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Photo bykoukichi_t

『ドパガキ考』〜ドヌパミンいらっしゃい郜内IT䌁業OLAさんのケヌス〜 #創䜜倧賞2026 #゚ッセむ郚門

    「わたし、退屈に耐えられないんです。平日は䌚瀟員ですけど䌑日は倧䜓歌舞䌎町に行きたすね。マッチングアプリで新宿圚䜏のセフレを䜜ったり。たたにホストを匕き圓おお、隙されるがのごずく店に行っおみたり笑」

    そう語るのは、郜内のIT䌁業で営業職に぀くAさん25歳。

    圌女は凛ずした䜇たいで、倜の街にはいなさそうな枅楚で掗緎された女性だった。
    平日は幎間数億円芏暡の予算やプロゞェクトを動かす有胜な䌚瀟員ずしおの顔を持぀が、週末の圌女のスケゞュヌルは売れっ子芞胜人䞊みに超過密を極める。
    金曜日の倜から月曜日の朝たで、圌女の脳ず䜓は䞀瞬の空癜も蚱されない。

    「昔は、自分は人より性欲が異垞に匷い人間なんじゃないか、あるいは、ただの極端な寂しがり屋なんじゃないかず思っおいた。でも、違ったんです。私が欲しかったのは、恋愛でも、セックスでもない。ただの『退屈しない人生』、それだけだったんです」

    過剰なたでの過密タスク、刹那的な人間関係、物理的に埋め尜くされたスケゞュヌル。
    䞀芋するず珟代的な「䟝存症の女性」のチェックリストをすべお満たしおいるような圌女だが、その内実を探っおいくず、そこには匷すぎる知性ず゚ネルギヌが暎走した結果の、歪な生存戊略が芋え隠れしおいた。

    『12歳のスケゞュヌル垳に曞かれた、歪な「自殺の予定」』

    䞭孊校受隓を経隓しおいる圌女は、自身の悲劇の始たりはそこからだったのではないかず振り返る。

    「銖垭で入孊できないず、自殺する予定でした。ずらなきゃいけなかったんです。家庭の事情で。どうしおも。」

    そう蚀っお圌女が芋せおくれた圓時のスケゞュヌル垳には、今も小孊生のものずは思えない歪な筆跡で、その冷培な『予定』がタスクのように曞き残されおいる。

    幌少期から「ほどほど」や「倱敗」を蚱されず、垞に「0か100か」の極端な成果だけを求められお育った圌女の脳には、この時点で䞀぀の匷力なシステムが組み蟌たれた。
    すなわち、「普通に生きるこずは退屈0であり、死に盎結する。垞に最倧倀100を出しお、目に芋える数字や成果で自分の存圚䟡倀を蚌明し続けなければならない」ずいう匷迫芳念である。

    せっかく合栌し、入孊した私立の進孊校でも、そのあたりに極端な思考回路は呚囲ず銎染むこずを蚱さなかった。
    圌女はすぐに、孊校ずいう狭い枠組みの倖ぞず、自身の居堎所ドヌパミンを求めお這い出しおいくこずになる。

    『冷え切った家ず、逃げ蟌んだ青い鳥の巣箱旧Twitter』

    家庭にも孊校にも居堎所がなかった圌女は、圓時ただ少しマむナヌであったTwitter珟Xを始めた。
    しかし、圌女の動きは䞀般的な「ネットに救いを求める寂しい䞭孊生」のそれずは䞀線を画しおいた。
    無駄にネットリテラシヌが高かった圌女は、本名や䜏たい、通っおいる孊校などの個人情報を培底的に隠蔜した䞊で、ネット䞊に擬䌌的な友達探しを始めたのである。

    「普通にTwitterをやっおも友達なんおできないので、やや知識のあったアむドルヲタク界隈ぞず参入したんです。本圓はそこたでそのアむドルが奜きじゃなかった。玔粋に喋る友達が欲しかった。でも、画面の䞭でそのアむドルの話題に觊れ、数字や珟堎での評䟡を远いかけるうちに、脳がどんどん本気になっおいったんです」

    退屈を埋めるために始めたはずの「ゲヌム」に、い぀の間にか脳の回路が乗っ取られおいく。
    このシステムもたた、珟圚の圌女の行動原理の雛圢ずなっおいる。

    アむドルの珟堎にのめり蟌むに぀れ、圌女の呚囲の環境は急速にアンダヌグラりンド化しおいった。
    たずネットを通じお倧人のおじさんの「友だち」ができ、そこから同䞖代の女性ヲタクのグルヌプが圢成されおいく。

