こもりびと、結婚する。
この話は、僕の最愛の妻との出会い。お金もない、地位も名誉もない、何もない、ダメな僕と、結婚してくれた、妻へ送る、愛のエッセイである。
僕は統合失調症である。
統合失調症とは、幻覚や、幻聴、妄想などの症状が現れる、精神疾患である。
統合失調症を、若い頃に発症した僕は、お薬を飲みながら、仕事を転々とする日々を送っていた。
10代後半から、20代くらいの僕は、とにかく、がむしゃらだった。
学生時代、大した努力もせず、社会を完全に舐めきっていた僕は、大人になり、社会人という"枠"の中に、中々上手くハマることができなかった。
今思うと、痛々しい、黒歴史である。
おまけに、社会人生活が、挫折続きの僕は、もう人生が嫌になり、20代前半の頃、引きこもるようになってしまった。おまけに、うつや、統合失調症まで、発症してしまい、人生のどん底を味わった。
友達とも疎遠、親とも不仲、彼女なんて、もちろんいない。
僕は絶望した。日本という、恵まれた国に生まれながらも、なぜ、僕の未来は、お先真っ暗なのだろうか…
悲観しても、仕方ないのは分かるが、僕の頭は、当時、ネガティブな思考でいっぱいだった。
希望の光などなく、実家の自分の部屋に籠る僕は、夜中に冷蔵庫をあさり、冷凍食品をチンし、インスタント麺のラーメンを作って食べ、また自分の部屋へと向かっていく。
そんな生活を、毎日、続けていた。ほとんど動くこともないので、体重も増え、見た目も、少しずつ、変わっていった。
部屋にいても、眠れない。不眠症にもなった。
自分の部屋の、窓から見える、緑の綺麗な木々の景色を見ても、気が重くなる程、僕の精神は病んでいった。
何のために生きているんだろう。。生きている意味さえ分からず、そんなことを、何日も、何週間も、何ヶ月も、何年も考えた。
でも、答えは出なかった。流した涙と比例するように、時間だけが無常に過ぎていった。
しかし、時間がどのくらい経ったかは、今では覚えていないが、僕の病は、奇跡的にも回復へと向かっていくことになる。
僕は医者ではないので、あくまでも体感でのお話になるが、統合失調症は、ちゃんとお薬を飲み、安静にしてれば、少しずつだが、回復し、人によっては、社会生活が普通に送れるくらい、回復する病でもあるらしいのだ。
僕は、完全復活とまではいかないが、その後は少しずつ、人とコミュニケーションを取る訓練や、再就職をするため「就労以降支援事業所」という、福祉サービスを利用することにした。
実家にいた頃は、たくさんの迷惑と、心配をかけた両親や、お姉ちゃん。
周りから見れば、どこにでもいる、普通の4人家族だったと思う。
そんな家族が、僕は大嫌いで、でも、本当は、両親や、お姉ちゃんには、誰よりも愛されたかった。
小さい頃、いっぱい、一緒に、楽しく遊んでくれたお姉ちゃん、転んだら、足の傷を消毒し、絆創膏を優しく貼ってくれたお母さん、僕に、自転車の乗り方を教えに、近所の公園まで行ってくれたお父さん。
みんな大好きだった。家族とは、どこかで歯車が噛み合わない"時期"というものがあるのだろうか。
残酷だけど、でも、それでも、"家族とは、何があっても、家族なんだよ"と、就労以降支援のスタッフさんが言っていたことを思い出す。
お父さん、お母さん、お姉ちゃん、ごめんね。
ダメな息子だけど、もう少しだけ、頑張ってみるよ。
