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うつ病、クライマー。

    壁に向かっているときだけ、頭の中が静かになる。

    仕事のこと、人間関係のこと、「このままでいいのか」という不安。

    そういうものが、ぜんぶ遠ざかっていく。

    目の前にあるのは、指先がかかるかどうかのホールドと、自分の身体だけだ。


    2019年にうつ病と診断されてから、休職と復職を繰り返してきた。

    朝、起き上がれない日がある。

    会社に向かう途中で足が止まる日がある。

    何もしていないのに、ひどく疲れている日がある。

    周りは変わらず動いている。

    その流れの外に、自分だけがいるような感覚があった。

    そんな状態でも、なぜかクライミングだけは続けていた。

    クライミングには、嘘がない。

    登れたか、登れなかったか。

    それだけだ。

    誰かの期待に応える必要もなければ、空気を読む必要もない。

    壁は何も語らない。

    ただそこにあるだけだから、自分の状態をそのまま受け止めることができる。

    どれだけ間が空いても、また一手目からやり直せる。

    壁は逃げない、仲間もいる。

    チョークの粉が舞って、誰かが「ナイス」と声をかける。

    それだけで、十分だった。


    クライミングをしているとき、私は「役に立たなければならない人間」でも「評価されなければならない人間」でもない。

    ただのひとりのクライマーだ。

    できるときもある、できないときもある。

    そのシンプルさが、今の自分にはちょうどいい。

    揺れながらでも、迷いながらでも、壁の前に立って一手を出すことはできる。

    今日もまた、私は壁に向かう。

    なぜなら、クライミングをしている私は、笑っているからだ。


    #創作大賞2026 #エッセイ部門

     
     
    クライミング歴10年以上のクライミング愛好家です!年齢は現在37歳で、普段はサラリーマンをやっています。本noteでは、クライミング、ボルダリング、登山に関するギアレビュー記事を主に書いています。Amazonのアソシエイトとして、アキラは適格販売により収入を得ています。

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