
【短編小説】ある生徒の遺書
「不幸ってのは生ぬるい地獄です。
ゆっくりゆっくり、沈んでいって、
いつか這い上がれなくなります。
僕は不幸の沼の中で、ずっと浮く努力をしないで、
ダラダラと日々を怠惰にやり過ごしてきました。
不幸ってのは生ぬるいんです。
日々の些細なことに満足できなくて、
いつかはどこかの誰かみたいに、
賞賛される人になれるんだって、
信じて疑わない僕がいます。
僕は何者かになりたいんです。
だから、
言葉を綴って、
皆の好きなものを悉く嫌って、
一人でいるんです。
画面の向こうのあの人みたいに、
いつかは褒め称えられて、
そんな馬鹿みたいなことを未だ信じてるんです。
本当は、もっと満足するべきなんでしょう。
持ち合わせたわずかな才能と、
恵まれている五体に。
両親もいて、仲も悪くないのに
僕はずっと不幸なんです。
先生、これはなんの病気ですか?
鬱病とかいうやつですか?
それとも気のせいですか?
僕はおかしいでしょうか。
おかしくてもいいです。特別ならば。
どうか僕を可哀想って目で見ないでください。
「あの子には才能があるんだ」って昔、
言ってくれたじゃないですか。
先生。
先生。
僕はいつから、こうなったんでしょうか。
どこから間違えたのでしょうか。
これをひたすら考えることで、
いつか誰かに許されようと、
そう思ってるのでしょうか。
先生。
僕は、特別でもなんでもありませんでした。
ずっと目を逸らしてきすぎてしまったみたいです。
先生。
あの日、お話しした完璧な未来は、
かけらも実現しませんでした。
僕の手の内をこぼれ落ちて、
ガラガラと音を立てて崩れてしまいました。
だから、先生。
僕はいなくなります。
先生、さようなら。
平凡な僕は最期まで、
平凡に終わることしかできません。
それでも先生。
僕のお墓にはやってきてください。
決して先生を呪ったりはしませんから、
どうぞ、気が向いた時にはお越しください。」