大変なこともあるけどさ、いつかちゃんと働いて、お嫁さん、お父さんたちに、会わせにいくね。
就労以降支援に通ってた僕は、訓練の成果もあり、30歳になった頃、再び僕は、就職をした。
フルタイムの仕事ではないが、精神疾患を持ってる僕でも、働きやすそうな会社に、無事、入社することができた。
"障がい者枠"と、いう、病気の配慮をもらう働き方ではあるが、その分、働きやすく、ここなら長く勤められそうだなと、そんな優しい、印象のある会社だった。
仕事は楽しかった。植物を扱う会社なのであるが、接客などの、サービス業ばかりで働いてた僕は、植物に囲まれて働くことに、やりがいと充実感を感じていた。
ここで、少しでも長く働く。。もう、家族に心配はかけたくない、そう、強く決意した。
ーーーお仕事を初めて、4年ほど経ったある日、友達から、障がいのある方が入会できる、結婚相談所をすすめられた。
友達も、うつ病という、精神疾患を抱えているのだが、どうやら、マッチングアプリで、知り合った女性と、無事に結婚したという話を聞いて、僕も結婚してみたくなった。
サイトを見て、結婚相談所のスタッフさんに、連絡をする。
返信が来て、近所のファミレスで、結婚相談所のスタッフさんと会う約束をすることになった。スタッフさんは優しい方で、お話を聞き、すぐに、結婚相談所に入会した。
結婚相談所で、異性と出会う方法は、基本的にはお見合いである。
双方が会いたいとなれば、相談所さんの連絡を通じて、会う場所や、時間指定なども、スタッフさんが約束を取り付けてくれる。
そこで、僕は、1人の女性と、会うことになった。
最初は、ホテルのラウンジなどで、会うのだが、これがまた、ものすごい緊張感なのである。
あまり、女性慣れしてない僕は、初対面の女性と、何を話せばいいのか、何を聞けばいいのかが、全く分からなかった。
結婚相談所のスタッフさんにも、もしお見合い中、話題に困ったらどうすれば良いのか??
でも、実は、そんな時は、こうすれば良いと教わった、とっておきの、切り札がある。
それは、「目に入った情報を、話のネタにすれば良い」と言われた。
ホテルの内装、外の景色、ラウンジにいる人の数など、目に入ったことを、話すと良いよと。
「お見合い頑張ってね⭐︎」と、スタッフさんに、背中を押された僕は、人生で初のお見合いを、この後することになるのだ。
ホテルのラウンジに行くと、清楚な格好をした、身長がやや高く、ショートボブの綺麗な、黒髪の女性が、もうすでに先に待っていた。
僕は慎重に声をかけて、スタッフさんの情報通りの方だと分かり、ホッとする僕に、ニッコリと笑顔を向ける、素敵な女性。
一緒にラウンジの席に座り、いよいよ、人生初の、お見合いが始まった。
緊張からか、言葉が上手く出てこない。
と、いうか、男子校出身で、異性の方と、ほとんど喋ったことがない僕は、女心なども知らず、モテない、野郎ばかりに囲まれて生きてきた。
それはそれで、楽しかったが、僕も30を超えた良い大人である。彼女の1人くらい、作りたい。あわよくば、結婚もして…などという妄想を、現実に変えるために、僕は、結婚相談所に入会したのだ。
そして、僕は、今、目の前の女性に、勇気を出して、声をかける。今こそ、切り札を出す時ですね!先生!
目に見えるもの…これだ!
ラウンジから見える、窓の外を見て、その、切り札とやらを解き放った!
