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牧野真莉愛さん卒コン『モーニング娘。'26 コンサートツアー春 - Rays Of Light - Final ~牧野真莉愛 卒業スペシャル~』と牧野さんの礼儀正しさ

    牧野真莉愛さんの卒業公演となる『モーニング娘。'26 コンサートツアー春 - Rays Of Light - Final ~牧野真莉愛 卒業スペシャル~』を拝見いたしました。今回は現場には行けず配信で拝見することになったので、現場の臨場感や目の前で見る細かい変化・機微はわかりませんでしたが、初めてモーニング娘。さんのライブを生配信で拝見して、生配信なりの楽しみや見やすさがあるということも気づけていい機会でした。
    (トップ画像は「DC FACTORY_GOODS」さんが投稿された公式画像から拝借いたしました)

    6/16には、注目してきた高瀬くるみさんの卒業公演があったばかりで、ハロプロさんとしても立て続けの卒業公演です。ハロプロさんの卒業公演の記事が続きますが、牧野真莉愛さんについては私も触れておきたいこともあったので、今回の卒業公演の内容も少しでも生で拝見して、書き記すことができればと思っておりました。

    今回も公演で見て感じたことを中心に書きつつ、ライブレポとは違う形で、私が感じていた牧野さんの印象について、そして今後のモーニング娘。さん(以下、敬称略)についても少し触れていければと思います。

    「少年誌」的なかっこよさ

    会場がピンクのペンライトに切り替わると、メンバーが一列に並んだシルエットがステージ上に登場。中心には右手の拳を高らかに挙げた、ひときわ背の高い牧野真莉愛さんの姿が浮かび上がります。すると、そのまま牧野さんのイメージを印象づけるかのように、1曲目に『THE マンパワー!!!』が披露され、公演がスタートしました。

    右手拳を突き上げる姿がこれほど似合う人も、ハロプロさんのなかでは他にいないのではないかと思わせる冒頭の演出でした。ふだん雑誌やメディアではとてもスタイルよく愛らしい笑顔を見せる牧野さんですが、ここまでわかりやすく「かっこいい」に振り切れられる存在も貴重だなと改めて思わされます。

    「わかりやすいかっこよさ」というのは、ちょっと語弊があるかもしれませんね。というのも、いま「かっこいい」を売りにした女性アイドルはたくさんいるからです。たとえばハロプロさん、とくにモーニング娘。でいえば加賀楓さんなども、ビジュアル的なかっこよさや性格的なかっこよさが人気を博していたところはあるでしょう。しかし、牧野さん場合はそういった女性の持つかっこよさというよりも「少年誌的なかっこよさ」が抜群に秀でているんですよね。あの右手を掲げる姿は、過去にも武道館公演などで牧野さんが披露してきた『ONE PIECE』の有名シーンを彷彿とさせます。
    (書きながらライブを拝見していたのですが、まさか小田さんも最後のコメントで触れるとは思いませんでした!)

    野中美希の復帰と新メンバーお披露目

    『One・Two・Three』『そうじゃない』を披露すると、いったんステージはMCに移り、卒業公演で復帰した野中美希さんから挨拶が述べられます。そして牧野さんに話を振られると「今日も楽しく動き出していきましょう!」と声をかけ「ラヴィット!」の決めポーズを披露。もちろんこれは、牧野さんがご出演されていた『ラヴィット!』(TBS系列)で締めくくりに行われる決めセリフと決めポーズです。牧野さんはこういうところのエンターテインメント性が高く、短い瞬間にも間髪入れずに取り入れてくるところが、瞬発力の高さや応用力の高さを感じさせます。

    続けて新しく加入が発表された新メンバー3人(石川華望さん、鈴木もあさん、安田美結さん)のお披露目と挨拶が行われます。最後に岡村ほまれさんが「新メンバーをよろしくお願いします!」と挨拶した姿と3人の姿(+杉原明紗さん)が、次の曲『なんちゃって恋愛』で岡村さんのソロから始まる流れとも相まって、次世代のモーニング娘。を強く想像させてくれました。

