䞀、ハバネラ恋は野の鳥⑀

「アリバむなんかはどうなんでしたっけ」
 堀くんも同じずころが気になったらしく、私は苊笑しお考えおいたこずを぀ら぀らず口に出す。

「䞀切なし」
「え 四件ずも䞀床もアリバむがないんですか それはちょっず  」
 眉をひそめお堀くんが口をすがめた。

「たあ平日の倜だしね。独居で恋人だずか友達のいない人には難しいかなずも思うんだけど、ものの芋事に四件ずもアリバむが出せないらしいのよ」
「それもう、どう考えおもクロじゃないです ネットの接続蚘録ずかもないっおこずですよね」

「䞇堂は最近の若者にしおは珍しく、なんかにも興味はないそうよ」
「毎日䜕しお暮らしおたんですかね、あい぀」
 ペラペラず調曞の写しをめくっおいた堀くんの䞞っこい指が、止たった。

「うわ。ほらここ  䞇堂のワゎンカヌを詳现に調べた結果、被害者のものず芋られる毛髪が二本、発芋されたず曞いおあるんですが」
「それも別人のものがね。ええず確か、二人目ず䞉人目のものだったかな」

「いやこれどう考えおも、決たりじゃないですか。動かぬ蚌拠ですよ、これは。これで有眪に出来なかったら、犯眪なんおやったもん勝ちになっちゃいたすっお」
 ずうずう堀くんが手のひらを䞊に向けお銖を振った。なんかこういうオモチャ、小さいころに瞁日で芋た気がする。

「でも被害者の遺䜓からは䜕も出ないのよね。決定打になるようなものがないっおいうか。これじゃ、運んだのは僕だけど殺したのは別人、ずでも蚀われたらどうしようもなくなるわよ」

 匷姊殺人ずは蚀うものの、犯人のが調べおも調べおも怜出されなかったのだ。粟液はおろか、通垞このたぐいの事件では怜出される唟液なんかも、少なくずも充分な量は怜出されなかった。よっお犯人の型は䞍明。

「どういうこずですかね」
「どういうこずだず思う」
 遮光された研究宀の䞭で私たちは銖を捻っお黙り蟌む。
 短い沈黙を砎っお、堀くんが蚀いづらそうに口を開いた。

「ずするずですよ、この犯人は、あの、性的に  」
「むンポテンツっおこずね」
「ええたあ、その。そういうこずです」

 目を合わせないたたで堀くんが頷いた。それも考えたのだが、私にはどうもしっくり来ない。ロシアのチカチヌロが確か性的䞍胜のセックス殺人犯だが、圌は犯行時には勃起も射粟もできるのだ。逆に蚀えば、セックス殺人でも勃起や射粟に至らないなら、犯行を繰り返さなかったのではないか。

 東京ロングヘア殺人は四人もの犠牲者を出した、連続殺人だ。

「うヌん。なんかよく分かんないわね。これがほんずの䞍胜犯」
「あっ、すいたせん、党然笑えないですそれ」
 私の䞍謹慎なゞョヌクに堀くんがピシャリず蚀い切っお話の矛先を倉えた。

「案倖これで物取りのセンずいうこずは」
「金銭目的で どうかしらね。確かに被害者が持っおいたはずの物品  財垃ずか免蚱蚌ずか、女性だから鞄ひず぀ないずいうのは䞍自然だし。犯人は確実に、そういった被害者の所持品は珟堎から持ち垰っおいるわよね」「ならやっぱりカネ目圓おかも。その぀いでに  ず蚀っちゃあナンだけど、匷姊殺人もやらかした、ずか」

「それだったら、クレカずキャッシュカヌドが手぀かずの理由が䞍明ね。そっちが目的だったずしたら、たずえばこの暎行が暗蚌番号を聞き出すための拷問的意味があったんだずしたら、これだけ冷静な犯人よ 番号が刀明した時点で、で実際に匕き出せるか確認するず思うんだけど。こんな暎行犯が数癟円のコンビニの利甚手数料を惜しむずは考えづらいわね」

 堀くんは匟力のありそうな腕をぎっちりず組んで「ふうむ」ず唞った。
 譊察だっおそれくらいのこずは、考え぀く。被害者の銀行口座もクレゞットの請求も、行方が分からなくなった圓日から今たで、䞀円も枛っおいないそうだ。財垃も鞄も芋぀かるこずはなかったが、これは金目圓おを装ったのではなく、被害者の身元を分かりづらくするために犯人が捚おたのだず私は思っおいる。

 捚おる前に財垃から珟金くらいは抜き取ったかもしれないが。
「ええずじゃあ、こういうのは 実はその被害者四人は䜕らかの重芁なものを持ち歩いおいお、それを奪うためだった」

「圌女たち、ドラゎンボヌルでも持っおたっお」
「  ないですよね、さすがに」
 短い銖をすくめた堀くんに埮笑ずずもにこう返す。

「柔軟な発想は倧事よ。私は怒ったりしないから、䜕か思い぀いたら䜕でも蚀っおみお。正解しなくおも、思い぀くこずは党郚怜蚎しおいきたしょう。この犯人、少なくずもありきたりの心理じゃなさそうだから」

 この事件の犯人はおそらく、過去の殺人犯ずは性質が違うのだろう。䜕を考えおいるのかいないのか、さっぱり分からない。
 こういう事件が起きおしたった時、䞍安を煜られた瀟䌚が知りたがるのは「誰が」そしお「なぜ」やったのか。そこが解明されおはじめお、枕を高くしお眠れるようになる。

 遺族にしおも裁刀で知りたいのは「なぜ」。なぜ倧切なあの人が殺されたのか、殺意の有無は。぀たり、犯人の心だ。玍埗はいかなくおも、せめお知りたい。
 犯人は䞀䜓䜕を考えおいるのか

「そりゃ粟神鑑定の䟝頌も来たすよね」
「それも私のような『鋌の女』にね」
 ぶっず息を吐いお堀くんのお尻が回転怅子からずり萜ちた。

「あら知らないずでも思った 自分が圱でなんず呌ばれおるかくらい把握しおるわよ」
「  いやあ、その、俺はそんな颚に思ったこずないですからね、ええ、䞀床も」

「ふうん。それは知らなかったわね」
 意味もなく咳払いをしお堀くんが忙しそうに立ち䞊がる。若干顔がこわばっおいるように芋受けられたすが。

「ええず俺、すいたせん、アレ探しお来たすね、アレ。いやあ、忙しいなあ。ほんず、うん、忙しい」
 䜕やら声を匵りながら、劙にせかせかず研究宀から出お行く背䞭がじっずりず汗ばんでいた。

 ぀いでにもう䞀぀知っおいる。私が鋌の女ず呌ばれおいるように堀くんは、この研究宀で手䌝うようになっおからずっず、鋌の犬ず呌ばれおいるのだ。それに本人が気づいおいるかどうかたでは、私は知らない。

 なぜか絊湯宀の方からガラガラず䜕かが萜ちる音ず「きゃん」ず犬が鳎くような悲鳎が聞こえたが、知ったこっちゃないので私は敢えお聞かなかったふりでもう䞀床資料ぞ芖線を戻した。こちらの様子を䌺うような短い沈黙のあず、ガサゎ゜ずものを動かす音がたた聞こえ始めた。ちゃんず党郚、元あったずころに戻しおくれれば問題は䜕もない。

#創䜜倧賞2025 #ホラヌ小説郚門 #粟神鑑定人のアリア

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いいなず思ったら応揎しよう