効果を作用の仕方次第でモチベーションが変わるため、ロードマップに基づく初期目標を握り、対話しながら結果を振り返り、次の目標を定めていくサイクルが右肩上がりの成長を加速させます。
    一度握ったことには一貫性の原理が作用して、「〜せねばならない」と支えとなります。

    ▶︎一人ひとりの成長が経営目標のコミットメントを左右する


    アンカリング効果は経営判断においても作用するため、個々人の右肩上がりの成長によって基準が引き上がることで、次の経営目標が健全に設定されます。
    一方、現場の基準が理想とずれていれば非現実な経営目標がトップダウンで課せられるか、経営目標を低く設定せざる得ずに、いずれにしても自社に対する希望を抱きづらいの雰囲気になってしまいます。

    『ビジョナリーカンパニー2飛躍の法則』には、下記の弾み車が生み出す企業が成長していくことが示されています。

    ーーー
    劇的な転換はゆっくり進む。飛躍を迷げた企業は、単純明快な真実を知っている。つねに改善を続け、業績を伸ばしつづけている事実に、きわめて大きな力があることを知っているのだ。
    当初はいかに小幅なものであっても目に見える成果を指摘し、これまでの段階が全体のなかでどのような位置を占めているかを示し全体的な概念が役立つことを示す。
    このようにして、勢いがついてきたことを確認でき、感じられるようにすれば、熱意をもって参加する人が増えるようになる。
    われわれはこれを「弾み車効果」と呼ぶようになった。
    ーーー

    アンカリング効果を活用して、一人ひとりの右肩上がりのための人材開発の工夫ができているかが、持続的な成長につながるのではないでしょうか。

    ※本noteでは、人の可能性を拓く組織づくりのための新しい気付きを届けることを目的に、組織論とケースを考察していきます。
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    学生時代にスタートアップに魅了されてスタートアップ村10年以上。人と組織をテーマに仕事しています。最近のHOTはAI×組織論のAX組織※発信内容は私見

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