    岡村さんは以前からリーダーとしての自覚がはっきりと示されるようになってきて、年末年始のハロコンでもその姿を強く感じさせました。いまモーニング娘。ではいちばん期待もできるし、期待も背負っているだろうメンバーでしょう。最後の挨拶の場面でも精神面での成長に触れるなど、自身の内面の変化が近年、大きいことをうかがわせていました。

    『気まぐれプリンセス』で一段階上がるギア

    そこからの『気まぐれプリンセス』はファンならずとも盛り上がらないわけにはいかない流れでしょう。山﨑愛生さんの声がこの曲はとても合っているなと個人的には思っている一曲です。小田さんの表現力に目を奪われそうになるものの、今日はそんな小田さんの表現力をも「真莉愛色」に吹き飛ばすかのようなはつらつとしたダンスを見せる牧野さん。そんな牧野さんは冒頭、いつもに比べるとややダンスを抑えているような印象もありましたが、『気まぐれプリンセス』で自分自身を抑えられないかのようにギアを上げ、得意のド派手ダンスを披露してくれたように思います。

    そしてこの曲の途中、もうひとつ見せ場が訪れます。それが杉原さんのソロダンスです。もうこんな目立つシーンを任されたのかと驚きましたが、それだけ期待も大きいのでしょう。実際、ソロダンスのシーンで見た杉原さんは「モーニング娘。らしいかわいさ」をものすごく内包したメンバーだと感じさせられました。ちょっとしたコミカルさにも対応できるし、でも基礎があって実力もあるからかっこいい方向にも振ることができる。そして何より「愛嬌」もある。17期として井上さんが加入した際には、モーニング娘。らしい「面白い子」が入ってきたな、という印象でしたが、杉原さんはモーニング娘。らしい「愛嬌ある子」が入ってきたな、という印象でしょうか。

    「かっこよさ」を感じる演出

    ここからは『3、2、1 BREAKIN’OUT!』『Hey! Unfair Baby』『わがまま 気のまま 愛のジョーク』と、わりとかっこいい系の曲が続きます。もしかしたらファンの方の印象は違うかもしれませんが、かっこいい系の曲で繋げているな、という印象で聞いていました。ここで少しだけ演出の感想も触れておこうと思います。

    というのも、たとえばVJとしても炎の映像が出てきたり、何より、照明の演出も陰陽がはっきりしていたりと、演出としてもかっこよさが浮き出る方向性が強かったように思うからです。個人的にはみやみに凝りすぎたりせず、とても好きな照明の使い方でした。モーニング娘。でこの演出ができるのは、他のグループにはない強みだなと思います。

    とくにモーニング娘。は一見、変わった曲も多いのですが、不思議と大箱で聞くと盛り上がりやすい曲だった、ということが多々あります。かっこいい演出ができることは、昨今のアイドル市場も踏まえると、新規ファンの獲得にも直結していくことなので、今後どう作用していくか楽しみです。後ほどまた触れますが、その「かっこよさ」の部分を、とくに弓桁朱琴さんが引っ張っていくのではないかと期待しています。

    まとめると、はっとするような演出は全体としてはそれほど多くはなかった印象だったようには思います。統一感があり意図が明確な照明に比べて、映像部分はシンプルな演出が多かったから、というのも一因でしょう。卒業公演という意味での比較でいえば、羽賀さん横山さんの卒業公演も、演出としては「メモリー」的な映像演出がありながらもステージ上の演出はシンプルという形でした。そのあたり、モーニング娘。はそもそも曲が強かったりと、いろいろなフックがあるので、ステージ上での演出が少しやりづらい部分もあるのかもしれません。

    ただ、今回に限っていえば、アンコール明けの演出が非常に牧野さんらしい、個性の強いものだったので、そのバランスとの兼ね合いもあり、ステージ上の演出が控えめだった、という可能性はありそうです。また、横道には逸れてしまいますが、MC中にTikTok風の枠のなかにメンバーが映し出されるという映像演出、このあたりのやや「一時代前」っぽい感じを出してくるのが、いかにもモーニング娘。らしいというか、ハロプロさんらしさがあってほっとするところです。

