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ショートショート 「白紙のおみくじ」 #風まかせ文芸部 #白紙

    中之人成

    初詣の神社は、冬の朝の冷気に包まれていた。境内には吐く息が白く浮かび、参拝客の足音が霜を踏んで小さく響く。鈴の音とともに、願いごとを唱える人々の声が、木立の間に吸い込まれていく。


    そんな中、一人の少年が、おみくじの箱の前で立ち尽くしていた。迷いの色を浮かべた瞳。手には、引いたばかりの細長い紙片。


    「…!?」


    彼の目が見開かれる。手にしたおみくじは、真っ白だった。文字ひとつ書かれていない、何も語らない紙。


    「そうか……これは、未来は何も決まっていないということか!」


    少年はふっと笑い、目を輝かせて駆け出していった。まるで、白紙の未来に自分の物語を書きに行くかのように。


    私はその背中を見送りながら、そっとつぶやいた。


    「いや違うよ……水に浸すと字が出てくるんだよ」


    けれど、その言葉は風に紛れて、誰の耳にも届かなかった。


    完


    (本文357字)



    あとがき

    iさんの企画『風まかせ文芸部』お題「白紙」に参加させて頂きました。

    #風まかせ文芸部
    #白紙
    #おみくじ

     
     
     
    5分で読める掌編やショートショートを中心に書いています。

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