見出し画像

【Snowflake(SNOW)Q1 FY2027】“SaaSの死”を生き残る仮説は数字に出始めたのか。CoCo、従量課金、AI OS化を読む

Snowflake(SNOW)のQ1 FY2027決算を分析する。

前回Q4 FY2026の決算で、私はSNOWを「SaaSの死」の生き残る候補として整理した。

ここで言う「SaaSの死」とは、すべてのSaaSが死ぬという意味ではない。

人間の席数、つまりper-seat課金だけで伸びてきた旧来型SaaSが、AIエージェント時代に構造的な圧力を受けるのではないか、という話だ。

AIエージェントが業務を代替し、人間がSaaSの画面を一つ一つ操作しなくなるなら、ユーザー数に比例して伸びるSaaSモデルは弱くなる可能性がある。

一方で、SNOWは少し違う。

SNOWは基本的に従量課金だ。

人間が画面を開くかどうかよりも、データが動き、処理され、分析され、AIやアプリケーションに使われるほど消費が増える。

つまり、AIによって人間の操作が減ることは、SNOWにとって必ずしもマイナスではない。

むしろ、AIが企業データを読み、処理し、ワークフローを動かすほど、SNOWのメーターが回る可能性がある。

前回は、ここを仮説として見た。

そして今回のQ1 FY2027は、その仮説が初めて数字に出始めたのかを確認する決算だった。

結論から言うと、かなり良い決算だった。

Product revenueは前年同期比+34%へ加速した。NRRは126%へ上がった。FY2027のProduct revenueガイダンスは、前回の+27%成長から+31%成長へ引き上げられた。

これはかなり大きい。

なぜなら、Q4の時点では「AI Data Cloud」「Snowflake Intelligence」「Cortex Code、つまりCoCo」「agentic control plane」という物語が強くなった段階だったからだ。

しかし今回のQ1では、その物語がProduct revenue、NRR、ガイダンスに出始めた。

もちろん、まだ勝利宣言には早い。

GAAPでは赤字だ。SBCもまだ重い。non-GAAP product gross marginも75%と高いが、上昇トレンドではない。AI製品はコアデータプラットフォームより粗利率が低い可能性があり、AIが伸びれば伸びるほど粗利率に圧力が出る可能性もある。

だから今回の決算は、単純な「AIで爆伸び」という話ではない。

見るべきなのは、SNOWがAI時代に壊されるSaaSなのか、それともAIを動かす側のデータOSになれるのかだ。

そして今回、その答えは少し前に進んだと思う。


Q2 FY2026 → Q3 FY2026 → Q4 FY2026 → Q1 FY2027

・売上高:$1.145B → $1.213B → $1.284B → $1.391B
YoY:+32% → +29% → +30% → +33%
QoQ:+9.9% → +5.9% → +5.9% → +8.3%
全社売上はQ3で一度YoY成長率が+29%まで落ちたが、Q4で+30%、Q1 FY2027で+33%へ再加速している。
SNOWは一時期、顧客の消費最適化や成長率鈍化がかなり意識された銘柄だった。だから今回の売上再加速は重要だ。
ただし、SNOWを見る場合、全社売上よりもProduct revenueの方が重要だ。

・Product revenue:$1.090B → $1.158B → $1.227B → $1.334B
YoY:+32% → +29% → +30% → +34%
QoQ:+9.4% → +6.2% → +5.9% → +8.8%
売上構成比:95.2% → 95.5% → 95.5% → 95.9%
会社の説明では、Q1のProduct revenue growthは前年同期比+34%で、前四半期の+30%から約400bp加速した。
つまり、Product revenueは明確に再加速している。

・Professional services and other revenue:$54M → $55M → $57M → $57M
YoY:+38% → +30% → +32% → +25%
QoQ:+20% → 横ばい → +5% → -1%
売上構成比:4.8% → 4.5% → 4.5% → 4.1%
ここは悪い数字ではないが、SNOWの本質ではない。
SNOWは資料上、Analytics、Data Engineering、AI、Applications & Collaboration、Transactionsという製品カテゴリを示しているが、カテゴリ別の売上は開示していない。10-Q上も単一のoperating segmentとして開示されている。
したがって、事業別売上構成として固定できるのは、現時点ではProduct revenueとProfessional services and other revenueの区分になる。
AI revenue、CoCo、Snowflake IntelligenceがどれくらいProduct revenueに入っているのか、会社は一部説明しているが、完全な事業別売上としてはまだ見えない。

・Net Revenue Retention Rate:125% → 125% → 125% → 126%
この1ポイントを過大評価しすぎる必要はないが、方向性としては重要。
SNOWは従量課金モデルなので、今回のNRR改善は、SNOWの「AI時代に消費が増える」という仮説と整合する。ただし、NRR 126%はまだ過去の超高成長時代と比べれば低い。

