
QC工程図の書き方と記入例【製造業の工程別サンプル付き】
「QC工程図をつくれと言われたけど、何を書けばいいかわからない」
「どの特性を管理項目に入れるべきか判断できない」
「検査方法の書き方がバラバラで統一できていない」
生産技術・品質管理の新人からよく聞く悩みです。
この記事では、QC工程図の基本構成と書き方を解説し、
製造現場でよく使われる工程別の記入例を紹介します。
QC工程図とは
QC工程図(品質管理工程図)は、
製品が完成するまでの各工程で**「何を管理し、どうやって検査するか」を一覧にした帳票**です。
英語では Control Plan(コントロールプラン) とも呼ばれ、
TS16949(IATF16949)などの自動車品質規格でも要求されます。
QC工程図が果たす役割:
工程ごとの品質管理方法を明確にする
作業者・検査者が何を管理すべきかを共有する
品質問題が起きたときの原因調査の出発点になる
工程変更・改善時の変更管理の基準になる
QC工程図の基本構成(記入項目)
QC工程図には決まったフォーマットはありませんが、
最低限以下の項目を含めるのが一般的です。
| 項目 | 内容 |
| 工程番号 | 工程の識別番号(10、20、30…と10番刻みが一般的) |
| 工程名 | 作業の名称(プレス加工、溶接、組立など) |
| 作業内容 | その工程で何をするか |
| 管理特性 | 管理すべき品質特性(寸法、外観、強度など) |
| 管理基準(規格値) | 合格の範囲(例:φ20.0 ±0.05mm) |
| 管理方法 | どうやって確認するか(目視、測定器、試験機など) |
| 管理頻度 | いつ・どのくらいの頻度で(全数、n=5/ロット、初物など) |
| 記録方法 | どの帳票・システムに記録するか |
| 担当者 | 作業者 or 検査者 |
| 処置方法 | 不合格のときどうするか |
管理特性の分類
管理特性は大きく2種類に分けて考えます。
① 結果特性(品質特性)
製品の品質を直接表す特性。
寸法(外径、穴径、長さ、平面度など)
外観(傷、バリ、変色、汚れ)
機能(強度、トルク、通電)
重量
② 工程特性(工程パラメータ)
結果特性に影響を与える工程の設定値。
加工条件(切削速度、送り量、温度、圧力)
設備の状態(工具摩耗量、金型クリアランス)
材料の状態(硬度、厚み)
ポイント:
結果特性だけを管理していると、不良が出てから気づきます。
工程特性も管理することで、不良になる前に異常を検知できます。
管理頻度の考え方
| 表記 | 意味 | 使う場面 |
| 全数 | 1個も漏らさず検査 | 重大特性(安全・機能)、自動検査が可能な場合 |
| 初物・終物 | ロット最初と最後の1個 | 工具摩耗などによるドリフトを監視 |
| n=5/ロット | ロットから5個抜き取り | サンプリング検査 |
| 1回/シフト | 1シフトに1回 | 工程パラメータの確認 |
| 1回/日 | 1日1回 | 設備の始業前点検など |
重大度の高い特性ほど頻度を上げ、できれば全数検査にします。
記入例① プレス加工工程
製品:板金ブラケット(板厚2.3mm、SPCC材)
| 工程No | 工程名 | 管理特性 | 管理基準 | 管理方法 | 頻度 | 記録 | 処置 |
| 10 | 材料入荷 | 板厚 | 2.3 ±0.1mm | マイクロメータ | 1回/ロット | 入荷検査記録 | 返品・保留 |
| 10 | 材料入荷 | 材質証明 | SPCC規格内 | ミルシート確認 | 1回/ロット | ミルシート保管 | 返品 |
| 20 | プレス打ち抜き | 打ち抜き外径 | φ50.0 ±0.2mm | ノギス | 初物・終物+1回/100個 | 加工記録シート | 加工停止・調整 |
| 20 | プレス打ち抜き | バリ高さ | ≤0.3mm | バリ高さゲージ | 1回/50個 | 加工記録シート | 金型交換 |
| 20 | プレス打ち抜き | 金型摩耗 | 打ち抜き数≤50,000ショット | ショットカウンタ | 常時監視 | 金型管理台帳 | 金型交換 |
| 30 | プレス曲げ | 曲げ角度 | 90° ±0.5° | 角度ゲージ | 初物・終物 | 加工記録シート | 金型調整 |
| 30 | プレス曲げ | 穴位置寸法 | 基準面より20.0 ±0.3mm | ノギス | 1回/50個 | 加工記録シート | 加工停止 |
| 40 | 外観検査 | 外観 | 傷・打ち傷・割れなし | 目視(限度見本) | 全数 | 検査記録 | 不良品タグ・隔離 |
記入例② 溶接工程
製品:構造フレーム(SS400材、MIG溶接)
| 工程No | 工程名 | 管理特性 | 管理基準 | 管理方法 | 頻度 | 記録 | 処置 |
| 10 | 溶接前準備 | 部品寸法 | 図面公差内 | ノギス・スケール | 初物 | 組立記録 | 手直し・返品 |
| 10 | 溶接前準備 | 母材表面 | 油・錆・塗料なし | 目視 | 全数 | ― | 清掃 |
| 20 | MIG溶接 | 溶接電流 | 180 ±10A | 溶接機電流表示 | 始業時 | 溶接条件記録 | 設定変更 |
| 20 | MIG溶接 | 溶接電圧 | 22 ±1V | 溶接機電圧表示 | 始業時 | 溶接条件記録 | 設定変更 |
| 20 | MIG溶接 | 溶接速度 | 30 ±3cm/min | タイマー計測 | 始業時 | 溶接条件記録 | 手直し・再設定 |
