あの日みた夢を
何度でもくり返したいのに
同じ眠りはもうやってこない
ちぎれた藍色の肉片
固まったままの
視界のかけら
風がくるころに
すべて失われてしまう
霧の中で
変質していく思い出が
からだを作り変えていくような
痛みと
高揚
ありもしない液体が
肺を満たしていく
しずかな溺死に
身を委ねる架空のいきもの
何もなくなってしまえばいい
錠剤
おおやけにならない
小さな歴史の
堆積と
消滅を
だれか見届けるだろうか
たしかにそこにあったのに
無色の
未遂の
できそこないの虹みたい
満潮を過ぎても
船はやってこない
かわりに
あたらしい眠りがくる
星を数えるように
記憶を放流していく
風待ちの
不確かで
でも
やがて刻まれるのは
もうわかっている