・RPO:$6.932B → $7.881B → $9.772B → $9.205B
YoY:+33% → +37% → +42% → +38%
QoQ:+3.7% → +13.7% → +24.0% → -5.8%
12か月以内認識予定比率:50% → 48% → 46% → 50%
Q4 FY2026の$9.772BからはQoQで低下しているが、これはSNOWの契約更新がQ4に偏りやすいこともあり、四半期ごとの季節性をそのまま弱さと見るべきではない。
むしろ見るべきは、YoYで+38%という水準だ。
Product revenueが+34%、RPOが+38%。ここを見る限り、足元の売上だけでなく、契約済みの未認識売上も強い。
しかも、Q1 FY2027時点のRPOのうち、今後12か月で認識される見込みは50%。Q4の46%から上がっている。
大型契約が増えると、RPOは伸びるが、短期売上への変換速度は別問題になる。今回、12か月以内認識予定比率が50%へ戻ったことは、RPOの質を見るうえでも一定の安心材料だと思う。

・Total customers:11,972 → 12,588 → 13,328 → 13,912
QoQ増加:+529 → +616 → +740 → +584
Q4の13,328から584社増えた。Q4は740社増だったので、QoQの純増数だけ見ると減っているが、Q1としては十分に強い。
会社はQ1でnet new customersが前年同期比+38%だったと説明している。

・$1M+ customers:653 → 687 → 733 → 779
QoQ増加:+48 → +34 → +46 → +46
YoY:+29%
Q4の733社から46社増えた。
SNOWは大企業に深く入り込むほど強い。小口顧客が増えることも重要だが、投資ストーリーとしては、大企業のワークロード、AI利用、データ共有、エージェント実行が増えることが重要になる。
$1M+顧客が着実に増えていることは、SNOWが大企業のAI Data Cloud基盤として広がっていることを示している。

・$10M+ customers:未開示 → 未開示 → 56 → 64
Q1だけで8社が$10M超の水準に入った。
$10M+顧客が増えていることは、SNOWが一部の大企業にとってかなり深い基盤になっていることを示している。

・Forbes Global 2000 customers:769 → 775 → 790 → 813
大企業への浸透は続いているが、単にGlobal 2000の数が増えるだけでは不十分。重要なのは、その企業の中でどれだけワークロードが広がるか、AI活用が本番化するか、部門横断で使われるかだ。
この意味でも、NRR、$1M+ customers、$10M+ customersをセットで見る必要がある。

・Data Sharing:40% → 40% → 40% → 42%
SNOWのモートは、単なるデータ保管ではなく、データを安全に共有し、他社・パートナー・アプリケーションとつなぐネットワーク性にある。
Data Sharing比率が上がるほど、SNOWは単独ツールではなく、企業間データネットワークに近づく。
Q1で42%へ上がったことは、AI Data Cloudの「connected」の部分が伸びていることを示す。

・Snowflake AI利用アカウント:6,100+ → 7,300+ → 9,100+ → 13,600+
AI利用アカウントはかなり伸びている。
もちろん「使っている」だけでは投資判断には足りない。重要なのは、どれだけProduct revenueへ転換しているかだ。
ただし、AI利用アカウント数の拡大は、SNOWのAI機能が一部の先進顧客だけの実験ではなく、広く使われ始めていることを示している。

・Snowflake Intelligence customers / accounts:public preview → 1,200 → 2,500+ → 前四半期比2倍超
Snowflake Intelligenceは、ビジネスユーザーが自然言語で企業データにアクセスし、回答を得て、行動につなげるための入口だ。
Q3時点で1,200 customers、Q4で2,500 accounts、Q1ではaccounts using Snowflake Intelligenceが前四半期比で2倍超と説明された。
ただし、Q1では具体的なアカウント数そのものは明示されていない。したがって、次回以降もこの数字は確認が必要だ。

・CoCo利用アカウント:未開示 → 未開示 → 4,400+ → 7,100+
CoCo、つまりCortex CodeはQ4時点で4,400超の顧客、Q1 FY2027では7,100超のアカウントで使われている。
CoCoは単なるAIコーディングツールではない。
Snowflake上でアプリ、パイプライン、エージェント、ワークフローを作るための自然言語インターフェースになりつつある。

・GAAP product gross margin:72% → 72% → 71% → 71%
前年差:+1pt → 横ばい → 横ばい → 横ばい
QoQ差:+1pt → 横ばい → -1pt → 横ばい
高水準ではあるが、上昇しているわけではない。
SNOWはクラウド上で稼働するデータプラットフォームであり、第三者クラウドインフラ費用がcost of product revenueに含まれる。
つまり、売上が伸びても、クラウドインフラ費用やAI処理コストが増えれば、粗利率には圧力がかかる。

