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想いだけでは、事業は続かない

    ──夜中3時のDiscordと、私が経営の先生から学んだ二つの言葉

    午前3時。

    Discordの画面に、新しい投稿がいくつも並んでいた。

    私の事業を手伝ってくれている学生さんたちは、やりとりに「Discord」というツールを使っている。便利なことに、投稿には時刻が表示される。だから、その投稿が午前2時のものか、3時のものか、ひと目でわかってしまう。

    えっ、この投稿、3時? 昨日は3時まで起きていたんだ──。

    私は朝が早い。夏休みは子どもたちが家にいて日中はばたばたするので、朝4時に起きて仕事をする。その朝もいつものように5時ごろにコメントを返したら、すぐに返信が来た。

    「まだ起きているの? 寝た?」

    余計なお世話だとは思う。でも、つい聞いてしまった。あとで知ったのだが、ちょうど学校が夏休みに入ったタイミングで、徹夜で作業をしてくれていたメンバーがいたらしい。学校もバイトもある。そんな多忙な毎日のなかで、事業のために夜を徹してくれている。その事実に、胸がいっぱいになった。

    私は、AK JAPANという会社をやっている。日本の志ある商品を、北米に広めたい。その想いに共感して、バンクーバーに留学している日本の学生さんたちが、事業を手伝ってくれている。

    先日、彼らのミーティングがあった。創業者である私は「他にも仕事がありますから、参加しなくて大丈夫ですよ」と気づかってもらったのだけれど、あえて「聞き専」で参加させてもらった。発言はせず、ただ耳を傾ける。そして、この若者たちが、どれほど真剣にこの事業のことを考え、応援してくれているのかを聞きながら、嬉しくて涙が出た。

    あるメンバーは、そのミーティングのあと、みんなの声をまとめ、出てきた質問に答え、新しい提案をし、仕事を分業化して各担当に振り分けるという、膨大な作業を一人でこなしてくれていた。それが、午前3時の投稿の正体だった。

    想いだけでは、事業は成り立たない

    世の中には、たくさんの事業がある。そのほとんどが、私のような創業者の「想い」から始まっているのだと思う。

    でも、現実はそんなに甘くない。

    想いだけでは、事業は成り立たない。

    私はこのことを、物販という事業を始めてから、骨身にしみて学んだ。

    この言葉を、私はある方から教わった。

    正確に言うと、私は経営塾に通っているわけではない。無料の音声アプリで、日本で経営塾の講師をされている方のお話を、コロナ禍からずっと、毎週欠かさず拝聴しているのだ。

    そもそも私がこの物販事業を始めようと思ったのも、この音声がきっかけだった。

    ある日、アプリから聞こえてきたのは、日本の現状と、中小企業の経営者さんたちの切実な困り事だった。「自分たちの商品を海外に広げたい。でも、どこから始めればいいのかわからない。資金もない」──。

    それを聞きながら、私は思った。海外に長年住んでいるという自分の環境。これまで築いてきたスキル。英語。営業。この組み合わせで、何か貢献できることがあるんじゃないか、と。

    今の時代は、その気になれば、何でも学べる。本当にありがたいことだと思う。

    その音声のなかで、繰り返し語られていた言葉が、二つある。

    「経営とは、投資と回収の、永続した仕組みづくりである」

    「組織とは、二人以上の、分業の仕組みづくりである」

    最初にこの言葉を聞いたとき、正直、頭ではわかっても、体ではわからなかった。投資と回収の仕組み。分業の仕組み。言葉は美しい。でも、それを実際にどうやってつくるのか。私はずっと、その答えを探し続けていた。

    いま振り返ると、この二つの言葉は、私がぶつかってきた壁の名前そのものだった。

    「動けば動くほど稼げる」事業から、「先にお金が出ていく」事業へ

    私がこれまでやってきたのは、エンタメ系の事業だった。固定費がかからず、自分が動けば動くほど収入になる。シンプルで、わかりやすいモデルだ。

    ところが、物販はまったく違った。

    仕入れにお金がかかる。運用にもお金がかかる。在庫を抱え、サイトを維持し、展示会に出る。商品を売る「前」に、お金がどんどん出ていく。ここに人件費まで加わったら、とてもじゃないけれど賄える余裕はない。

    物販とは、結局のところ、もともとまとまった資金があって、それを運用していく事業モデルなのだ。

    それを、50代の子育て主婦が、これまで別の事業で稼いだ自己資金を投入して実現しようとしている。冷静に書けば書くほど、無謀な話だと自分でも思う。

    でも、勝算がなかったわけではない。私には、海外に長年住んできた経験がある。英語も話せる。営業の経験も長く、営業は得意だ。

    実際、初めて出た展示会では、200名以上のお客様に商品を買っていただいた。私のまわりにどんどん人が集まり、私の話に耳を傾け、こんにゃくスポンジを手に取っていく。あの感覚は、最高だった。