「今日は良いお天気ですね!」
「そうですね。」
「…」
「…」
お見合い中、しかも開始5分とたってない中で、スタッフさんの言葉を思い出し、初対面の方との、第一声で、早速、切り札を使ってしまった。
しかし、相手の女性の反応がイマイチであった…
それはそうだ。天気の話が切り札じゃないことくらい、恋愛経験の薄い僕でも分かることだ。
しかし、その時だけは、なぜかスタッフさんを信じてしまった。
僕の渾身の力を込めた切り札は、残念ながら、不発に終わった。静かに時が流れる。
スタッフさんを恨むことはしたくない。
しかし、僕の精一杯は、きっと、余程、余裕のない男に見られてしまったのだろう…
これが"今まで一度もモテたことのない男"が、"お見合い"などというものをするという、ある種の、残酷な現実なのである。
気まずい雰囲気の中、「そろそろ時間なので…」と、相手にも気を遣っていただき、人生、初の、お見合いは、20点くらいの"でき"で、終了した。
「お見合いどうだった??」スタッフさんから、LINEが来る。
「自信ないです。」短く返信する。
「後日、お見合いした女性に、〇〇君(私)の印象などを聞いてみるから、お見合い、よく頑張ったね!緊張したでしょ!?またご連絡するね!」
スタッフさんは、明るいなぁ。それに比べて、僕はなんて、ちっぽけなんだろう。
傷心な僕に、スタッフさんのハキハキとした声が、心に響く。
お見合いの結果は、よくないだろうと思ってた僕に、まさかの、吉報が入る。
「仮交際、オッケーだって!」
「え!?マジすか!?」
奇跡的に、その女性とは、"仮交際"という、一応、会ってもいいよ、みたいな関係性になることができたのだ!やったー!
仮交際に進むと、ファーストコールというものがある。基本的には、男性から、女性のスマホ、携帯電話に、電話をして、LINEなどの連絡先交換や、メールアドレスを聞いたりすることを指す。
最初のファーストコールの時も、言葉がつたなかった。そもそも、異性の方と、1対1で、電話をするなんて、何年…いや、何十年ぶりだろうか??
ファーストコールは無事に終えられた。電話口から聞こえてくる声、相手の凛とした印象もすごく良くて、僕のテンションは一気に上がった。
そして、何とか2回目のデートに進むことになった。
2回目のデートは、お互いの住んでる場所の、中間地点にある場所の、大型デパートに行くことになった。
一緒に、デパートの中の、文房具店に、買い物をしてたのだが、相手の女性に、何か違和感があるような気がする。。
気のせいかな??
心なしか、少し元気が無さそうだなと思ってはいたが、特に触れることなく、デートは終了した。
その女性と別れ、今日も楽しかったなぁ〜と、ルンルンな僕の帰り道、3回目のデートの約束をしようと思ったタイミングで、スマホがピコンと鳴る。
今日会った、お相手の女性の方かな??胸が躍る。
しかし、その内容に、僕は衝撃が走ることになる。
「仮交際終了のお知らせで、ご連絡させていただきました。」
結婚相談所の、スタッフさんからだった。
「えっ!?一体なぜ!?」
僕の何がいけなかったんだろか??特に思い出す限りは、何も変なことなどしてないし…本当に何で…
仮交際終了の、理由は後日、スタッフさんから聞かされることになった。
デート中、僕が時間を気にして、スマホをチラチラと、見過ぎでいたせいで、女性の方が、僕が退屈してると思ってしまったらしい。
そんなことで…
結婚という分厚い、高い壁を感じた。スタッフさんからも、そこは直しましょうねと言われてしまった。
これが婚活…
しかし、僕はまた再び、絶望する訳にはいかないのだ。男の子は強い生き物である。弱音なんて吐かない。
今回の女性とは、一応、仮交際まで進めたのだ。
スタッフさんにも、切り札を伝授してもらったりと、そこそこ感謝の気持ちはあるので、ここは大人しく、言うことを聞くことにしよう。
デート中は、スマホを見ない。スタッフさんと、熱く約束を交わした僕は、また前を向いて、婚活の茨の道を歩く決心をした。
