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No.51 深海魚になった父

    今日は、20代から50代まで約30年間飲み続けた私が、

    「これはまずい。このままでは父の二の舞になる。」

    そう思い、断酒を決心したお話です。

    私の父は68歳で脳梗塞に倒れ、7年間の闘病の末、75歳で亡くなりました。

    左半身が麻痺し、寝たきりの生活は、自由を愛していた父にとって、あまりにも辛い時間だったと思います。

    ある日、父はベッドの上で言いました。

    「深海魚になった夢を見た。」

    たどたどしく、ゆっくりとした口調で……。

    それは、どんなに深く、暗く、恐ろしい世界だったのだろう。

    父は自由を愛してやまない人でした。

    一人カラオケ、読書、水泳、麻雀、旅行、語学の勉強、投資の勉強、オペラ鑑賞。

    経済や歴史、偉人の話もよく知っていて、何を聞いても答えが返ってくる人でした。

    そんな父が私は大好きでした。

    そして、とてもユニークな人でもありました。

    ある日、温水プールで突然オペラを歌い始め、
    「うるさい!」と誰かに怒鳴られたり(笑)。

    スーパーでノリのいい曲が流れると、その場で踊り出したり。

    小学生だった私は、恥ずかしくて「やめてよ」と思っていました。

    でも今思えば、存在そのものが面白くて、人の目を気にしない父らしさだったのだと思います。

    当の本人は、そんなことはまったく気にしないマイペースな人でした。
    (『マイ・ウェイ』は父のカラオケの十八番でもありました。)

    そんな父が脳梗塞で左半身不随になり、一人では外出もできなくなりました。

    車椅子に長時間座ることさえ難しくなり、楽しかったおしゃべりも、

    「ありがとう。ありがとう。」

    と言うのが精一杯。

    その姿が、あまりにも悲しかったのを覚えています。

    私は父子家庭で育ったので、父の存在はとても大きなものでした。

    そんな大好きな父は、夢の中で深海魚になってしまった。

    私は深海には行きたくない。

    だから私は、これからもお酒を飲まない。

       #創作大賞2026   #エッセイ部門
         

     
     
    余白の人(通称:デジ子/デジタル音痴の略) 50代、人生やり直しの途中。 筋金入りのデジタル音痴なのに、AIとデジタルの世界にどハマり中。 日々の気づきや失敗、思いついたこと、 自分の行きたい方向へ進んでいく途中を、そのまま書いています。

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