    目の前まで来そうな牧野さんのダイナミックダンス

    さて、ライブは進み、曲は『ザ☆ピ〜ス』へ。牧野さんのアイドルらしい笑顔が爆発します。そして牧野さんのダンスがとても元気いっぱいで、この曲のダンスをこれほど体現して踊れる人がいるのかと思わせるような魅力に溢れていました。右手を上げながら左右にステップを踏む振付がこの曲の代名詞的な振付になっていますが、その場面では、いつも牧野さんの振付に目がいってしまうといっても過言ではないほど、ダイナミックで大きなダンスを披露してくれます。

    曲はすぐさま『LOVEマシーン』へと突入し、メドレーに入ったことを告げます。右手を「L」の形にして「ウォウ ウォウ ウォウ ウォウ」と前に進む振付の場面では、本当に目の前まで来てしまうんじゃないかという勢いを感じる牧野さんのダイナミックなダンス。今回ももちろん、健在でした。『恋愛レボリューション』では曲の後半に「ほいっ!」というひと言のセリフが入るシーンがありますが、今回牧野さんが担当されており、その瞬間のアイドルとしての輝きといったらありません。

    冒頭に牧野さんのことを「少年誌的なかっこよさ」と触れましたが、たとえば「少年の心を持ったアイドル」といって思い浮かぶのは、ハロプロさんでいえば、Juice=Juiceの工藤由愛さんや、OGでいえばBEYOOOOONDSの島倉りかさんなどが直近では思い浮かびます。でも、両者とも乙女らしさもちゃんとあって、成長するにつれて少年の心の割合は縮小し、どんどんお姉さんらしさが増していきます。しかし、牧野さんについては、もちろん女性としての魅力はありながらに、「少年の心」もどんどん大きくなっている、そんな印象があるんですよね。その少年的な無邪気さでしか出せないアイドルの輝きが彼女の持ち味だなと、この歴代の名曲メドレーを見ながら改めて感じたところです。

    激しいダンスほど魅力が伝わる弓桁朱琴

    ここからシャッフルユニットのコーナー、そして再びメドレーと続くようになるのですが、せっかくなので、そのなかで目に留まったメンバーに焦点を当てて触れていきたいと思います。

    17期のお二人にはわりと大箱のたびに驚かされる場面や、目を奪われる場面があるのですが、今回もやはりそのお二人には目を惹かれました。とくに今回は、弓桁朱琴さんの印象が強く残った武道館だったと個人的には思います。

    これまではそこまで強く響いてはこなかったのですが、弓桁朱琴さんのいい意味での「声の太さ」みたいなのが、今回のライブでより強く感じられ、それがとてもすてきなアクセントになっていました。女性に対して「声の太さ」という形容の仕方は適切ではないかもしれませんが、「声の低さ」とも違い、それこそ「折れない強さ」というか、「支えられるような存在感」というか、特技の「応援」ゆえなのかもしれませんが、声に個性が宿ってきたのを感じました。

    また、以前から気にはなっていましたが、今回とくに思ったことがあります。それが、「弓桁朱琴さんはいったいどんなダンサーになるのだろうか?」ということです。私はダンスを重視して見ているところがありますが、弓桁さんは、柔軟性が高くしなやかで、動きが大きく見えるという強みがあります。そして何より、ダンスの表情が豊かなんです。ですから、個人的にどんなダンサーになるのか、というのが非常に気になるメンバーのひとりです。

    ちなみに「ダンスの表情」も豊かですが、ダンス中のお顔の表情も豊かです。特に激しいダンスで笑顔をキープすることはかなり難しいことなのですが、キリッとした表情と笑顔の切り替わりが多く、激しいなかで笑顔を見せることに長けているなと思います。この表情に私も惹かれてしまいました。ファンのなかにも弓桁朱琴さんのダンスに期待を寄せている人は多いと思いますし、彼女のダンスが魅力として語られている部分はあると思います。

