「むしろを持っていく日」
子供の頃の記憶
運動会の話を聞いて、
ふと思い出した昔の記憶がある。
学校で先生に「明日はむしろを
持ってきなさい」と言われた。
けれど、農家ではない自分の
家にはむしろなんてなかった。
母に言ってみても
「うちにはないよ」と返ってきた。
子ども心に、とても心細かった。
みんな持ってくるのに、
自分だけ持って行けない。
そんな小さな寂しさを
抱えたまま眠った。
ところが次の朝、
ちゃんとむしろが用意されていた。
当時はただ嬉しかっただけだったけれど、
今思えば母が夜のうちに近所を回って、
借りてきてくれたのだろう。
子どもの頃は気づかなかった。
親というのは、
見えないところで静かに
困りごとを片づけてくれていたのだと、
今になってわかる。
