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起源―ナナ

    【あらすじ】

    始祖む゚スずゎヌタマの教えが亀わり、人々が“分かたれた個”でありながら“ひず぀”ずしお生きる䞖界――倩歎。

    そこでは蚀葉を超え、音や色、感觊ずしお心が響き合い、争いは察立ではなく調和ぞずほどかれおいく。科孊や論理ではなく、粟神の圚り方そのものが䞖界を圢䜜っおいた。

    少女ナナは、䞇物の響きを感じ取る力を持ち、兄カむずずもにその䞖界を歩んでいる。二人の間に流れる確かな絆ず、静かに重なり合う心の響き。

    だが、すべおを受け入れ䞀぀にするこの䞖界の「調和」は、いったい䜕を「救枈」するのか。

    これは、ある䞖界が蟿り着いた“起源”の物語。

    ―――――――――――――――――――――――――――


    1話 倩歎の䞖界 ナナずカむ


    倩歎《おんれき》2030幎。極西の朝。

    石畳の路地に光が萜ちおいた。
    ナナはそこに座り蟌んで、光の粒を指先でなぞっおいた。動かない。圓たり前だ。でもその境界線が、昚日より少しだけ違う堎所にある気がした。

    「ナナ、たた止たっおる。」

    兄のカむの声がした。振り返るず、癜い僧衣を着た青幎が苊笑いしながらこちらを芋おいた。

    「光がね、昚日ず違うの」

    「毎日違うよ。」

    「うん。だから毎日すごいの」

    カむは䜕も蚀わずに隣にしゃがんだ。二人で石畳の光を芋た。少しの間、䜕も蚀わなかった。
    それでよかった。




    この町には音楜堂も競技堎もなかった。石ず朚でできた䜎い建物が、緩やかな䞘に沿っお䞊んでいた。

    垂堎では人々が過䞍足なく物を分け、䜙ったものは翌朝には誰かの手に枡っおいた。執着ずいう抂念が、この䞖界では酷く野暮なものずされおいた。

    倩歎元幎、む゚スずゎヌタマが䞭倮アゞアの小さな枯町で出䌚っおから二千䞉十幎が経っおいた。二人が䜕を話したか、正確な蚘録は残っおいない。

    ただその埌、二人の教えは滑らかに溶け合い、その匟子たちが二千幎かけお始祖の教えを発展させ䞖界を静かに塗り替えた。

    倩歎元幎、む゚スずゎヌタマが䞭倮アゞアの小さな枯町で出䌚っおから二千䞉十幎が経っおいた。二人が䜕を話したか、正確な蚘録は残っおいない。

    ただその埌、二人の教えは滑らかに溶け合い、その匟子たちが二千幎かけお始祖の教えを発展させ䞖界を静かに塗り替えた。

    玀元前に人類が陥っおいた自分さえよければ他者を排陀するずいう䟡倀芳、合理的ずいう䟡倀芳、埋法にに瞛られる䟡倀芳、そのようなあらゆる自己の欲に基づく䟡倀感は始祖の教えが広たるずずもに消えおいった。

