
可動域訓練における関節肢位の基礎|理学療法
関節の可動域訓練を行うとき、「関節包がどの程度緊張しているか」や「どのポジションで動かすのが適切か」といったことを意識しますか?炎症や疼痛の状態によっては、「ROMを広げる」という目的だけで関節を動かしてしまうと、組織に無理な負荷がかかり、かえって関節の抵抗を強めてしまうこともあります。今回は、関節モビライゼーションや可動域訓練において基本的な「ゆるみの位置(ルーズパックポジション)」と「しまりの位置(クローズパックポジション)」について整理します。
1. ルーズパックポジションとは
ルーズパックポジション(Loose-packed position)とは、関節包や靱帯の緊張が最も緩み、関節の「あそび(joint play)」が最大になる位置のことを指します。この位置では、関節内圧が最も低下するともされており、関節腔に滑液が広がりやすく、組織間の滑走も起こしやすい状態です。関節モビライゼーションや牽引など、徒手的な介入のスタート位置として適しているだけでなく、関節炎がある場合に安静肢位として適した肢位でもあります。
2. クローズパックポジションとは
一方、クローズパックポジション(Close-packed position)とは、関節包や靱帯が最も緊張し、関節面同士が最も密に接触している位置を指します。この状態では関節の安定性が高く、荷重に強い反面、関節のあそびはほとんどなくなり、操作がしにくい状態です。リハビリでの可動域訓練においては、この位置に近づくほど組織の緊張が高まりやすいため、痛みが出る可能性があるため操作は慎重に行う必要があります。あそびが少なくなるため、操作は難しく感じるかもしれませんが、この肢位でも正確に関節を動かすことが可動域拡大には重要ではあります。
3. 実際の可動域訓練では?
徒手的な関節モビライゼーションや関節可動域訓練を行う際には、まずルーズパックポジションに近い位置で開始し、関節包の緊張状態や痛みの有無を確認することが安全かつ効果的です。また、同じ関節でも動かす方向によって緊張する関節包の部位が異なるため、個別にその緊張パターンを理解しておくことも評価や治療に役立ちます。
4. 主要関節のルーズパックポジション一覧

5. まとめ
すべての可動域訓練において「どの位置で動かすか」は非常に重要です。特にルーズパックポジションは、関節のあそびを引き出しやすく、痛みを誘発しにくいため、評価や徒手介入の導入に適しています。反対にクローズパックポジションは安定性が高い反面、組織の緊張も高まるため、ROM訓練では痛みの出現に注意する必要があります。まずは関節の肢位を理解するところから、徒手的な評価や治療に取り組んでいきましょう。