その後は、お見合いだけでなく、結婚相談所さん主催の、婚活パーティーにも参加したりした。
お見合いも、婚活パーティーも、結果はボロボロだった。そして、結婚相談所に入会して、1年が経とうとしている時、とある女性の方と、お見合いが決まった。
雀さん(仮名)と、プロフィールに載せてあった。
へえ、雀さんっていうんだぁ〜。写真を見ると、優しそうな方だなぁ。
雀さんに、お見合いの申し込みをする。
ピコンと、すぐにスタッフさんから、連絡が来る。
その後、雀さんとの、お見合いの日はすぐに決まった。
また、とあるホテルのラウンジで、お会いすることになった。
お見合いとは、何回やっても慣れないものだ。
その日も最初のお見合いの日の時のように、ドキドキしていた。
先にホテルのラウンジに着いた僕は、席を取っておき、雀さんの到着を待つ。
お見合いの時間ちょうどに、雀さんが到着した。
「ここ、迷いませんでした??」
「すみません。少し迷いました。」
気の利いた言葉を言ってあげたかったが、緊張を超えた、あの時の感情を、何て表現すれば良いのか…語彙力が少ない僕には分からないが、時刻ピッタリに、僕と雀さんの、お見合いがスタートする。
「はじめまして。」
「はじめまして、雀と申します。」
雀さんと話す時の僕の顔は、緊張で、かなり、こわばっていたと思う。でも、どこか安心感のある雰囲気の人だなと、食事をしながら感じていた。
「あ!デザートとか、食べたくないですか??もし、よろしければ、遠慮せず頼んでくださいね!」
「えっ!?いいですよ!ここ、けっこう高いですし、お気持ちだけで十分です!」
お見合いの時の会話は、僕にしては珍しく、そこそこ弾んだという感じである。なぜか、不思議と会話のテンポ、リズムが合うなぁと感じていたのは、僕だけかな??
ただ、最初のお見合いの時、印象深かったことは、僕が、デザートを勧めた時、あまりにも自然に断ったので、きっと、本当に遠慮深い人なんだろうなぁと、感心した。
お見合いは、久しぶりに楽しかった。喋りすぎて、喉がカラカラになり、水をがぶ飲みしてた僕を、気にかけることもなく、自然体で接してくれたことが、とても嬉しかった。
後日…
「雀さんと仮交際、進みました!」
スタッフさんから、連絡が来る。
「うおおおお!マジっすか!?」
僕は興奮鳴り止まぬ声で、スタッフさんに、何度も確認をした。
僕は久しぶりに、ファーストコールをする。
雀さんと、電話で話をして、お互い、まだ知らない仲なので、LINEではなく、ショートメールでやり取りをしましょうということになった。
僕の電話番号を教えて、雀さんからの連絡を待つ。
しかし、数日たっても、連絡が来なかった。
「ああ…また、ダメだったかな…きっと、断られたんだ。」
そりゃそうだ。僕は統合失調症であり、フルタイムで働いてもないので、年収も低い。おまけに、お腹周りは、ワガママボディーである。モテる要素なんて一つも無い。
「良い人だったんだけどな…」
ベッドの上で仰向けになる。天井を見上げながら、雀さんとのお見合いの時、話したことなどを、頭の中で、何度も思い返す。
「また次だ。」
床に就こうとした時、ピコン!スタッフさんから、連絡が来る。
「雀さんから、ご連絡がありました。〇〇君(私)から、教えてもらった、電話番号を間違えてメモしてしまったらしいので、再度、ご連絡していただけますか??時間は〇月〇日の、〇〇時です!」
「え!?雀さん、僕の電話番号、間違えてたのですか!?ご連絡はもちろん大丈夫です!また、時間通り、再度ご連絡してみます!」
僕はホッとした。どうやら、嫌われてたようではなかったらしい。
後日、雀さんに、2度目のファーストコールをする。
「ごめんなさい、、電話番号間違えちゃって、ショートメール、送っても返信が来なかったので、多分、違う方に連絡が行ってしまったかもです。本当にごめんなさい。」