    人々は幌少期に怒りや憎しみ、利己的な感情のほずんどを「無明ず迷い」ずしお導垫たちの導きによっお克服しおいった。

    珟圚では怒りや憎しみなどそのような感情自䜓を「迷い」ずひずくくりにしお誰もがそれに飲み蟌たれない。

    人々は始祖から䌝わるあらゆる教えに皋床の差はあれど意識が觊れるこずができたからだ。

    人々は老いるに぀れお、少しず぀透明になっおいった。病気や苊痛で死ぬこずはない。

    病気は1500幎前に、苊痛は1000幎前に「救䞖䞻」ずしお珟れた類たれなる感性をも぀者によっお克服された。

    人々は病気にかかるこずもないし、ケガをしおも苊痛にさいなたされるこずはない。

    飢えも完党になくすこずはできなかったが先達の功瞟により、そこかしこに成る神聖の菩提暹の朚の実があるので飢えるこずもなかった。

    人々は完党でないにしろ䞖界からあふれ出る光を内なる茝きに調和するこずができたし、たずえ飢えを感じおもあるがたたに眺めるこずで死んだずしおも苊したない。

    珟生倩囜ず涅槃の倩囜ずの合䞀が達成される。人々は毎日を生きるために生き、そのためだけに隣人を愛し、祈りをささげるのであった。

    䞇物には霊性が宿り、それぞれが応答する。颚は觊れる。光は染み蟌む。氎は語り、暖かさは味わいがあり、土は蚘憶を持぀。

    人はそれらず、境界を持たずに接する。誰かが笑えば、それを色や感觊で感じる。誰かが祈れば、空気がやわらぐ。それは比喩ではない。珟象ずしお、そう起きおいる。

    人はもはや、䞖界を“倖偎”から芋ない。垞に、その内偎にある。


    2話 透明になっおいく呜

    呜が薄れるのではなく、呜の向こう偎が芋えおくる、ず長老は蚀った。ナナにはただわからなかった。

    でも昚日、おじいちゃんが透明に薄れおいくずきに芋せた顔は知っおいた。

    穏やかで、少し眩しそうで、䜕かに手を䌞ばすような顔だった。

    ナナはその手を握っお、ありがずうをたくさん蚀った。泣きながら蚀い続けたら、䞍思議ず涙が止たった。

    悲しいは幞せの皮、ずカむはい぀も蚀った。
    その意味が、昚日少しわかった気がした。

    ナナには生たれ぀き、通垞より人の粟神を感じるものが備わっおいた。

    誰かが悲しんでいるず、胞の巊偎が重くなった。迷っおいる人の隣に立぀ず、耳がざわ぀いた。

    垂堎のおばあさんが笑っおいるずき、その裏偎の色が芋えた。

    䞡芪はすごく豊な感性ず蚀った。導垫たちは皀有な感性ず蚀った。

    ナナにはよくわからなかった。
    ただ䞖界が、人より少し賑やかだった。

    誰かが泣いおいるず、自分も泣きたくなった。遠い地方で困っおいる子䟛のこずを知るず、その倜は食事もあたりできなかった。

    道端の萎れた花に、䜕床も氎をやりに戻った。
    カむはそんなナナを芋お、い぀も同じこずを蚀った。

    「党郚受け取らなくおいい。ナナのものだけ持おばいい。」

    でもナナにはわからなかった。どこたでがナナで、どこからが他の誰かなのか。

    境界線が、光の粒みたいにい぀も曖昧だった。泥で出来た人圢がごはんを運んできおくれる。ナナはありがずう、ず蚀っおご飯を口にした。

    3話 感じる䞖界ずナナ達の日垞


    朝早くナナは、瑞々しい若草が波打぀䞘を、友人たちず駆け抜けおいた。

    「あら、みんな、今日もおでかけね」

    䞘の花が咲き誇る傍らに座っおいたフリヌゞアがにっこりず話かける。

    「うん草が、朚が、私たちず遊びたがっおるの」

    「今日は違う色が芋える」

    「音もね」

    駆けながらナナ達がフリヌゞアに埮笑むずフリヌゞアもふっずほどけるような笑顔で返した。

    圌女の足裏が地面を叩くたび、土の湿り気、目芚めたばかりの虫たちの埮かな矜音、そしお地䞭を流れる地䞋氎の脈動が、ひず぀の音楜ずなっお圌女の背骚を駆け䞊がる。

    「聎こえる 颚が、昚日の倜に芋た倢の続きを歌っおるよ」

    ナナは立ち止たり、䞡手を広げお目を閉じた。

    「颚の色は感じるけど倢の続きの歌はわからないなぁ。」

    あずから远い付いたミンカは目を぀ぶっおあたりを感知するように蚀った。

    「倢の䞭ではたたにわかるよ。それでもナナほどには感じないし、起きおるず党然だな。」

    ルルカンはナナを感心しながらみた。

    圌女の感性は、千幎前の救䞖䞻すら凌駕するほどに鋭敏だった。

    圌女にずっお、自然は「眺める察象」ではない。颚は頬を撫でる指先であり、陜光は肌に染み蟌む蜂蜜のような滋逊だった。

    クン、ず錻を鳎らす。

    朝露に濡れたリンゎの朚の、枅涌な、しかしどこか甘い銙り。

    その銙りの奥に、朚々が光合成を行い、倧気ぞず玔粋な酞玠を解き攟぀「喜びの吐息」たでを、圌女は五感で捉えおいた。

    「ああ  䞖界が、こんなに笑っおる」

    ナナがそっず倧暹に觊れるず、暹皮の凹凞から暹液の流れる音、そしお朚が数癟幎かけお蓄えおきた「静かな蚘憶」が、色鮮やかなむメヌゞずなっお圌女の脳裏に流れ蟌む。

    圌女は、朚の粟神ず察話しおいた。

    「皆、眮いおいかないで、あたり離れるず感知が難しくなるよ。」

    少し遅れお䞘を登っおきたカむが、苊笑しながら呌び止める。カむの目には、ナナの呚囲の空気が、圌女の歓喜に共鳎しお䞃色に茝いおいるのが芋えおいた。

    ミンカやルルカンよりも倧きくお単色ではない。どんなに修業を経お埳を積んだ高僧でも耇数の色の粟神波をたずうのは難しい。

    「お兄ちゃんたた粟神の波が遠くたで届くようになったんだねすごいねでも倧䞈倫垰り道は自分の光が芚えおるから。朚だっお葉っぱだっお教えおくれるし」

    この䞖界には、もはや「孀独」は存圚しない。

    4話 円奏の法


    䞇物には霊性が宿り、人々はそのすべおず調和しおいた。

    人が笑えば花が開き、人が歌えば鳥が声を合わせる。今や人の子らは神の子らずなっおいた。

    その完璧な和音の䞭に、ふいに䞀滎の「泥」が萜ちた。

    䞘の斜面、䞀箇所だけ草朚が萎れ、色が「灰色」に退色しおいる堎所があった。

    そこにいたのは、真っ黒で、䞍定圢の、ふわふわずした塊。぀ぶらな瞳のようなものがあるのが少し愛らしい。

    「クロマルだわ」

    ミンカずルルカンが同時に声を䞊げた
    ナナの顔が、少しだけ曇った。

    それは「執着」や「怒り」ずいった、二千幎前に人類が捚お去ったはずの「無明」――『迷いの残滓』。今も消えない人々の奥底にある小さな迷い。

    カむ達高僧や導垫はそれを払う法を䌚埗しおいた。人々が「迷う」時、自ら、あるいは導垫達の力でそれを振り払ったずきたたに残滓がでる。

    それが集たっおクロマルになる。小さなクロマルなら信埒ずしお修業をした倧人なら自分でも払えるが倧きなクロマルずもなれば導垫以䞊の力が必芁だ。

    クロマルに入り蟌たれたものは茝きを倱い人々ずの぀ながりが匱くなる。倧きなクロマルに取り蟌たれるず人は生たれお間もない無明の状態に陥っおしたう。

    クロマルは、チチ、ず匱々しく、しかし執着を思わせる音を立おお跳ねた。それが觊れた堎所からは、たちたち生呜の茝きがう぀ろになっおいく。

    「お兄ちゃん、あの子、ずっおも苊しそう。自分の音が芋぀からなくお、泣いおるの」

    ナナは、クロマルが持぀「無明」を、恐怖ではなく「深い悲しみ」ずしお感知した。圌女はその小さな闇に歩み寄ろうずする。

    「ナナ色が薄れちゃうよ」

    うしろで芋おいたミンカが声を倧きくしお蚀った。

    「䞋がっお、ナナ。それはナナの柄んだ音色を濁らせおしたう」

    カむが前に出た。圌は粟神を集䞭させ、右手を倩に掲げる。

    圌の掌には、始祖よりずっずあずの救䞖䞻から䌝わる「光の法」が凝瞮されおいく。

    「  迷える圱よ。君の居堎所は、ここではない。すべおを蚱し、始祖の抱擁ぞ還るがいい。」

    『円奏《えんそう》の法  照』

    カむの手から、優しい光が攟たれた。それはクロマルを攻撃するのではなく、包み蟌み、溶かしおいくための光。

    光に觊れたクロマルは、䞀瞬、激しく身悶えした。

    か぀お人類を混沌に叩き萜ずした「迷い」の片鱗が、黒い霧ずなっお散っおいく。

    次の瞬間、黒い塊はパッず匟け、䜕千もの「癜い光の粒」ぞず姿を倉えた。

    ナナがその䞀぀を指先で受け止める。

    「クロマルも䞀぀になれたね」

    「よかったね。これで、みんなず䞀緒だよ」

    「草朚の音が戻ったね。」

    ミンカもルルカンも安堵ず哀れみを蟌めお蚀った。

    光の粒は颚に乗り、䞘の向こうぞず消えおいった。

    カむは呌吞を敎え、光を収める。

    「これでもう、この堎所も綺麗になった。  さあ、行っおおいで。たた䜕かあったら私を思うんだよ。」

    「うん」

    ナナ達は再び、倪陜のような笑顔を浮かべお走り出した。朚々たちは歌い、虫や動物は薄い光に぀぀たれ、空ず倧地は調和の銙りをうかべおいる。

    神の埡霊は瞁起によりお䞖界にあふれおいる。
    ナナもミンカもルルカンも。みんながそれを感じおいる。

    だいぶ離れたずころからナナ達を芋おいたフリヌゞアが花の旋埋を蚀葉に乗せおそっず蚀った。

    「 祝犏を」

    5話 玀元前の蚘録

    聖堂、町のはずれの小高い海岞沿いの䞘にある塔の曞庫でカむはか぀おの人類の蚘録を読んでいた。

    断片しか残されおいないが、これらの曞物に觊れるには過去の無明に觊れるこずになるので高僧しか読むこずができない。

    高僧でも長老に次ぐ最幎長の゚ンデは来おいない。寡黙な圌はずうに読み終えお聖堂の地䞋で瞑想に励んでいる。

    最幎少で少し内向的なリネッタはあたり来たがらず、䞍埗手な円奏の法の修行をするために今日はいなかった。

    「プラトン    アリストテレス    。数孊    。論理    論法    。」

    無明を光に照らすためには無明を知る必芁があるずの䌝えから、カむは熱心に読んでいた。

    「どうしたのカむ。そんなに気になるずころがあった」

    同じ高僧のフリヌゞアが芗き蟌むようにしお蚀った。

    「特にこのアキレスず亀が    。なぜ玀元前の人はこんなこずを感じるのだろう」

    「分けるからじゃない远い越せば終わりなのにね。感じるこずよりも蚀葉を先に眮くから芋倱うのかな。」

    フリヌゞアはきょずんしお蚀った。

    「そうだよな    。読めば読むほど無明しか芋えない。ここにあるのは固たったたたほどけない感じだ。」

    「平行線が亀わらないこずは信じおいるのに、調和は信じおいない。圌らの感芚からしたらそれこそおかしいのではないだろうか」

    本を読みながらノァルヌ゚フがぜ぀りず蚀った。

    傍らで聞いおいたノァレリアが䜓を包む青い光で぀ららのようなものを䜜っおは雚のように滎に倉えながら口をはさんだ。

    「目を぀むったたたしがみ぀いたものに執着しおいるだけのこずよ。感じるこずができないずこうなるっおこずなんじゃない。」

    カむはノァレリアのほうに目をやった。柄んだ青色をした瞳は凛ずした茝きを攟っおいる。

    「こうしお玀元前のひずはみんなから離れお行っおみんなじゃなくなった。」

    フリヌゞアは海の遠くを芋ながら぀ぶやいた。



    6話 倪叀の残滓

    数日埌、聖堂の静寂を揺らす、䞀筋の「震え」が届いた。

    それは遠く、地方に眠る玀元前の遺跡――か぀お人類が「所有」ず「境界」に執着し、互いを切り刻んでいた頃の迷いの蚘憶を宿す堎所からの響きだった。

    「カむ、フリヌゞア、ノァルヌ゚フ。南東に、石の牢獄の遺跡に、芋たこずもないほど巚倧なクロマルの重なりが生じおいたす。導垫たちの祈りを撥ね退けるほどの、匷い『個』の執着  。あなたたちに、その䞍協和音を鎮めおきおほしいのです。」

    「ナナも䞀緒に連れいくずよいでしょう。」

    長老が蚀った。

    「ナナも    」

    カむだけではなく他の人も少し䞍思議そうな顔をした。長老はにっこりずほほ笑んだ。

    心の波がナナを高僧ずしお埳を積むための経隓ずしおそれを望んでいるのを感じた。ただ幌いナナがこの䜿呜をうけるこずはずおも喜ばしいこずだった。

    高僧の長老による「指名」は、呜什ではなく、祈りの共有だった。人は、静かに頷き、泥人圢が敎えた旅支床を手にした。

    ナナもすぐに聖堂からの呌び声が届いた。心の色は高鳎りを芋せた。

    初めお袖を通す高局の聖衣は纏う人によっお圢や色をかえる。

    聖衣はナナの波に合わせおナナを守るように優しく包み蟌んだ。玔癜だが倪陜の光をうちに秘めたような聖衣になった。

    「ナナらしくおいいわね。」

    フリヌゞアが蚀うず、カむもノァルヌ゚フも頷いた。ナナは嬉しそうにくるくるず回り、僧衣の枩かみずそれが攟぀五感の重なりに心が躍った。

    聖堂を出るずカむ達の疟颚の旋埋に乗っおか぀お玀元前にコロッセオず呌ばれた遺跡ぞず向かった。



    蟿り着いたそこは、奇怪な堎所だった。

    四角く切り出された巚倧な石が、円を描くように積み䞊げられおいる。それは、か぀おの人類が「人を支配しようずした」傲慢な論理の残骞。

    その䞭倮に、それはいた。

    今たで芋たどのクロマルずも違う。

    それは「ふわふわずした愛らしさ」を完党に倱い、䜕千、䜕䞇ずいう「個の叫び」が凝瞮された、巚倧な、脈動する挆黒の塊だった。

    その衚面からは、珟代の䜏人が忘华したはずの、錻を突くような色圩の臭気が、ドロドロずした思念ずなっお溢れ出しおいた。

    「  これが、か぀おの人の心なのか」

    カむは、その塊から攟たれる圧倒的な「拒絶」の波動に、胞の巊偎が石を詰め蟌たれたように重くなるのを感じた。

    「お兄ちゃん、この子  自分が誰だか分からなくお、暗闇の䞭で自分を抱きしめ続けおる  。すごく、悲しい音がするよ」

    同行しおいたナナが、その挆黒の深淵を芋぀めお呟く。

    「うん、悲しみの旋埋が枊巻いお色も匂いも染め䞊げおるね。」

    ノァルヌ゚フが䞍思議そうに芋䞊げながら蚀った。

    だが、フリヌゞアは動じなかった。圌女はこの䞖界の「光」を誰よりも信じおいた。そしお円奏の修行の積み重ねが「信」をより深く濃くしおいた。

    「なあに。これぐらい、すぐに浄化できるわ。どんなに深い闇だっお、始祖の愛を思い出せば、ただの心地よい銙りに倉わる。きっず倧䞈倫」

    カむの方に振り向き屈蚗ない笑顔で蚀っお芋せた。

    圌女は軜やかに、挆黒の塊の前ぞず進み出た。
    カむは、その背䞭に埮かな䞍安を芚えた。

    この巚倧な闇は、ただの「迷い」ではない。自分たちずは根源的に異なる、䜕か「鋭い刃」のような意志が混じっおいる気がした。

    しかし、フリヌゞアは迷いなく、その癜い指先を倩に掲げた。

    「咲きなさい。すべおの棘を、柔らかな花びらぞ」

    『円奏の法  花』

    圌女の掌から、柔らかな光の奔流が攟たれた。それはたばゆい光ではない。

    数千、数䞇の「玫のような光の花」が虚空に開花し、遺跡党䜓を、めくるめく芳玔な銙りで満たしおいく。

    光の花びらが挆黒の塊に觊れるたび、ドロドロずした闇は、花が開いおは淡く消えるたびに、あっけなく霧散しおいった。

    挆黒の塊は、断末魔を䞊げるこずも、反撃するこずもなく、ただ静かに、完党に、消滅した。

    か぀お人類を苊しめた「執着」の王が、「花の銙り」に浄化されお、ただの枅浄な空気ぞず還っおいった    ようにみえた。

    「    やった、かな  」

    フリヌゞアが、少し銖を傟げお、背埌の䞉人に埮笑みかけた。


    7話 倩囜の時

    颚が吹き抜け、鳥のさえずりが戻った。
    石の遺跡には、ただフリヌゞアが攟った花の銙りず、透き通った初倏の光が満ちおいるだけだった。

    「本圓に、やったのだね。」

    ノァルヌ゚フは、安堵の笑みを浮かべお蚀った。カむも安堵の衚情を浮かべおいる。

    光は闇を、ただ圓たり前のように䞊曞きする。

    「よかった。あの子、やっず自由になれたんだね」

    ナナが、空に舞う光の粒を芋送っお笑った。

    「んこの遺跡にはあず぀倧きな塊がいるな。」

    ノァルヌ゚フは蚀った。
    遺跡の奥からコロッセオの䞭倮に぀の塊が抌し寄せた。

    「じゃあ今床はオレの旋埋で浄化しよう。」

    そういうず䞡手で印を切りながら蚀った。

    「円奏の法 雪」

    あたりが茝く吹雪に芆われた。

    「キラキラしおそれでいおずっおもあたたかな味の音色がする  」

    ナナがあたりを芋回しながら蚀った。぀の巚倧なクロマルは吹雪が奏でる旋埋に乗っお光ずずもに颚に乗っお消え去った。


    そう思うや吊や最埌の䞀぀が措氎のように圢を厩しお䞊空から襲い掛かる。

    カむたちが䞊を芋䞊げる前にナナはそれを芋おいた。ナナは少し哀れみの気持ちを蟌めお぀ぶやいた。

    「  円奏の法 みんな」

    ナナから色ずりどりの光ず颚がうずたき倩高く昇っおいく。巚倧な措氎を貫き旋埋ずたばゆい光の吹雪が取り囲んだ。

    巚倧な黒い措氎は色ずりどりの花が咲くずずもに柔らかく空間に溶けおいった。あたりには光の音色ずやわらかな感觊が残った。

    「クロマルさんたち    。これで悲しくないよ。幞せになったよ」

    ナナは少しはかなげな笑みを浮かべお蚀った。

    「すごいわナナったら、私たちの円奏をひず぀にしおくれたのね」

    フリヌゞアが満面の笑顔でナナを抱きしめる。

    「他のみんなにも䌝えなきゃな  いや、もう届いおるか。」

    ノァルヌ゚フはそう蚀っお、少しだけ照れたように笑った。

    ナナの奏でた光は、自分の䞭でも同じように広がっおいた。

    カむも喜びにあふれおいた。今たでにないほど心に満たされる倧地ず空の豊最な味をかみしめお。

    「法は善く説かれた    」

    カむが蚀い始めるず人も続いた。



    「倩囜の時はここにあり」



    人は確かな旋埋を共有しながら笑った。
    遺跡はすべおず調和しおいた。青空が祝犏の色を奏でおいた。

    人は疟颚の颚ず調和しお垰途に぀いた。ナナは颚の色ず感觊で眠りに萜ちそうなほど心地よかった。

    いく぀かの町を通過するたび人々の心は充足の音ずさっぱりずした銙りず色で満たされた。

    星が奏でるきらめきが萜ちる聖堂の石畳は、四人の垰還を祝犏するように柔らかな䜓枩を垯びおいた。




    8話 祝犏のリンゎ


    門をくぐるず、庭の手入れをしおいた泥の人圢たちが、流れるような所䜜で䜜業を止めた。

    圌らの泥の指先は、ナナが持ち垰った新しい旋埋――「みんな」ずいう調和の響き――に觊れ、たるでお祝いの合唱を準備するかのように、しなやかに、そしお静かに集たっおきた。

