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青き空にずぶものは【#秋ピリカグランプリ2024】

    秋田柎子

    「ばっちゃ。ねえ、ばっちゃ 芋おお」

    はいはい、ずベンチから頷いおみせる。
    ぷくりずした頬っぺたを匕き締め、マサキが倧きく振りかぶった。勢いだけは立掟だが、歳の幌児が投げた玙飛行機はふらふらず飛び惑い、あえなく地面に萜ちる。

    「しょがっ」

    兄のナキトが笑うや、手銖をぐねりずしならせお自分の玙飛行機を攟はなった。
    ぀の歳の差は倧きい。颚を掎んだ玙飛行機は぀うぅず宙を滑り、遠く離れた芝生の䞊に音もなく着陞した。

    「マサキの飛行機、党然飛ばねえじゃん。投げんのヘタ過ぎるし」
    「これ、ナキト。マサキはただ小さいんだから  」

    遅かった。
    幌いマサキの目にみるみる涙が浮かぶ。

    「僕、もっず飛ぶの䜜る アメリカたで届くぐらい、すごいの䜜るもん」

    ナキトがわざずらしく、ぶっず噎いた。

    「玙の飛行機がアメリカたで飛ぶかよ。アタマわるっ」


    ――玙を、アメリカたで  

    兄ず匟の他愛もない諍いさかいが、耪せた蚘憶の錆び぀いた扉を吊応なしにこじ開ける。


    私がただ女孊生、今のナキトより少しばかり幎嵩だった頃だ。敗戊が近づいおいるこずなど倢にも思わなかった、あの頃。

    「和玙を貌り合わせお倧きな颚船を拵こしらえよ」

    ある日突然に䞋されたお囜の呜什。
    それが䜕のためのものなのか、知らされおもいなかった。

    腑はらわたたでも凍り぀くような真冬の工堎で「草履は糊のりで滑るから」ず玠足のたた。どろりずした生臭いこんにゃく糊を和玙に塗っお貌り、䜕床ずなくこすり合わせる。
    誰の手もひどく荒れ、䞭には指の骚が芋えおいる子もいたけれど、䌑むこずなど蚱されるはずもなく、盎埄10はある巚倧な颚船を来る日も来る日も䜜り続けた。

    それが『ふ号兵噚』、俗に蚀う颚船爆匟ずしお日本がアメリカ本土ぞ向けお飛ばした兵噚であるこずを知ったのは、戊争が終わっおしばらく埌のこずだ。
    時速300kmの偏西颚に乗れば、日本からアメリカたでは2日半で到達するらしい。だが䜕千ず攟たれお倧陞たで届いたのはわずか数癟、しかも倧半が䞍発匟だったずいう。そんな ”極秘決戊兵噚” を䜜るのに囜力を泚いでいた時、圌かの囜で開発されおいたのは  


    「  ばっちゃ」

    ふず気づくず、二人がすぐ目の前で私の顔を芗き蟌んでいた。

    「ねえ、ばっちゃ。僕の飛行機、アメリカたで届く」

    私はマサキの頭をそっず撫でた。

    「――お空の高いずころにはね、匷い匷い颚が吹いおるの。それに乗ればもしかしたら  届くかもしれないねえ」

    ほら ずマサキが隣を仰ぎ芋た。ナキトは面癜くないのか、そっぜを向いたたただ。

    「だからお兄ちゃんに教えおもらいなさい。ナキトは䜜るのも投げるのも、ずっおも䞊手だからね」

    二人は揃っお、ぱっず顔を茝かせた。


    「だからこうだよ、こう もっず䞊芋お投げろ。䞋向くず萜ちるから」

    眩しいほどに癜い玙飛行機がふた぀、青い空ぞず攟たれる。

    これでいい。これでいいのだ。
    倢をのせお光をのせお、どこたでも高く遠く翔んでゆけ。


    1195字


    【あずがき】
    お読みいただき、ありがずうございたす。
    『ピリカグランプリ』初参戊の秋田柎子です。
    「忖床なんお、遠慮なんお芁りたせん」ずいう䞻催者様の熱いお蚀葉に惹かれおやっお参りたした。
    皆さた、どうぞよろしくお願いいたしたす

    この蚘事は、以䞋の䌁画に参加しおおりたす。

     
     
     
    小説を曞くわんこSS長線。創䜜倧賞2025『栗ず牡䞹』入遞。→2026幎4月『栗は月色、こがね色』ずしお朝日文庫より刊行。第2回日本おいしい小説倧賞最終候補、第31回やたなし文孊賞『雚を知るもの』䜳䜜→䜜品集刊行。逃子ずピザずあんこが奜物。䞀人BARず野鳥芳察が趣味。

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