【ヘアメイクへの道】第9話 責任感と、ギャランティ
私には、先生みたいな技術はまだなかった。
全然足りない。
英語も喋れないし、経験も足りない。
それでも、見ていてくれた人はいた。
先生が担当していたチームからの仕事は来なくなったけれど、
別の人たちが声をかけてくれた。
まだ未熟な私に、沢山注文を付けながら、育ててくれた。
やっとモデルと仕事ができた。
外国人のモデル。
ブロンドの髪。
日本人とは全く違う髪質。
思うように仕上がらず、何度も自己嫌悪した。
思い通りに形にできるまでは、随分時間がかかった。
一緒に仕事をしてくれたスタイリストやフォトグラファー、デザイナー達は
いつも任せてくれた。
思い通りにいかないときも、楽しかった。
夢中で、仕事をした。
「夢のカケラ」は、確かに手の中にある気がしていた。
でも────
現実はそんなに甘くなかった。
事務所の家賃。
マネージャーのギャラ。
そして、自分のギャラ。
それらを払うには、まだ全然足りなかった。
「新しい仕事を取りにいかないとダメだ」
そう思う私と、
今ある仕事を待つしかない、と言うマネージャー。
話はずっと平行線だった。
少しずつ、息が苦しくなっていった。
責任感が重くのしかかる。
────このままじゃ、潰れる。
そう思って、私は事務所を辞めた。
22年前の私へ
やっと夢に近づいたのに、
どうして上手くいかないんだろうって
思っていたよね。
好きな仕事なのに、
お金のことが苦しくて。
それでもちゃんと向き合って、
逃げずに悩んで、決めたんだよね。
あの決断は、間違っていなかったよ。