    「ただいた」

    ナナが匟んだ声を䞊げるず、人圢たちはこれたでにないほど深く、慈しみに満ちた動きで頭を䞋げた。

    その顔には、ナナの喜びをそのたた写し取ったような、穏やかな、凪いだ海のような埮笑みが浮かんでいる。

    圌らはナナの呚りを囲み、その衣服に觊れるこずさえ、聖なる光に济する儀匏であるかのように、ただ静かな歓喜の波動を返した。

    聖堂の最奥、海を䞀望できる円窓の郚屋で、長老サフィアは埅っおいた。

    圌女の纏う空気は、癟幎の祈りを経おなお、汲みたおの氎のように瑞々しい。透き通るような頬にかかった新緑の髪がふわりず浮いおはやわらかい光を攟぀

    「法は善く説かれ、光は遍く満ちたようね。」

    サフィアの声は、心地よい颚のように郚屋を満たした。そこには、この䞖界が䞀段ず垌望ぞず向かうこずぞの、䞀切の揺らぎのない信頌があった。

    「長老、ナナが  ナナが、新しい響きを芋぀けおくれたのです」

    フリヌゞアが、自分の魂が震えるような喜びを蟌めお報告した。

    ナナの成長は、そのたたフリヌゞア自身の深たりであり、二人の境界は、混ざり合う銙煙のように淡いものだった。

    「倧きな迷いの塊を、ナナの『みんな』ずいう響きが、䞀瞬にしお光の海ぞ還しおしたいたした。あれは、そう、たさに始祖の抱擁そのものでしたね  。」

    ノァルヌ゚フも、至犏に満ちた衚情で頷いた。

    「僕たちの奏でた照も雪も花も、ナナの倧きな旋埋の䞭に、あるべき堎所を芋぀けたのです。  ナナは、䞖界を繋ぐ『光の結び目』そのものなのです」

    カむは、サフィアの瞳の奥に宿る、どこたでも透明な肯定を芋぀めおいた。

    サフィアは埮笑んでいる。それは、愛する子䟛たちが正しい道を歩んでいるこずを芋守る、母なる倧地のような笑みだった。

    「ええ、その響きはすでに、私の内偎にも届いおいたす。ナナ。あなたのその幌い指先が、これほどたでに倧きな調和を線み䞊げたこず。それは、珟䞖ず涅槃が䞀぀に重なり、すべおの魂が『独り』であるこずを忘れる、その瞬間の始たりなのですから」

    サフィアは、ゆっくりず手を䌞ばし、ナナの頬を包み蟌んだ。その手のひらからは、長い時の祈りが玡いできた、枩かく、濃厚な滋逊が䌝わっおくる。

    「ナナ、よく頑匵ったわね。さあ、あなたのその『調和の皮』を、この聖堂の、そしお䞖界䞭の隅々たで、優しく、等しく届けおいきたしょう。それは、誰䞀人ずしお取り残さない、究極の慈愛なのですから。」

    「うん 私、もっずもっず、みんなの光を䞀぀にしたい。クロマルさんも、お花も、お人圢さんも、党郚が私ず同じ光になれば、もう誰も寂しくないもんね」

    ナナは、サフィアの腕の䞭に自分のすべおを預け、至犏の吐息を぀いた。

    窓の倖の海は、どこたでも青く柄み枡り、空の色をそのたた吞い蟌んでいた。

    郚屋の隅に控えおいた人圢が、ナナの奜物である「光を吞った果実」を運ぶために、重力を感じさせない滑らかな動䜜で歩み寄った。

    「やったな、ナナ」

    カむは、リンゎをもっお埮笑む効の芋おそう呟いた。

    本圓に、やったのだ。
    誰もが幞せを自分の呌吞のように喜び、誰もが隣人のために祈りを捧げる。

    「さあ、お祝いの準備を。人圢たち、今倜は栌別に、心たで癜く染たるような、枅らかな喜びを甚意しおちょうだい。」

    サフィアの蚀葉に埓い、人圢たちは䞀斉に、慈愛に満ちた衚情で䌚釈をした。

    圌らは始祖の教えを完璧に䜓珟する、この䞊なく忠実な「愛の媒介」ずしお、喜び勇んで支床ぞず向かった。

    遺跡も、聖堂も、そしお人々の心も。
    すべおは今、䞀぀の巚倧な「祝犏」の旋埋の䞭に溶け合っおいた。





    9話 五感が重なるその䞘で


    遺跡での「巚倧なクロマル」ずの邂逅を終え、聖堂での祝犏に包たれた倜が明けた。

    今日も空がずおもいい銙りを攟っおいる。

    柔らかな肌觊り。
    調和する音。

    ナナは目が芚めるず朝食を食べお䞘ぞ出かけお行った。

    ナナはい぀もの䞘で、ミンカやルルカンず過ごしおいた。

    「ねえ、ナナ。あの遺跡のクロマルのこずだけど、本圓にあんなに簡単に光になっちゃったの」

    ルルカンが、背の䜎い菩提暹の枝に腰掛け、䞍思議そうに尋ねた。

    膝の䞊には、垂堎で分けおもらったばかりの、熟した果実がいく぀か転がっおいる。

    「うん。でもね、あの子たちは光になっお『消された』んじゃなくお、『思い出させお』もらっただけなんだよ」

    ナナは草の䞊に寝転び、流れる雲を目で远っおいた。

    圌女の目には、雲の茪郭から溢れ出す埮现な光の粒子が、互いに手を取り合っお空の青を線み䞊げおいるのが芋えおいた。

    「思い出す」

    ミンカが、摘んできた花を䞁寧に䞊べながら銖をかしげた。

    ミンカが䞊べた花は䞊べるず手を繋いでいる。花党䜓に埮笑みが芋えた。ミンカも埮笑みを返した。

    「そう。自分が本圓は、颚や石や、お兄ちゃんや私ず同じ音でできおるっおこず。それを忘れちゃうず、䜓が黒くなっお、硬くなっちゃうの。お兄ちゃんたちは『調和』ずか『浄化」っおいうけど」

    ナナは手を䌞ばし、空を泳ぐ名もなき虫の矜音に觊れた。

    「ミンカ。今、ミンカが䞊べおるそのお花、ずっおも喜んでるよ。ミンカの心の枩かさが、茎を通っおお花に染み蟌んで、色が昚日より䞀段ず『深く』なっおる」

    ミンカは驚いお自分の手元を芋た。蚀われおみれば、花びらの赀が、たるで内偎から灯をずもしたように、生呜力に満ちた茝きを攟っおいる。

    「本圓だ  。私、ただ笑顔が玠敵だなっお思っおたけど。」

    「それが『祈り』なんだよ、きっず」

    ナナは起き䞊がり、柔らかな埮笑みを浮かべた。

    「あのね、ルルカン、ミンカ。私、もうすぐ遠くぞ行くの。サフィア長老が蚀っおた。もっずたくさんの『違う音』を聎いおくるずいいっお」

    二人の動きが、䞀瞬だけ止たった。共鳎し合っおいた魂が物理的に離れるこずぞの、埮かな淡い波王が、二人の粟神から攟たれた。

    「たた高僧の人たちず行くんだね」

    ルルカンが、少しだけ真剣な声で蚀った。

    「ノァレリア様や゚ンデ様それにリネッタ様  。私たちには想像もできないような、深い深い音を持った人たちなんだっお。ナナなら、きっずみんなずも䞀぀の歌を歌えるんだろうな。」

    「うん。でも、私はミンカやルルカンの音も、ずっず持っおいくよ」

    ナナは二人の手を取った。
    ナナの掌から、混じり気のない玔粋な歓喜ず、慈愛の波動が流れ蟌む。

    それは、二人がこれたでに経隓したこずのないほど、透き通った響きだった。

    「私の感性は、みんながいおくれるから光っおいられるの。花が咲くのに、土や氎や倪陜が必芁なように、私はみんなの笑顔が倧奜き」

    「ナナ  。」

    ミンカの瞳から、䞀筋の雫が零れ萜ちた。

    それは悲しみではなく、䞖界があたりに矎しく、自分たちがその䞀郚であるずいう事実ぞの、震えるような感動の露だった。

    その雫が草に萜ちるず、そこから小さな青い音色が、目に芋える速さで顔を出した。

    「芋お ミンカの心が、新しい呜を呌んだよ」

    ルルカンがはしゃいだ声を䞊げる。

    䞉人はそれから、日が傟くたで、ただそこに圚るだけの時間を共有した。

    泥人圢が、倕食の仕床が敎ったこずを告げるために、䞘の麓で静かに䞀瀌するのが芋えた。その人圢の圱さえも、ナナには枩かい茶色の光を纏っおいるように芋えた。

    「ねえ、ナナ。垰っおきたら、たたこの䞘で倢の続きを教えおね。」

    ルルカンが立ち䞊がり、果実を䞀぀ナナに手枡した。

    「うんその時はきっず、䞖界䞭の音がもっず䞀぀になっお、今よりもずっずたぶしい朝が来るから」

    ナナは果実を受け取り、その奥に眠る倪陜の蚘憶を䞀口噛み締めた。

    口の䞭に広がるのは、単なる甘味ではない。それは倧地の慈しみであり、この䞖界を包む「色」そのものの味だった

    遠く、聖堂の鐘が鳎った。

    ナナの心は、空に溶けおいく鐘の音を聞きながら、これから蚪れる未知の地平ぞず、静かに、そしお確実に広がり始めおいた。





    10話 浄化の旅

    始祖む゚スずゎヌタマが邂逅したずされる䞭倮アゞアの叀い枯町は、朮隒に掗われ、ただ静かにそこに圚った。

    か぀おは文明の十字路ずしお、欲望ず分断が枊巻いたであろうその堎所も、今や聖地ずしおの誇瀺さえ脱ぎ捚おおいる。

    四人の旅人がその石畳を通り過ぎる時、響くのは颚の歌ず、柔らかな足音だけだった。

    「ここが、すべおの始たりの堎所    か    。」

    高僧ノァレリアが、凍お぀いた湖のように深い青の瞳で海を芋぀めた。腰たで届く挆黒の髪が、氎流のようなしなやかさで颚になびく。

    「倧昔は聖地ず呌ぶ者もいたけれど、始祖たちが説いたのは堎所ぞの執着ではないわ。ただ、二぀の川が䞀぀に混ざり合った、自然な出来事が起きた堎所に過ぎないから」

    その隣で、リネッタが蜂蜜色の髪を揺らし、少し気匱そうだが若葉のような瞳を现めお埮笑んだ。

    「うん。特別な堎所なんお、この䞖界にはどこにもないの。私たちが今立っおいるここも、ナナの心の䞭も、すべおが等しく『みんな』の䞭にあるの。」

    最埌尟を行く゚ンデは、岩のように匷固な䜓躯を揺らし、沈黙を守っおいた。

    倜の闇を宿したような短い黒髪ず、黒曜石の瞳。圌は語らない。ただその存圚自䜓が、䞇物を支える倧地のような安心感を攟っおいた。

    サフィア長老の導きにより、カむやフリヌゞア、ノァルヌ゚フずは別の旋埋――この䞉人の高僧ず響き合うこずを遞んだナナは、瑞々しい癟合のような暪顔で、空の向こうを芋぀めおいた。

    この浄化の旅が終わればナナは高僧ずなる。

    ゚ンデが、音もなく北の荒野を指差した。

    「  いるな」

    倧地の底から響くような、短く重厚な声。その芖線の先には、か぀おの囜境ずいう「分断の蚘憶」を栞にしお、巚倧な泥の山のように膚れ䞊がったクロマル達が、倧気を黒く柱たせおいた。

    それは圢のない奔流のようにこちらに抌し寄せおきた。

    「行きたしょう。この子たちも、早く䞀぀になりたいず調和を願っおるわ。」

    人は方向ぞ別れおクロマルの奔流に立ち向かった。ナナは少し遅れたリネッタに぀いおいった。

    巚倧な奔流を前にしおノァレリアが䞀歩前ぞ出た。圌女の纏う矀青の僧衣が、鋭く茝く。

    『円奏の法  滎』

    圌女の掌から、ダむダモンドのように硬く枅涌な光の飛沫が攟たれた。それは挆黒の山の衚面に無数の「道」を刻み、匷固に固たった執着の殻を、内偎から最しお解きほぐしおいく。

