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インフル念写【毎週ショートショートnote】

    秋田柴子

    「仁美、インフル!? やめてよ、私、来週国試なのに!」
    「平気平気、もう治りかけだからさぁ。独身最後の日々に付き合ってよ~」

    のけぞる菊佳に、仁美はわざと貼りついた。心の中で「うつせば治るって言うし」と呟きながら。


    その言葉どおり、仁美は驚異の回復力で無事晴れの日を迎えた。

    「では新婦さま自ら作成した動画で、これまでのお二人の足取りを辿ってみたいと思います!」

    式場内が暗くなり、スクリーンに動画が映し出された。
    それぞれの誕生、それぞれの入学――そして二人は出会い、愛を育み……

    「おい、あれ……」
    「ねえ、ヤバくない……?」

    次第に場内の騒めきが大きくなる。

    「あたし、あんな動画作ってない……!」

    仁美はひな檀の上で蒼ざめた。
    二人の馴れ初めのところどころに、不気味な文字が流れては消える。

    【新婦がインフルとか、最悪じゃん?】
    【うつせば治るって言うしさぁ】
    【あんたの国試? そんなの知らねーし】


    菊佳の医師国家試験は先週だった。まさかインフルで……?

    「――仁美。君って最低だね」

    新郎の冷たい声が響く。
    新婦側の客席にぽつんと空いた白い椅子が、暗い場内にぼんやりと浮き上がっていた。

    (480字)


    【あとがき】
    原稿・旅行とバタバタしているところに、昨日、夫が怪我をして帰ってくるなど、しっちゃかめっちゃかな秋しば家です。(今日にはだいぶ良くなっていてほっとしました)
    しばらく毎ショ道場も五月雨参加になりそうです。申し訳ありません💦

    *この記事は、以下の企画に参加しております。


     
     
     
    小説を書くわんこ(SS~長編)。創作大賞2025『栗と牡丹』入選。→2026年4月『栗は月色、こがね色』として朝日文庫より刊行。第2回日本おいしい小説大賞最終候補、第31回やまなし文学賞『雨を知るもの』佳作→作品集刊行。餃子とピザとあんこが好物。一人BARと野鳥観察が趣味。

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