メインコンテンツへスキップ
見出し画像

忘年怪異【毎週ショートショートnote】

    「あれ、来年て何年ねん?」

    年賀状のデザインを考えていた田原は、ふと考え込んだ。
    そもそも今年が何年かすら思い出せない。
    焦って検索していると、スマホがぴぽんと鳴った。友人からのMINEだ。

    『忘年会やらね?』

             「なあ、今って何年!?」

    『は? 霊和6年っしょ』

            「なに、その不気味な元号!」

    『田原、どうしたん?
     てか、何やってんの?』

            「年賀状書こうと……
             あれ、来年の干支は?」

    『忘れすぎ! カニ年やて』


    カニ年? 星座かよ。

    年を忘れるだけでも不気味なのに、連れまでがおかしい。

    「忘年会どころか忘年怪異かよ。つまんねえシャレ……」

    たまらず家を飛び出した田原は、外の光景を見るや立ちすくんだ。
    街のイルミネーションはカニ。
    年賀ポスターもカニ。
    おまけに今年の漢字は『蟹』ときた。

    「とし……今年は……」

    ふらふらと歩く田原の頭に白いものが落ちてきた。
    雪かと思えば、カニのあぶくだ。


    ――ほぉら、みんな忘れてしまえ


    頭の中から今年の記憶がすべて泡沫うたかたと消えていく。


    「ああ、今年も疲れたね……乾杯」


    田原は虚ろな目で右手を高く掲げると、暗い路地裏へと消えていった。

    (473字)


    【あとがき】
    ねえ、皆さん! 怪異の「異」の字って!!

    🦀に見えない!?!?!?


    (本記事のメインはこちらです)

    *この記事は、以下の企画に参加しております。

     
     
     
    小説を書くわんこ(SS~長編)。創作大賞2025『栗と牡丹』入選。→2026年4月『栗は月色、こがね色』として朝日文庫より刊行。第2回日本おいしい小説大賞最終候補、第31回やまなし文学賞『雨を知るもの』佳作→作品集刊行。餃子とピザとあんこが好物。一人BARと野鳥観察が趣味。

    あなたへのおすすめ