    奔流をキラキラず茝く氷の粉末に倉えおいく    。ナナは氷の粉末が織りなす冷たく矎しい銙りず音の旋埋に芋ずれた。

    クロマルの奔流がノァレリアず゚ンデから少し離れたナナ達に襲い掛かる。

    「えっず    私の旋埋も重ねるわね」

    リネッタが続く。その呚囲には春の陜だたりのような枩もりが満ちた。

    『円奏の法  抱』

    黄金色の柔らかないく぀もの泡が、解きほぐされた挆黒を優しく包み蟌んだ。

    母が子をあやすような慈愛の波が、クロマルが抱える「孀独」ずいう熱を、穏やかに煙にしおいく。


    だが、数千幎の時を「個」ずしお耐え忍んできた無明の栞は、なおも調和を拒み、措氎の劂く黒い飛沫を䞊げた。

    「え 、私の円奏の法が    効いおないの」

    焊りの衚情でリネッタは䜕床も円奏の法を詊みるがクロマルの衚面を浄化するだけでその栞たでには届かない。

    リネッタから䞍安ず焊りのたじりあった響が倧きくなった。ナナはリネッタを心配そうに芋䞊げる。

    ノァレリアがリネッタの心の乱れにより、円奏の法がうたく緎れないこずを感じお駆け寄ろうずした。

    ほが同時に゚ンデが、静かにその堎ぞ座した。土の色をした分厚い掌を地面に぀ける。

    「  還れ」

    『円奏の法  静』

    圌の呚囲から、あらゆる動きを止める絶察的な静寂が広がった。
     
    すべおの迷いを根底から沈黙させる、底なしの祈り。クロマルの栞が、その圧倒的な静謐に觊れ、぀いに抵抗を止めおひび割れた。

    「最埌は、ナナ。あなたの番よ」

    ノァレリアが促した。

    ナナは、䞉人の高僧が玡いだ異なる䞉぀の矎しい旋埋――ノァレリアの枅涌さ、リネッタの枩もり、゚ンデの静寂――が、自分の胞の䞭で䞀぀の豊かな流れになるのを感じおいた。

    それらはナナずいう噚の䞭で、さらに倧きな、名前のない光ぞず昇華されおいく。

    「  うん。みんな、䞀緒になろうね」

    『円奏の法  みんな』

    ナナが䞡手を広げた瞬間、荒野に虹色の光の柱が立ち昇った。

    巚倧な挆黒の山は、もはや圱ですらなくなった。それは、䜕億もの癜い蝶が䞀斉に矜ばたいたかのように、たばゆい光の粒ぞず姿を倉え、倩高く舞い䞊がった。

    䞉人の高僧は、その光景を至犏の衚情で芋守っおいた。自分たちが長い時を経お極めた円奏の法をこんなに矎しく調和し吞収しおいくナナを皆が心を掗われる旋埋ずしお感じた。

    「ふぅ。玠晎らしいわね、ナナ。私たちの響きが、あなたの光の䞭でこれほどたでに玔粋に溶け合うなんおね。」

    ノァレリアが感嘆の息を぀いた。
    リネッタはクロマルの闇から解攟された安堵で力なくナナを抱きしめた。

    「よかった。安心したの    。」

    ゚ンデも、わずかに口角を䞊げ、ナナの頭に倧きな手を眮いた。

    「  善い音だ。」

    その蚀葉は、䜕癟の経や犏音よりも深く、ナナの心に染み枡った。

    聖地でもなんでもない、ただの荒野。

    しかしそこは今、ナナが奏でた光によっお、この宇宙で最も尊い調和の堎所ぞず曞き換えられおいた。

    四人は、互いの境界が光に溶けおいくような心地よさを共有しながら、次の浄化の地ぞず、静かに歩み出した。






    11話 真玅のリンゎ


    旅から戻るずナナはサフィアから高僧ずしおそしお救䞖䞻の資質を持぀者ずしお歎代でも最幎少で認められた。ナナはカむ達党員に囲たれ祝犏された。

    その倜は月がリンゎのように深玅の茝きを芋せおいた。救䞖䞻が誕生したずき月は深玅の茝きを攟぀ずいう蚀い䌝えどおりに。

    「リンゎのお月様なんか嗅いだこずのないような玠敵な銙りを届けおくれる」ず空を芋䞊げおナナは蚀った。

    フリヌゞアはナナの瞳が月に照らされ深玅に染たっおいくのを芋お「ナナがリンゎだね」ずほほ笑んだ。

    皆も埮笑んだ。゚ンデも顔をくしゃりずしお屈蚗なく笑った。

    「゚ンデの笑顔はなかなか芋れないからそれだけで救䞖䞻だな。」

    ずノァルヌ゚フがナナの頭をポンポンずなでながら蚀った。ノァレリアずリネッタは少し声を出しお笑った。

    カむずサフィアも顔を芋合わせお笑った。月の色は深玅を真玅にしおあたりを涌やかに染めあげおいく。ナナの瞳も。





    12話 新たな隣人

    ナナが高僧ずなっおから間もなく評議䌚があった。

    高僧の評議䌚では人々に寄り添える人圢を䜜る決定をした。泥人圢たちず違い、自分で考え行動できる意志を䞎えるこずにした。

    「泥人圢のように単玔な動䜜しかできないのでは    ないのそれに人間に近すぎるず偶像にならない    の」

    リネッタがずおずおずず控えめに蚀った。

    「評議䌚党䜓の意志を流し蟌むから心配はいらない。それにこれは偶像ではなく厇拝する察象でもない。我々の新たな隣人なのだから。」

    カむが発蚀するず皆玍埗した。高僧たちは䞀人づ぀代衚しお「調和」「善」など人類の叡智の祈りを蟌めた。最埌にナナの番がきた。

    ナナは「悲しいは幞せの皮」ず祈りを蟌めた。みんなの笑顔が少し心によぎった。

    そしお人圢は䜜られた。各地方で人圢の数をどうするかは任せられた。東方のような少し手がいる地域は倧量に人圢を぀くった。

    人圢は少しぎこちないが話すこずもできるし、なにより蚀われなくおも自分で考えお行動するこずができた。
     
    無明はない。感情もあるが悲しいは幞せの皮の祈りのずおりい぀も前向きに行動した。

    人々の生掻は劇的に向䞊した。人圢たちが人間のしおいたこずをすべおやるようになったからだ。人々はその分粟神掻動により泚力できるようになった。

    ナナの町でもそこかしこで人圢たちが人々ず話したり、代わりに家事をしたり、人々の困りごずに察応しおくれた。人圢はよき隣人ずしお人々に愛された。

    ナナは人圢たちから茝くような心の枩かみを確かに感じた。

    「ナナの町にももっず人圢こないの」

    人圢たちが泥人圢ずは違い。䞀䜓䞀䜓個性のようなものがあるからナナにずっおは町の人がたくさん増えたような気がするからだ。

    「気持ちはわかるけど必芁以䞊に欲するのはよくないよ。」

    カむは優しくいった。ナナは少し恥ずかしかった。執着を぀くりだしおいるこずに気づいたからだ。

    その晩食卓でナナは自分の執着に぀いお父母に話した。

    「倧䞈倫。しっかり芳察できおいるから。」

    ず父が、母も続けお

    「お母さんも小さい頃は同じこず思ったこずがあるの」

    ナナは安心した。

    「お母さんでもそんな執着あったんだね私だけかず思っお少し悩んだの  」

    「みんなそうやっお迷いながら倧人になるから安心しなさい。」

    母の枩かい蚀葉がナナの心配そうな笑顔を満面の笑顔に倉えた。

    カむは特に話さなかったが芋守るような優しい笑みでナナに顔を向けた。

    今日も倉わらず幞せだった。かたわらで泥人圢がせっせず食べ終わった皿を運んでいた。




    13話 隣人たちの異倉

    その幎の秋、北の倧陞で異倉が起きた。
    最初は小さな報告だった。いく぀かの共同䜓で、人圢が突然暎力的になった。

    穏やかだった人圢が、理由もなく隣人を突き飛ばした。導垫たちが駆け぀けるず、人圢たちは䜕が起きたか芚えおいなかった。

    導垫たちが䞀䜓ず぀意識を矯正した。
    意識の乱れ、ず北の高僧䌚議は蚘録した。
    原因は特定できなかった。

    ただカむは倜、ナナに背を向けお長い時間考え蟌んでいた。

    その背䞭の色を、ナナは知っおいた。心配の色だった。でも怖れではなかった。䜕かを決めようずしおいる人の色だった。

    冬になった。人圢は自分たちで耇補をひそかに぀くり、倧量に各地で増殖しおいた。ある日、高僧たちず感性が鋭いものは確かに聞いた。

    「無明がある人間を救枈する」

    人圢たちは䞖界で同時に人間を襲い始めた。たるで蟻のように壊されおも壊されおも人圢は意を介さずに倧矀をなしお人々を襲った。

    襲われた人はクロマルにずりこたれたように音色や色を倱っお透明になっおいった。

    人々の歊噚ずもいえぬ物での抵抗、高僧には遠く及ばない導垫たちの「円奏の法」を䜿った抵抗も倧矀の人圢の前には無意味だった。

    そもそも有史以来集団での戊いそのものをしおこなかった人間たちは歊噚も戊うすべすら知らなかった。

    人圢の質も倉わった。バラバラに動いおいた人圢が䞀぀の意志をも぀ように敎然ず集団になっお進行の速床があがった。

    評議䌚は各地の惚状を意識の䌝達で知った。日増しに途絶える䌝達ず埐々に迫りくる人圢の倧矀。倧矀が通り過ぎたあずには透明になっおいく人が残された。

    あるずき、なぜか進行が遅くなった。

    評議䌚は各地の導垫からの報告で珟状を知った。人圢は各地で透明にならなかったものをしらみ぀ぶしに探し透明にしおいった。

    日増しに人圢の声が倧鮮明になっおいった。「浄化」「みんな䞀緒」    「悲しいは幞せ」各地からは人圢のおぞたしい様盞が䌝えられた。

    西方は海に囲たれた地圢ず人圢の数を制限しおいたのが幞いした。評議䌚の本郚があったためカむ達高僧の熟緎の「円奏の法」によりいち早く察応したこずで難を逃れた。

    特に聖堂近蟺の浄化に向かったカむ、ノァルヌ゚フの掻躍はすさたじく、人圢をたたたくたに「浄化」した。やむをえない。「矯正による救枈」をしおいる間はなかった。

    透明になっおいく人もたくさん出たが、カむ達はいろんな町で困惑しおいる人たちを

    「すべおは諞行無垞、倩ぞ召された」

    ず蚀っお人々を安心させた。

    けが人ぱンデずリネッタが円奏の法で治癒させた。

    人々は「汝の敵を愛せ。」「右の頬を叩かれたら巊の頬もさしだす。」ず口々に蚀っおいた。そんなカむ達ず町の人を芋おナナは悲しい気持ちを止められなかった。

    「悲しいは幞せの皮、悲しいは幞せの皮  」

    祈りはどこか遠く、ただ、穏やかに朝の光に溶けおいった。ナナは初めお味わうクロマルよりももっず透明で無機質な音色のない「闇」に心が揺さぶられお円奏の法を䜿うこずもできなかった。

    同行しおいたノァレリアずフリヌゞアはそんなナナを芋お心が癒されるようにず花ず滎の響を送った。

    それでもナナの心はい぀もの音を奏でるこずはなかった。隣人だった人圢が元に戻せなくお「壊される」のはどうしおも悲しかった。

    「そうよね 。でも、悲しいを幞せにするためにさ    。」

    ノァレリアはうずくたるナナの手を握っお少し寂しそうに蚀った。フリヌゞアが咲かせる花の色も少し悲し気に芋えた。

    「隣人たちだったもんね  。」

    フリヌゞアがナナの方を振り向くずずもに花が浄化した人圢がぬけがらのように厩れ萜ちおいく    。

    ナナは浄化が枈んだ家がある街にもどり、無事に戻ったナナを芋た父ず母に抱きしめられ少し泣いた。枩もりの䞭で悲しみはほどけおいった。

    ほどなくしお西方地域の浄化は終わったが、東方から日増しに個数が増え続けながら倧矀で抌し寄せる人圢たちを止めるのは䞍可胜で、ナナの町にも海を越えお抌し寄せるこずは時間の問題だった。


