
表面粗さRa・Rzの違いと使い分け——図面指示の読み方
図面に「Ra 1.6」「Rz 6.3」といった指示を見て、「これ、何が違うんだ?」と手が止まったことはないでしょうか。
表面粗さは、部品の「表面のザラつき具合」を数字で表したものです。よく使われるのがRa(アールエー)とRz(アールゼット)の2つ。どちらも粗さを表しますが、測り方も、意味も、使いどころも違います。ここを混同すると、図面の要求を読み違えたり、検査で合否を間違えたりします。
今回は、RaとRzの違いと使い分けを、図面指示の読み方とあわせて解説します。
そもそも表面粗さとは
どんなに「つるつる」に見える金属面も、拡大するとミクロの山と谷が連なっています。この凹凸の大きさを数値化したものが表面粗さです。単位は**μm(マイクロメートル=1000分の1mm)**を使います。
なぜ粗さを管理するのか。表面のザラつきは、部品の機能に直結するからです。
滑らかすぎても、荒すぎてもダメ(油が保持できない・摩耗が早い)
シール面が荒いと、漏れる
摺動面(動いて擦れる面)が荒いと、摩耗・焼き付き
見た目・塗装・メッキの仕上がりにも影響
だから図面で「この面はここまで滑らかに」と指示するのです。
Raとは——粗さの「平均」
Ra(算術平均粗さ)は、凹凸の高さを平均した値です。基準となる長さの中で、山と谷の高さの絶対値を平均します。
世界中でいちばん広く使われる粗さの指標
「表面全体として、平均的にどれくらいザラついているか」を表す
1か所だけ深い傷があっても、平均するので値は大きく動かない(=安定している)
Raは、いわばデータの「平均値」のようなもの。表面全体の傾向をならして見るので、代表値として扱いやすいのが長所です。
Rzとは——粗さの「最大の山と谷」
Rz(最大高さ粗さ)は、基準長さの中で、いちばん高い山といちばん深い谷の差です。
「その表面の、最悪の凹凸はどれくらいか」を表す
たった1か所の深い谷・高い山が、そのまま値になる
局所的な傷・欠陥を見逃したくないときに効く
Rzは、いわばデータの「最大−最小(範囲)」のようなもの。平均ではなく、極端な1点を捉えます。
ここでピンと来た方もいるかもしれません。RaとRzの関係は、統計の「平均値」と「外れ値」の関係とそっくりです。Raは全体をならした平均、Rzは極端な1点を拾う——この見方は、別記事「平均値と中央値の使い分け」とまさに同じ構図です。
RaとRzの違い(比較表)
| | Ra(算術平均粗さ) | Rz(最大高さ粗さ) |
|---|---|---|
| 意味 | 凹凸の高さの平均 | 最も高い山と深い谷の差 |
| 例えると | 平均値 | 最大−最小(範囲) |
| 長所 | 表面全体の傾向を安定して表す | 局所的な傷・欠陥に敏感 |
| 弱点 | 1か所の深い傷を見逃しやすい | 1点の値に左右されやすい |
| 主な用途 | 一般的な機能面の管理 | 漏れ・疲労・傷が致命的な面 |
目安の換算:同じ表面なら、ざっくり Rz ≒ 4×Ra 程度になることが多いです(あくまで参考値。表面の形状で変わるので、換算で済ませず、指示された項目で測るのが原則です)。
使い分けの考え方
Raを使う場面(一般的にはこちら)
表面全体の滑らかさを、安定して管理したいとき。多くの機能面(摺動面・合わせ面など)はRaで指示されます。迷ったら、まずRaが基本です。
Rzを使う場面
「1か所の深い傷でも致命的になる」面。たとえば——
シール面・パッキン当たり面(1本の深い谷から漏れる)
繰り返し力がかかる面(深い谷が疲労破壊の起点になる)
メッキ・塗装の下地(局所的な凹凸が仕上がりに出る)
両方指示することもある
「平均も抑えつつ、最悪値も規制したい」場合は、RaとRzを併記します。「Ra 1.6 かつ Rz 6.3」のように、両方を満たす必要があります。
図面指示の読み方
表面粗さは、図面上で「面の指示記号」(チェックマークのような記号/レ点に横線が付いた形)とセットで書かれます。記号のそばに粗さの数値が入ります。
Ra 1.6:算術平均粗さを1.6μm以下に
Rz 6.3:最大高さ粗さを6.3μm以下に
数値だけ(例:1.6)で書かれている場合、慣習上Raを指すことが多いですが、判断せず設計意図を確認するのが安全です
数値は、とびとびの標準の数列(Raなら 0.2 / 0.4 / 0.8 / 1.6 / 3.2 / 6.3 / 12.5 / 25 …)から選ばれます。数字が小さいほど滑らか、大きいほど粗い、と覚えてください。
旧図面の注意:古い図面では、三角記号(▽▽▽ のように三角の数で粗さを表す)が使われていることがあります。▽が多いほど滑らか、という古い表記です。新しいJISとは記号が違うので、旧図面を扱うときは対応表で確認しましょう。
加工方法と粗さの目安
どの加工でどれくらいの粗さが出るか、ざっくりの目安を持っておくと図面が読みやすくなります。
旋盤・フライス(普通):Ra 3.2 〜 6.3 程度
精密な切削:Ra 1.6 前後
研削(グラインダー加工):Ra 0.4 〜 0.8 程度
ラッピング・超仕上げ:Ra 0.1 以下(鏡面に近い)
「Ra 0.2」と指示されているのに普通の旋盤加工で済ませようとすると、要求を満たせません。粗さ指示は、加工方法の選択にも直結しているのです。
まとめ
表面粗さは、表面の凹凸を数値化したもの(単位μm)
Ra=凹凸の平均(表面全体の傾向・安定している)
Rz=最大の山と谷の差(局所的な傷に敏感)
例えるなら、Raは「平均値」、Rzは「最大−最小」
一般面はRa、漏れ・疲労・傷が致命的な面はRz
図面では面の指示記号+数値で読む。小さい数字ほど滑らか
RaとRzは、どちらが上ではなく「見ている角度が違う」指標です。平均で全体をならすRaと、最悪値を捉えるRz。図面がどちらを指示しているかを読み取れば、「この面に何が求められているか」が見えてきます。
次に図面で粗さ指示を見たら、「これはRaか、Rzか。なぜこの面はこの指示なのか」と一歩踏み込んで考えてみてください。図面の読み方が、ぐっと深まります。
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