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教えて福ちゃん|姪っ子編 第7話 その注文ボタン、押す前に一呼吸にゃ──指値と成行、どっちで買うのが有利?


    プロローグ 帰り道の車の中で

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    母の法事の帰りにゃ。

    姪っ子ちゃんを助手席に乗せて、にゃあは車を走らせていたにゃ。空はよく晴れていて、田んぼの緑が流れていくにゃ。

    母が好きだった道にゃ。

    「おばあちゃん、こういう天気の日が好きだったよね」

    「そうにゃ。よく覚えてるにゃ」

    しばらく、二人とも黙って外を見ていたにゃ。悲しいというより、静かな気持ちにゃ。こうして時々思い出してあげることが、いちばんの供養なのかもしれないにゃ。

    少しして、姪っ子ちゃんがスマホを取り出したにゃ。

    「ねえにゃあ、ちょっと聞いてもいい?」

    「いいにゃ。信号で停まってるときならにゃ」

    「株を買うときってさ、指値と成行、どっちがいいの?」

    「お、ついに注文の話まで来たにゃ」

    帰り道の車の中で、ぽつぽつと、そんな話が始まったにゃ。


    第1章 成行は、時間を買う注文にゃ

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    「だってさ、注文画面に指値と成行って並んでて、成行のほうが簡単そうなんだもん。ボタン押せばすぐ買えるみたいだし」

    「うん、最初はみんなそう思うにゃ。でもね、株を買うっていうのは、買えたかどうかだけの話じゃないんだにゃ。いくらで買ったか、っていうのが、そのあとの成績にずーっと効いてくるんだにゃ」

    「そっか……値段かあ」

    「まず成行から説明するにゃ。成行は、値段を指定しない注文。いくらでもいいから今すぐ買いたい、っていうときに使うにゃ」

    「すぐ買えるんでしょ?便利じゃん」

    「便利にゃ。約定しやすいのが最大の強みにゃ。東証の売買ルールでも、成行注文は指値注文より優先されるんだにゃ。だから約定しやすい。そのかわり、値段を自分では決められない。そこが成行の強さであり、怖さでもあるにゃ」

    「えっ、怖さ?」

    「値段を指定しないってことは、自分が思ってた値段で買えるとは限らないってことなんだにゃ。1000円だと思って成行で買ったら、実際は1005円、1010円で約定することもある。板が薄い銘柄なら、もっと上で買っちゃうこともあるにゃ」

    「板が薄いって?」

    「売り買いの注文が少ない銘柄ってことにゃ。出来高の少ない小型株、決算発表の直後、材料が出た直後、寄り付きすぐ。こういう場面で成行を使うと、買えたけど高く買いすぎた、が起きやすいんだにゃ」

    「うーん、こわい」

    「あとね、もうひとつ怖い場面があるにゃ。株価が急に飛ぶときにゃ。買いが殺到してストップ高に近づいてるときや、逆に急落してるとき。こういうときに成行を入れると、板がスカスカになってて、思ってたより何十円も上で約定しちゃうことがあるにゃ。これを値が飛ぶ、なんて言ったりするにゃ」

    「そんなことあるんだ……」


    第2章 指値は、価格を守る注文にゃ

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    「一方で指値は、価格を守る注文にゃ。1000円以下なら買う、980円まで下がったら買う、それより高いなら今日は買わない。そう決めておけるにゃ」

    「自分でブレーキかけられるんだ」

    「そうにゃ。株って、欲しいと思った瞬間が一番危ないんだにゃ。上がってる銘柄を見ると置いていかれそうな気がするし、ニュースで話題になってると、今買わないと損する気がしてくる」

    「わかる、それ」

    「その焦りで成行を押すと、高値掴みになりやすい。指値は、その焦りを止めてくれるんだにゃ」

    「でも指値って、買えないこともあるんでしょ?」

    「いい指摘にゃ。それが指値の弱点にゃ。あと1円届かずに買えなかった、下に置きすぎて株価が上がっちゃった、ってことはよくあるにゃ」

    「やっぱり成行のほうが……」

    「それにね、指値は毎日入れ直さなくてもいいんだにゃ。多くの証券会社には期間指定っていう機能があって、何日か先まで有効にしておけるにゃ。一度置いておけば、その間に株価が下がってきたら自動で約定するにゃ」