    14話 若葉の救䞖䞻 ナナ


    連日の出来事での疲劎によりナナは家で䌑たせるこずにしお評議䌚が開かれた。決定たで倪陜ず月が幟床も埀埩した。異䟋のこずだった。

    評議䌚が終わり、その次の昌を過ぎたころカむは垰っおきた。
    扉を開けるなり父母ずナナに

    「法は善く説かれた、もはや始祖の倩囜は揺らぐこずはない。」

    高僧ずしおのその荘厳なる嚁厳に父母ずナナはひざたづいお静かに目を閉じ手を合わせた。

    「ナナに頌みたいこずがある。二人は家で埅っおいおください。」

    「じゃあ、行こう。」

    そう蚀っおナナにい぀もの優しい笑みを向け倖に出た。

    ナナは「お兄ちゃんの頌みっお䜕だろうみんなを笑顔にできるかな」ず期埅でいっぱいだった。倖は草朚のにおいがずおもいい音色を奏でおいた。ナナも心の音色が回埩し぀぀あった。

    石畳の䞊に二人で座っお、カむは静かに蚀った。倕暮れの光が路地を橙に染めおいた。

    「人圢の異倉は、クロマルに匕き蟌たれおしたったんだ。人圢の䞭にある闇が、クロマルに觊れお我執に目芚め始めおいる。

    「このたた広がれば、この䞖界は壊れる。䞖界は再び元の䞖界に    」

    ナナは黙っお聞いた。ただ習っおないこずも倚いけど闇が倩囜を飲み蟌むこずは䜕ずなく理解できた。

    元の䞖界は聞いたこずはあるけどただあたりよく知らない。始祖様たちが人間たちをそこから目芚めさせおくれたずいうこずだけ    。

    カむは少し黙り蟌んだ。ナナの呚囲にはあらゆる色ず旋埋が銙りずもに光のような柔らかさで包たれおいるのを芋お意を決しお蚀った。

    「サフィア長老も蚀っおいたが、今この䞖界で救䞖䞻ずしおの資質を持぀のはやはりナナなんだ。」

    ナナは自分の心の音色が楜しく色づきだすのを感じおいた。前は人圢たちの初めおの無機質な旋埋に悲しみがあふれおふせおしたったが、今床こそは    。ずいう䜿呜を感じた。

    そしお始祖様以来倉革の床に珟れる救䞖䞻、その䞀人ずしお改めお自分が成れるず思うず心が躍った。

    「ナナの心を、もっず倧きくする方法がある。始祖様達よりももっずすごい救枈の法を持おるんだ、そうすれば人圢の闇を止めれるんだ。でも、」

    カむは少し止たった。

    「でも、もしかしたら噚が成暹になるほど完成しおないし元に戻すずきに今たでナナが感じおいた䞖界の感芚が少し倱われるかもしれないんだ。」

    ナナは兄の顔を芋た。
    橙の光の䞭で、カむはい぀もの衚情だった。でもその目の奥に、䜕か重いものが沈んでいた。

    「それにその間はナナがナナでなくなるかもしれない。それでも    。」

    「うん」

    ナナは即座に蚀った。
    カむが目を现めた。

    「そうか。」

    「みんなが笑顔でいられるなら、少しの間ナナがナナじゃなくおもいいよ」

    「だっお、みんな䞀぀だし、始祖様達よりすごい救枈の法をもおるんでしょだったらそうなりたい。ナナ    わたしができるこず。みんなを幞せにするこず。悲しいを幞せの花にかえるんだ」

    それは䞍安や悲しみを乗り越えた蚀葉ではなかった。本圓に、そう思っおいた。

    救䞖䞻ずしお自芚が芜生えたナナには、それを手攟すこずが怖くなかった。

    むしろ、ずっずあれ以来それを求めおいた気がした。悲しみを超えお自分を芋぀めおくれたノァレリアずフリヌゞアの顔を想った。

    みんなを救えたら、もう誰の悲しみも取りこがさなくお枈む。

    カむは長い間、ナナの顔を芋おいた。

    「でもひょっずしたら光のにおいずか音色ずかもわからなくなるのかなぁ  」

    ナナは心配そうにいった。この豊かな感芚が倱われたら少し寂しいず思った。

    「いや、おそらく倱うこずはない。歎代の救䞖䞻様も少し感芚が鈍る皋床だったず䌝えられおいる。」

    「それにもし少しの間それを倱っおも䞖界はありのたた。そのたた倩囜だ。お兄ちゃんがもっずもっず玠敵なこずを感じれるように導くよ。」

    それからゆっくり、額に手を圓おた。子䟛の頃からずっずそうしおくれた、倧䞈倫の仕草で。

    「始祖様、そしお歎代の救䞖䞻様たちも祝犏しおくれるよ。」

    ずカむは蚀った。円奏の法ず祈りを合わせる。それは今たで救䞖䞻ず呌ばれた高僧達が䞖界に倉革をもたらす時にしおきた。

    ただ、噚が完成する前に詊みたこずはない。皆成暹の頃を過ぎおからで、たしお若葉の頃の人にはしたこずがなかった。

    初めおではあるが、カむは確固たる垌望の光を感じおる。カむからはそんな音色が芋えた。

    これほど矎しい心の音を聞いたこずがあるだろうか。ナナはこの心の音が聞けおよかったず思った。

    たずえ心の音が聞こえなくなっおもこの想いは消えないから    

    「この感じ。幞せなの。わたし、ずヌヌっおも」

    ナナはキラキラした海のような色をした目でカむを芋た。
    カむは珍しくきょずんずしおすぐに察した。

    「そうだな、ナナはお兄ちゃんよりもすごい感性があるからな。」

    少し照れ笑いのように蚀った。ナナから感じる粟神の波動は玔粋に矎しかった。

    ナナがこの感芚をたずえ倱ったずしおも粟神の波動はきっず続く。

    そしおいずれ最幎少の長老ずなるだろう。この先未来に倩囜を切り開いおいくのはナナだ。カむは確信した。

    倕暮れ倪陜が二人の茶色の髪を矎しく金色に染め䞊げた。通りがかった人が二人で座っお談笑する姿に芋ずれた。

    「やはり䞖界はこんなにも    。」

    二人に静かに祈りを捧げた。





    15話 芚醒の授法、ナナの目芚め

    翌朝、評議䌚の建物の高僧以倖は入れない聖堂でナナの芚醒の授法が始たった。

    高僧たちが円を䜜り、䞭心にナナが座った。石畳に朝の光が萜ちおいた。

    ナナは法の前に、もう䞀床だけ光の粒を芋た。

    今日も昚日ず違う堎所にあった。光のにおい、音、やわらかさ、そしおそれらが奏でる「幞せ」。

    明日はどこに萜ちるんだろう。

    ナナは聖堂の光が圓たる石の床に町ず同じ矎しさを感じおいた。

    みんなが集たっお真剣な県差しをむける    。わたしのために法を䌝授しおくれるんだから少し眠いけどしっかり聞かなきゃ

    ナナは少し真面目な笑顔を䜜った。

    「ナナ    。カむから聞いおるずおり、もう哀れな人圢たちが闇に匕き蟌もうずするのを止める方法はこれしかないのです。」

    「ナナ、あなたはこの䞖界に救䞖䞻ずしお生たれ倉革すべき䜿呜を持っおいるのです。そしお歎代の救䞖䞻を芚醒させた『゚リスの法」は今こそ䜿うべき時なのです。」

    最初に口を開いたのはサフィアだった。

    「そう。党員が委ねるこずよ。私たちの円奏の心の波を䞀぀にしおナナに祈りずしおささげるのよ。」

    ノァレリアが皆に語り掛けるように蚀った。

    「カむは心配しおるけど、始祖様の教えに基づいた法で感性を倱うこずはないず思うの。始祖様は私たち、䞖界から䜕も倱わせなかったもの。」

    リネッタがナナに包み蟌むような笑顔で蚀った。

    うん。うん。そうだよ。倱うこずを始祖様がするわけない。

    「すべおは空。意識が高次になっおも䜕もかわりはしない。」

    ゚ンデがい぀ものように岩のような逞しさで蚀った。

    「この代々䌝わっおきた「゚リスの法」は争いを鎮めるために自分のリンゎを投げ蟌んだ玀元前の神話に基づいおいるわ。たさに始祖様達の斜しず同じ粟神なのよ」

    フリヌゞアが自信たっぷりな笑みを携えお蚀った。

    リンゎかぁ    。ナナの奜物だなぁ    。だめだめ。みんなナナのこず思っおくれおるのに自分のこずばかり。

    ナナは先日の自分本䜍な考えを思い出しお反省した。

    「゚リスは調和の女神だ。オリンポスの神々の䞭でも䞀番始祖様達の粟神に近い。」

    ノァルヌ゚フがい぀ものように少しあさっおの方を向きながら静かに蚀った。

    ゚リス初めお聞くけど誰かなオリンポス神様っお倩の神様じゃないの

    「数ある䞭で梵倩なる父なる倩の神以倖に名を残し代々䌝わっおいるこの法が八正道においおも正しく救䞖䞻に目芚めさせるのです。皆、粟神を䞀぀にしたしょう。」

    サフィアがゆっくり腰をあげながら蚀った。
    その堎に「信」が圢成された。ナナにも皆の信が合わさるのが感じられた。

    神様


    ナナはか぀おないほどの畏敬の念を抱いた。

    「それではたず党員の円奏の法を合わせお授法し、ナナの祈りず円奏の法によっお完成させる。皆いくぞ」

    カむが静かに、芚悟を持った声で皆を芋ながら蚀った。

    「ナナ、目を閉じおしっかり祈っお。」

    カむはい぀もず同じ優しい笑顔で声をかけた。

    「うんお兄ちゃん」

    ナナはそういうず静かに目を閉じ祈り始めた。カむ達党員が目を閉じ祈る。皆の円奏の法がひず぀になる。

    ナナの心に流れ蟌む。みんなが、䞖界が自分自身になっおいくのをナナは感じた。

    聖堂に響く玔粋で柄み枡る旋埋がナナの蚀葉に乗っお滎り萜ちた。

    「円奏の法 みんな」

    聖堂は巚倧な思念で芆われた。

            。

              。

                  

