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スネーク満床【毎週ショートショートnote】

    金運が上がると言われる巳年。
    その蛇を祀る多良波神社では、古来から「巳年の最初の巳の日に参拝すれば一生金に困らない」と伝えられている。おかげで今年は途方もない数の人々が、この片田舎にある小さな神社へと押し寄せた。
    近隣の数少ない宿屋はどこも予約でいっぱいだ。だが欲に目が眩んだ人間は続々とやって来る。

    「そう言われましても、もう部屋は空いてないんです」
    「じゃあ廊下でもいい。床に雑魚寝でも構わない」

    宿屋も弁わきまえているから、奥から粗末な布団を出して所狭しと並べた。
    迎え茶と送り茶以外は食事もなく、固い板敷きの上で薄っぺらな布団に寝かされる素泊まりだ。だがそんな苦労も金運を掴むためなら厭わないらしい。

    「やれやれ、これじゃ素寝苦満床だよ。ま、仕方ないか」


    真夜中、宿中の床を埋め尽くす布団を横目に、宿の主人は呆れ声で呟いた。

    「人の欲とは浅ましいものだ……さて、こっちも儲けさせてもらったお礼に供物を捧げんと。今年は何人にするか……」

    主人は狭い厨房へ引っ込むと、明日の送り茶用の湯呑へ秘伝の眠り薬を仕込み始めた。

    (448字)


    【あとがき】
    みなさま、新年あけましておめでとうございます。
    今年もよろしくお願いいたします。
    蛇が眷属の弁財天様を祀る神社では、実際に「初巳祭」というものがあるそうです。ただし作中の言い伝えは完全なるフィクションなので、ご承知おきください(笑)
    ちなみに今年の初巳は1月12日です。弁財天様にお参りしたらいいことあるかも~!!

    【宣伝】
    1月1日、拙作『ヒヨドリの啼なく庭』が下野新聞『新春しもつけ文芸』の二位に選ばれました。純文寄りのゆったりしたお話です。登録なしで読めますので、よろしければぜひぜひ~。
    (ご感想など頂ければ、ちぎれるほどに尻尾を振って喜びます)

    *この記事は、以下の企画に参加しております。


     
     
     
    小説を書くわんこ(SS~長編)。創作大賞2025『栗と牡丹』入選。→2026年4月『栗は月色、こがね色』として朝日文庫より刊行。第2回日本おいしい小説大賞最終候補、第31回やまなし文学賞『雨を知るもの』佳作→作品集刊行。餃子とピザとあんこが好物。一人BARと野鳥観察が趣味。

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