    「へえ、便利」

    「指値はね、安く買うためだけの注文じゃないんだにゃ。自分のルールを守るための注文でもあるんだにゃ」


    第3章 買わない、という選択にゃ

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    「でも、買えないと意味なくない?」

    「にゃあはこう思うんだにゃ。買えなかったことは、必ずしも失敗じゃないにゃ」

    「え、そうなの?」

    「投資では、買わない判断も立派な判断にゃ。自分の決めた価格まで来なかったなら、縁がなかった。そう思えるようになると、無理な買い方が減っていくにゃ」

    「なるほど……」

    「じゃあ結局、どっちが有利なの?」

    「にゃあの答えはこうにゃ。価格を守りたいなら指値が有利。確実に買いたいなら成行が有利。そして長期投資なら、基本は指値でいいにゃ」

    「長期なら指値なんだ」

    「配当株や優待株をコツコツ集めるような投資なら、無理に追いかける必要は少ないにゃ。今日買えなくても明日がある。今週買えなくても来月がある。相場は毎日開いてるんだにゃ」

    「焦らなくていいんだ」

    「欲しい銘柄ほど、ちょっと冷静に見るにゃ。この会社を買いたいのか、この株価で買いたいのか、この利回りで納得できるのか。そこを考えてから指値を置く。これだけで無駄な買い方はかなり減るにゃ」

    「でも成行は全然使わないの?」

    「使うときもあるにゃ。流動性の高い大型株を少額だけ買うとき、数円の差が長期では意味を持たないと判断したとき、市場全体が大きく下がってて機会を逃すより買うことを優先したいとき。そういう場面では成行も選択肢にゃ」

    「使い分けなんだね」

    「そう。成行が悪い、指値が正しい、って決めつけないことが大事にゃ。成行は時間を買う注文、指値は価格を守る注文。この違いを理解して使い分けるんだにゃ」


    第4章 福ちゃんは、どっち派?にゃ

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    「福ちゃんは普段どっち?」

    「にゃあは基本、指値にゃ。急いで買う必要があまりないからにゃ」

    「なんで急がないの?」

    「一発で銘柄を当てにいくより、いろんな業種に分けて長く持つことを大切にしてるからにゃ。ひとつの銘柄に飛びつくより、納得できる価格で少しずつ拾うほうが性に合ってるんだにゃ」

    「ふーん」

    「それにね、銘柄数が増えてくると、1回ごとの数円、数十円の差も積み重なるにゃ。たった5円、たった10円。そう思うかもしれないけど、100株なら500円、1000円。何十回、何百回と売買すれば、それなりの差になるにゃ」

    「ちりつもだ」

    「ただし、安く買うことにこだわりすぎると優良株を買い逃すにゃ。だから指値も欲張りすぎちゃダメにゃ。安く買いたい気持ち、買えなくてもいいという覚悟、どうしても欲しいなら少し上に指値を入れる柔軟さ。この三つのバランスにゃ」

    「むずかしいなあ」


    第5章 1株投資には、クセがあるにゃ

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    「でも福ちゃん、私いま1株ずつ買ってるんだけど、注文画面に指値が出てこないんだよね」

    「お、それは大事なところに気づいたにゃ。姪っ子の使ってる証券会社は……ああ、なるほどにゃ。そこは1株だと成行だけなんだにゃ」

    「そうなの。指値、どこにも見当たらなくて」

    「実はね、1株から買う単元未満株は、証券会社によってルールがけっこう違うんだにゃ。姪っ子のところみたいに指値が使えなくて成行だけ、っていうサービスもあれば、リアルタイムで取引できて指値も使えるところもあるにゃ。だから1株で買うときは、まず自分の使ってる証券会社の注文ルールを確認するのが大事にゃ」

    「そうだったんだ。知らなかった」

    「しかもね、もうひとつクセがあるにゃ。1株投資は、注文ボタンを押してもすぐには約定しないことが多いんだにゃ」

    「すぐ買えないの?」

    「これも証券会社によって違うんだけど、だいたい1日に決まった回数だけ、まとめて約定するにゃ。朝の始まりの値段とか、お昼すぎの値段とか、その時間にならないと買えないんだにゃ。会社によっては立会時間中いつでも買えるところもあるけど、そういうところばかりじゃないにゃ」

    「じゃあ、押した瞬間の株価で買えるわけじゃないんだ」

    「そうにゃ。ボタンを押したときに1000円でも、実際に約定するのは数時間後で、そのときには1010円になってるかもしれないにゃ。指値が使えないサービスだと、値段も選べないし、タイミングも選べない。それが1株投資にゃ」

    「なんか、思ってたより不自由なんだね」

    「うん。でもね、それが悪いって話じゃないんだにゃ。1株投資は、少ない金額でいろんな会社を持てるのが強みにゃ。最初の一歩としてはすごくいいんだにゃ。まずは1株で会社を持つ感覚に慣れる。そのうち、どうしてもこの値段で買いたい、っていう銘柄が出てきたら、100株単位で指値を使う。そうやって少しずつ道具を増やしていけばいいんだにゃ」