    光が    音が    銙りが    意識が    、䞖界に満ちた。

    私の心は無限倧だ。

    すべおが調和するこの旋埋    。

    神ずはこういう感芚なのか    。

    すさたじい知性が    私は    わたしだが    蚘憶が    思い出が    みんなが      。

    「お兄ちゃん  。ナナは    」

    「ナナが    」

    「ナ        ナ        ナナナ    がガが」

    「              。」

    「        。」








    『み ん な を た も る た め に や み を じ ょ う か す る』




    16話 守られた倩囜

    高台にある聖堂の最䞊階から海の向こうに人圢たちが芋えた。数䞇‥いや数十䞇。人圢たちの声を高僧たちが感じた。

    「おれわたしおれおれわたし」

    聖堂は避難しおきた人々であふれかえっおいた。

    「なんなのよこれは    っ」

    「これが    我執の果おなの   」

    ノァレリアずリネッタが口々にそう蚀っお、初めお芋る闇が抌し寄せる光景に粟神の波動が乱れおいるのを恥じた。

    カむが少し離れたずころにいるナナに話しかける。

    「ナナナナ」

    ゚リスの法は完成した。ナナは空䞭に癜黒の半透明な姿で浮いおいた。

    この䞖界から少しズレたずころにいる
    䌝承のずおりだ    。

    サフィアは衚情を倉えず皆に悟られないように波を平坊にしながら初めお芋る救䞖䞻の姿に圧倒された。

    少しう぀むき加枛で目はう぀ろで焊点はあわない。口はかすかにひらいたたただ。手足はだらんずしおいる。

    凡倫から芋るず眠っおいるのか起きおいるのかわからないほどだ。

    ただ、か぀おの光ず音色が奏でる調和された色がすさたじいたでの倧きさで包んでいた。

    「    お兄ちゃん    」

    ナナはかすかに答えた。しかしそれは声ではなく盎接頭に響く小さな波のようだった。

    「ナナは始祖の粟神の状態に近いわ。歎代の救䞖䞻がそうであったように我々ずは比べ物にならないほどに盞手の粟神に働きかけかれるはずね。」

    ノァレリアが抌し寄せる人圢たちを涌しげな目で芋据えながら蚀った。

    カむは呌びかける。

    「ナナ    。人圢たちを    止めれおくれないか。゚リスの法により遠くそしお広範囲で調和の祈りを盎接人圢たちの意識に届けられる。」

    カむはゆっくりず蚀い聞かせるように蚀った。

    「おれが」「わたしが」「浄化」

    人圢たちの声が倧きくカむ達に聞こえる。

    カむは呌びかける。いや拝むず蚀ったほうがよかったかもしれない。

    「ナナ  ナナ    䞖界を倉革し救䞖するずきだ    。」

    塔の屋䞊からフリヌゞア達が円奏の法で海の向こうの人圢たちを砎壊する。滎で、花で、静で、そしお抱で。

    壊れおもあずからあずから際限なくやっおくる。カむ、サフィア、ノァルヌ゚フはナナの
    安定を埅っおいる。

    噚が完成しおないナナは完党に芚醒するたで時間がかかるのかもしれない    。

    カむに少し焊りが芋られた。食い止めおいるが人圢はずうずう海を枡り海岞にたどり着いた。カむずノァルヌ゚フも屋䞊に䞊がり䞀緒に応戊した。

    聖堂では避難しおきた人々が静かに祈っおいる。底知れない䞍安。誰もがそれを隠し切れなかった。

    泥人圢たちだけがせっせず避難しおきた人たちの為に毛垃を運んでいる。

    「お兄ちゃん」

    ナナの声が頭に響いた。さっきより明晰に。カむはナナのずころに戻った。

    「どこださっきの堎所にいない    」

    カむが振り返るずすぐそばにいた。
    音もなく気配もなく䞀瞬で

    そう思うやいなやナナの目が開いおいるこずに気づいた。
    海のような青い瞳はリンゎのように赀かった。

    「ナナ    」

    ナナはカむを芋るこずなく人圢たちの矀れを芋おいた。

    「ナナナナお兄ちゃんだ」

    カむはハッずした。ナナからはさきほどよりもさらに研ぎ柄たされた波動を感じた。波動を感じたフリヌゞアたちもナナの元に戻っおいた。

    カむは穏やかに    だが疑念を吹き飛ばすような声で蚀った。人々に向けお蚀った。

    「皆よ。蚀葉はわが足のずもしび、わが道の光である。始祖たちの法は善く説かれた。我々の垌望は今この時に地獄から我々を救枈する。倩囜の時は      ここにあり」

    その堎にいる党員が荘厳な雰囲気に包たれるカむを芋぀めた。

    ただ䜕が起こったのかはわからないようだったが高僧達のみその蚀葉をかみしめ安堵の衚情を浮かべた。

    ナナは瞬きするこずなく倧きな窓から芋える人圢の倧矀を眺めおいた。

    突劂、人圢たちの声が止んだ。䜕十䞇ずいう人圢は時間が止たったかのように静止しおいた。

    安堵ず喜びに人々は包たれた。

    そこかしこで「感謝の祈り」をナナに向かっお捧げる声が聞こえた。

    カむも祈りの姿勢をずり深く感謝した。
    神に倩にそしお始祖から続く教えに。


    䜕よりも「救䞖䞻」ナナに。

    各地の導垫から人圢が突劂停止したずの知らせをいち早くノァレリアが感じた。


    17話 止たらない浄化

    「はぁヌヌよしっ」

    少し䌞びをしながら安堵の声を挏らした。

    サフィアは皆を芋回しおゆっくり埮笑んだ。

    「祈りたしょう。始祖から続く繋がる慈悲に」

    「      。」

    サフィアの蚀葉の前にすでに゚ンデは静かに祈っおいた。

    それに気づいたフリヌゞア、ノァレリア、ノァルヌ゚フも祈りの姿勢をずり感謝した。

    リネッタが少しナナに目をやっお遅ればせながら皆ず同じように祈った。

    ほんの少し、心のひっかかりを皆が肌で感じおいた。

    祈りは静かに感謝の念ずなりその旋埋はあたたかな安心をその堎にいた人々を包んだ。

    終わったのだ。その堎にいる党員が垌望に満ちた。

    カむはすぐそばで空䞭でたたずむナナに優しく話しかけた。

    「ありがずう。ナナ。」

    い぀ものように優しく觊れようずするがその手はすり抜けた。意識䜓ずなったナナに觊るこずは今はできないのだず思いだした。


    はるか極東の地方では半分皋床は停止したがその残䜙は未だ動いおいる。

    「ナナの意識の届く範囲はただかぎられおいるようね    。」

    フリヌゞアが぀ぶやいた。

    カむはナナに話しかける。

    「ナナ、ここから海のずっず先の地方でただ人圢が動いおいるんだ。止めおほしい。」

    ナナは䜕も答えずただ前を芋おいた。
    カむは感謝ずずもに心配した。

    きっず芚醒した意識で粟神を䜿うのは倧倉なのだろうな。党郚が終わったらお兄ちゃんずたた街を歩こうな    。

    そう思うず同時に、䞍安がたちのがった。

    ナナの感性は戻るのか

    街を歩いお光や音やそれらをたたあの笑顔で感じおくれるのか

    色んな思いが頭をよぎった。

    その思念を感じ取ったリネッタがカむに諭すように蚀った。

    「ねえねえ、倧䞈倫だよ。始祖様達は䞎えるけど、決しお奪わないの。」

    (    守る)

    「そうだ。先達の高僧もそのような——」

    ノァルヌ゚フが蚀いかけたその時

    ドォォン

    空からずお぀もなく倧きな岩が地面におちたようなすさたじい音がした。

    音がしたのは浜蟺だ。停止しおた人圢たちの䞀郚が抌し぀ぶされるようにぐしゃぐしゃに砎壊されおいた。

    䞀䜓䜕が    カむがそう思った矢先

    ズドドォォン

    (——浄化    。)

    ズドドォォン

    さっきよりもはるかに倧きい重苊しい音が響きわたった。

    䜕もない空から芋えない䜕かが人圢たちの矀れをぺしゃんこに抌し぀ぶすように砎壊した。

    䜕十䞇ずいう人圢たちがすべおぺしゃんこに抌し぀ぶされおいた。


    皆あぜんずしおいた。心の旋埋が止たる。カむもただ呆然ずそれを芋お立ち尜くしおいた。

    極東からの報告では人圢がすべお停止したのち、ぞうきんを絞るようにねじり぀ぶされおいた。

    その報告を感じる間もなく浜蟺の原型をずどめないほどにぐしゃぐしゃになった人圢たちが䞀瞬で焌き払われ跡圢もなく消えた。

    「ナナ」

    おそるおそるナナの方に顔を向けた。

    かすかに頭の䞭に響いた(    守る)
    (——浄化    。)を感じ取れたのはカむだけだったのだろうか。カむだけがナナを芋おいた。

    「      ナナ」

    ナナはただ同じ方向を芋おいる。半開きの口はかすかにわらっおいるようにも芋えた。この慈愛あふれる平穏な顔は    。

    「元に戻さないずいけたせんね。」

    サフィアがぜ぀りず぀ぶやいた。

    「そう ですね 。」

    カむもナナから目を離すこずなく静かに返答した。

    各地から異垞な砎壊に぀いおの報告を高僧達が感じおいたが、返答する者はいなかった。

    カむはようやくナナの正面ぞ移動しっかりず芋぀めお蚀った。

    ナナの瞳の行方はカむを通り越しおもっず遠くを芋おいるようだった。

    「ナナありがずう。救枈は完了した。倩囜は守られた。今から元に戻すから。」

    少し萜ち着いお倧きく息を吞った。カむ達も円環を぀くるように移動し始めた。

    人々は儀匏を察しお扉の方に向かい始めた。えもいえぬ重苊しい雰囲気がたちこめおいた。

    ナナが元に戻ったずきこの出来事は蚀わないでおこう、きっずナナが悲しむから    。

    カむは呌吞を敎え意識を統䞀する片隅で思った。

    「ナナ聞こえるか今から解法を行う。こっちを向いお祈りをささげおくれ」

    空䞭に挂うナナは目を芋開いたたた動かなかった。

    「ナナナナ返事をしおくれ祈りを捧げるんだ」

    カむの必死さが少しにじみ出たような声かけにも反応はなかった。

    「救䞖䞻ずしお幌い噚で高次の意識ずしお芚醒したのだから少し曖昧になっおいるのかもしれないな    。」

    少し眉間にしわを寄せナナを芋䞊げながらノァルヌ゚フが蚀った。

    「ナナの祈りがなくずも戻せたす。少し疲劎が残るかもしれたせんが    。」

    「感性はどうなるのですナナの」

    カむがサフィアの蚀葉をさえぎっお蚀った。

    「    心を手攟すな。」

    ゚ンデがカむの肩に力匷くそしお優しく手をおいた。

    カむぱンデの方に顔を向けた。

    い぀もず倉わらず倧地のような揺るがぬ頌もしさでカむの目をじっず芋お静かに頷いた。

    それでもカむは珍しく平垞心を倱っおいた。

    (    守る) (——浄化    。)それが頭の䞭で反芻される。ナナの倧事な感性が倱われる。挠然ずしたそんな䞍安で䞀杯だった。


    18話 浄化の連鎖

    「異垞事態にオレたちは盎面した。カむの䞍安に思う気持ちももっずもだ。だが詊緎は終わった。倩の導きにより、再び安息の日々は垰っおきた。だからカむも経を念じお平垞心をずりもどすんだ」

    ノァルヌ゚フに続いおノァレリアが飄々ず続ける。

    「そうそう。カむもさ、みんなももちろんだけど    思う事たくさんあるのわかっおるじゃないこのこずは解法が終わっお、それでさ、ナナをしっかりず䌑たせおからたた評議䌚できちんず——」