「そういうことだったんですね!でも、安心しました!あ!次のデートの場所、決めても良いですかね??」
「もちろん、良いですよ!私、行きたいカフェがあって、〇〇ってカフェなんですけど、ずっと気になってて、もしよろしければ、一緒に行きませんか??」
まさかの展開である。まだ1回しかお会いしてなく、しかも、僕から誘ったのに、まさか、向こうから提案してくれるなんて、、
2回目のファーストコールで、雀さんと、最初のデートの約束を取り付けた。
雀さんとの初デートは、古民家カフェ、みたいな場所だった。
僕1人じゃ、絶対に行かないな、というような、少しアンティークな、古いけど何かオシャレなカフェ、と、いうイメージである。
そこで、ケーキとりんごジュースを頼み、雀さんとお茶をした。
雀さんは、少しミステリアスで、女性らしさを感じながらも、どこか奥ゆかしい印象もあり、僕はそんな雀さんと、もう一度会いたい。もっと、雀さんを知りたいと思い、また次のデートのお誘いを連絡してみた。
2回目のデートは、雀さんのお母さんの、誕生日プレゼントを買いに、木製雑貨が置いてある、横浜の雑貨屋さんに行くことになった。
そこでの不思議な体験は、今でも鮮明に覚えている。
基本的に、僕はせっかちである。服を買う時も、試着せずに買うこともあるし、スーパーで買い物する時も、どこに何があるかを把握していて、最短ルートで買い物をする。
しかし、雀さんの買い物は長い。
似たような商品の、似たような色を、何十分と悩み、決めかねている。
商品を選んでる雀さんの後ろで、僕も、雀さんの後を追うように、ウロウロする。
雀さんが、お母さんの誕生日プレゼントの、木製の小物入れを、ベージュ色と、ブラウン色で悩んでる時、ふと、頭の中で「この人と結婚したら、こんな感じになるんだなぁ。」
その時、なぜかそう思った!と、いうよりも、「強く予感した!」と、いう方が正しいだろうか??
真剣に、お母さんの誕生日プレゼントを悩む、雀さんを見て、僕は結婚するなら、絶対にこの人だと、心の中で思っていた。
なぜかは分からないが、そう思わずにはいられなかった。
テレビで、芸能人の誰かが言ってた気がする。結婚する人は、その前に、結婚の予兆があると。
その話を信じてる訳ではないが、雀さんと2回目に出会った日、僕はその予兆を確かに感じていた。
その後は、1週間に一度、会う約束をしては、雀さんとの、デートを積み重ねた。
途中、僕の体調が悪くなり、会って、すぐに帰ってしまったことがあったりもしたけど、雀さんは、そこについては何も触れず、また次回会おうと、次の約束を、積極的にしてくれた。
雀さんと出会って2ヶ月が経った頃、僕は本交際というステージにいきたいと、スタッフさんに相談した。
本交際とは、いわゆる"お付き合い"をするということである。体の関係は持ってはいけないが、軽いスキンシップくらいなら良いよという、少しウブな僕にとっては、ちょうど良いステージである。
そして、雀さんとのデートの時、勇気を振り絞って、本交際へと進みませんかと、伝えた。
言った。言ってしまった。僕の心臓は、破裂しそうなくらい、バクバクしている。
しかし、結果はNOだった。
…甘かった。
焦りもあった。早く結婚したい、もっと、雀さんのことを知りたい。そんな僕のエゴが空回りをして、雀さんに、もう少し、お互いを知ってからが良いと言われてしまった。
僕は凹んだ。まあ、そりゃそうだ。まだ出会って2ヶ月程度なのだから…
鬼気迫る思いで、告白した僕は、今思うと、鬼のように怖かったろう。雀さん、、ごめんね。
しかし、毎週のデートだけは続けていいと言われた。もっと、お互いを良く知ってから…僕は、その言葉を信じることにして、また雀さんとのデートを重ねて、少しでも信頼を得られるよう、頑張る決意をした。
その後も、1週間に一度は、デートをすることは変わらなかった。お互い、家が近いこともあり、仕事帰りにも、会うようになったりすることも増えた。
