
【短編恋愛小説】世界最後の日。
きっと、こうなることはわかっていたの。
ニュースキャスタは無機質に「地球最後の日」を告げた。
私もあなたも、ソファーに座っていた。
そう。
昔に買って、二人で頑張って運んだあのソファー。
駅から運ぶ間、周りに見られていて、少し恥ずかしかったけれど、今ではそれも良い思い出。
あなたは、覚えているのかしら。
最後の日まで、そこまで長くはなかった。
あなたはニュースを見て俯く私を抱きしめて、
「大丈夫」だと言ってくれた。
別に私はそこまで不安じゃなかったのよ。
あなたと終わりを迎えられのなら、
それも良いと思ったの。
あなたの方が不安そうなのに、
私を抱きしめてくれるものだから、
私もあなたを抱きしめ返して、
「ありがとう」と言ったの。
その日はやけにいつも通りに過ごした。
コーヒーを淹れて、トーストに、スクランブルエッグを合わせて。
あなたはどこか遠くを見ていたから、私はあなたの手を握ったの。
私はそばにいると、伝えたくて。
その時あなたが少し悲しそうに笑ったのを、
私覚えてるわ。
あれから数日、経ったのね。
あなたの冷たい手に触れる。
もっとはやく、こうすればよかったのかしら。
私たちに開いた少しの距離を、埋めるために。
地球最後の日。
あの日は朝、変に晴れていて、
全ての終わりを祝福しているみたいだった。
漫画みたいに、隕石が落ちてくるらしい。
私たちは目が覚めて、いつもの朝食を食べた。
あなたは朝からソワソワしていたわね。
私はあなたを抱きしめて、
いつかのあなたみたいに、「大丈夫」を口にした。
世界の全てが騒がしくたって、この家は静かだと、
それだけをあなたに伝えたくて。
夕方にはすべてが終わる。
だからもう、怖いことなんて何もない。
最後は二人で手を繋いで、
そうやって終わろうと、私はあなたに言った。
あなたは俯くだけだった。
昼になって、晴れた空に、
あなたはふと、私を見た。
あなたは、ずっと、いつからか、その目をしている。
どうしてそうなったのか、私にはわからない。
あなたは言った。
一言、
「ごめん」って。
あなたは私を通り越して、
玄関に向かった。
ーーーーーダメだと思った。
女の勘とでも言うのかしら。
直感でわかるものなのよ。
あなたの隣にずっといるのだから、わかるのよ。
あなたは玄関の扉に手をかけた。
私は追いかけた。
「なんで、、私を置いていくの?」
静かに落ちた私の言葉は、あなたには呪いに聞こえたかしら。
あなたは繰り返した。
「ごめん」
違うのよ、そんな言葉が欲しいわけじゃないの。
「行かないで。お願い。
最期くらい、私と一緒にいて。」
私はあなたの優しさを知ってる。
あなたは私を置いていけない。
だってそうでしょう?
何年も私を捨てずにいてくれたじゃない。
あなたは最後に私を見た。
「ごめん。」
また、その目をするのね。
扉が開く。
光が入る。
ーーーーーあぁ、ダメだ。
そう思った。
あなたは外へ。
わかっているわ。
あの子の元へ行くのでしょう?
私よりも心の綺麗なあの子の元へ。
行くのでしょう?
私は、キッチンへ行った。
キラリと光るものを手にして。
追いかけた。
そして、あなたが振り返る前に、それを
冷たい指に、自分の指を絡めて、
返事のしないあなたに声をかける。
「ねぇ、もうそろそろ終わるよ。」
「すぐにそっちへ行くから。」
「もう少し待ってて。」
手を繋いで、指を絡めて、あなたにキスをする。
愛してるの。
どうしようもないほどにね。
もうすぐ、
もうすぐ、
世界は終わる。
あなたの肩に寄りかかる。
あのソファーに座って、
最期に、あなたに言う。
「愛してるわ。」