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友人の父のランプシェード


    #創作大賞2026 #エッセイ部門

    友人の父のランプシェード

    当時俺は高校一年生、新しい学校生活,そして新しい友達。
    友人に飢えていて積極的に付き合いを求める純粋少年。
    俺は友達の家にも遠慮なく上がり込んで,自分の家とは違う,雰囲気を好奇心を持って見ていた。
    その中で特にT君とは息が合って、こいつとは親友になれると普通に納得していた。
    その日はO君も一緒で、T君の家を訪ねた。
    T君の家は決して大きくは無いものの開放感に溢れてお母様も優しく,
    俺達三人の限りない無駄話を笑顔で迎えてくれた。
    実はT君の家に集まったのには訳がある。
    それはT君の家の調度品が中東やヨーロッパの骨董品で溢れていて特別な雰囲気が珍しい。
    俺は経験の無い世界観に驚き,感動さえ覚えたものさ。
    俺がその中でも一番興味を持ったのは1メートルも有る電気スタンド。
    大きさもそうだけど,ランプシェードの不思議な色と質感。
    中東の砂漠の匂いがする造形。
    俺がスイッチを入れてくれと頼んだら。
    T君は軽く頷いて俺の我儘を聞いてくれた。
    それは薄茶色のマダラ模様から,古代を感じる。
    柔らかな、温度を孕んでボンヤリと周りを包む。
    初めて会った珍しさにちょっと立ち止まる俺の心。
    「触って良い」俺は振り返ってT君に聞いた。
    「良いよ」T君はニヤリと笑った。
    俺はニヤリの意味に不審を感じたが,触ってみたいという誘惑が勝った。
    ランプシェードはガラスで無く、紙でも無い,ちょっと厚みが有って,ランプの熱を吸って温かい。
    その時O君が口を開いた。
    彼も又俺と同じ様な興味を持ったのかも知れない。
    「このランプシェード,何で出来てるの」
    T君はその質問を待っていたかの様に笑顔で答えた。
    「親父が言ってたんだけどさ」
    そこで一瞬間を開けた、そして言った。
    「それね,ラクダのキ○玉の皮だってさ」
    俺は慌てて手を引っ込めた。
    「お前の親父さん,何やってるの」
    O君が聞いた。
    T君は短く答える。
    「商人」
    俺は自分でも理解出来ない衝撃で体が固まっていた。
    「ラクダのキ◯玉の皮」
    成程言われて見れば、逆にそれ以外考えられない。
    俺の脳裏には強烈に焼き付いた。
    「冗談だよ、俺の親父の言う事は当てにならない」
    T君はそう軽く弁解したが、俺にはもう,弁解に聞こえない。
    O君は納得したみたいだが、実際にランプシェードに触った俺の手には,その感触が残ってる。
    まあたわいの無い出来事だったのかも知れない。
    みんなと別れて家路につく間,歩きながら俺の頭の中には「ラクダのキ○玉の皮、ラクダのキ○玉の皮」と言葉がこだまの様に繰り返していた。
    俺はラクダのキ○玉の皮に触った。
    T君の父親は商人だと言っていた。
    これは冗談じゃない。
    この事はすぐに記憶から消える事は無かった。
    動物園に行っても,俺はまずラクダを探す。
    そうしてもう何十年も経った。
    あの時のT君とO君とはその後幸い親友となって長い付き合いとなった。
    勿論若き日のあの出来事について話した事は無い。
    ただ俺は未だに「ラクダのキ○玉の皮で出来たランプシェードの思い出」
    が胸を騒がせる。
    そして意味も無く自分の下半身に目をやったりしてさ。
    まあそれだけの話さ。

    by  Konoe73

     
     
    団塊の世代の生き残り、典型的暇人。 肥満人でもイマジン(Imagine)でも有りません、ただの自由人、ただの自遊人、宇宙人でも有りません、文字書きです、宜しく。 あっ忘れてた、老人たまに酔人、自称粋人でも有ります。

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