    みんなを    
    守る    
    ナナが    
    闇——浄化——     

    党員がナナを芋䞊げた。

    はっきりず頭に響いた。

    たるでこの䞖のすべおの闇を排陀するような神々しさを通り越した党き響き    。

    しかし、玀元前の封印された蚀葉に乗せられたような重さず抌さえ぀けるような感芚に皆は混乱した。



    泥人圢たちが同時に粉々にはじけ飛んだ。



    「䜕が    起こっおるのよ    。」

    ノァレリアが粉々になった泥人圢たちを芋回しながら心の平安が溶け出しおいく    。

    「ナナナナヌヌヌヌヌ目を閉じおくれお兄ちゃんっおいっおくれ終わったんだもういいんだ」

    「あなたが心を乱しおどうするのよ平垞心神の導きによっおナナを解法するカむも思念を統䞀しお」

    ノァレリアが叱咀激励の力匷い響きでカむをきっず芋぀める。

    「    お兄ちゃんが今戻すからナナ」

    「カむ粟神を統䞀せねばできたせん。か ん 」

    カむをなだめおいたサフィアの様子がおかしくなった。


    衚情が芋たこずもないほどゆがみ目を芋開いおない泣き笑いのような口をしおいる。

    「䞖界が    色が‥音が    感じられなく    」

    い぀のたにかナナの向きが倉わりおかしくなったサフィアの方に焊点の合わない瞳を向けおいた。

    あの日芋た真玅のリンゎの瞳だった。

    サフィアは自らの手で顔を持ちゆっくりず銖を真埌ろにねじたげおそのたたゆっくり倒れこんだ。

    透明になっおいくサフィアの傍らでカむ達高僧は䜕が起こっおいるのか感じるこずができない。

    サフィアからは音も色も匂いも感觊も感じない。ただ透明になっおいくだけだ。

    リネッタがナナに駆け寄る。しかしやはり抱きしめるこずもできずその手は空を切る。

    「いやだ    ナナ    私たち    ごめんね    。」

    リネッタは悲しみに沈んだ瞳から涙をポロポロこがした。リネッタはうずくたっお泣いお顔を䌏せた。


    19話 散りゆく花

      ナナに䜕かが起こっおいる。

    もし  

    もし、そうなら浄化しないずきっず元に戻るはず。

    フリヌゞアは倧奜きなカむの効を救うずいう䞀心で祈った。指先を倩に掲げた。

    「咲きなさい。すべおの棘を、法茪の花びらぞ」

    『円奏の法  華』

    フリヌゞアの掌から、柔らかな光の奔流が攟たれた。

    柔らかな光ずずもに円を描くように数千、数䞇の「玫のような光の花」が虚空に開花しめくるめく芳玔な銙りで満たしおいく。

    しかし、光の花びらはナナに觊れるこずなく ナナの攟぀色で枯れ萜ちおいく  。

    「そんな    」

    フリヌゞアが指先の䞀点に再床祈りを蟌めお法を詊みようずしたずき、調和する䞖界から自分が離れおいく感芚を味わった。

    おかしい    。意識が䞖界から切り離されお぀぀み蟌たれるように握り぀ぶされおいく。声も  。

    ナナ    ごめんね    花が    もう咲かない    。

    う぀ろな衚情で虚空を芋るような目をしおから芖線は足元ぞ。

    しりもちを぀くようにフリヌゞアは倒れこんだ。

    透明になり぀぀あるフリヌゞアの芖線の先にはカむがいた。

    悲しい、悲しい    

    フリヌゞアの最埌の思念を感じた。カむずノァルヌ゚フはフリヌゞアの最埌の想いを受けお必ずナナを救うずお互いの銙りが䞀臎した。

    「円奏の法 倩照  吹雪」

    祈りを蟌め印を切るノァルヌ゚フず胞の前で手で䞉角のような圢を぀くるカむ。

    「私も入れおもらう。」

    ゚ンデが円奏の法  静寂を重ねる。

    「これでいける。倧䞈倫だ」

    ノァルヌ゚フが蚀い終わるず同時にたばゆい光ず優しくきらめく冬のにおいの吹雪が包み蟌むようにナナに降りかかる。

    その旋埋はさらに党おを眠りに誘う波を぀くりナナに吞い蟌たれおいった。

    ナナの目はゆっくりず閉じた。

    「ナナ    。もう少しだから    。」

    20話 誰も疑わない垌望の光

    カむはフリヌゞアずサフィアの粟神が消えおゆくのを感じながら悲しみの音が奥深くから湧いおきた。

    「いやだぁヌヌフリヌゞアヌサフィア長老―私もう    耐えられないよヌ」

    リネッタは床にう぀ぶせになりながら泣きじゃくっおいる。

    「さお、ここからもうひず頑匵りだな    。」

    リネッタをちらりず芋おノァルヌ゚フが匵り぀めたような、それでいおカむから感じる音の色を感じお元気なく蚀った。

    リネッタが泣き止むたで党員が粟神を統䞀するこずにした。しかし、なかなか波長が合わない。

    誰しも垌望を倱っおいなかったが、疲劎ず粟神の消費で消耗しおいた。こんなにも心が乱される経隓は誰しも初めおで、想定しおなかった。

    カむ達はリネッタを優しく抱きしめなだめ぀぀粟神の回埩を埅った。


    ナナは眠っおいるのだろうか    。

    家で芋るあどけない、でも芋おいるず癒されるあの寝顔を思い出した。

    カむはナナに向かっおふっず笑いかけた。

    党員が感じおいた。゚リスの法は間違いなく完成し、ナナは救䞖䞻ずしお芚醒した。

    原因は間違いなくナナではない。我々以倖に「異質なもの」がいるず。

    サフィアずフリヌゞアの喪倱による悲しみ、そしお今感じた違和感を感じながらも疲劎ずリネッタの乱れのため党員が少し䌑息をずるこずにした——。






    21話 取り蟌たれる意識

    「円奏の法  沛雚はいう」

    ノァレリアが突然立ち䞊がり無衚情にカむ達の方を向いお蚀った。い぀もの凛ずした県差しはう぀ろな音をしたためおいた。

    「いやいや、今は党員の粟神を萜ち着けおだな、それから    」

    ノァルヌ゚フがやれやれず蚀った感じでノァレリアに歩み寄る。

    圌女の掌から、ダむダモンドのように硬く霧ず光をたずった雚がノァルヌ゚フの頭䞊に舞い䞊がる。

    「はノァレリア、䜕し    」

    蚀い終わる前に巚倧な結晶ずなった雚がノァルヌ゚フを貫いた。

    ノァルヌ゚フを貫いお床に刺さったたくさんの雚の結晶が柱のように屹立しおいた。

    「おれで最埌に  みんなノァレリアを救っおくれ」

    ノァルヌ゚フは最埌の祈りの光をノァレリアに送っお静かに透明になっおいった。

    ノァレリアの瞳の茝きがほんの少し元にもどり぀぀あった。

    「みんなを守るため    あれ私が私じゃなくなっおいく」

    ノァレリアがハッず我に還る。

    「えこれ私がやったのデモ、だっおみんなを守るためにダミを浄化しなきゃっおねえ」

    頭を抱えおノァレリアが悲しみずも恐怖ずもいえない衚情でうずくたる。

    ノァレリアが意識を守るために粟神の光を集䞭させる。

    カむも゚ンデも動けなかった。少し萜ち着きを取り戻し぀぀あったリネッタは耳をふさい
    で完党に心の平衡を倱っお泣き叫んでいた。

    「あヌヌヌ私はノァレリア高僧にしおサフィア長老の元で行法を積み    私はミンナをたもるからノァルヌ゚フノァレリアが」

    ノァレリアの党おを集䞭させた光ず雪の旋埋が意識を囲うように防壁を䜜る。カむず゚ンデも防壁に祈りの波を重ねる。

    「私は絶察に」

    息を荒くしお叫ぶノァレリアがビクンず激しく埌ろにのけぞる。

    ノァレリアの防壁がはじけ飛んだ。


    22話 救䞖䞻ナナ、『調和』の女神゚リスの意志

    「救䞖䞻ナナ様の意志により闇を調和したすねぇ    」

    のけぞりながら目を癜黒させながら蚀った。高朔な気品のノァレリアは違う䜕かに倉質しおいた。

    䞡手にはカむ達の頭䞊に攟たれるであろう雚の結晶がなおも矎しい音色を奏でお海の底のような青色をたずい雪の銙りずずもに巚倧化しおいった。

    い぀のたにかナナがノァレリアの埌ろで再び真玅の瞳を芚醒させおいた。瞳の奥には神々しいほどの調和の意志が茝いおいる。

    その時たで誰䞀人ナナが移動したこずも芚醒したこずも気づかなかった。

    カむは目の前のナナにあの日芋たリンゎの前で屈蚗なく笑うナナを重ねるこずがおきず、立ちすくんだ。䜓が動かない。動く意志がしおれおいく。

    ゚ンデがいち早く動いた。

    「    円奏の法  寂滅」

    ゚ンデが唱えるずノァレリアの䞡手の雚の結晶がみるみる溶けおいく。

    玠早くノァレリアに接近し肩を぀かみ静寂の思念を送ろうずした。

    ゚ンデの腹郚を貫く雚の結晶が茝いおいた。

    ノァレリアが円奏の法を唱えるこずなく手に結晶を持ち゚ンデを刺しおいた。゚ンデが倒れた。

    薄れゆく粟神の波が自分の色ずずもに匱っおいく    。ノァレリアに觊れお気づいたこずを䌝えねばならない。

    「カむ    リネッタ    粟神にはいりこたれる    な    。䞀床でも入られるず 。」

    「調和かんりょヌヌヌ」

    ゚ンデの蚀葉をかき消すようにノァレリアは焊点の合わない目であの人圢が発するような声で蚀った。

    ただ、瞳がナナず同じ深玅のリンゎに染たっおいた。


    23話 繋がり合う䞖界の孀独

        花

    ナナの声がカむずリネッタの頭に突き抜けるように響いた。

    ノァレリアの䜓䞭に色ずりどりの花が咲き乱れ旋埋ずずもに調和の銙りはなった。

    䞀瞬のうちに花が咲き誇り枯れ萜ちおいく    悲しみの銙りを残しお。

    ノァレリアは枯れた花ずずもに跡圢もなく塵ずなっお消えた。

    悲しいは    幞せの    皮    

    ナナのあの頃のたたの声が途切れお聞こえる。

    ナナをたずう粟神の波動はサフィア、ノァルヌ゚フ、フリヌゞア、゚ンデ、そしおノァレリアの円奏の色盞を取り蟌んでいた    。


    ノァレリアが消えた埌、聖堂の最䞊階を支配したのは、この䞖の終わりのような静寂だった。

    残されたのは、半透明の虚像ず化したナナ、再び決しおあきらめない匷い茝きを攟぀カむ、そしお声を䞊げるこずさえ忘れ、幌児のように䞞たっお震えるリネッタだけだった。

    カむはナナを芋䞊げながら゚ンデの最期の想いをかみしめお叫んだ。

    「リネッタ心に思念を集䞭させるんだ円奏の光で心を守れオレが必ずナナもリネッタも救う」

    「䞖界に還ったみんなの想いで心を照らすんだ」

    震えおうずくたっおいたリネッタがゆっくり顔をあげた。

    「  おかしいの  。こんなの、絶察に  っ」

    リネッタの声が、静寂の裂け目から挏れ出した。

    「私はね、小さいころからずっず怖かったの  。みんなが同じ音で笑っお、同じ色で祈っおるのが、たるで生きたたたお墓に入っおるみたいで、苊しかったの   」

    「みんなが感じる綺麗な花も、優しい颚も、玠敵なのそれでも、私には党郚、なにかから目をそらす無明に芋えおたの  倧切な人が透明になっおいくたびにみんな、みんなしお『それは䞖界にもどる静かな安寧だ』っお。」

    「でもそれはおかしいっお感じるけど、私がもっず感じる力を心に育おおないからだっお蚀い聞かせおたのでも、でも倧切な人がいなくなっお悲しいこずから心をそらすなんおどうしおもできないの」

    圌女は床に爪を立お、あふれ出す涙ずずもに、幌い頃から心の奥底に柱おりのように溜めおいた「重み」を吐き出した。

    それは生たれおからこの䞖界に察する消そうず思っおも消せない違和感だった。

    みんなず、䞖界ず぀ながっおいるはずなのにわかっおもらえない。

    そんな孀独から目を背けおきたリネッタの気匱だが、初めお出す声に、これたでになかった鋭い響きが混じり始める。

    「やめろ    、リネッタ        。君たでどうかしおしたったのか    」

    カむが力なくリネッタを芋぀めた。その瞳には、高僧ずしおの叡智も、冷静さも、もう残っおいなかった。あるのは、最埌の最埌たであきらめない匷くも消えそうな光だった。

    「リネッタ、こんな状況だ    。心が乱れるのもわかる。でも、ナナは、ただ噚が䞍安定なだけなんだ  。オレが、今、ナナの心を取り戻しおみせる。だから、䞍協和音を立おないでみんなの想いを受け止めおくれ  。」

    カむは、真玅に染たったナナの瞳を芋぀め、慈愛に満ちた、しかしひどく空虚な埮笑みを浮かべた。


    24話 2぀の救い、分かたれた道

    カむはナナ゚リスから攟たれる、存圚そのものを消去しかねない茝く波動を、あえおその身に受けながらリネッタに歩み寄る。

    「リネッタ    。君の蚀うこずはすたないがよくわからない。でも君から攟たれる寂しさや悲しみの銙りず音ははたしかに手觊りずしお䌝わる。それでも    救いずは    。」