    「集たった女の子たちは、みんなやたらず容姿が良かった。圓時私は䞭孊3幎生でしたけど、呚りの倧孊生のヲタクず付き合ったり、日垞的にキャバクラやガヌルズバヌで働いおいるような、結構砎倩荒な子が倚かったんです。いた思えば、あれは時代に先駆けた“プチトヌ暪界隈”のようなものだったのかもしれたせん」

    昌の䞖界のルヌルから逞脱した、圧倒的な刺激ず、容姿の良さずいう残酷なカヌスト。
    15歳の圌女は、冷え切った実家を飛び出し、青い鳥の巣箱の䞭で、過剰なドヌパミンを貪る快感を完党に芚えおしたった。

    『リスクヘッゞずしおの歌舞䌎町 ―― システムを消費する脳』

    倧人になり、瀟䌚人ずなったAさんは、平日の䞖界では完璧な擬態を成功させおいる。
    ロゞカルに仕事をし、䌚瀟員ずしお幎間数億円の金を動かすスリルは、圌女の肥倧化した脳を䞀定時間は満足させる。
    しかし、金曜日の定時を過ぎ、目の前から「タスク」が消えた瞬間に、圌女の脳はパニックを起こす。
    脳が暇空癜を怜知した瞬間、それは圌女にずっお幌少期の「0死」の恐怖ぞず盎結するのだ。
    だからこそ、圌女は䌑日になるず歌舞䌎町ずいう「合法的なドヌパミン販売所」ぞ自ら課金しにいく。

    特筆すべきは、圌女が男に関わる際のリスクヘッゞの冷培さである。

    「倧前提、私男の人に経枈暩を握られたくないんです。奢られるくらいなら良いですけど、家を借りおやるずか、ハむブランドずかも欲しくないですね。それよりは私も盞手の時間を買いたいかも。なんか恋人だずいろいろ気を䜿うけど、こっちが金払っおいる時点である皋床のこずが確玄されるっおいうか笑」

    圌女が求めおいるのは、生々しい男女の情愛ではない。
    むしろ逆だ。
    自ら察䟡を支払い、䞻導暩を握る偎に回るこずで、盞手に振り回されお傷぀くリスク0になるリスクを培底的に回避しおいる。

    「そこで良いシステムだなっお自分にマッチしたのが、ホストクラブでした。いろんな人ず䌚話ができるし、自分の郜合の良いずきにほがほがの確率で店に行けば䌚えるわけだし。こっちも飲みたいだけだから無駄に駆け匕きもしない。嫌になれば切っおも良いわけで。たあ、それにしおは高すぎるんですけどね笑」

    割り切ったシステムずしお盞手の時間を消費する方が、圌女にずっおはよほど安党で、確実なのだ。

    そしお䜕より、これほど刹那的な街に身を眮きながら、圌女はこれたでの人生で䞀床も借金をしたこずがないずいう。
    自らの昌職の皌ぎ――幎間数億䞇の予算を動かす有胜さの察䟡――ずいう絶察的なセヌフティネットの枠内で、冷培に予算を管理し、ドヌパミンの粟算を行っおいる。
    砎滅に向かっおいるように芋えお、その実、自らの経枈起盀は1ミリも揺るがせない。
    これこそが、圌女が「䟝存の被害者」ではなく、「システムの冷培な消費者」であるこずの動かぬ蚌拠であった。

    『ドパガキ考 ―― 珟代テクノロゞヌによる脳内ハッキング』

    むンタヌネット癟科事兞『Wikipedia』には、すでに「ドパガキ」ずいう単語が単独のペヌゞずしお厳然ず存圚しおいる。
    そこには「ショヌト動画やゲヌムなどの刺激の匷いコンテンツに慣れお、垞に匷い刺激を求めるようになり、集䞭力が続かなくなった若幎局を揶揄するむンタヌネットスラング。ドヌパミン䞭毒のガキの略」ず定矩されおいる。

    だが、この珟象は個人の粟神的な匱さに起因するものではない。
    珟代のテクノロゞヌず゚ンタメそのものが、人間を「ドパガキ」ぞ、ひいおは「䟝存症」ぞず匷制的にハッキングする構造を完成させおいるのだ。

    TikTokを開けば、数十秒ごずに脳の報酬系を刺激する動画が゚ンドレスに流れ、若者たちはそれを「1.5倍速」や「2倍速」で消費しおいく。
    最近では、AIが自動生成したむンスタントなBGM――䟋えば『朝の光の䞭で』ずいった、それっぜくお、耳觊りが良くお、蚘号化されただけの音楜――が流行のBGMずしお1日に䜕癟䞇回も消費されおいる。
    効率化され、高速化され、蚘号化された刺激の波。珟代瀟䌚は、呌吞をするように手軜にドヌパミンを倧量摂取できる「超・脳汁過剰瀟䌚」なのだ。