・non-GAAP product gross margin:76% → 76% → 75% → 75%
前年差:横ばい → 横ばい → -1pt → -1pt
QoQ差:横ばい → 横ばい → -1pt → 横ばい
上昇トレンドではない。
AI製品や新しいワークロードが伸びる中で、粗利率が下がらず75%を維持していると見ることもできるが、AIによって粗利率が跳ね上がっているわけではない。
AIは売上を押し上げる可能性がある。一方で、推論、モデル利用、GPU/クラウドコスト、外部モデル連携などにより、コアデータウェアハウスより粗利率が低い可能性もある。

・GAAP operating margin:-30% → -27% → -25% → -23%
改善しているが、まだGAAPでは大きな赤字だ。
SNOWは高成長ソフトウェア企業として、依然としてS&M、R&D、SBCが重い。特にR&Dは、AI Data Cloud、CoCo、Snowflake Intelligence、Iceberg、Open Catalog、Observabilityなど、投資範囲が広い。

・non-GAAP operating margin:11% → 11% → 11% → 12%
売上成長が再加速しながら、non-GAAP営業利益率も改善している。Q2からQ4までは11%で横ばいだったが、Q1 FY2027では12%へ上がった。
つまり、今回の決算は「成長のために利益率を崩した決算」ではない。
ただし、non-GAAPではSBCを除いているため、株主目線ではGAAP赤字とSBCを必ずセットで見る必要がある。

・GAAP EPS:-$0.89 → -$0.87 → -$0.90 → -$0.86
Q1 FY2027は-$0.86。Q4の-$0.90からは改善しているが、GAAP黒字とは距離がある。
SNOWをPERだけで見ると、non-GAAPベースでは見えるが、GAAPではまだ赤字企業だ。

・non-GAAP diluted EPS:$0.35 → $0.35 → $0.32 → $0.39
Q4の$0.32から改善した。Product revenueが強く、non-GAAP operating marginも12%へ改善したため、EPSも持ち直した。
ただし、non-GAAP EPSを見る場合も、SBCと希薄化後株式数を必ず確認する必要がある。

・営業CF:$75M → $138M → $781M → $243M
営業CFマージン:6.5% → 11.3% → 60.8% → 17.5%
Q4 FY2026の$781M、営業CFマージン60.8%から大きく低下しているが、SNOWはQ4に契約更新や回収が偏りやすいため、Q4の営業CFをそのまま通常水準として見るべきではない。
Q1 FY2027は、前年同期の$228Mからは増えているから悪い数字ではない。ただ、FCFや営業CFは四半期ごとの季節性が大きいので、単四半期ではなく通年で見る必要がある。

・設備投資額:$17M → $24M → $16M → $10M
設備投資額 / 売上比率:1.5% → 2.0% → 1.3% → 0.8%
AI需要を取り込める一方で、ハイパースケーラーのように巨大CapExを背負わない。もちろんクラウドインフラ費用は粗利率に出るが、設備投資としては軽い。

・FCF:$58M → $114M → $765M → $233M
FCFマージン:5.1% → 9.4% → 59.6% → 16.7%
FCFはQ4からは低下したが、Q4は季節性が強い。Q1単体では前年同期比で増加している。
SNOWはGAAPでは赤字だが、FCFはプラス。
FCFが出ているから安心ではない。FCF、SBC、希薄化をセットで見る必要がある。

・Adjusted FCF:$68M → $136M → $782M → $266M
Adjusted FCF margin:5.9% → 11.2% → 60.9% → 19.1%
会社はFY2027のadjusted FCF marginを23%と見込んでいる。Q1は19%台なので、通年では後半に回収が進む前提だと思う。

・SBC:$421M → $412M → $405M → $402M
SBC / 売上比率:36.8% → 34.0% → 31.5% → 28.9%
SBC、つまり株式報酬費用はQ1 FY2027で$402M。絶対額はまだかなり大きい。
最終的に株主価値へ変換できるかの意味で、SBC比率が下がっていることは重要だが、28.9%でもまだ高い。一般的な成熟企業として見れば、かなり重い。

・GAAP weighted-average shares:335.2M → 339.6M → 342.3M → 345.4M
・non-GAAP diluted shares:372.4M → 373.4M → 374.0M → 375.0M
株式数は増えている。
SNOWは自社株買いもしているが、SBCによる希薄化圧力もある。Q1では約$300Mを使って170万株を買い戻しているが、それでも株式数は増えている。