    ただ、現実は続きがある。

    こんにゃくスポンジは単価が安い。だから、いくら数を売っても、得られる利益はそれほど大きくない。展示会でまとまった売上が立っても、次の展示会の準備をしているうちに、ポンッと消えてしまう。

    かといって、ただ棚に置いてあるだけでは売れない。だからまた、マーケットへ、展示会へ足を運ぶ。認知度を上げ、Amazonに出し、ECサイトをつくり、委託販売も試した。考えつくことは、ひととおりやってきた。

    売れるか売れないかは、市場が決める

    走り続けるなかで、あの音声で教わったもう一つの考え方が、じわじわと効いてきた。

    「売りたいものを売るのではない。市場が欲しいと言っているものを、市場が欲しいと言っている値段で売るのだ」

    これは「マーケティング」と「マーチャンダイジング」という二つの言葉の違いとして教わった。

    ふつう私たちは、「自分がいいと思った商品を、どうやって売ろうか」と考える。これがマーケティングの発想だ。原価を積み上げて売価を決め、できあがった商品を、あとからがんばって売る。

    でも、本当に強いのはその逆だという。先にお客様が欲しい価格と品質を見極めて、それに合う商品を探す、つくる。 これがマーチャンダイジングの発想だ。

    売る立場ではなく、使う立場から考える。

    言葉にすれば当たり前のようだけれど、これが本当に難しい。自分が惚れ込んだ商品ほど、「この良さがわからないお客様のほうがおかしい」と思いたくなる。でも、売れるか売れないかを決めるのは、いつだって私ではなく、市場のほうなのだ。

    そして、こうも教わった。

    商品が売れない理由は、たった3つしかない。

    1. 市場が「いらない」と言っている

    2. 市場が「買えない」と言っている

    3. 市場が「知らない」と言っている

    この3つで、自分の商品を点検してみた。

    こんにゃくスポンジは、とてもニッチな商品だ。けれど、展示会に行けば売れる。Amazonでは、リピートで買ってくださるお客様がいる。ということは、「いらない」ではない。ニーズは、ある。

    値段も、手の届く価格だ。だから「買えない」でもない。

    ところが、展示会で接客していると、いまだに「聞いたことがない」「使ったことがない」という方がたくさんいる。

    答えは、はっきりしていた。多くの人が、まだ「知らない」だけなのだ。

    では、知ってもらうにはどうすればいいか。答えはオンラインしかない。──こうして、いま集まってくれている若者たちが、オンラインで認知を広げる手伝いをしてくれている、というわけだ。

    私が、とんでもないことをしてしまった話

    ここで、正直に告白したいことがある。

    先日、私は、とんでもないことをしてしまった。

    うちには、昔つくった古いサイトがある。もう誰も見ていないし、放置状態だ。私はそれを「もう使っていないんだから」と、勝手にプラグイン(サイトの機能を支えるプログラム)を削除してしまった。

    ところが、その古いサイトは、いまのメインサイトのSEO戦略──つまり、検索で見つけてもらうための土台を、陰で支えてくれていたらしい。私が機能を消したことで、その情報が全部消えてしまい、オンライン上での私たちの立ち位置が、まるごと変わってしまった。

    自分の無知のせいで、みんなが積み上げてくれたものを壊してしまった。悔しくて、申し訳なくて、私は落ち込みまくっていた。

    でも、メンバーは私を責めなかった。

    「朱美さん、起こってしまったことは仕方ないです。切り替えて、次に進みましょう。全部消えちゃったけど、新しいサイトで頑張ればいいんです」

    その言葉に、どれだけ救われたかわからない。

    だから、このブログを書いているところもある。正直に書く。もしこの記事を読んでくださっている方がいたら、新しいサイトをのぞいてみてほしい。そして、もし良ければ、Googleに高い評価を入れてくださると、本当にありがたい。Japan-Canada Market Access Consulting | AK Japan Market Access

    ……と、こうしてお願いできるのも、オンラインで発信しているからこそ、なのだ。笑。

    オンラインが運んでくれる「ご縁」

    オンラインの力は、本当にすごいと思う。

    こうやって発信していると、それを見つけて「AK JAPANを応援したい」と声をかけてくださる学生さんに、何度も出会えてきた。

    いま手伝ってくれているメンバーも、LinkedInという、仕事用のSNSサイトからAKを見つけて、「手伝いたい」と手を挙げてくれた。

    思えば、最初もそうだった。

    物販を始めた最初の年。3度目の展示会のとき、一人の学生さんが私のブースに立ち寄って、こう言ってくれた。

    「事業を、手伝わせてください」

    彼は今年、学業を終えて日本に帰国してしまったけれど、3年間、ずっと手伝い続けてくれた。彼だけではない。マーケティング、SNS投稿、展示会の運営。たくさんの学生さんが力を貸してくれた。だからこそ、いまのAK JAPANがある。