    ただし、「ダンサー」という目で見ると、彼女はまだ「ダンスの身体」にはなっていない印象です。「ダンスの身体」というのは、決して「体型」のことを言っているわけではありません。ダンスをやっていない人には説明が難しいのですが(サッカーを経験したことがない人にボールの蹴り方やサッカー選手の筋肉のつき方を教えるような感覚でしょうか)、神経と各部位の筋肉がつながっていて、あるべき場所に「ノータイム」で身体が自然と動くような状態になっていること、ひとつひとつの動きが「体を動かしている」ではなく自然と動きが決めポーズになるような適切な位置に動くこと、その感覚を「身体が覚えている」ようなことを指しています。

    石田亜佑美さんは、彼女のダンスを見ただけで「ダンスの身体として仕上がっているなあ!」と思うほど馴染んでいました。石田さんが現役のときでいえば、ハロプロメンバーのなかでも(秋山眞緒さんや里吉うたのさんはダンスの身体になっている印象ですが)その点では並ぶ人はいなかったと思います。

    もっともっとダンスが馴染んで、弓桁さんが「ダンサーの身体」になったらどんなパフォーマンスに進化するのか、私もいちダンサーとして興味深い限りです。途中のソロシーンで見せたバレエダンスは身体が馴染んでいる印象がありましたが、石田さんも語られていたように、アイドルダンスはまったく別ものです。バレエダンスも含めて、もっと身体に馴染ませていったときに披露されるダンスが本当に楽しみでなりません。「うまいダンサー」になるかどうかは別として、ダンサー向きの性格なので、ダンサーになってほしいと思ってしまうくらいです。

    余談ですが、成長していくにつれて、「かわいさ」と「かっこよさ」の両方、さらには「色気」なども身についてくると思うので、そうなったときに人気がいま以上に爆発していくのではないかと思わされます。

    独特の引力で掴みにくる井上春華の魅力

    今回、まったく違った魅力を見せてくれたのが井上春華さんです。シャッフル曲では16期の櫻井梨央さんと17期のお二人で『バイセコー大成功!』を歌い上げ、かわいらしさほとばしるパフォーマンスを披露しましたが、この曲で井上さんの弾け具合がとにかく目を引いたんですよね。

    「表現力」というと少し違うのですが、「演技力」がぐんと上がったような印象を受けました。もっと細かく言うなら「演技力」そのものというよりも、「演技に対しての心理的な障壁がなくなった」という印象に近いかもしれません。物怖じせずに演技をするようになっていて、結果的に、演技にリアリティが生まれるようになり、曲の表現力、表情も含めた見せ方が進化しているように感じました。

    井上さんについては、一度視界に入ったら目を離せないタイプの「引力」がとても強い。目の前でライブを見ていてもそうですし、一瞬映し出される映像のなかでも、常に一定のインパクトがあります。いい意味での狂気があるというか、現実離れしたような凄みを感じます。それも彼女の「没入力」によるものなのかもしれません。とにかくいったん目をやると、ぐっと掴まれるような感覚になる引力を持っているのです。

    見ていて別の世界にいるかのような一種の境界線を井上さんには感じるのですが、一方で弓桁朱琴さんは「素」の状態を見せてくれている印象で、そういった「現実」と「創造」の境界線もなく、すごく距離が近くに感じるパフォーマンスだなと思います。「目の前のあなたに届ける」というスタイルなのかもしれませんね。アイドルとしてどちらが正解というものはありませんが、この2人が同期として存在しているというのは、本当に不思議というか、こんなことって起こるんだなと思わされます。

    当初おふたりが加入した際も「対照的な二人です」ということはお二人の口からよく語られていましたが、私はそれほどの違いは感じてはいませんでした。なぜなら、その「正反対」というトピックは「真逆のことを考えていた」「真逆の選択をした」といった表面的なエピソードが多く、対照的というには弱かったからです。

    しかし、実際のステージ上のパフォーマンスというのは「嘘がつけない」もの。そこで、ここまで対照的なものを見せつけられると、いよいよこれは「対照的な2人」ということを認めざるを得ません。「発言しているうちに現実になる」ということもよくありますが、いずれにせよ、まったく違った方向に魅力を放つ2人が同期でコンビというのは、グループとしても大きなフックになりますし、大きな財産です。今回の公演で唯一残念だったのが、おふたりによるMCの掛け合いが見られなかったことでしょうか。しばらくはこのお二人が注目の対象となっていくだろうなと感じた今回の武道館だったように思います。

