メインコンテンツへスキップ
見出し画像

下僕並べ【毎週ショートショートnote】

    秋田柴子

    「ねえ、今日ゴルフだったわ。朝ごはん作って!」

    悪びれもしない声で叩き起こされる。時計を見ると朝の4時だ。
    朝食をかき込んだ妻は、いそいそと出かけていった。
    見るとトイレはちゃんと流してないし、ペーパーはお約束の "芯残し" だ。

    夜遅くにご機嫌で帰ってきたら、汚れたウェアをぐちゃぐちゃに放置。
    俺が黙って片付けると思っているのだろう。

    「ねえ、シマウマビールは? ユウヒは嫌だって言ったでしょ」
    「お腹空いたから、ちゃちゃっと何か作ってよ」

    シマウマビール? ちゃちゃっと?

    「おい、俺は下僕じゃないぞ!」

    すかさず妻が切り返す。

    「下僕はもう少し気が利くわよ。あなたは下僕以下ね」

    「ふざけるな、何様のつもりだ!」


    自分の大声で、はっと目が覚める。
    どうやらゴルフから帰ってきて、ソファで寝落ちしたらしい。床には脱いだ服が散乱して……。

    頭上から妻が冷たい顔で見下ろしている。

    「もう下僕なみの要求を並べられるのにはうんざり。後は弁護士立てて白黒つけましょう」


    妻が出て行った数日後、書類が届いた。

    白黒どころか、緑一択だった。

    (449字)


    【あとがき】
    たらはさんの「ネコチャン下僕ぶり」に笑い、ついでにネタでパクったバチが当たったのか、今回は思いのほか苦戦しました💦 カニサンコワイ

    でも正直言って、男性が妻にこういう要求をする例はまだまだ多いような気がします。要求自体が悪いというより、「やってあたりまえ」と思うことがマズいんでしょうね。同じことを女性がやるとすごく横柄に見えるんだけどなあ。
    (ジェンダーフリー的にはアレですが)
    だけどこれがネコチャンだと、すべてが平和におさまるという不思議……。

    そしてご存じない方のために解説。「緑=離婚届の書式の色」です。


    *この記事は、以下の企画に参加しております。

    【宣伝、失礼します】
    『栗は月色、こがね色 和菓子処長月堂』発売中です!


     
     
     
    小説を書くわんこ(SS~長編)。創作大賞2025『栗と牡丹』入選。→2026年4月『栗は月色、こがね色』として朝日文庫より刊行。第2回日本おいしい小説大賞最終候補、第31回やまなし文学賞『雨を知るもの』佳作→作品集刊行。餃子とピザとあんこが好物。一人BARと野鳥観察が趣味。

    あなたへのおすすめ