メインコンテンツへスキップ
見出し画像

告白雨雲【毎週ショートショートnote】

    「まあ、ぶっちゃけ繋ぎだったんだよ、おまえとのことは。ちょうど前の彼女と別れてヒマだったからさ。でも俺、もう新しい彼女できたから。悪いけど」

    そろそろ潮時と踏んだ俺の辛辣な告白に、彼女の顔がさっと青ざめた。みるみるうちにその目に涙が溜まる。
    やれやれ。案の定、湿っぽい雨雲が漂ってきちまったな。まあ素直で世間知らずの彼女のことだ。何の疑いもなく恋人同士と信じ込んでいたんだろう。

    だが、たとえ女がどれだけ涙雨を降らせようと、泣き落としにかかる俺じゃない。
    好きに泣かせるだけ泣かせて、あとはさっさとおさらばだ。

    「信じられない。まさかこんな……」
    「だから何度も言ってるだろう。俺は最初からそんな気なかったんだよ。おまえが勝手に……」

    そう言いかけて俺は息を呑んだ。
    彼女は涙に濡れた目で静かに立ち上がると、おもむろに懐から鈍く光る刃物を取り出した。

    「本当にこれが必要になる時が来るなんて……」

    ――そして降ったのは、問答無用の血の雨だった。


    *本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です。



     
     
    小説を書くわんこ(SS~長編)。創作大賞2025『栗と牡丹』入選。→2026年4月『栗は月色、こがね色』として朝日文庫より刊行。第2回日本おいしい小説大賞最終候補、第31回やまなし文学賞『雨を知るもの』佳作→作品集刊行。餃子とピザとあんこが好物。一人BARと野鳥観察が趣味。

    あなたへのおすすめ