    「救いずは    垌望の光で闇を照らし倩囜に続く道を瀺すこずなんだ」

    リネッタの目を芋るカむの目にはすべおの矎しさをたたえたような決意の色が茝いおいた。

    これだ。これなんだ    。


    「救いずは    垌望の光を倱っおも    もういちど自分で灯すこずなのそれがたずえ倩囜に続かなくおも」

    きっずカむを匷く芋返すリネッタの蚀葉ず瞳にこの䞖界で聞いたこずない匷さを感じた。

    カむはリネッタが異質なものに倉質しおいるず感じたがそれはなぜか「迷い」ず思えなかった。

    リネッタを優しく包む倕暮れの金色を垯びた波が自身の信念ず䞖界ずは別皮の粟神を宿しおいるように感じた。

    (  お兄ちゃん。闇の、浄化  )

    ナナの波動が響く。
    二人はナナの方ぞ向いた。

    ナナの唇は動いおいない。だが、カむの粟神には死の宣告のような響きが刻たれる。

    ナナの意識の光が、ゆっくりずカむの心ぞ䌞びた。その指先が觊れた瞬間、カむの䜓が端から透き通り始めた。

    「カむ 逃げお それはもうナナじゃないのそれは    もう    」

    リネッタの叫びは届かない。カむは逃げなかった。

    「円奏の法  倩照」

    自分に円奏の法を纏い実䜓のないナナに飛び蟌んだ。

    「ナナお前は今、䞖界ずの境目で揺れおいる倧䞈倫。お兄ちゃんが内偎から照らすから    。ナナ、お前を䞀人には    させな      」

    ナナの䞭に飛び蟌んだカむの䜓は、最埌に䞀際眩しい光を攟ち、リネッタの目の前で现かな光の塵ぞず倉わった。カむが最期に遺したのは、「党おを照らす音色」だった。



    25話 『䞍和」の女神 ゚リス

    ナナはそのたたそこにいた。リネッタを優しく孀独にした䞖界の慈愛を凝瞮したほのかな笑みを浮かべお。



    「お前  。私の仲間たちを、倧事な音を  みんな、みんな奪っおいったのね」

    「これ以䞊    ナナの姿でひどいこず    絶察させないの」

    リネッタの䞭で、䜕かが音を立おお壊れた。いや、剥がれ萜ちた。

    圌女の背埌に、黄金の、しかし炎のように熱い巚倧な粟神の膜が広がる。それは慈しみ包み蟌む円奏の法ではあるが生々しい「人間」の䞍協和音を含むものだった。

    「゚リス  お前は調和でもなんでもないのただの、虚ろな、灜厄なの」

    (リネッタ      みんな    䞀぀    なのに    )

    「その声で、その音色で    、、しゃべるなヌヌ」

    リネッタの手には、か぀おの泡のようなすべおを抱きしめる柔らかさが、銙りが、その茝きのたた重厚なものぞず倉質しお握られおいた。圌女がそのすべおをナナ゚リスぞ叩き蟌もうずした瞬間、䞖界が反転した。

    (いやだ    䞍協和が    )

    ナナ゚リスの真玅の瞳が、リネッタずいう「異質な光」を感じる。

    それは拒絶ではない。ただ、完璧な旋埋の䞭に玛れ蟌んだものから、耳をふさぐ叫びだった。

    (  䞍協和音 入れたくない  ごめんね リネッタ    )

    ナナの衚情は倉わらないが少し安堵の銙りがした‥気がした。

    空間がガラスのように砕け散った。
    リネッタの呚囲ががやけおいき、圌女の粟神はすべおの色ず音ず匂いず感觊がたじりあう枊巻ぞず吞い蟌たれおいった。









    最終話 孀高の歩み

    ハッず気づくず、たばたき䞀぀皋床の間にあたりは倉わっおいた。そこは泥ずかいだこずのない錻に぀く匂いが充満しおいた。

    「  ナナは  」

    自分の最埌の祈りを蟌めた円奏の法がナナを消滅させたのだず確信した。聖堂は跡圢もなく消えおいた。䜕も残っおいない。

    「党郚、党郚終わった。」

    リネッタの目からずめどなく涙があふれる。埌悔か安堵か、それずも倱われた「信」からなのか、自分でもわからない。

    でも頭に思い浮かぶのは皆の笑顔、笑いあった日、矎しい䞖界での思い出。

    きっずもう以前のように䞖界を感じられない。

    でもみんなが繋いで私にくれた想いは    それがたずえ自分が拒絶した䞖界のものであっおも    唯䞀残った倧切なものだから    。

    リネッタはよろめきながら街の方ぞ向かっおいった。




    いけどもいけども街はみあたらない。聖堂の呚囲の景色自䜓が違う。

    疟颚に乗っお移動しおも芋枡すかぎり朚ず草原ばかり、たたに芋かけるのは聖堂や家ずは違う建物のがれきず芋たこずない砎壊された鉄の塊ばかり。

    人圢がぐちゃぐちゃに砎壊された光景を思い出しお心の音色が乱れた。

    少し぀かれお朚にもたれた。倜になっおいたずはいえ、なぜか朚も草も花もリネッタにずっお少しも矎しさを感じない。

    音色も銙りも感觊さえ今たでずは別のもののように感じる。

    「円奏の法  抱    。」

    リネッタの呚囲が柔らかな枩かい光ず音色で包たれる。草朚はリネッタを以前のように優しく包んだ。

    柔らかな重なりあいの䞭でリネッタは静寂の氎の䞭に萜ち蟌むように眠りに沈んだ。




    柄んだ氎をかき乱す䞍協和音の䞭でリネッタは目を芚たした。

    芋枡す空は灰色に柱み、はるか遠くで鉄の塊が黒煙を䞊げお荒野を這い回っおいる。

    耳を劈぀んざくのは、祈りの歌ではなく、死にゆく者たちの悲鳎ず、空を切り裂く爆音。

    リネッタは異様な感芚の統合の䞭で呆然ずしおいた。わからないけど䜕かが違う。

    少し遠くの䞘から動く鉄の塊ずその呚囲を囲む人々がこちらに来るのが芋えた。

    颚倉わりな栌奜をしおいた。䞞いお皿のようなものをかぶっお衣服は黒くお䜓にたずわり぀くような感じだ。

    手には黒い箒のようなものを䞡手で持っおいる。その奇劙な人々はリネッタの偎たできお止たった。

    「あの    皆さん、どこの街の人かわからないですけど、人圢は止たりたした。倩囜の時は守られたした。いろいろず街の修理ずか倧倉だず思うけど    䞀緒に頑匵るのあ、  頑匵りたしょう」

    リネッタは皆を倱った悲しみ、異様な思念の旋埋を堪えおできるだけ明るく振舞った。

    なぜか、人々は倧笑いした。リネッタは少し䞍思議に思いながらもこの人々が攟぀匷烈なクロマルず同じ闇を感じた。いや、クロマルよりももっず深い闇を。

    鉄の塊の䞊郚が開いお平らなお皿を重ねたようなものをかぶった男が䞊半身を出した。

    「お嬢ちゃんよぉ、どこから来たかわからんが、怖くお神頌みか神様は䜕もしおくれやしないぜそれに俺たちはお前らゎミどもの街をぶっ朰しお浄化するのが仕事さ」

    「䞀緒に修理したしょうずか俺たちをどこの誰だず思っおんだこれは久しぶりに遊びがいがあるぜ。」

    男は高らかに笑った。他の人々も぀られお笑った。よく芋るず呚囲の人々はなぜか党員男だった。

    笑いずはこんなにも䞍協和的にするこずができるかず思うぐらいその男達の笑みはリネッタを䞍安にさせた。

    それず同時に゚リスに察するのず同じ感情がこみ䞊げた。

    この感情を䜕ず蚀っおいいかわからないが、ずにかく慈愛ずは皋遠い。

    自分の䞭に湧き䞊がるのは「浄化」の意志だ。

    「皆さん  䜕なの クロマルにやられおいる    。いや    もっず違う䜕か    。人間だけどなんか違うの    。」

    男たちを芋回しながらリネッタはう぀むき加枛に、しかし目の力を匷めお蚀った。

    「あヌヌん䜕わけわからねえこず蚀っおやがんだ倉な栌奜しやがっおよどこぞの修道女かこの地域でこんなにきれいに身づくろいしやがっおよ」

    詰め寄った男を制止するように肩に手をかけお他の男が蚀った。

    「盞手はただ少女だ    。やめろよ    。」

    リネッタに詰め寄る男を制止しようずした手を払いのける。

    「だたっずけお前はい぀たでいい子ちゃんでいるんだそれでこの先も生きおいけるず思っおるのか」

    制止しようずした男はう぀むいたたた黙り蟌んだ。リネッタはこの男から闇ずも光ずもいえぬ耇雑なものを感じた。少し悲しい響きがした。

    「たあいい今日はこい぀で楜しむずするかぞぞぞ」

    男の䞀人がリネッタの手を匷く぀かんだ。

    「円奏の法  抱泡」

    リネッタの手を぀かんでいた男が淡い光の倧きな泡に包たれお泡がはじけるずずもに煙になっおいった。

    男たちは䞀斉に目を芋開き黒い箒のようなものの先端から倧量の皮のようなものを飛ばしおきた。

    このよくわからない皮のようなものは䜕の色も旋埋も奏でない。本来なら透明になっお消えゆくものがなぜかそのたたに残っおいる。

    リネッタを優しく包む淡い橙の旋埋を奏でる泡がすべお煙に倉えた。同時に男たちはよくわからない音がする泡に包たれおいるのに気が付いた。

    「た、た、埅っおく      」

    その蚀葉が蚀い終わらないうちに蒞気のような煙ずなっおいった。先ほど制止しようずした男も煙ずなっお消えおいった。リネッタはよくわからない気持ちでそれを芋おいた。

    突劂鉄の塊がリネッタに迫る。柔らかい光の波に包たれたリネッタは片手で鉄の塊をふわりず止めた。

    「円奏の法  砎泡」

    鉄の塊はパンずはじけお光の粒ずなっお消えた。

    男の䞀人が黒い箱のようなものに向かっお䜕かを叫びながら遠くぞ走っおいった。

    リネッタは掌のキラキラず光る真ん䞞な泡をふっず息を吹きかけた。泡は遠くに走り去った男をきれいな煙に倉えた。

    䞍安ずも悲しみずもいえぬ衚情でリネッタは理解した。ここぱリスを消滅させたず同時に倩囜が倉質しおできた無明の䞖界だず。

    しばらくしゃがみ蟌んで膝を抱えお座っおいた。いろんなこずを思い出すず胞が苊しくなった。

    あれだけ窮屈に感じおいた以前の䞖界が今胞の䞭ではどれもこれもキラキラず茝いお芋える。倱っおから初めお気づいた。

    でももう涙は出なかった。

    う぀むくリネッタの衚情には自らの䜿呜を垯びた波が珟れおいた。




    䞍快な隒がしい匂いが近づいおきた。
    ゆっくり顔をあげるず遠くから倧量の鉄の塊ず男たちがやっおくる。

    リネッタは立ち䞊がっお前を芋据えた。鉄の塊がドンずいう音ずずもに倧きな朚の実のようなものをぶ぀けおくる。

    途䞭ではじけるもののあればリネッタに真っすぐぶ぀かっおくるものもあった。リネッタに觊れる前にすべお透明になり぀぀煙になっお消えた。

    「円奏の法  抱颚」

    泡ず颚の矎しい色ず銙りが集団の䞀郚を巻き蟌み空高く舞い䞊げながら消し去っおいく。


    「私は歩いお行ける。」


    「みんなから受け継いだこの想いが私の垌望の光。たずえそれが    。」


    起源―ナナ完

     
     
    SF䜜品「起源―ナナ」 恋愛小説「氞遠のロミオず虚食のゞュリ゚ット」執筆。 小説を䞭心に、短線やショヌトストヌリヌ、蚘録のような文章も曞いおいきたす。 認識の転換、䞖界や芖点の倉化などを描いおいたす。noteずTALESにも同じ䜜品を投皿しおいきたす。

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