    山﨑愛生さんが生み出す「切なさ」

    今回、印象的だったメンバーのもうひとりが山﨑愛生さんです。岡村ほまれさんも先ほど触れたように、すでにグループの中心的な存在として目立っていましたし、ユニット曲『CRAZY ABOUT YOU』も含め、15期コンビのお二人で登場するシーンも多かったので、15期として目立っている部分もありました。ただ、17期のお二人と違うのは、より「個」が目立っていたのは岡村さん、そして山﨑さんのほうだったということです。

    今回、山﨑さんは「切なさ」を帯びるようになった、という印象がありました。デビュー以降、「元気の良さ」や「はつらつさ」という単語が似合う彼女でしたが、ここ1年くらいで大人っぽさが出てきたこと、また、グループ内の変化なども受けてか、切なさのある表情が見られるようになりました。もちろんいまも元気いっぱいの笑顔を見せてくれるシーンはたくさんありますが、感じたままに言うならば、単純な笑顔ではない、「感情が読めない」といったフラットでアンニュイな表情が増えた印象です。それがミステリアスさや山﨑さん自身の奥深さにもなって、「想像する余白」を曲に生み出しているメンバーになっているなと感じます。

    初披露の新曲『Lonely…But not Alone』

    ユニット曲が終わると「MARIA MAKINO MEMORIAL」という映像コーナーが展開されます。これはツアーでも披露されていたのでしょうか。10年以上の時間を過ごしてきて、見た目的にも精神的にも成長があり、そして何より、いつも元気な姿を見せる牧野さんだから成立するような映像シーンだったと思います。最近、ハロプロさんは新メンバー発表のやり方も含めて、近年のアイドル業界のトレンドを取り入れてきていますが、こういった映像の差し込み方もその1つだと感じます。

    MCやメドレーをあいだに挟み、道重さゆみさん曲『Fantasyが始まる』をセンターで歌う牧野さん。その姿にぐっときている間にどんどんステージは進み、初披露となる新曲『Lonely...But not Alone』へと移ります。9月発売となる77枚目のニューシングルとのことで、牧野さんが歌う最初で最後のステージです。ダンサブルな曲調で前向きさを感じる歌詞のある曲。私はさほど詳しいわけではありませんが、いまの音楽的な流行も意識したサウンドという印象がありました。

    全体のパフォーマンスとしては初披露ということもあり、まだ成熟しきっていない印象もありましたが、これを若手メンバーがものにしていったとき、新しいモーニング娘。の姿がまたひとつ生まれそうな、そんな印象の曲となっていたように思います。

    牧野真莉愛らしさ全開の無言の挨拶

    ステージも終盤となり、最後の1曲の前にメンバーひとりひとりから挨拶および牧野さんへのコメントが述べられます。比較的、言葉短めにそれぞれが挨拶しているのが感じられました。そんななか、やはりみなさんの注目は毎回「なにか」をやってくれる牧野さんでしょう。今回の牧野さんは、手話を披露し、その意味も告げずにひと言「ありがとうございました!」と元気よく告げてマイクを小田さんに渡しました。

    拝見していて、「これぞ牧野さん!」というパフォーマンス力に改めて感心しました。自分の役割をよく認識していて、大舞台でそれを当たり前に実行する強心臓も持っている。素晴らしいですね。ちなみに、プロ意識の高い人はみな、コメントをちゃんと短く収めてくるなという印象が特にアイドルさんに関してはあります。なぜアイドルで特にその印象が強いかというと、アイドルは「話すこと」のプロではないので、こういった場面でのコメントが長くなりがちだからです。でも、ちゃんとプロ意識を持ってタイムマネジメントができる人、自分の役割を外さない人は時間を守ってくるし、なんなら時間を毎回巻いてきます。たとえそれが1秒だとしても、その1秒を短縮できることがスタッフとしてはどれだけ助かるか。その代表例が先日卒業された元BEYOOOOONDSの高瀬くるみさんであり、Juice=Juiceの工藤由愛さんです。

