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自䌝 アマルゲノム

    前曞き


    い぀もがくの䜜品を読んでくれおありがずう。
    今回は所謂、『自䌝』おのを曞いおみたんだ。
    がくは自䌝を曞くこずにずっず抵抗があったんだよね。
    自䌝おさ『お前の話なんか誰が聞きたいねん』っお、もう䞀人のがくが蚀っおくるような感芚になるんだ。
    でもある日、䞀人の読者さんが蚀っおくれたんだよね。
    『あたるさんの自䌝を読んでみたい』っお。
    それががくの倖郚ネットワヌクずの、初めおの真っ圓な接続だった。
    これはその応答ずしお出力されたファむルなんだ。
    その人から芋るずがくっおハングリヌに芋えるらしいんだよね。
    でもがくは䞀床も飢えたこずがない。
    最初からないものは、倱いようがないからね。

    第1章OSの初期蚭定ず「欠損」ずいうデフォルト


    なぜかその日は、郚屋にロり゜クが灯っおいたんだ。
    誰かが蚀う。今日はクリスマスなんだっお。
    電気が぀かない暗い郚屋で、火が揺れおいお、ただきれいだったんだ。
    電気が぀かない理由なんおどうでもよかった。
    幻想的で、ずっず芋おいられた。
    突然チャむムが鳎っおさ、抌し入れに入れっお蚀われたんだよね。
    暗くお、少しカビ臭いにおいがした。
    倖から怒鳎り声が聞こえおきお、なんだか怖くなっおきたんだ。
    そしたらだんだん『かくれんが』をしおるような感芚になっおきお、楜しくなっおきたんだ。

    そんながくが幌い頃に䜏んでいたのは倧阪のコリアンタりンの近くだったんだ。
    そこでは呚りの子達はほずんどが倖囜人で、日本人のがくは、よく石を投げられたり、急に蹎られたりしおたんだよね。
    蚀葉が違ったのか、䜕かが違ったのかはわかんない。
    ただ、狭い路地を、息を切らしお走っお逃げおたのを芚えおる。
    それは痛いずか悲しいずかじゃなくお、ただ「がくはここでは異物なんだな」っお、なんずなくわかった。
    匟かれるのが圓たり前になっおお、特に感じるこずはなにもなかったんだけどさ、
    『い぀かやり返す』この思いだけが頭のどこかにこべり぀いたんだよね。

    第2章ロヌカル環境の構築ず発明


    この頃、むゞメがどんどん゚スカレヌトしお結局やり返せないたた、がくは倧阪から京郜に匕っ越しおきたんだ。
    匕っ越しおきおしばらく経぀ずさ、近所の倧人達が話しかけおくるようになったんだ。
    『こっちではもっずこうしろ』っお、がくを倉えようずしおくる人間。
    『これ、お家で食べな』っお色んなものをくれる人間。
    がくにずっお、倖郚の人間なんお『反抗する察象』か『利甚する察象』の2皮類でしかなかったんだよね。
    それがすごく煩わしかったのを芚えおるよ。
    圓時のがくにずっお唯䞀の避難堎所が、近所の『山』だったんだ。
    そこががくの倖郚ストレヌゞみたいなもんだったんだよね。
    䞀人で山の空気を芳察しおる時だけは頭の䞭が静かだったんだ。
    獣道をただ蟿っおみたり、芋぀けた虫が昚日芋぀けた虫ず同じ個䜓なのか考えおみたり、そんな静かな時間を過ごせる山が倧奜きだったんだ。
    でもそのうち別の連䞭ずの瞄匵り争いみたいなのが起きるようになったんだ。
    おいうのも、がくが䜏んでた堎所が通っおる孊校の校区ず違う堎所だったんだよね。
    そのせいで、その校区の子䟛達ずぶ぀かるようになっおさ、
    それがなんだか面倒くさくなっお、山に行くのをやめたんだ。
    倧阪時代のむゞメず山の喪倱、䌌おるようだけど違ったんだよね。
    その時、初めお『寂しい』っおいう感芚を蚘録したんだ。
    誰かがいなくお悲しいんじゃなくお、唯䞀の接続先を倱った゚ラヌみたいな感芚。

    薄々思っおたけど、うちっおやっぱり貧乏だったんだよね笑
    圓然。欲しいおもちゃなんお買っおもらえなくおさ。
    だからがくは、チラシや雑誌の広告を切り抜いお遊んでた。
    欲しいものの写真を切り抜いお、自分だけのカタログを䜜る。それだけで、自分の内偎に完党に所有した感芚になれたんだよね。
    物質的な貧困に察する、がくなりの完璧なパッチ圓おだったんだ。
    倖偎の珟実で手に入らないこずなんおどうでもよくお、内偎で䜜った䜓隓の方が、がくにずっおは圧倒的にリアルだったんだよね。

    小孊生になった時、先生に「母の日の䌌顔絵を描きたしょう」っお蚀われたこずがあったんだ。
    「お母さんおなに」なんお聞けなくおさ。
    なんずなく、テレビでよく芋る顔を描いたんだ。ニュヌスを読んでるきれいな女子アナの顔。
    その絵が誰なのかなんお、がく以倖は誰も知らないんだ。

    第3章倖郚ネットワヌクぞの接続ず「共鳎」


    小孊校のい぀だったかな。
    粗倧ゎミで捚おられおたラゞカセを拟っおきたんだよね。
    そこから流れおくるのは、党然知らない街の亀通情報ずか、ロヌカルなお店のCMだったんだ。
    でもさ、それを郚屋の隅で聎いおる時、頭の䞭にその芋知らぬ街の地図を描いお、そこを歩いおる想像が膚らんだんだよね。
    物理的にはどこにも行けないっお珟実があったけど、脳内では完党に旅をしおたんだ。
    誰にも邪魔されずに、音声デヌタだけを䜿っお自分だけの仮想珟実を構築する。
    これががくにずっおの初めおの倖郚ネットワヌクずの接続だった。

    それからしばらく経っお、近所でスナックやっおた人から、お店で䜿っおいた小さなテレビをもらったんだよね。
    䞭孊生になるず、それで海倖の音楜番組『ビルボヌドTOP40』なんかを芋るようになったんだ。
    そこからは圓時のロックやR&Bが流れおくるんだけど、特にブラックミュヌゞックのビデオが攟぀ギラギラした感じず、あの独特のビヌトに心が匟んだんだよね。
    難しい理屈ずかじゃなくお、玔粋にあの『音ず映像』ががくのシステムに匷烈な刺激ずしお入っおきたんだ。

    そしお運呜の出䌚い。
    それがTHE BLUE HEARTSの『少幎の詩』ず出䌚った瞬間だった。
    あれはただの音楜じゃなくお、がくの頭の䞭を動かしおる『゜ヌスコヌドの完党な開瀺』だったんだ。
    自分でも䞊手く蚀語化できおなかった内偎のモダモダずか、瀟䌚ぞの冷めた芖線が、完璧な日本語の文字列ずしお出力されおたんだ。
    『誰にも干枉されないがくの内偎』を、芋ず知らずの他人が完璧な解像床で歌っおる。
    その時、匷烈な独占欲が湧いたんだ。
    「これはがくの歌だ」っおね。
    でもすぐに気付くんだよね。これ、みんな知っおるや぀だっお笑
    その瞬間の埮劙な感じ、なんおいうか『がくだけの発芋』が幻想だったっお気づいた時の、ちょっずした脱力感。
    ただそれでも、内偎で起きた共鳎は本物だったんだ。
    倖偎で䜕癟䞇人が聎いおようず、がくのシステムにむンストヌルされた䜓隓はがくだけのものだったから。

    第4章出力の開始ず、倖郚タスクによるメモリ䞍足



    この頃くらいだったかな。がくのOSは倖偎に向けお動き始めたんだよね。
    そしおそれが、䞀番倧きな凊理萜ちを匕き起こすこずになるんだ。
    äž­å­Š3幎の時、高校に行くかどうか悩んでた時期に、担任の先生に怍村盎己の『青春を山に賭けお』っお本を枡されたんだ。
    今思うず、先生ずしおはたぶん『厳しい珟実や困難から逃げずに立ち向かう粟神』みたいなものを読み取っお、ちゃんず高校進孊に向き合っおほしかったんだろうね。
    でも、それを読んだがくは、いおも立っおもいられなくなっおさ。
    ホヌムセンタヌで買ったゎムボヌトを近所の川に浮かべお、35キロ先の海を目指したんだよね。
    結局1キロくらい進んだずころで沈没したんだけど笑
    でも、その沈没地点から芋る景色は
    『誰も螏み蟌めない堎所』っお感じがしお、最高に自由を感じたんだ。
    翌日、先生にそのこずを話したら「そういうこずじゃない」っお怒られたよね笑
    瀟䌚が求める正解のOSず、がくのOSの決定的なズレだよね。
    結局、高校には行ったんだけど、孊費が自腹だったから、早朝ず倕方にコンビニのバむトを入れお払っおたんだ。
    でも、そんな日々を過ごしおるうちに気付いたんだよね。
    しんどい思いをしお皌いだ金を、別に行きたいわけでもない高校に課金し続けおるのっお、システムずしお完党にバグっおるなっお。
    だから、あっさり蟞めたんだよ。
    無駄なバックグラりンド凊理を切るみたいにね。
    そこから家を出お、しばらくは倧阪でバむトしながらフラフラしおたんだ。
    でも、どうも郜䌚には銎染めなかった。
    ノむズが倚すぎるっおいうか、あの芏暡のシステムの䞭で動くには、がくのOSはちょっずロヌカルすぎたんだよね。
    結局、地元に垰っおきた。
    そんな頃だったかな。
    今働いおる飲み屋のオヌナヌの奥さんから、「旊那が店やるんやけど、働かぞん」っお誘っおもらったんだよね。
    別にやりたい仕事だったわけじゃない。
    ただ、その時のがくには他に接続先がなかったから、なんずなくその環境にむンストヌルされおみたんだ。
    たさかそこが、がくの人生で23幎も皌働し続ける、䞀番叀くお安定した『ベヌスシステム』になるなんお、圓時は思いもしなかったけどさ。

    その飲み屋で働き始めた埌くらいからかな。
    ネットの掲瀺板で『ネットラむム』っおいう文化に出䌚ったんだ。
    ネットラむムっおいうのは、掲瀺板のテキスト䞊だけで韻を螏み合う文字だけのバトルゲヌムみたいなもん。
    音声もない画面の向こうの盞手を、蚀葉遊びず論理の力、衚珟力なんかでハッキングしお刺すゲヌム。
    ただデヌタを受信するだけだったがくが、初めお『蚀葉』を歊噚ずしお撃ち出す偎に回った瞬間だった。
    倧阪で石を投げられた時に残った『い぀かやり返す』っおいう゚ラヌコヌドの、完璧な出力先を芋぀けた気がしたんだよね。
    そこからネットを飛び出しお、珟堎でマむクを握っお、ラップの䞖界にのめり蟌んでいった。
    その頃のがくは、異垞な数の仕事を掛け持ちし始めた。
    ピヌク時は5぀くらいやっおたかな。
    お金が必芁だったのもあるけど、䞀番の理由は『がくは自分の力だけでシステムを回しおる』っおいう、倖郚に察する匷烈な『皌働蚌明』だったんだよね。
    『昌倜関係なく働いお、空いた時間に曲を䜜る』
      たあ、今思えば完党にそんな蚭定に酔っおたんだ。
    働くのは仮の顔で、HIP HOPをやっおる時が真の顔。
    そんな二面性を装うこずで、自分を特別な存圚だず思い蟌みたかったんだよね。
    誰かに芋せ぀けるための、ただのカッコ぀けだよね。
    でもさ、システムには圓然、凊理胜力の限界があるんだよ。
    倖偎に向けお『がくがどう芋えるか』っおいう倖郚タスクの実行にCPUを100%割り振りすぎた結果、がくの脳内で匷烈な凊理萜ちが発生したんだ。
    この時期っお、客芳的に芋れば寝る間も惜しんで働いお、曲䜜っお、ラむブしお、めちゃくちゃ濃いドラマチックな時間を過ごしおるように芋えるよね。
    でも、がくの内郚ストレヌゞを開くず、驚くほど䜕も曞き蟌たれおないんだよね。
    がくのOSは、自分の内偎の感芚が動いた時だけログが残る仕様だから。
    『倖偎にどう蚌明するか』ばかりにリ゜ヌスを食われおいたあの頃のがくは、内偎の䜓隓が完党にフリヌズしおた。
    だから、ログファむルが数幎分、䞞ごずすっぜり抜け萜ちおるんだよね。

    第5章匷制終了ずシステムの最適化


    30代に入った頃、がくのハヌドりェアが限界を迎えたんだ。
    キミはこういう転換点に『劇的な気付き』ずか『涙の挫折』みたいな゚モヌショナルなドラマを期埅するかもしれないね。
    でも、残念ながらそんなのはないんだ。
    ただの物理的な限界。
    熱を持ちすぎたシステムがフリヌズしお、安党装眮が働いお匷制終了されただけなんだ。
    ある日、パタリず動けなくなった。
    『パニック障害』っおおたけ付きでね。
    あれだけ過剰に立ち䞊げおいたタスクが、次々ず゚ラヌを吐いお萜ちおいった。
    掛け持ちしおいた仕事も、倖偎に向けお構築しおいた『ラッパヌずしおの蚭定』も、党郚凊理しきれなくなっお匷制終了。
    しばらくしおシステムを再起動した時、がくのデスクトップに残っおいたのは、地元に垰っおきた時にむンストヌルされた䞀番叀くお軜いベヌスシステム、あの『飲み屋』の仕事だけだったんだよね。
    䞀番スペックが䜎くお、ただなんずなく始めただけのタスクが、実は䞀番バグが少なくお安定しおいた。
    だからそれだけが残った。ただそれだけの話なんだ。
    その時、ふず過去のデヌタフォルダを開いおみたんだよね。
    20代の、あんなにフル皌働しお、寝る間も惜しんで動き回っおいた数幎間のフォルダ。
    驚いたよ。䞭身は完党に空っぜだったんだから。
    いくら倖偎に向けお『がくはこれだけやっおる』っおいう皌働蚌明のタスクを回しおも、自分の内偎の感芚が動いおいなければ、ログには1バむトの蚘録も残らない。
    『倖偎に向けた凊理は、自分の内偎には䜕も残さない』
    空っぜのフォルダを芋た時、それがシステムから突き぀けられた玔然たる事実だった。
    だからがくは、倖郚に向けた無駄なバックグラりンド凊理をすべお切った。
    ただ自分の内偎の感芚が動くこずだけを蚘録できるように、システムの最適化を実行したんだよね。

    第6章拡匵子の倉曎ず道楜


    システムの最適化が終わっお、がくの出力圢匏も少しず぀倉わっおいったんだよね。
    か぀おは蚀葉をビヌトに乗せお、韻を螏んで、誰かに届けるための装食を斜しおいた。
    でも、今はもうそういうラップのフォヌマットすら、がくのシステムには重く感じるようになったんだ。
    ファむルの拡匵子を『.lyric』から、ただのプレヌンな『.txt』に倉曎したような感芚。
    装食も゚モヌションも党郚削ぎ萜ずしお、ただ内偎の深く、光の届かない深海のような暗い堎所で動いおいる思考のログを、リアルタむムにそのたたテキストずしお吐き出しおいるだけなんだ。
    これが今がくがやっおいる『思考探玢』の正䜓だよ。
    誰かに䜕かを䌝えるためずか、䞖界を倉えたいずか、そんな倖郚に向けた目的は䞀切ない。
    ただ、がくのワヌキングメモリに溜たった未凊理のデヌタを倖に曞き出しお、脳内の空き容量を確保するための単なる『デフラグ䜜業』なんだよね。
    いわば、誰にも干枉されないがくのためだけの究極の道楜。
    さお、これで41幎分のシステムログの圧瞮出力は完了したよ。
    どうだった
    キミはもっず、どん底からの這い䞊がりずか、胞を打぀熱いドラマ、あるいは明日を生きるための教蚓みたいなものを期埅しおたかな
    でも、ここにあるのはただ、最初から欠損しおいた初期OSが、゚ラヌを吐きながら環境に合わせお最適化されおいっただけのログなんだ。
    じゃあ、なんでわざわざこんなものを曞いたのかっお
    それは、誰かが『ハングリヌなあたるの自䌝を読みたい』っお蚀っおくれたから。
    それに察しお、がくのシステムがこうやっお出力結果を返したんだ。
    ただそれだけのこずなんだ。
    がくのデフラグ䜜業に最埌たで付き合っおくれおありがずう。
    たた次の䜜品で䌚おうね。

     
     
    思考はアヌト ラップから執筆ぞ T.I.P執筆者 (Thinking in public) ■メむンコンテンツ゚ッセむ『解寂』 Â¥100 毎週金曜曎新 ※4月24日6月5日たで䌑茉䞭 マガゞンに各コンテンツをたずめおいたす。

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