メインコンテンツへスキップ
見出し画像

プロベーション・レポート ~新入社員の四カ月~ 第二章3 小林の恩恵

    第二章 
    第三話
    「焼肉会3〜水曜日〜」 小林の恩恵

    「かんぱーい!」

    カチン!

    「いやぁ!小林様々ですなぁ松本くん!」

    「いやわかるけど、とんでもなく機嫌いい須藤くんとか怖すぎるんだけど。」

    「バッカだなおまえ!俺は本来こういう人間なんだ!」

    「えぇ・・・。」

    「こぉんなド平日に焼肉!しかもまだ早いんだからしっかり寝れる!こんないいことは久々だな!」

    「ちょっとテンションついてけないかなー?」

    「いやでもお前も今日はえーじゃんか。いっつもクソほどおっせぇのに。」

    「今日は大口のお客さんが休業日で全然積載なかったもん。」

    「それお前のルートの大半じゃねーか。遊園地だろ?」

    「そうそう。それに加えて小林くんと須藤くんが上がるから帰る時間便乗しちゃお!って。」

    「いやー本当助かったよー。今日本当はまあまあ多くてさぁ。まあ多少多いくらい別になんとでもなるんだけど今日は流石に、と思ってたらヒーロー小林の登場ってわけよ。」

    「手伝いするってあのルートそんな暇だったっけねぇ?メガネくんに同行で走ったことあったけど結構細かい配送先多くて大変だったよ?」

    「え?お前貰った紙見てねぇの?全然配送時間違ったじゃん。近いとこまとめて距離抑えてたし。」

    「どゆこと?」

    「そらお前、別に店の名前見りゃ大体の場所くらいわかるだろ。」

    「え?他人のコースでしょ?」

    「はぁ?お前こんだけ人がコロコロ変わるからルートも変わるし、いざルート変わった時用に知っといて損ねぇじゃんか。」

    「えぇ?じゃあ僕のルートもわかるの?」

    「そらお前わかりやすいもん。」

    「マジか。」

    「まー俺と小林のルートはお隣さんなんでねー。今後も協力して俺たち二人で毎日定時で帰らせていただきますー。」

    「えぇーずるいよー。」

    「アホか!ズルいわけねぇのよ、な?元々仕事の時間は18時までだっつってんのに烏丸が帰らせてねーだけじゃんか。きちんと配送終わらせて帰るんなら文句言われる筋合いねぇの。」

    「まぁそれはそうなんだけど、でも須藤くん帰ってなかったじゃんか。」

    「そりゃ一人だけ帰ったら睨まれるし、嫌われてる上に給料やっすい職場で働く意味なんてねーだろ。だから案外小林もそうなんじゃね?一人で定時上がりすんのが嫌だから誰かいねーかなって考えたとかさー。」

    「確かに僕も課長からもなんも言われてないや。前だったら課長からも『大口無くて暇なら飛び込みでも行け!サボるな!』って言われてたのにどうしたんだろうね?」

    「そりゃ課長だって帰りてぇに決まってるんだからさ。実際に帰るやつが出てきたし『そういう流れにするか!』みたいなのはあんじゃね?そういう意味でも小林様々じゃん?きっちり仕事こなして、空気読まずに帰ってくれるから課長も乗っかるっていうか。」

    「ほんとぉ?まぁ帰れりゃなんでもいいけどさー。」

    ガラガラ-
    「うぃーおつかれー!」

    「おっせぇよ!炊飯そんなだったん?」

    「そぉらうちは万年残業で売ってますから。部長なんかはだぁいたい日付変わるまではおる。おれぁもうお先短いから片付けすら適当に帰るし?こうやって飲めるわけだ、はっはっは!」

    「まぁ炊飯もおっそいっすもんねぇ?僕が帰る時にまだ電気点いてる日とかあるけどああいう日ってどうしてるの?」

    「まぁバイトくんとか派遣の人とかは流石にある程度で帰さんとえらいことになるからそれなりに残ってもらうけど、あの時間だと3人でやっとんじゃないか?夜までいけるバイトくんが一人おるからな!まーでもそうなると人数おらんで掃除とかめちゃくちゃ時間かかるし、工場長も陰気くせぇやつだからちんたらやるしなぁ。まー俺はドライバーなんで関係ありませーんって帰る!」

    「そのうち野村さんも片付けやらされるんじゃないの?」

    「そうなったらおれぁ早期退職でもなんでもしたろーかと思っとるで大丈夫だ!」

    「ぜんっぜん大丈夫じゃねぇじゃん!っていうか野村さんあんだけ飲み歩いてんだから早期退職したら金無くなってやべぇっしょ。」

    「はっはー!おれぁお前らと違ってそこそこ給料あんのよ、俺ぐらいの年代の連中は昔の名残りでそこそこもらっとるぞ?お前らは知らんが。」

    「えぇーそれ酷くない?だって僕達全く給料上がんないよ?」

    「そら俺だってもう上がっとらんぞ?何年上がっとらんかはもう覚えないけど相当上がっとらん。」

    「世知辛い会社だねぇ全く。つーか野村さん金あんなら今日奢ってよー。」

    「ばっか!おれぁこれからお姉ちゃんのお店に行くんだからお前らなんかに遣う金はねぇ!」

    「いいなーそういうの。僕も行こうかな?野村さんに付いてったら奢ってもらえたりしません?」

    「おんまえそれは自分でだしなーさい!おっと思い出したぞ!あいつおったろあれ、小林!」

    「え?急に何?」

    「おれぁ見たんだ!あのー飲み会あったろ!なんか小林のヤローが烏丸とくっちゃべってなんかしとった日!お前が風呂入って来んかったやつ!」

    「行ったって!」

    「あれを来たとは言わんだろぉ。ちゅーかあの時間に来たんならなぁんで二次会来んかったんだ?お姉ちゃんの店行ったのに。」

    「えぇー?なんか野村さんと一緒に行くならともかく会社の人たちと大人数ってのもなんかなぁって。フィリピンパブってのも興味ないわけじゃないんだけどぉ。」

    「違うそれだ!あの小林がよ!確かあいつ彼女おるんだろ?」

    「おー、おるって松本言ってたな。」

    「あいつ!フィリピンパブ来るの初めてですー、なんて言っとったが俺の目の前で店の姉ちゃん連れて帰ってったぞ!彼女おるのにお持ち帰りするなんて!っちゅーのと、初めて会ったお姉ちゃんをその日にお持ち帰りするとんでもない奴だ!っちゅーのを教えてやらんとと思って!」

    「いやぁーないない!野村さん話盛りすぎだって!!んな初見の店で持ち帰りするとかんなもん出来るやついねぇって!しかも新人っつって飲み会呼ばれとってそんなこと誰もやらへんって!」

    「でもおれぁ見たんだ!お姉ちゃんと手繋いでハグとかされながらタクシー乗ってった!」

    「うっそだぁ!それいくらなんでも小林くん可哀想すぎるって!野村さんの滑らない話にされてんでしょ?」

    「嘘じゃないっ!」

    「いーや、ピンパブだから嘘だね!これが普通のキャバならワンチャンあってもピンパブはない!」

    「嘘じゃないんだって!信じてくれぇ!」

    ー次回ー 
    第二章 最終話「焼肉会4」定時の噂

    概要・目次はこちら

     
     
    元飲食業。 働く人たちの空気や、職場の歪みと妙な連帯感を書いています。 noteにて小説『プロベーション・レポート』連載中。 この度、作中企業である米崎ライス株式会社様より、外部広報のお仕事をいただきました。

    あなたへのおすすめ