    「焦らなくていいんだね」

    「相場は逃げないにゃ。指値が使えるようになるのは、もう少し先でも大丈夫にゃ」


    第6章 眠れる買い方を選ぶにゃ

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    「株式投資はね、買った瞬間に勝負が決まるわけじゃないにゃ。でも買値はそのあとずっとついて回るにゃ。含み益になるか、含み損になるか、利回りがどれくらいになるか、落ち着いて持てるか。その出発点が買値なんだにゃ」

    「だから注文方法、軽く見ちゃダメなんだ」

    「そういうことにゃ。成行は勢いのある注文、指値は待つ注文。勢いが必要な日もあるし、待つことが必要な日もある。でも初心者ほど覚えておきたいのは、買えたら勝ち、じゃないってことにゃ」

    「高く買いすぎた株は……」

    「そのあと長く心に引っかかるにゃ。逆に、納得して買った株は、多少下がっても落ち着いて持てるにゃ。にゃあは投資で一番大切なのは、自分が眠れる買い方をすることだと思ってるにゃ」

    「眠れる買い方……いい言葉」

    「指値か成行かっていうのは、ただの注文方法じゃなくて、自分の投資姿勢が出る場所なんだにゃ。焦って買うのか、待って買うのか。価格を守るのか、機会を取りにいくのか。その答えは人によって違っていいにゃ」

    「私はどうすればいいかな」

    「100株単位で買うときは、指値を基本にするといいにゃ。どうしても必要な場面だけ成行を使う。1株投資なら、まず証券会社のルールを確認して、指値が使えないサービスなら、注文の時間と約定のタイミングを意識する。そして成行を使うときほど、板と出来高をちゃんと見る。それだけでずいぶん危ない買い方は減るにゃ」

    「わかった。注文ボタン押す前に、一呼吸置くね」

    「それにゃ。株は買う前が一番自由なんだにゃ。買ってしまえばその株価に縛られる。だからボタンを押す前に、この値段で本当に買いたいのか、買えなくても後悔しないか、成行で飛び込むほどの理由があるのか。そこを考えるだけで、投資は少し落ち着いたものになるにゃ」


    まとめ 三つの注文、いいとこ・わるいとこ

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    今日の話、並べておくにゃ。

    成行注文

    ・利点:約定しやすい(東証ルールでも指値より優先される)。今すぐ買いたい・売りたいときに取引が成立しやすい。流動性の高い大型株なら、比較的、値段が大きくずれにくい

    ・欠点:値段を選べない。思っていたより高く買ったり安く売ったりすることがある。出来高の少ない銘柄や、ストップ高直前・急落時など相場が大きく動いているときは値が飛びやすいので要注意

    指値注文

    ・利点:価格を守れる。この値段以下なら買う、と決めておけるから高値掴みを防げる。焦って飛びつくのを止める自分へのブレーキになる。期間指定を使えば毎日入れ直さなくてもいい

    ・欠点:買えないことがある。指値まで株価が届かないと約定しない。下に置きすぎると株価が上がって買い逃すこともある

    1株投資(単元未満株)

    ・利点:少ない金額でいろんな会社を持てる。最初の一歩にぴったり

    ・欠点:注文ルールが証券会社で大きく違う。指値が使えず成行だけのサービスも多い。また、サービスによっては注文してもすぐ約定せず、決まったタイミングでまとめて約定するので、値段もタイミングも選びにくい

    「こうやって並べると、どれも完璧じゃないんだね」

    「そうにゃ。完璧な注文方法なんてないんだにゃ。大事なのは、それぞれの利点と欠点を知ったうえで、自分の目的に合わせて選ぶことにゃ」

    家が見えてきたころ、姪っ子ちゃんはスマホをそっと閉じたにゃ。

    「今日は急いで買うの、やめとく」

    にゃあは少し笑って、ハンドルを切ったにゃ。

    にゃあのしっぽ

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    猫さんたちは、ごはんを前にしても、すぐには飛びつかないにゃ。

    ちょっと匂いをかいで、まわりを見て、それから食べ始めるにゃ。

    慌てて口をつけて、熱くてびっくりすることもあるけれど、ちゃんと待てる猫さんは、いちばんおいしいところを、落ち着いて食べるにゃ。

    株を買うのも、似ているにゃ。

    欲しい。でも、ひと呼吸。
    買いたい。でも、値段を決める。

    その小さな間が、長く続けるための、大きな守りになるのです。

    母も、買い物のときはいつも値札をじっと見て、ゆっくり選ぶ人だったにゃ。急がない人だったにゃ。

    にゃあも今日も、猫さんたちに教わったにゃ。

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    九州在住の個人投資家、赤猫福にゃ。noteで寓話や文学を通して株式投資を発信。YouTube『赤猫MUSIC』もゆるく更新中にゃ🐾

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