・現金・短期投資・長期投資:$4.60B → $4.39B → $4.78B → $4.39B
財務基盤は強いが、Q1では自社株買いに約$300Mを使っている。さらにObserve買収、Natoma買収予定、AWSとの大型契約などもあり、今後も資本配分は確認が必要だ。

・Q2 FY2027ガイダンス:Product revenue $1.415B〜$1.420B
中央値ベース:QoQ +6.2%、YoY +30.0%
Q1のProduct revenue growthは+34%だったため、Q2はやや減速に見える。ただし、Q2でも+30%成長を維持するなら強いと評価できる。

・FY2027 ガイダンス:Product revenue guidance
前回の$5.660B、前年比+27%から
今回$5.840B、前年比+31%へ引き上げ。
会社は通年の成長見通しそのものを引き上げた。


数字だけ見れば、今回のQ1 FY2027はかなり強い。

Product revenueは再加速した。NRRは改善した。RPOは高い成長を維持した。$1M+顧客、$10M+顧客も増えた。CoCoとSnowflake Intelligenceも採用が拡大している。

しかも、non-GAAP operating marginも12%へ改善した。

つまり、今回の決算は「AIに投資して利益率を崩した決算」ではない。

ただし、粗利率は上がっていない。GAAP赤字も残っている。SBCもまだ重い。ここは冷静に見る必要がある。

今回の数字は、SNOWのAI OS仮説を強めた。

しかし、完全に証明したわけではない。

■ 今回の決算で何が変わったのか


今回の決算で一番重要なのは、SNOWのAIストーリーが「説明」から「数字」へ少し進んだことだ。

前回までは、Snowflake Intelligence、CoCo、AI Data Cloud、agentic control planeという言葉が非常に強かった。

ただ、投資家としては言葉だけでは買えない。

どれだけ美しいAIストーリーでも、Product revenue、NRR、RPO、粗利率、FCF、SBCに出てこなければ意味がない。

今回、Product revenueは+34%へ再加速した。NRRは126%へ上がった。RPOは+38%。FY2027ガイダンスは+27%から+31%へ引き上げられた。

ここまで揃うと、単なるAIマーケティングでは片づけにくい。

もちろん、どこまでがAI製品そのものの寄与で、どこまでがコアデータプラットフォームの再加速なのかは完全には分からない。

ただし、会社は今回、AI revenueの増加とcore data platform businessの加速が両方効いたと説明している。さらに、CoCoが既存顧客の消費を速めているとも説明している。

ここが重要だ。

SNOWにとってAIは、単に新しい製品を売る話ではない。

AIがデータ活用の速度を上げ、移行を速くし、パイプライン作成を速くし、アプリ開発を速くし、エージェント構築を速くすることで、コアプラットフォームの消費を増やす。

つまり、AIがProduct revenueに直接乗るだけでなく、コアデータプラットフォームの消費を押し上げる。

ここにSNOWの面白さがある。


■ CoCoは単なるAI機能ではなく、作業OSに見える


今回の主役はCoCoだと思う。

CoCo、つまりCortex Codeは、単なるcoding agentではない。

会社の説明を読むと、CoCoはSnowflake上でアプリ、パイプライン、エージェント、ワークフローを作るための自然言語インターフェースになりつつある。

これはかなり大きい話だ。

なぜなら、企業のデータ活用で一番詰まるのは、「データはあるが、使える形にするまでが遅い」という部分だからだ。

データ移行。
データパイプライン作成。
分析アプリ開発。
AIエージェント構築。
POC。
本番展開。
評価。
運用。

ここに時間がかかる。

CoCoはこのボトルネックを潰しにいく。

CEOは、CoCoによって複雑なmigrationを分解して進められる、agent creation pipelineを高速化できる、Snowflakeに関するあらゆる作業のautomation platformのようになっている、という趣旨を説明している。

