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20人の車椅子を食堂まで押す毎日の話し。


老人保健施設(老健)で29年間、現役で介護福祉士をしているともやです。
今の時代、自動運転の車が街を走り、AIが人間のように会話をする、ものすごいハイテクな世の中になりました。
しかし、私たちが働く介護の現場に一歩足を踏み入れると、そこには今も昔も変わらない、驚くほどの「超・肉体労働」が待っています。
その代表格が、お昼ご飯の前の、あの時間です。
ベッドからおじい様、おばあ様を抱き上げ、車椅子へ移乗する。これは人間の力が必要なケアですから、私たちがやるのは当然です。
移乗を終え、私は笑顔で声をかけます。
「お爺ちゃん、お昼ご飯だから、食堂まで車椅子こいで行ってね!」
よし、次の人の移乗だ、とバタバタ動き回り、ふとフロアを見渡すと、さっき声をかけたお爺ちゃんは、自分の力で頑張って漕いだものの、わずか10センチしか進んでいません。
自分で漕ぐのが難しいのは、百も承知です。
結局、私たちはその10センチしか進んでいない車椅子を、1台、また1台と、人間の手で食堂まで押していくことになります。その数、なんと20人分。
移乗だけで汗だくなのに、そこから20台の車椅子をフロアから食堂までピストン輸送する。これを毎日、毎日、繰り返していると、足も腰も本当にガタガタになります。
そんな時、私の頭の中に、あるニュースの映像がふと過ったのです。
「あれ? そういえば、どこの空港だったか、自動で動く車椅子が走っていなかったっけ……?」

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