    まさかの二度、お名前が登場してしまった工藤さんですが、工藤さんは毎回伝えたい情報量が多く、早口ながらはっきり聞こえるような話し方で、きっちり時間を短くまとめてくる。こういうところにプロ意識を感じるところです。牧野さんも毎回、突拍子もないことをしているようで、私の目には、インパクトあるパフォーマンスとコメントをしっかり短い時間で残している存在だと映っていました。絶対にダレるような時間の使い方をしない。そんなところが「1秒」の有無で結果が左右されるテレビの世界を闘い抜いてきた牧野さんならではだなと思っていました。

    長年メンバーとして活動してきた小田さん、野中さんは涙を流されていました。小田さんが牧野さんを評して「少年誌の主人公」という表現をしていましたが、それ以外の形容詞が見つからないといった個性を持てる、それが何よりもアイドルとしての強みであり、牧野さんの培ってきた個性だと思います。野中さんは、牧野さんに「一緒にまだやっていなかったのでやりたい」と言ってセンターに行き、「まりあんラブりん」をくるっと一回転しながら牧野さんとともに披露します。こういう自己紹介的な動きを身につけているのも、アイドルとしてちゃんと基本的な要素を欠かさない牧野さんの姿勢の表れでしょう。

    牧野さんの礼儀正しさ

    さて、ここで少しだけ話題を変えまして、私が牧野さんに抱いている印象について少し触れさせていただきたいと思います。というのも、私は牧野さんと直接一対一でお仕事をする機会はなかったのですが、お会いした現場を通して印象が大きく変わったお一人でもありました。飾らずに言うならば、牧野さんは「また仕事をしたい」と思わせる力が抜群に高い方です。「直接仕事をしていないのに何がわかるんだ」というツッコミを受けそうですが、現場で挨拶をしたり、立ち居振る舞いを見ているだけなのに、「この人なら一緒に仕事をしたい」と思わせる、そんな魅力がある方でした。

    前回の記事でも触れたので、何度もお名前を拝借するようで、申し訳ない気持ちもあるのですが、ぜひ先生の軌跡や功績も残したいという使命もあるのでつい触れてしまいます。そう、牧野さんのお姿を見たのも夏先生の関係でお仕事をさせていただいたときでした。といっても、それはご逝去されてからのことになります。本来、あまり表に出す話ではないのでこれまでも表に出してはこなかったことですが、可能な範囲で触れつつ、牧野さんのご卒業にほんの少しの華を添えることができたらと思います。

    夏先生がお亡くなりなり、各所へのご連絡やさまざまな手続き、準備など、多くのことが生じました。そのなかで私が担当させていただいた部分として、訃報の公式発表、新聞・テレビ・ウェブなどメディアのニュース記事対応、夏先生の追悼番組や追悼企画・特集の対応、そして「お別れの会」含めたプロデュースなど多方面で携わらせていただきました。

    そのなかで、とくに夏先生を偲ぶ番組企画として「うたコン」(NHK)、「中居正広の金曜日のスマイルたちへ(金スマ)」(TBS系列)、「24時間テレビ」(日本テレビ系列)などで追悼の特集をしてくださいました。もちろん、夏先生の所属されている個人事務所が窓口ではありますが、私も関わらせていただいていたので、番組によっては初回の打ち合わせから台本の確認・赤字入れ、リハーサル、本番収録まで立ち会ってきました(上記収録はすべて立ち会っています)。

    番組収録ではこちらが楽屋にご挨拶に行くこともあれば、ご挨拶に来ていただくこともありました。そのなかで、牧野さんは本当に姿勢もしっかりとしていて、丁寧に向き合って挨拶をしてくださる印象が残る方でした。「なんて礼儀正しい方なんだろう…」と私だけでなく、私たち側の関係者は思ったものです。

