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プロベーション・レポート ~新入社員の四カ月~ 第五章6

    第五章 第六話「Starburst」

    あちぃ!死ぬ!ナニコレ!
    防護服みたいなやつが暑すぎる!
    すげーな炊飯。俺こんなん着て高速オペレーションなんか続けてたら倒れちゃう。

    さておき一週間残業ゼロブートキャンプの進捗を一つずつ振り返ろう。

    炊飯の一日は鬼ごっこから始まる・・・
    とは俺が勝手に決めたことなのだが、思いのほか好評である。
    好評なのは喜ばしいことなのだが、少々身の危険を感じ始めていた。

    というか誤算だったのは、俺が昔っから友達の母ちゃんとかからやけにモテることであって、ここのパートさん方は何を隠そうおかん世代である。

    そして言い出しっぺの俺は今週中ずっと鬼ごっこの鬼をやる予定・・・

    だったのだが、水曜から突然おかん達が鬼のはずの俺に向かって突撃してくるとかいうわけのわからないことになった。
    しかも毎日前日より化粧が濃くなるの。
    ナニコレタスケテ。

    なんなら笑顔のおじさん達も突撃してくる。
    もはや絵面が服を着ただけの進撃の巨人であり、歳の近そうな女の人に助けを求めようとしたらその人まで突撃してきたからもうどうにでもなれと諦めた。

    金曜日に至ってはもはや限界まで厚塗りをしたおかん達と、なんか急にバンギャみたいなメイクになった歳の近そうな女性がハイスピードで突撃してくる有様であり、

    「走らないでくださーい!!早歩きでーす!!」

    と叫ぶのが精一杯の俺のシャツはボタンが引きちぎれ、どっかしらのおかんが
    「第二ボタンもらったわ!!」
    などと意味不明なことを言い出した。

    あげてねぇよ。


    ということになったのでつまり大成功であった。
    来週からは鬼はローテーションでやるらしい。
    最初からそうしてくれ。

    では次に、爆速オペレーションチャレンジとテンションブースターについて振り返る。


    ・・・なんだこのネーミングは。
    ちなみにテンションブースターとは、北電子が今までリリースしてきたパチスロ機の中で俺が個人的に最高傑作だと信じて疑わない名機である。

    ではまず爆速オペレーションチャレンジとは?
    それはシンプルに『偉い人がバカ速く動けばみんなついてくる理論』で部長にオペレーションの特訓をさせて実演したよ、というだけなんだが当然これも効果が出た。

    っていうか出るに決まってんじゃん。
    だって工場長まで含めて、部長に見られてないって思ってたんだから。

    そんな偉くて丸っこくて、高橋克己を小さくしたようなおじさんが必死こいてオペレーションをこなす姿を『これが見本です!』と言って見せ、しかもゼェゼェハァハァするんだから現場の何人かは絶対におじさんに負けない!ってなるんだよ。

    そしたらあとはみんなついてくる。完璧。

    次に、飲食の基本である『活気は声出し』に倣い、声出しタイミングの設定と基本の声量を浸透させた、というのがテンションブースター。


    ・・・恥ずかしいなこのネーミング。
    まあ慌てて書いたものなので諦めよう。

    作業動線は特に触ることもなかった。
    けど、声出し一つで人を必要な場所に配置することが自然に出来るようになったので大成功だ。

    っていうか作業動線ってそうやって作るもんじゃねーの?というそもそもの話な気がする。


    炊飯で残業ゼロにするためにやったことはたったこれだけである。
    っていうかこれ以上色々やったら俺が保たないので、四日でやれる限界などこんなものだろう。

    そういや工場長については、あんまりにも場を乱してみんなのテンションを下げる動きをしていたので、申し訳ないが火曜から外れてもらった。

    嫌いだからじゃないけど、あれは現場を動かす人間としてかなりマズい。
    嫌いだからじゃないよ?

    なので部長に相談してみたら、初日に勝手にやったスタッフさんへの聞き取りの通り、他にもかなり問題があったらしく、しばらく部長同行で再研修ってことになったらしい。

    すまんなマウントデブ。
    立派になって帰ってくるのを期待している。
    まあ俺いないけど。

    後はみんなが楽しく仕事出来ればいいなと思ってとにかく場の空気を回すことに注力したんだが、自分でも毎日相当限界だったようで全然メシ食う気力が無くてね。

    防護服みてーなのが暑すぎたから、とにかく服脱いで外の喫煙所のベンチで寝てた記憶しかない。
    何回か野村さんは来てたみたいだけど気を遣って寝かせてくれたみたい。


    「と、まあ今週はこういう感じで仕事をしてきたから月曜以外はちゃんと帰ってきたでしょ?」

    「あんまりにも説明が雑でよくわかんないわ。」

    「まぁめちゃくちゃ端折ってるしね。」
    「なんで端折るのよ!」

    「だってそんなんいちいち説明してたら遅いのよ。『とにかく速く』が仕事の基本だよ?」

    「いや?私の職場にそんな常識はない。」

    ・・・馬鹿な。

    「マジかよ。つーか来週からまた米を運ぶことになるんだけど炊飯楽しすぎて正直営業戻りたくねぇなぁ。なんていうか新規営業が苦手でさ。
    腹減ってる人に大満足してもらうのは得意だけどパスタ大好きで満腹な人にお好み焼き食わせるのは違うと思う。」

    「やっぱ何言ってるのかわかんないわ。」

    「俺にとっちゃ炊飯はとにかく楽しかったってこと。異動願でも出してやろーかしら。」


    「・・・あんた一体何しに会社行ってんのよ。」

    ー次回ー 
    第五章 第七話「白い砂漠のマーチ」

    概要・目次はこちら

     
     
    元飲食業。 働く人たちの空気や、職場の歪みと妙な連帯感を書いています。 noteにて小説『プロベーション・レポート』連載中。 この度、作中企業である米崎ライス株式会社様より、外部広報のお仕事をいただきました。

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