| 30 | 溶接後検査 | 外観(ビード) | アンダーカット・割れなし | 目視 | 全数 | 検査記録 | 補修溶接・廃却 |
| 30 | 溶接後検査 | 溶接脚長 | 6 ±1mm | 溶接ゲージ | 1回/ロット(n=3) | 検査記録 | 補修溶接 |
| 30 | 溶接後検査 | 完成寸法 | 図面公差内 | スケール・直角定規 | 初物+1回/10個 | 検査記録 | 手直し |
| 40 | 強度確認 | 引張強度 | ≥400MPa | 引張試験機 | 1回/ロット(試験片) | 試験記録 | ロット保留・調査 |
記入例③ 組立工程
製品:機械ユニット(ボルト組付け品)
| 工程No | 工程名 | 管理特性 | 管理基準 | 管理方法 | 頻度 | 記録 | 処置 |
| 10 | 部品受入 | 部品種類・数量 | 納品書と一致 | 現物照合 | 1回/納品 | 受入記録 | 返品・差し替え |
| 20 | 組付け | 部品の向き・方向 | 図面・手順書通り | 目視確認 | 全数 | チェックシート | 分解・組み直し |
| 20 | 組付け | ボルト本数 | 指定本数通り | 目視カウント | 全数 | チェックシート | 不足分取付け |
| 30 | 締め付け | 締付けトルク | 25 ±2N·m | トルクレンチ(管理番号付) | 全数 | トルク管理記録 | 締め直し |
| 30 | 締め付け | トルクレンチ校正 | 校正有効期限内 | 校正ラベル確認 | 使用前 | 校正台帳 | 使用停止・校正依頼 |
| 40 | 機能検査 | 作動確認 | 正常作動 | 通電・作動試験 | 全数 | 検査記録 | 不良品タグ・調査 |
| 50 | 外観検査 | 外観 | 傷・汚れなし | 目視 | 全数 | 検査記録 | 不良品タグ |
| 60 | 出荷前確認 | 付属品・ラベル | 出荷基準通り | 目視・照合 | 全数 | 出荷検査記録 | 追加・貼り直し |
QC工程図を書くときの5つのポイント
① 重大特性(CTQ)を明確に区別する
すべての管理特性が同じ重要度ではありません。
安全や法規制、主要機能に直結する特性は**重大特性(CTQ: Critical to Quality)**として、
欄に★や◎などの記号をつけて管理レベルを区別します。
重大特性には:
全数検査を設定
測定記録を全数残す
工程変更時は必ず承認を取る
② 「目視」だけで終わらない
外観検査に「目視」とだけ書いてあるQC工程図をよく見かけます。
ポイントは**「何を基準に判定するか」を明記すること**。
❌ 悪い例:目視確認
✅ 良い例:限度見本(No.3)と照合、傷深さ0.1mm以上をNG
基準が曖昧だと、検査者によって判定がバラつきます。
③ 「測定器」は校正管理とセット
QC工程図に記載した測定器は、校正管理(キャリブレーション)が必要です。
「ノギスで測定」と書いてあっても、そのノギスの精度が保証されていなければ意味がありません。
測定器管理台帳と連動させて、有効期限内のものだけ使用する仕組みが必要です。
④ 「処置方法」まで書く
不合格品が出たときに「どうするか」が書いていないと、
作業者がその場で判断することになり、対応がバラつきます。
加工停止して調整
不良品タグをつけて隔離
ロット全数保留
上長に連絡
処置方法まで明記することで、初めて「管理できている」状態になります。
⑤ 「生きた文書」として更新し続ける
QC工程図は作って終わりではありません。
工程変更があったとき
不良が発生して管理方法を強化したとき
改善で検査方法を変えたとき
必ずQC工程図を更新し、改訂履歴を残すことが重要です。
現場の実態と帳票の内容がずれているQC工程図は、あってもないのと同じです。
QC工程図とFMEA・なぜなぜ分析の連携
3つの帳票は独立しているように見えて、実は連動しています。
FMEA(事前にリスクを洗い出す)
↓ RPN高い項目 → 管理方法を強化
QC工程図(工程の管理方法を定める)
↓ 管理をしていても問題が発生したら
なぜなぜ分析(真因を掘り下げて再発防止)
↓ 対策を反映
QC工程図を更新(管理方法・頻度・基準を見直す)FMEAで見つけた高リスクの故障モードは、
QC工程図の管理特性に反映させます。
問題が発生したら、なぜなぜ分析で真因を見つけ、
その対策をQC工程図に戻して反映させます。
この3つが連動することで、品質管理の仕組みが本当に機能し始めます。
まとめ
QC工程図は「書くこと」が目的ではなく、
**「工程の品質を安定させ続けるための道具」**です。
管理特性は結果特性と工程特性の両方を入れる
重大特性は明確に区別して管理レベルを上げる
「目視」は基準まで書いて初めて意味を持つ
処置方法まで書く
工程変更のたびに更新し続ける
最初から完璧なQC工程図は作れません。
運用しながら改善していくことで、現場の実態に合った帳票になっていきます。
MKM|機械技術者の現場経験を活かした技術系テンプレートショップ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
続きは本にまとめました(Kindle)
工程設計・設備導入・現場改善という3本柱を、1つのセンサユニット組立設備(552個/日・タクト50.0秒・設備予算2,000万円)で最初から最後まで追いかける1冊です。
▼ 生産技術の教科書——工程設計・設備導入・現場改善、20年分の実務を1冊に
※ Kindle Unlimited をご利用の方は追加料金なしで読めます。