    当時、私は牧野さんのステージ上でのパフォーマンスやバラエティ番組でのご活躍、雑誌でのご活躍などももちろん知っていました。その印象だともっと自由奔放な方かな、と失礼ながら想像しているところがありました。しかし、実際にはものすごく礼儀正しく丁寧な方でした。ご挨拶の際には、代表して声をおかけになるのはそのときのリーダーの方がされますので、牧野さんではありません。正直、ちょっと力を抜いていてもバレない立ち位置に立ってご挨拶するわけですから気が緩んでいても仕方ありません。しかし、そんなのは関係なく、こちらが襟を正したくなるほど、すごく丁寧に挨拶をしてくださる。だから私たちも目の前にいない彼女に目が留まったんです。もちろん、自分を主張しようとしているわけでもありません。きっと本当にひとつひとつ、すべての現場でこのような対応ができる方なんだろうなと思ったものです。

    そしてそれは楽屋挨拶だけではありません。だからこそ印象に残っているわけですが、夏先生の「お別れの会」でもやはり同じでした。「お別れの会(正式名称「夏まゆみ 魂に出会う会」)ではモーニング娘。さんはじめ多くの教え子の皆様にもご列席いただき、当時現役メンバーを代表して石田亜佑美さんにはご挨拶もしていただきました。来ていただいた現役メンバーのなかには、牧野真莉愛さんもいらっしゃいました。「お別れの会」では私がご来賓の方々を担当しておりましたので、そちらも含めて、牧野さんを拝見する機会がありましたが、やはり牧野さんは強く印象に残っていましたし、それは私だけではなく夏先生の関係者の方も同じでした。

    というのも、牧野さんは参列者のなかでもいちばん地味じゃないかというくらい、「ふつう」の喪服姿で来てくださったのです。当然、その場にはカメラがたくさん入ることはわかっていたことでしょう。映像や写真で流れる可能性も大いにあります(実際、全スポーツ紙で報道されました)。アイドルであるだけではなく、テレビや雑誌での仕事もある彼女なら、ちょっと見栄えのいい服装を選びたくなるのが普通でしょう。しかし、そんな様子はまったくなく、本当に喪に服すという気持ちが伝わるような服装で、また、お別れ会のあいだもずっと姿勢を崩さず、石田さんが挨拶されているときもまっすぐ夏先生を見てくださっていました。それがどれだけ私たちサイドの心に響いたか。

    もちろん、多くの方から温かい言葉をいただきましたし、長い時間をともにした教え子の方のなかにはむせび泣くほどの方もいらっしゃったりと、たくさんの温かい感情に触れました。ですので、これは誰かと比較するようなことではまったくありません。それは断じて違いますし実際、比較もしていません。だからこそ本来、外に出すような話でもありません。ただ、一連の出来事を通して、牧野さんの礼儀正しさが強く印象に残るくらい丁寧だったのは間違いありません。そのなかでもとくに私ふくめ、夏先生の関係者が胸を打たれたのが、牧野さんのブログでした。夏先生の直接の教え子の方はたくさんいらっしゃいますし、その方々からのコメントはもちろんどれも特別なものがあるのですが、牧野さんについては、20周年記念のときに一度『モーニングコーヒ(20th Anniversary Ver.)』で振り付けをしたときにご一緒した、という関係になります。

    しかしそのたった1回の関係のなかでも、普段の文体とはまったく違う、とてもまっすぐな気持ちの追悼ブログをあげてくださったことに、まだまだ心理的につらい状況のなかにいた私たちがどれほど元気づけられたかわかりません。

    これも誰かと比較することではまったくなく、すべての方の言葉がとてもありがたいものですし、おそらく私は、すべての方のコメントに感謝の思いで目を通させていただきました。

    ただ、それでも牧野さんの心のこもったブログに私たちサイドが強く胸打たれていた事実があることは確かです。そのなかで、番組でご挨拶したり、「お別れ会」でのご様子を拝見したり、ということがあって、そのお人柄に相違がないことも実感した、という経緯がありました。

    むしろ、バラエティの特性を考えると、ちょっと破天荒に見えるパフォーマンスやインパクトあるコメントを残すこと、ステージで元気いっぱいに毎回踊ること、それがどれほど難しくて貴重な存在かというのがわかります。とくにメディアとしてものづくりをする立場からすると、そういった存在には「助けられる」場面が多々ありますので、重宝したくなります。だからこそ、実際にメディアに出つづけてきた側面もあるのでしょう。アイドルとして「個性を強くする」「個性を強く出す」というのは当たり前の生存戦略であり、必要な要素の1つです。その個性を出し入れしながら、礼儀正しさを忘れない。それが牧野さんだったと私は思います。

