
鳥の声
一際大きな声で鳥が鳴いた。
まるで「私は此処に居るよ」と言っているかのよう。
思考を遮られ、わたしは顔を上げた。
さっきまで頭の中を埋め尽くしていた考えは、まるで霧のように薄れていた。
あの鳥は、本当にただ鳴いただけなのだろうか。
それとも——こちらに気づいてほしかったのだろうか。
もう一度、同じ声が響く。
先ほどよりも近く、はっきりと。
「私は此処に居るよ」
そう言われた気がして、わたしは立ち上がる。
理由なんて分からない。ただ、その声の先を確かめなければならない気がした。
木々の間を抜け、声のする方へ歩いていく。
足元の枯れ葉がかすかに鳴り、世界が少しずつ現実味を帯びていく。
やがて、ひらけた場所に出る。
そこには一羽の鳥がいた。
けれど、どこかおかしい。
その鳥は、こちらをじっと見つめたまま動かない。逃げもしない。
ただ、待っている。
——瞬きすら、しなかった。
鳥が鳴く。
その声は確かに耳に届いているはずなのに、
なぜか同時に、胸の奥でも静かに響いた。
まるで外からではなく、内側から呼ばれているみたいに。
わたしは息を呑む。
その視線から、目を逸らせない。
見られている、というより——見透かされているような感覚。
まるで――わたしが来ることを、最初から知っていたかのように。
その瞬間、胸の奥で何かが結びつく。
あの声は偶然ではなかった。
「……やっと、見つけた」
気づけば、そう呟いていたのはわたしだった。
それが誰に向けた言葉なのかも分からないまま。
すると鳥は、静かに翼を広げる。
羽ばたいたはずなのに、風は起きなかった。
飛び立つのではなく、導くように。
――ここから先は、もう引き返せない。
そんな確信だけが、なぜかはっきりとあった。
思考を遮る鳥の声に、あなたは何を思うだろう。