ここが面白い。

CoCoが単なる「開発者向けAI機能」なら、投資ストーリーとしては弱い。

しかし、CoCoが顧客のデータ活用のスピードを上げ、移行を速くし、より多くのワークロードをSnowflake上に乗せる装置なら、意味が違う。

これは消費量を増やす装置だ。

SNOWは従量課金なので、顧客が速く作り、速く動かし、速く本番化するほど、Product revenueに効いてくる。

ここが、per-seat SaaSとの違いだと思う。

旧来型SaaSでは、AIが業務を自動化すると、人間の席数が減るリスクがある。

しかしSNOWでは、AIが作業を自動化すると、データ処理、クエリ、パイプライン、アプリ、エージェントの消費が増える可能性がある。

つまり、AIがSaaSの画面操作を減らす世界で、SNOWは逆に消費が増える側に回れる可能性がある。

これが、前回から続く「SaaSの死を生き残る仮説」の中核だ。

■ Snowflake IntelligenceとCoCoは、AI OS化の両輪


SNOWが目指しているのは、単なるデータウェアハウスではない。

今回の会社説明では、Snowflake IntelligenceとCoCoがagentic control planeの主要な入口として整理されている。

Snowflake Intelligenceは、ビジネスユーザー向けの入口だ。

自然言語で企業データに質問し、回答を得て、次のアクションにつなげる。

一方でCoCoは、builder向けの入口だ。

アプリ、パイプライン、エージェント、ワークフローをSnowflake上で作る。

つまり、Snowflake Intelligenceは「使う側」、CoCoは「作る側」のインターフェースだ。

この2つが組み合わさると、SNOWは単なるデータ保管・分析基盤から、企業データを起点に仕事を動かすAI OSへ近づく。

ここで大事なのは、AIモデルそのものではない。

OpenAI、Anthropic、Google、Meta、xAI、Mistralなど、モデル競争は非常に激しい。SNOWがその正面から戦う必要はない。

SNOWが握ろうとしているのは、企業のデータ、ビジネスコンテキスト、ガバナンス、セキュリティ、ワークフローの接続点だ。

企業AIで重要なのは、モデル単体の賢さだけではない。

どのデータにアクセスしてよいのか。
誰が見てよいのか。
どの業務アプリとつなぐのか。
回答の根拠は何か。
監査できるのか。
本番ワークフローに乗せられるのか。

この領域は、単なるLLMアプリでは弱い。

SNOWはここにいる。

今回発表されたNatomaの買収も、この文脈で見るべきだと思う。Natomaは、Snowflake IntelligenceやCoCoから、メール、Slack、カレンダー、Jiraなどの日常業務アプリへアクションを返すための布石に見える。

つまり、SNOWは単に「データに質問できる」会社を目指しているのではない。

データを読み、判断し、業務アプリへ行動を戻す。

ここまで進むなら、SNOWはデータウェアハウスではなく、企業AIのcontrol planeに近づく。

だから、SNOWのAI OS化とは、AIモデルを作ることではなく、企業AIが安全にデータを使い、業務を動かすためのcontrol planeになることだと思う。


■ 従量課金はAI時代に強い。ただし万能ではない


SNOWのモデルで一番重要なのは、従量課金だ。

従量課金はAI時代に強い可能性がある。

AIエージェントがデータを読み、検索し、分析し、ワークフローを回すなら、消費は増える。人間の席数ではなく、データ処理量や実行量に課金するモデルは、AI時代に相性が良い。

これは、per-seat SaaSとの大きな違いだ。

ただし、従量課金は万能ではない。

顧客から見ると、従量課金には請求額が読みにくいという弱点がある。AI時代は特にそうだ。エージェントが勝手に大量のクエリを投げたり、複雑な処理を回したりすれば、顧客はコストを恐れる。

つまり、SNOWにとって大事なのは、消費を増やすことだけではない。

顧客が安心して消費できるようにすることだ。

会社は以前から、per-user cap、account capなど、消費量の上限制御に触れている。これは地味だが重要だと思う。

従量課金は、顧客が怖がると伸びない。

顧客が「この範囲なら使ってよい」と安心できる設計があって初めて、AIエージェント時代の消費が伸びる。

SNOWが本当にAI OSになるなら、消費を増やすだけでなく、消費を制御する仕組みもモートになる。


■ バリュエーションを正当化できるのか?


ここから投資判断に入る。

SNOWは良い会社だと思う。

今回の決算で、その評価は上がった。

Product revenueは再加速した。NRRは126%へ改善した。RPOもYoY +38%と強い。FY2027のProduct revenueガイダンスも、従来の$5.66B、+27%成長から、$5.84B、+31%成長へ引き上げられた。

ただし、良い会社と良い銘柄は違う。

SNOWは安くない。

GAAPではまだ赤字なので、PERだけで見るより、PSR、もしくはEV/Salesで見る方が自然だと思う。

ただし、ここで一つ断っておきたい。

市場で一般的に使われるのは、NTM、つまり今後12か月のアナリスト予想売上に対するPSRやEV/Salesだ。株価は将来を織り込むものなので、本来はforward revenueを使う方が自然だ。

一方で、今回の記事では一次情報を重視したいので、まずは会社が明示したFY2027 Product revenueガイダンスを分母に置く。これは厳密なNTM consensus PSRではないが、会社自身が出した見通しに基づくため、数字の純度は高い。

執筆時点のSNOWの時価総額は、株価変動を踏まえるとおおむね$80B台前半から半ばの水準にある。会社のFY2027 Product revenueガイダンスは$5.84Bなので、単純に時価総額をProduct revenue guidanceで割ると約14〜15倍になる。