    商売とは、ご縁を積み重ねていくことなのだと、私はつくづく思う。発信が人を呼び、人がまた次の人を連れてくる。一つひとつの出会いが、未来の財産になっていく。

    ついに、「分業の仕組み」が動き出した

    そして、いまのメンバー。──最強だ。

    何がすごいかというと、仕組みがすごい。

    私がずっと実現したかった、あの言葉。「経営とは、二人以上の分業の仕組みづくりである」。それが、いま、目の前で形になっている。

    誰がどの仕事を、どれくらいの量こなしているのか。いま、誰が何をしているのか。私自身の動きも含めて、すべてが明確に「見える」仕組みができあがっているのだ。

    これが、どれほど大事か。

    人数がいても、指示が出せなければ人は動かない。でも、指示を出すには、誰が何をどれだけやっているのかを把握していなければならない。かといって、メンバーに負担はかけたくない。──このジレンマを、「見える化」がいっぺんに解いてくれた。

    働いてくれたことが、ちゃんと見える。それが評価につながる。働く側も、「自分はこれだけ貢献している」と目で確かめられる。

    だから私は、自分自身のタスクも、その仕組みの中に組み込むことにした。創業者である私が何をしているのかも、メンバー全員に見えるようにしたのだ。これが、すごくいい。上下ではなく、同じ盤面の上で、みんなで仕事をしている感覚になる。

    こんな仕組みをつくってくれた、いまのメンバーに、心から感謝している。

    X世代の私が、若い世代から教わったこと

    AK JAPANには、いま、たくさんの「新しい」が同時に起きている。新しいサイト、新しいメンバー、新しいロゴ、そして次々に生まれる新しいアイデア。

    そのなかで私がいちばん学んでいるのは、若い世代が、いまの市場をどれだけ深く理解しているかということだ。

    私はX世代。今では当たり前の技術が、何もない時代に育った。だから、つい「これで十分」と思ってしまうクセがある。

    でも、若い世代は違う。彼らは、調べ、比べ、分析し、いま手に入るなかでいちばん良い答えを探し出す。その姿勢に、私は何度も自分の限界を更新させてもらった。

    最近も、あるメンバーが、配送コストを下げる方法を見つけてくれた。お客様にとっても、私たちにとっても、より良い形になる小さな工夫だ。たった一つの変更だったけれど、新しい視点というものが、どれほど大きな力になるかを、あらためて思い知らされた。

    今朝は、こんなこともあった。Amazonのレビューのまとめに、AK JAPAN が「主要プラットフォームで高い評価を受けた、トップクラスの販売者」と紹介されているのを見つけたのだ。

    小さな改善。より良い仕組み。そして、素晴らしい仲間。

    ──人生は、いいものだ。

    「三方よし」を、生き方の真ん中に

    毎週聴いている経営の先生の教えのなかに、近江商人の「三方よし」という言葉があった。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」。この三つがそろってはじめて、本当に良い商売だという考え方だ。

    私がこの事業でやりたいのは、まさにこれなのだと思う。

    日本の良い商品をつくる人が報われる(売り手よし)。北米のお客様が、本当に良いものに出会える(買い手よし)。そして、その間をつなぐことで、文化と文化が少しだけ近づく(世間よし)。

    無謀だと言われた、50代主婦の物販。想いだけでは続かないと、何度も突きつけられた。それでも続けてこられたのは、ご縁でつながった若者たちと、ようやく動き出した分業の仕組みと、市場の声に耳を澄ます姿勢のおかげだ。

    お客様に。日に日に大きくなっていくチームに。そして、AK JAPANの歩みを応援してくださるすべての方に、私は心から感謝している。

    私は毎日、まわりの人たちから、何か新しいことを学んでいる。

    それこそが、想いを「事業」に変えていく、いちばん確かな道なのだと、いまは思う。

    #創作大賞2026 #ビジネス部門


     
     
    カナダバンクーバー在住🇨🇦/海外在住歴30年+/カナダで日本のこんにゃくスポンジ売ってます @akjapan.ca /Expediaクルーズ専門予約エージェント/バンクーバー留学プログラム専門ホストファミリーリクルーター/男の子二人のママ長男自閉症

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