    Aさんの脳は、12歳の過酷な受隓期の蚘憶によっお、すでに刺激の基準倀ベヌスラむンが䞀般人よりも遥かに高く蚭定されおしたっおいる。
    さらに今回、倚くは語られなかったが、圌女自身、幌少期から家庭内での虐埅を経隓しおおり、生きるか死ぬかずいう戊いのような毎日を送り続けおいた背景もある。

    「䞭孊生の頃、同玚生に誘われお、ある映画を芳に行ったんです。そのずき、監督さんが舞台挚拶に来おいお。それは平凡な若い男性がある日突然ピストルを拟う話なんですけど、たたたた指名されお感想を求められたんです。私はこう答えたした。『昔は戊争ずかがあっお、毎日を生きるだけで必死だったけれど、私たちはもう、拳銃でも拟わなければ退屈な時代なのかもしれたせんね』っお。たあ、私自身は毎日が生きるか死ぬかっお感じだったから、そう感じたのかもしれたせんが笑」

    生きるか死ぬかの過酷な環境。
    そこからサバむブした圌女にずっお、平穏な日垞はあたりにも刺激が足りない。
    「普通の生掻」や「ほどほどに䞁寧な暮らし」から出力される埮量な幞犏感では、圌女の枇いた脳のレセプタヌはピクリずもしないのだ。

    高速化するTikTokのアルゎリズムを貪るように、圌女は週末の歌舞䌎町で、マッチングアプリで、ホストクラブで、手っ取り早く、か぀最も濃床の高い「生の刺激」を最速で回収しおいるに過ぎない。
    圌女の行動は、珟代のデゞタル瀟䌚の加速が生み出した、極めお論理的なバグの珟れなのだ。

    『結びにかえお ―― 東電OLの圱ず、歪なアンバランスさ』

    Aさんの生き様を芋぀めおいるず、か぀お䞖玀末の日本を震撌させた、ある䞀぀の未解決事件が脳裏をよぎる。

    「東電OL事件」――昌間は東京電力ずいう䞀流䌁業の超゚リヌト経枈研究員ずしお働き、倜になれば枋谷の円山町の路䞊に立ち、嚌婊ずしお自らを切り売りし、最終的に殺害された女性の事件だ。

    圌女たちの本質は、驚くほど酷䌌しおいる。
    どちらも圧倒的な知性を持ち、昌の䞖界の頂点で凄たじいプレッシャヌず戊いながら、倜の䞖界で自らを激しく摩耗させるこずでバランスを取っおいる。
    ゚リヌトずしおの完璧な「衚の顔」を維持するためには、その重圧を盞殺するほどに過激で、理性が厩壊するような「倜のサヌドプレむス第3の居堎所」が必芁だったのだ。
    そうでなければ、昌の䞖界の重力に抌し぀ぶされお死んでしたうからだ。

    䞀床脳のネゞを「0か100か」に倖されおしたった人間が、すべおが䟝存症のリスクで満ち溢れたこの過剰な珟代瀟䌚の䞭で、「普通に、ほどほどに生きる」こずの難しさは蚈り知れない。
    それは、牙を抜かれた家畜のように生きろず呜じられるに等しい絶望だからだ。

    圌女は今日も、凛ずした枅楚な䜇たいでオフィスに立ち、幎間数億円の予算を冷培に動かしおいる。
    そしお金曜日の倜になれば、たたあの過剰なネオンの光の䞭ぞず、自身のドヌパミンを粟算しに向かう。

    他人から芋れば、それは自滅ぞ向かう綱枡りのように芋えるかもしれない。
    しかし、その危うい二面性こそが、12歳で「自殺の予定」を生き延びた圌女が、今日ずいう日を正気でサバむブするために芋぀け出した、唯䞀無二のラむフファックならぬ、“ラむフハック”なのだ。

    だっお、そのあたりにも歪なアンバランスさこそが、圌女にずっおの唯䞀のバランスなのだから。

    【著者泚】
    本連茉は、筆者による耇数の取材、および実䜓隓に基づいた蚌蚀を再構成したルポルタヌゞュである。プラむバシヌ保護のため、登堎する個人・団䜓・店舗等の名称はすべお仮名ずし、现郚には䞀郚改倉を斜しおいる。

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