これは普通に高い。

比較すると、Datadog(DDOG)はQ1 2026 revenueが約$1.006B、YoY +32%。時価総額はおおむね$80B台で、Q1売上を年率換算した売上倍率は約20倍前後になる。

ServiceNow(NOW)はQ1 2026 total revenueが約$3.77B、YoY +22%。時価総額は$100B台前半から$120B台で、Q1売上を年率換算した売上倍率は一桁台後半から8倍前後に見える。

Palantir(PLTR)はFY2026 revenue guidanceが約$7.65B〜$7.66B。時価総額は$300B台半ばで、売上倍率は40倍台から50倍近い。

もちろん、これは各社の厳密なNTM consensus EV/Salesを横並びにしたものではない。あくまでも、会社ガイダンスや直近売上を使ったざっくりした売上倍率の比較だ。

それでも、SNOWの位置づけは見えてくる。

SNOWはNOWよりはかなり高い。DDOGよりは少し低いか、同じ高成長ソフトウェアの高バリュエーション圏にいる。PLTRほど極端な神格化バリュエーションではない。

この位置づけが大事だと思う。

SNOWは割高銘柄である。

市場はすでに、SNOWがAI時代のデータ基盤、さらにagentic control planeへ進化する可能性をかなり織り込み始めている。

だから、投資家として問うべきは、「高いか安いか」ではなく、「この高い売上倍率を、今後の成長率・粗利率・営業レバレッジ・FCF・SBC低下で正当化できるか」だ。

ここで重要になるのが、Databricksの存在だ。

Databricksは非上場なので、日々の株価比較はできない。ただし、直近の資金調達では評価額が約$134B、revenue run-rateは$5.4B、成長率は+65%超とされている。単純に評価額をrun-rate revenueで割ると約25倍になる。

つまり、SNOWの約14〜15倍という売上倍率は、絶対的には高い。ただ、データAIプラットフォームの本命格としては、完全に異常な水準とも言い切れない。

問題は、SNOWがDatabricks級の成長率を出しているわけではないことだ。

SNOWのFY2027 Product revenue guideは+31%。これは十分強いが、Databricksが示している+65%超の成長とは違う。

だから、SNOWが高い売上倍率を正当化するには、単に「AI Data Cloud」という物語だけでは足りない。

Product revenue +30%前後を維持すること。
NRRが126%からさらに改善すること。
non-GAAP product gross margin 75%を維持すること。
non-GAAP operating marginを拡大すること。
FCFを出し続けること。
そしてSBC / 売上比率を下げ続けること。

ここまで確認できて初めて、SNOWの高PSRは「物語」ではなく「構造」として正当化される。

今回のQ1は、その方向に一歩進んだ。

ただし、まだ勝利宣言ではない。


■ Databricksは無視できない


SNOWのモートを考えるうえで、Databricksは無視できない。

DatabricksはLakehouse、AI/ML、データエンジニアリング、MosaicML、MLflow、Unity Catalog、そしてAIアプリ開発まで広げている。開発者・データサイエンティスト側から見ると、かなり強い存在だ。

しかも、非上場ながら売上run-rateは$5.4Bを超え、成長率は+65%超、AI product revenue run-rateも$1.4Bとされている。NRRも140%超とされ、$1M超の顧客も800社超いる。

これは非常に強い。

Databricksが上場すれば、SNOWの比較軸は一気に変わると思う。

現在、SNOWは上場データAIプラットフォームの代表格として見られている。だが、Databricksが公開市場に出てくれば、投資家はSNOWとDatabricksをかなり直接比較することになる。

その時に問われるのは、どちらがAI時代の企業データ基盤を握るのかだ。

SNOWの強みは、エンタープライズのガバナンス、使いやすさ、消費モデル、データ共有、既存大企業顧客、そしてSnowflake Intelligence / CoCoによるagentic control plane化だ。

Databricksの強みは、開発者・データサイエンティスト起点のAI/ML、Lakehouse、オープンソース文化、データエンジニアリング、AIアプリ基盤だ。

どちらが勝つかを今ここで決める必要はない。

ただ、SNOWのモートを語るなら、Databricksの存在は必ず視野に入れるべきだ。

今回の記事の主題はあくまでも「SNOWのQ1決算で、SaaSの死を生き残る仮説が数字に出始めたか」だ。

だからDatabricksを主役にはしないが、投資判断では無視できない。

SNOWが本当に高いPSRを正当化するには、Databricksという強烈な非上場競合がいる中で、Product revenue +30%成長、NRR改善、AI adoption、粗利率維持、FCF、SBC低下を出し続ける必要がある。


■ SNOWのモートはどこにあるのか?