    牧野さんは昨年、モーニング娘。がいろいろな出来事で揺れるなか、間接的に注目を浴びることとなりました。私は、それに対して偉そうに何かを語る立場ではありませんが、ただ、あれだけ礼儀正しい行動ができて、自分の役割をちゃんと場所に合わせて考えられる人が、SNSで興味本位であれやこれや言われるのは悲しいものがありました。もう世間も忘れているかもしれない話題を掘り返すのもよくないのですが、とはいえ、少しでも勘違いした人がいるのも嫌だなと思うので、少しばかり触れさせていただき、牧野さんに当時の感謝をお伝えするとともに、恩返しができればと思います。

    くり返しになりますが、私の印象として強く残っているのが「この人なら一緒にお仕事したい」という気持ちで、それはすべて溢れ出る彼女の礼儀正しさ、素直さによるものでした。もっとそれを実感するエピソードは他にもあるのですが、書ける範囲のエピソードとしては残念ながら今回の内容が最大限と言ったところです。今回の卒コンも、そんな牧野さんの「真っ直ぐさ」がよく出ていたステージだったんじゃないかと、私の目にはずっと映っていました。

    これからの新しいモーニング娘。

    さて、個人の思い出話が長くなってしまいましたが、アンコールあけに牧野さんがステージに登場すると「牧野真莉愛卒業セレモニー」という文字がスクリーンに浮かび上がり、「まずは牧野真莉愛に花束贈呈です」という字幕が続きます。すると会場袖から飯田圭織さんが登場して花束の贈呈が行われました。

    『モーニングコーヒー』をイメージしたドレスにしたと笑顔で語る牧野さんに対して、飯田さんは涙を流しながら「真面目で努力家な真莉愛」という一面を語り、やはり先輩から見たイメージも同じだったんだなと感じることができました。その後の「セレモニー」については長くなるので割愛しますが、きっといろんなところで触れられ、語り継がれていくことでしょう。

    全体の「モーニング娘。のパフォーマンス」としては野中さんもほぼ不在となるなかで、シャッフルユニットを見ていても人数の少なさが与える影響の大きさを感じたところがありました。その点は岡村さんもコメントで「こんなに少ない人数で始まったツアーは初めて」と触れていましたし、これまでパフォーマンスの中心で引っ張ってきた小田さんの(ステージ上での)役割を分散させているだろうことからも、若手へと中心軸を移している「移行期」であることが感じられました。

    「作り上げている段階」の不安定さもある一方で、それゆえに新しい魅力も散見されており、「新しいモーニング娘。」が生み出されていく期待感が感じられたステージでもあったかと思います。そしてその中心にいるのは、今後、モーニング娘。を引っ張っていくだろう岡村ほまれさんでしょう。岡村さんは過去にも触れていますが、ダンスの基礎的な動きがしっかりしていて安定しています(個人的には以前からそこに注目していました)。歌唱でも重要なところを担う場面が多かったように思いますし、バラエティ特性もある方です。最近では堂々とコメントするような場面も増え、頼もしさもついてきました。そこに、先輩となった弓桁朱琴さんと井上さんの対照的な17期コンビが連なり、そんな「先輩」たちと新メンバーがどんな化学反応を起こしていくのか。そしてもちろん、小田さんの卒業というビッグイベントも控えています。

    ここ数年変化に乏しいと言われてきたモーニング娘。に、どれだけ大きな変化が訪れ、私たちの想像とは違う変化を遂げていくのか。それがどんな変化であれ、楽しみなところです。

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    夏まゆみの『エースと呼ばれる人は何をしているのか』を担当しベストセラーに。以来10年以上にわたり夏先生のプロデュースを行い、アイドル文化に携わる。SPA!にてアイドル記事を執筆。夏先生のDNAを受け継ぐ「振付師育成カリキュラム」リーダー。8:2でハロプロ関連多めに書いていきます

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