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QCサークルで「FMEAをやれ」と言われたとき、最初にやること——現場事例5つで解説

    FMEAを実際に書こうとしたとき、一番困るのが「どう書けばいいかわからない」という最初の一歩です。

    この記事では、製造現場でよくある工程ごとのFMEA記入例を5つ、RPN計算付きで紹介します。
    そのまま参考にして、自社の工程FMEAを書き始めるときの土台にしてください。


    FMEAの基本(おさらい)

    工程FMEA(PFMEA)の主な記入項目:

    | 項目 | 内容 |
    |------|------|
    | 故障モード | どんな故障が起きるか |
    | 潜在的影響 | 顧客・工程への影響 |
    | S(重大度) | 影響の大きさ(1〜10) |
    | 潜在的原因 | なぜ起きるか |
    | O(発生頻度) | 起きやすさ(1〜10) |
    | 現行の管理方法 | 今やっている予防・検出 |
    | D(検出性) | 見つけにくさ(1〜10) |
    | RPN | S × O × D(大きいほど優先対策) |

    RPNの目安:≥200 即時対応 / 100〜199 早急対応 / 50〜99 改善計画 / <50 継続監視


    事例① プレス加工工程

    工程概要:板金のプレス打ち抜き・成形加工

    | 故障モード | 潜在的影響 | S | 潜在的原因 | 現行管理 | O | 検出管理 | D | RPN |
    |-----------|-----------|---|-----------|---------|---|---------|---|-----|
    | バリ発生(切断面突起) | 組立時の傷・怪我、外観不良 | 7 | プレス金型の刃先摩耗 | 定期金型交換スケジュール | 5 | 目視検査(全数) | 3 | 105 |
    | 寸法不良(打ち抜き寸法外れ) | 組立不可・後工程停止 | 8 | 金型位置ずれ、材料張力変動 | セットアップ確認チェックリスト | 3 | 初物・終物の寸法測定 | 4 | 96 |
    | クラック発生 | 強度不足・製品破損(市場) | 9 | 材料硬度の規格外れ | 材料入荷検査 | 2 | 目視+浸透探傷(サンプリング) | 5 | 90 |
    | 表面傷・打ち傷 | 外観不良 | 5 | 搬送時の接触、金型面の異物 | 搬送治具の定期点検 | 6 | 目視検査(全数) | 3 | 90 |

    ポイント:
    クラック(RPN=90)はSが9と高いため、RPNが低くても優先的に管理します。
    Sが8以上の項目は、RPNに関わらず必ず対策を検討してください。


    事例② 溶接工程

    工程概要:MIG溶接による構造部材の接合

    | 故障モード | 潜在的影響 | S | 潜在的原因 | 現行管理 | O | 検出管理 | D | RPN |
    |-----------|-----------|---|-----------|---------|---|---------|---|-----|
    | 溶接強度不足 | 製品の強度不足・破損(安全影響) | 9 | 電流・電圧・速度の設定ミス | 溶接条件管理シート | 3 | 引張試験(サンプリング) | 4 | 108 |
    | スパッタ付着 | 外観不良・後工程の傷 | 4 | スパッタ防止剤の塗布漏れ | 作業手順書による目視確認 | 7 | 目視検査(全数) | 2 | 56 |
    | 溶け込み不足(アンダーカット) | 強度不足 | 8 | トーチ角度・速度のばらつき | 作業者の技能教育 | 4 | 外観目視(全数) | 5 | 160 |
    | ひずみ・変形 | 組立精度不良 | 6 | 溶接順序・クランプ不足 | 溶接順序の手順書化 | 5 | 寸法測定(サンプリング) | 4 | 120 |

    ポイント:
    溶け込み不足(RPN=160)は中高リスクで早急な対策が必要です。
    「作業者の技能教育」だけを管理方法にしている場合、技能のばらつきがOとDを悪化させます。
    治工具・ゲージによる客観的な確認方法の追加を検討してください。


    事例③ 機械加工工程(NC旋盤)

    工程概要:NC旋盤による回転体の旋削加工

    | 故障モード | 潜在的影響 | S | 潜在的原因 | 現行管理 | O | 検出管理 | D | RPN |
    |-----------|-----------|---|-----------|---------|---|---------|---|-----|
    | 外径寸法オーバー | 組立不可・後工程返品 | 8 | 工具摩耗による寸法ドリフト | 工具交換サイクル管理 | 4 | 全数寸法測定(エアゲージ) | 2 | 64 |
    | 表面粗さ不良 | 摺動部の摩耗促進 | 7 | 切削条件の変化、工具チッピング | 条件管理シート | 3 | サンプリング粗さ測定 | 5 | 105 |
    | バリ残存(端面) | 組立時の傷・怪我 | 6 | バリ取り工程の抜け | バリ取り手順書 | 4 | 目視検査(全数) | 4 | 96 |
    | 加工穴の位置ずれ | 組立不可 | 8 | 位置決め治具の摩耗 | 治具の定期点検 | 3 | 全数ゲージ検査 | 2 | 48 |

