
ショートストーリー 「ウル」 #3つのお題にひらめきを
3回目の参加です。いつもありがとうございます。
今回のお題はコチラ。
お題①:「眠らない海」
お題②:「夢のかけら集め」
お題③:「青いマフラー」
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ヤハラヅカサ——それは、アマミキヨが海の彼方ニライカナイから渡ってきたとされる、神聖な「うる(浜辺)」
夜の帳が静かに降りる頃、私はその真っ白な波打ち際をひとり歩いていた。
目的はただひとつ——『夢のかけら集め』。
この浜には、かつて誰かが捨てた夢、挫折した夢、忘れ去られた夢、砕け散った夢のかけらが、潮に乗って打ち寄せるという。
夢のかけらたちは、美ら海の懐に抱かれ、悠久の時を経て、まるでシーグラスのように丸く、淡く、優しく光るらしい。
私はその噂を耳にし、自分の夢を探しにここへ来た。
恥ずかしい話だが、捨てた夢は星の数ほどある。
それなのに、何を捨てたのかさえ思い出せない。
これといって人に語れるような趣味も特技もない。
定年退職を迎え、社会的な肩書きも手放した今、年甲斐もなく自分の夢を拾いに来たのだ。
月明かりが、波間に銀の道を描いている。
私はその光を手掛かりに、星砂の浜を歩く。
足元には、夜露に濡れた珊瑚のかけらや、貝殻がひっそりと眠っていた。
どれほど歩いただろうか。
時折、うみかじ(海風)が強く吹き、青いマフラーのように私の首筋を撫でていく。
「風が気持ちいい…」
押しては返す、眠らない海。
さざ波のゆりかごに揺られながら、私は歩き続けた。
いつしか、頭の中は波の音だけで満ちていた。
潮騒が、遠い記憶を呼び覚ますように響く。
流石に疲れてきた頃、座れそうな流木を見つけた。
その瞬間…
一際ふわっと光るかけらが、砂の中に浮かび上がった。
暗闇の中、足を砂に取られながらも、私は慌ててそれを拾った。
それは、遠い遠い昔の泡沫の夢。
ずっと忘れていた、私自身の夢のかけらだった。
「あった…」
水平線の向こうから、ゆっくりと太陽が昇る。
アガイティーラ…夜明けの光が、空と海を染めていく。
その光に照らされながら、私は夢のかけらをぎゅっと握り締めた。
「そうか…そうだったな…」
もう迷いはなかった。
初老の男は、真っ白な砂浜を、再びひとり歩き出した。
完
あとがき
お題を見て一度しか行ったことのない沖縄の海を思い出した。まさに記憶をたどる旅。素敵な体験となりました。片桐みかんさん、ありがとうございました。
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