デートの内容は、主にファミレスや、カフェでお茶をするという内容だったが、雀さんもそれで良いと言ってくれたので、お金があまりない僕は、助かった。
ファミレスやカフェでは、ちょっとずつお互いを知る会話をして、雀さんとの交流を深めていった。
時には手紙も渡したりした。僕が手紙を渡すと、雀さんも手紙で返してくれる。そんなやり取りも、2人で楽しんだ。
ある日、僕の住んでるところの、カフェに行くことになった。
一方で、僕は大切なことを雀さんに、伝え忘れていた。
そう…僕が統合失調症であることだ。
カフェで伝えるべきか、、かなり悩んだし、怖かった。「もう少しお互いを知ってから、、」あの言葉を思い出すと、中々勇気が出ない。
でも、雀さんに、僕の病気のことを、打ち明けることを、その日、決心した。
いつものように、カフェでお茶をする。慎重にタイミングを見計らいながら、頼んだ、アイスコーヒーに、口をつける…
そして、ついに僕の方から、雀さんに、僕が、統合失調症であることを、告げる覚悟を決めた。
「雀さんに伝えたいことがあります。僕は、統合失調症という、精神の病気がありまして、お仕事もフルタイムではなく、障がい者枠という、会社にちょびっと、配慮をもらいながら、働いているんです。それで、年収も少なくて、、」
"ちょびっと"と言ったところに、強がりが見える。男の子のプライドは高い。
どんな反応が返ってくるかが怖かった。ここで、もう、雀さんとは終わってしまうかもしれない。でも、いつかは伝えなきゃいけないことだとも思っていた。その、いつかが、きっと、今なのだ。
雀さんが静かに口を開く…
「実は、私も統合失調症なんです。私は正社員で働いてますが、元は障がいのある、メンバーさんと一緒に働いていて、今はその会社で、スタッフとして、メンバーさんたちを管理するポジションにいます。〇〇さん(私)も、同じ病気だったんですね。私も驚きました!」
…
…
奇跡、来たああああああ!!!!!
その日から、僕らの心の距離は一気に縮まった気がする。
同じ病気の人に出会う確率なんて、中々ない。伝えて良かった。
カフェでは、お互いの障がいのことの話で、盛り上がった。
こんな話を、異性の、しかも、好きな人とできることは、こんなにも幸せなことなのだと!
やっと、心を許せる人を、今!見つけたんだと!僕は舞い上がった。
その日、改めて本交際の申し込みをした。
答えはOKだった。
それからも、僕らは毎週、必ず会い、色々な場所に行った。雀さんは、絵本や、雑貨や、オモチャのガチャガチャが好きで、オシャレも好きなので、髪型や服装にも興味があることも知った。
子供みたいに、雀さんが、無邪気にガチャガチャを回す姿を見ては、僕も一緒に回して、2人で喜んだり、目当てのものじゃないカプセルが出てきた時は、2人で共に落ち込んだ。
雀さんと過ごす日々は、本当に最高な時間だった。雀さんは、無彩色だった僕の人生に、色を塗ってくれた初めての人。
雀さんのことが、僕は好きだ。
居酒屋でお酒に酔い、僕の失言で、雀さんを困らせてしまった日も、雀さんと一緒に買い物をして、長い買い物に疲れながらも、雀さんが喜んで笑顔を見せてくれた日も、どれもとても充実した日々だ。
そんな小さな日々のことが、僕にとっては、とても大切で、嬉しいことだった。この人は、自分の人生をかけて、守りたい人…
そう、思わせてくれた、最初で最後の人。
お父さん、お母さん、お姉ちゃん…やっと家族孝行できそうだよ。
雀さん…僕の覚悟は決まりました。
知り合って、4ヶ月が経った頃、雀さんと1番最初にデートした場所。思い出の場所である、あの カフェで僕は雀さんに、プロポーズをした。
「雀さんを世界一幸せにします。僕と結婚してください!」
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします。」
2025年、1月11日、僕と雀さんは入籍した。
お父さん、お母さん、お姉ちゃん、ありがとう。今度、僕の妻を紹介します。