    ポイント:
    外径寸法はエアゲージによる全数測定(D=2)のおかげでRPN=64と低く管理できています。
    検出管理を強化することでRPNを下げられるのがFMEAの重要な視点です。


    事例④ 組立工程

    工程概要:ボルト・ナットを使った部品の手作業組付け

    | 故障モード | 潜在的影響 | S | 潜在的原因 | 現行管理 | O | 検出管理 | D | RPN |
    |-----------|-----------|---|-----------|---------|---|---------|---|-----|
    | ボルト締め忘れ | 機能不良・市場クレーム | 8 | 作業漏れ(多品種・類似形状) | 作業手順書・チェックシート | 5 | 目視確認(作業者自主検査) | 6 | 240 |
    | 誤部品の組付け | 機能不良・外観不良 | 8 | 類似部品の混在、部品識別不足 | 部品トレー管理 | 4 | 目視確認(作業者自主検査) | 5 | 160 |
    | ボルト締め不足(トルク不足) | 緩み・脱落・安全問題 | 9 | トルクレンチの未使用・校正切れ | トルクレンチ使用の手順書化 | 3 | トルクレンチによる全数確認 | 3 | 81 |
    | 傷・打ち傷(組付け時) | 外観不良 | 5 | 工具の接触、治具なし | 養生テープ・治具の使用 | 6 | 目視検査(全数) | 3 | 90 |

    ポイント:
    ボルト締め忘れ(RPN=240)は即時対応が必要な高リスクです。
    「目視確認(作業者自主)」はD=6と検出性が低く、ポカヨケ(締め確認センサー・トルク管理システム)の導入を強く推奨します。

    人に依存した管理は必ずDが高くなります。仕組みで検出できる方法を検討してください。


    事例⑤ 検査工程(外観・機能検査)

    工程概要:完成品の外観目視検査および機能確認

    | 故障モード | 潜在的影響 | S | 潜在的原因 | 現行管理 | O | 検出管理 | D | RPN |
    |-----------|-----------|---|-----------|---------|---|---------|---|-----|
    | 外観不良の見落とし | 市場クレーム・返品 | 7 | 検査者の疲労・判断基準のばらつき | 限度見本による判定基準設定 | 5 | 目視検査(全数)+2次確認 | 5 | 175 |
    | 機能不良の見落とし | 市場クレーム・製品回収 | 9 | 検査手順の抜け、測定ミス | 検査手順書・チェックシート | 2 | 全数機能検査(自動試験機) | 2 | 36 |
    | 合格品の誤廃棄 | 歩留まり悪化・コスト増 | 4 | NG品置き場との混在 | OK/NG表示の区分管理 | 3 | 目視確認 | 4 | 48 |
    | 検査漏れ(工程飛び) | 未検査品の流出 | 8 | 作業指示のミス、工程管理の不備 | 工程管理ボード | 3 | 出荷前の工程完了確認 | 4 | 96 |

    ポイント:
    外観不良の見落とし(RPN=175)が最優先課題です。
    「目視検査」は人依存のためDが5と高くなりがちです。
    画像検査システム・AIカメラの導入でDを2〜3に改善できれば、
    RPN = 7×5×2 = 70 まで下げられます。

    機能不良(RPN=36)が低いのは、自動試験機による全数検査(D=2)のおかげです。
    自動化された検出管理はRPNを大幅に下げることができます。


    5事例から見えてくる共通パターン

    5つの事例を通じて見えてくるポイントをまとめます。

    ① Sが高い項目は最優先(RPNが低くても)

    安全・法規制に関わるS=8以上の故障モードは、
    RPNの数値に関わらず必ず管理方法を確立してください。

    ② 「目視確認(作業者自主)」はDが高くなる

    人の目に頼った検出はD=5〜7になりがちです。
    ゲージ・センサー・自動試験機に置き換えるとDが改善し、RPNが下がります。

    ③ 「作業者教育」だけを予防管理にしない

    Oを下げるには仕組みで対処するのが基本です。
    ポカヨケ・治工具・作業条件の固定化でOを改善できます。

    ④ 対策後のRPNを必ず記録する

    対策を実施したら、改善後のS・O・D・RPNを更新します。
    FMEAは「作って終わり」ではなく、更新し続ける生きた文書です。


    FMEAをExcelで書き始めるテンプレートを配布しています

    今回の5事例をそのまま入力できるFMEAのExcelテンプレートを作りました。

    • 工程FMEA(PFMEA)・設計FMEA(DFMEA)の2種類

    • RPN = S×O×D を自動計算

    • RPN値に応じて4段階で色分け表示(赤・橙・黄・緑)

    • S/O/D の10段階評価基準表付き

    • 25項目のFMEAレビューチェックリスト付き

    • 事例①プレス加工のサンプルデータ入り

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