SNOWのモートは、単なるデータウェアハウス性能ではないと思う。

本質は、企業データの重力だ。

一度Snowflakeにデータが集まり、分析、共有、アプリ、AI、ワークフローが乗ると、そこから離れるのは簡単ではない。

データ基盤は、単なるツールではない。企業の業務プロセス、分析基盤、ガバナンス、セキュリティ、顧客データ、パートナー連携に食い込む。

ここにAIが乗ると、モートはさらに深くなる可能性がある。

なぜなら、AIはデータの質と文脈に依存するからだ。

企業AIは、単にモデルが賢ければよいわけではない。社内データ、業務文脈、権限管理、監査、ワークフロー接続が必要になる。

SNOWがこの中心に入るなら、企業AIの実行基盤としての価値が上がる。

ただし、競争はかなり厳しい。

Databricksは強い。ハイパースケーラーも強い。Microsoft、Google、AWSはそれぞれクラウドとAIを持っている。Palantirは業務実装側で強い。ServiceNowやDatadogもAI時代のワークフローや運用に入り込もうとしている。

SNOWがすべてを取るわけではない。

だから、SNOWの投資判断では「市場が大きい」では足りない。

SNOWがどのレイヤーを握れるのかを見る必要がある。

私の現時点の整理では、SNOWが握ろうとしているのは、企業データをAIで使える形にし、そこから業務アクションにつなぐcontrol planeだ。

これはかなり大きい。


■ 今回の決算で評価を上げた点


今回の決算で評価を上げた点は明確だ。

まず、Product revenue growthが再加速した。

これは最も重要だ。AIストーリーが数字に出始めた可能性がある。

次に、NRRが126%へ改善した。

わずか1ポイントだが、従量課金モデルの会社としては重要だ。

そして、FY2027ガイダンスを引き上げた。

Q1だけの一時的な強さではなく、会社が通年見通しを上げたことは大きい。

さらに、CoCoの位置づけが明確になった。

CoCoは単なるAI機能ではなく、顧客の作業速度を上げ、Snowflake上の消費を増やす作業OSに見える。

ここは投資ストーリーとしてかなり強い。

最後に、SBC比率が低下している。

まだ高いが、方向性は良い。


■ それでも残る懸念


一方で、懸念もある。

まず、GAAP赤字はまだ大きい。

Q1 FY2027のGAAP operating marginは-23%。改善しているが、黒字化には距離がある。

次に、SBCがまだ重い。

売上比率は28.9%まで下がったが、絶対額では$402Mある。これは無視できない。

さらに、AI製品の粗利率が見えにくい。

会社はAIが成長を押し上げていると説明しているが、AI revenueの粗利率や、AIがどの程度Product revenueに寄与しているのかは完全には分からない。

また、競争も激しい。

Databricks、クラウド各社、AIネイティブ企業、業務アプリ企業が、企業AIのcontrol planeを取りに来る。

SNOWは良い位置にいるが、勝ち確ではない。

最後に、バリュエーションが高い。

良い決算だからといって、どの価格でも買えるわけではない。


■ ポートフォリオにはどう接続するか?


ここは自分の投資判断として整理しておきたい。

SNOWは、今すぐ大きく買う銘柄というより、AIエージェント時代のSaaS再定義を検証するうえで外せない重要監視銘柄だと思う。

私は今、AIファクトリー側ではNVDA、MRVLのような物理インフラ・接続レイヤーをかなり見ている。

SNOWはその上位レイヤーにいる。

GPUやAIインフラが作った計算資源を、企業のデータ、ガバナンス、業務ワークフローに接続する側だ。

つまり、AIファクトリーが「計算する層」だとすれば、SNOWは「企業データをAIで使える形にして、業務に接続する層」になる可能性がある。

このレイヤーは重要だ。

なぜなら、AIインフラ投資が本当に回収されるには、企業業務にAIが実装されなければならないからだ。

その時、企業のデータはどこにあるのか。
AIエージェントはどこから正しいデータを読むのか。
誰がアクセス権限を管理するのか。
監査できるのか。
業務アプリへ行動を戻せるのか。

ここにSNOWが入れるなら、長期モートは深くなる。

今回のNatoma買収は、まさにこの「業務アプリへ行動を戻す」ための布石に見える。

SNOWが企業データを管理するだけでなく、Slack、メール、カレンダー、Jiraのような業務アプリに接続し、AIエージェントの行動まで統制できるなら、これは単なる分析基盤ではなくなる。

ただし、バリュエーションは安くない。

だから、現時点でSNOWを思い切ってコアにする必要はないと思う。

むしろ、SaaSの死、AIエージェント、企業データOS、agentic control planeというテーマを検証するための重要監視銘柄として整理するのが自然だ。

