
第1話|目覚めた夜
手術室に入って何時間が経過したんだろう。
物音、人の気配で目が覚めた。
ふと目に入ったのがICUの時計である。
19時30分頃、はっきりと意識が戻ったのは11時間後のことだ。
「如月さん、わかりますか?」
看護師の声が響き渡る。
返事をしようにも声が出せない。
挿管チューブが繋がったままなのである。
首も動かせない、傷の痛みより先にそれが苦しい、外してほしい。
“苦しい…外して…”
必死に喉を指差して訴えた。
「苦しいですよね。自発呼吸ができそうなら外しますからね。」
それから間もなく挿管チューブが外されて、酸素はマスクタイプのものに変わった。
解放感はあったが喉の違和感は続く。
痛み止めの調整ができるスイッチが看護師から手渡される。
「痛くなったらこのボタンを押してくださいね。10分経ったらまた押せますので。」
“痛み止めが10分感覚?6時間置きじゃないの?今の医療はこんなになってるの?“
そう思いながら手にした。
右手には痛み止めのスイッチ、左手にはナースコール。できる意思表示はこれだけなのである。
翌日には体位変換から始まり鼻の管が抜け、薬の服用、夕食が出される。
飲み込めているのかもわからない。
ただわかったのが“私は生きている”
“生き延びてしまった”のではなく“生きている”
痛みも苦しみも生きている証。
待ってくれている人がいる、初めて感じた瞬間なのかもしれない。