S先生の娘さんからの手紙
僕の学級通信を読んでくれている、S先生の娘さんから手紙が来た。
拝啓
夏が終わり、秋の涼しさを感じる季節となりました。いつも楽しく学級通信を拝見させていただいております。
このたびは、学級通信に登場できたこと、とても嬉しく思っております。ありがとうございます。学校説明会ではお会いできず、非常に残念でした。
学校説明会は、高校の雰囲気を直に感じることができ、進路決定にとても参考になりました。これからも続けてほしいと思います。ただ、父の職権乱用により思いがけず父の授業を参観することになり、注目されてとても恥ずかしい思いをしたため、父には反省して欲しいと思っております。
少子化が進む昨今、生徒の集まらない高校が閉校するのは仕方ないと思いますが、「生き残った」高校が生徒や地域にとって、よりよいものになってくれると良いと思います。
先生のご質問に上手く答えられたでしょうか。
末筆ながら、おじいさんの先生におかれましてはご自愛のほどお祈り申し上げます。
敬具
S先生は僕の学級通信を家に持ち帰り家族で回し読みして楽しんでくれている。僕が娘さんのことを通信に書いたので、わざわざ返事をくれた。
こういう嬉しいことが、たま〜にあるから僕は学級通信を書き続けてこられたのかもしれない。
ある時、生徒を送迎して来たお母さんが僕に手紙を手渡してくれた。通信に息子のことが書かれていて嬉しかったこと、息子が喜んでいたこと、クラスの様子が分かって嬉しいことが綴られていた。
僕の方が、泣きそうなぐらい嬉しかった。なんなら、少し泣いた。
毎日の学級通信、生徒も楽しく読んでくれているみたいだが、そうそう「面白かったです!」なんて言わない。毎日あるから、さすがに読むのも飽きてくる。折り曲げて遊んでいる不届き者もいる。人間そんなもんだ。最近はジジイの話ばかりだからなおさらだ。
「先生何してくれてるんですか!」
後輩教師に怒られた。
「ごめん、ごめん。どうした?」
僕は聞いた。
「夕べ妻が、ご飯食べながらシクシク泣き始めたんですよ。何かと思ったら、先生の通信読んで泣いてるんですよ!何してくれるんですか!妻を泣かせないでくださいよ!」
嬉しかった。
学級通信はクラスの生徒全員に向けて書いている。
でも、時にはある一人を頭に思い浮かべて書いていることもある。頑張れよ!という願いを込めて。負けるなよ!という気持を込めて。
親に向けて書いてあることもある。
読んでくれている先生に向けて書くこともある。
自分自分に向けて書くこともある。
しっかりすれよ!と。
泣きごと言ってるんじゃないよ!と。
思いは届く時もあれば、届かない時もある。
届かないことの方が多いかもしれない。
思いが間違って届く時もある。傷つけてしまった事もあった。
なかなか思いは届かないけど、「届け!」と願い、ペンを持つ手に力を込める。
S先生の娘さんに返事を書いた。
娘さんの素晴らしい手紙に、「合格!」の意味を込めて僕は送った。
「サクラサク」
昔の合格発表みたいに。
次の日、S先生の反応は薄かった。
僕の思いは届かなかったのだろう。