ポートフォリオ上の位置づけは、現時点では「監視継続〜サテライト候補」。

Product revenue +30%成長が継続し、NRRが改善し、粗利率75%を維持し、SBC比率が下がり続けるなら、サテライトとしての検討価値は高まる。

ただし、今の価格で大きく買うには、まだ確認したいことが多い。

そして私は、異なるレイヤーではあるが、AI時代に補強されるSaaS / セキュリティのテーマとしてRubrik(RBRK)を持っている。

さらに、フィジカルAIの文脈ではSamsara(IOT)も保有している。

もちろん、RBRKやIOTがSNOWの完全な代替になるわけではない。RBRKはサイバー・データセキュリティ、IOTはフィジカルオペレーションのデータOSであり、SNOWのような企業データ基盤そのものとはレイヤーが違う。

ただ、AIファクトリーを起点として、AIが企業や現場に実装されていく側面では、RBRKとIOTですでに一定程度カバーしている。

そう考えると、あえてバリュエーションの高いSNOWを、今の段階で是が非でも持つ必要はないという暫定結論になる。

SNOWは見送って終わる銘柄ではない。

ただし、今はコアでもない。

AIエージェント時代の企業データOS候補として、重要監視を続ける銘柄だと思う。


■ 暫定判断


今回のQ1 FY2027決算で、SNOWへの評価は上がった。

前回見た「SaaSの死を生き残る仮説」は、少し数字に出始めたと思う。

SNOWは、AIに壊されるSaaSではなく、AIを動かすためのデータOSになれる可能性がある。

特にCoCoは重要だ。

CoCoは単なるAI機能ではなく、Snowflake上の作業を速くし、移行、パイプライン、アプリ、エージェント、ワークフローを作る速度を上げる。

これが消費量を増やすなら、SNOWの従量課金モデルと非常に相性が良い。

ただし、まだコア化するには高い。

私の暫定判断はこうだ。

SNOWは見送って終わる銘柄ではない。
AI時代にむしろ補強される可能性がある。
ただし、今すぐ大きく買うには、GAAP赤字、SBC、粗利率、Databricksとの競争、バリュエーションの確認が必要。
重要監視、サテライト候補。
次回Q2で、Product revenue +30%成長が本当に維持されるかを確認する。

今回の決算は、SNOWが「データウェアハウス会社」から「企業AIの作業OS」へ進化し始めた可能性を示した。

だから、投資家として見るべき問いはこうだと思う。

SNOWはAI時代に壊されるSaaSなのか。
それとも、AIエージェントが動くほど消費が増えるAI Data Cloudなのか。

今回のQ1は、後者の可能性を少し強めた決算だった。

■ 次回チェックポイント


・Product revenueが会社ガイダンスどおりYoY +30%前後を維持できるか
・FY2027 Product revenue guide $5.84B、YoY +31%が再度引き上げられるか
・NRRが126%からさらに改善するか、それとも125%前後に戻るか
・CoCoの採用アカウント数、利用頻度、消費押し上げ効果が追加開示されるか
・Snowflake Intelligenceの顧客数、実利用、業務アクション接続の進展
・Natoma買収が、Snowflake Intelligence / CoCoから業務アプリへ行動を戻す実例につながるか
・AI revenueが一過性ではなく、継続的なProduct revenue成長に変わっているか
・non-GAAP product gross margin 75%を維持できるか
・AI製品の粗利率低下圧力を、AWS契約やコアデータプラットフォームの効率化で相殺できるか
・GAAP operating marginの改善が続くか
・non-GAAP operating marginが13.5%通年ガイダンスに向けて進むか
・SBC / 売上比率が28.9%からさらに低下するか
・株式数増加を自社株買いでどこまで相殺できるか
・FCF marginとadjusted FCF marginが通年23%ガイダンスに向けて改善するか
・RPO成長率と、今後12か月認識分の比率
・DatabricksのIPO観測や開示情報が出た場合、SNOWとの成長率・NRR・売上倍率比較
・AWS、Microsoft、Googleとの提携が、競争ではなくワークロード獲得に効くか
・CoCoが単なる開発支援ではなく、顧客の本番ワークロード増加につながっているか



最後まで読んでいただきましてありがとうございます。役に立ちましたら、是非、スキ、フォローしていただきましたら幸いです。


(免責事項)
本執筆内容は、執筆者個人の意思決定の整理及び記録等を目的として公開するものであり、迷い・再考・修正・仮説更新を伴います。また、本執筆によって提供される情報は正確性等を保証するものではございません。つきましては、読者の方々にとって必ずしも適切であるとは限らないことから、投資を行う際は、株式への投資は大きなリスクを伴うものであることをご認識の上、ご自身の判断と責任の基で投資をされるようお願いします。なお、いかなる金融商品や個別株への投資勧誘や投資手法を推奨するものではありません。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー