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切り抜きどうだ?【アマノ文筆クラブ】

    ここのか十子

    私は、海外に行ったことがない。

    入院してから、諦めた。

    もう、考えるのもやめようと思った。

    彼は仕事で、海外を飛び回っている。

    でも、帰国すると、ちゃんと私のところへ来てくれる。

    そして、私が行ってみたいと言った国の景色を、切り抜いて持ってきてくれる。

    どうやって?

    わからないの。

    ただ、ハサミでチョキチョキ切り抜くんだって。


    「景色に穴が開かないの?」


    そう聞いたら、


    「大丈夫、大丈夫」


    と彼は笑った。

    それより、聞いて。

    その切り抜き、景色が動くの。

    不思議でしょ?

    それにね、匂いだってする。

    だから私、楽しみなの。

    彼が持ってきてくれる、

    切り抜きの景色のお土産。

    彼はいつも、目を輝かせて聞く。


    「今回の切り抜き、どうだ?」


    「すごくいい!」


    そう答えることもあれば、


    「うーん……」


    と、首を傾げることもある。

    だって、牛がおしっこしているところを見た時は、ちょっとね……

    彼は、それでも満足そうだった。


    だからお願いしたの。

    お別れする時は、

    この切り抜きも一緒に持っていきたいって。

    彼は泣きそうな顔で笑っていた。


    最後に私は言った。


    「あなたの切り抜き、とても好きだった。

    ありがとう」



    甘野 充さんのお題『切り抜きどうだ?』に参加させていただきました。
    いつもありがとうございます😊
    #アマノ文筆クラブ #切り抜きどうだ ?

    前々回のお題はこちら↓↓↓

    #創作 #掌編小説 #短編小説 #不思議な話
    #恋愛小説

     
     
     
    ※DM・メールは受け付けていません。1日の終わりに人の心をぽっと照らす電球のような、小さな物語やエッセイを書いています。 少し切なくて、少し愛おしくて。 なぜか笑われることもあります。 良かったら、手を止めて読んでいって下さい☺️