メインコンテンツへスキップ
見出し画像

『天の秤』真・完結篇:疎まれし真実と、心理の秤一、 異端の書に眠る、裏の本物

    世の歴史家たちが「偽り」と蔑み、時の権力者たちが「不都合」として闇に葬り去ろうとした、疎まれし古き文献。
    人間の心の機微を、言葉の裏に隠された剥き出しの「心理」を読み解く者だけが、その隔離された書庫の片隅で、静かに拍動を続ける『裏の本物』に辿り着くことができる。
    そこには、中央の朝廷から「国賊」「野蛮」の汚名を着せられながらも、東北の過酷な大地で、ただ「民が飢えずに、誰もが平等に生きられる国」を築こうと足掻いた一族の、血の滲むような文が遺されていた。

    「生くるが故の国造り 末代を飢に救は受くるとも、吾は怖れず」
    「安倍日高見之介頼良」

    その文字をなぞった瞬間、時空の壁が音を立てて崩れ落ちる。
    「ああ、ここにいたのか……瀬良」
    自分が心血を注いで描き終えたはずの物語の主人公、日下瀬良。その魂のルーツが、意図しない大きな運命のうねりとなって、千年の時を超え、今まさに生きている私の目の前に現れたのだ。

    二、 不平等が歪める世界と、抗う者たち

    1500年、あるいは千年の時をタイムスリップして、その時代を自分の足で歩き、自分の目で見て初めてわかる「現実」がある。
    いつの世も、文化を、時代を創り出しているのは、綺麗に着飾った教科書の偉人たちではない。今、その瞬間を必死に呼吸し、汗を流し、泥をすすっている「生きている人間たち」の営みそのものだ。
    瀬良がいた平安も、福沢諭吉が生きた明治も、目も眩むような「不平等」が支配する世界だった。
    家柄だけで命の価値が決まる平安。
    欧米列強に怯え、条約という文字の鎖に縛られ、国を強くするために弱き民に重税を課していく明治。
    「天は人の上に人を造らず」と叫んだ福沢も、理想と現実の不平等に引き裂かれ、血の涙を流しながら「脱亜」という鬼の道を選んだ。彼らのような先駆者は、世界が優しかったから生まれたのではない。世界があまりにも不平等で、残酷だったからこそ、その歪みを正すための「秤(はかり)」として、時代に必然的に生み落とされたのだ。

    三、 時を超える約束の、その先へ

    瀬良が明治の世で、三井の仲間と共にモールス信号の電信を学び、世界市場の『情報のいくさ』に身を投じた理由。それは、不平等な世界をひっくり返すための「新しき兵法」を、命懸けで持ち帰るためだった。
    彼が守りたかった「あや姫」との約束。
    それは、古文書に遺された**「恨魂幾代かかるとも、吾が国を護りなむ」**という、執念にも似た凄まじい誓いとなって、千年の時を繋いでいた。たとえ幾世代の時がかかろうとも、民を飢えから救い、この国を護り抜く。その強い心理の結びつきが、現代を生きる私の手を通して、一編の物語として現世に受肉した。
    描き終えたはずの物語は、ここで本当の「現実」となる。
    私たちが生きるこの今も、誰かが必死に作った文化の地続きの未来。瀬良や福沢たちが夢見た「誰もが飢えずに、誇り高く生きられる世」を創るためのいくさは、形を変え、今を生きる私たちの心の中でも、静かに、しかし熱く続いている。
    (天の秤・正伝 完)

    #小説 #エッセイ #歴史
    #時をかける #ファンタジー
    #タイムスリップ #古史古伝
    #東の民 #明治時代 #平安時代
    #創作大賞2026
    #ファンタジー小説部門
    #異世界転生
    #東日流

    ※歴史短編ファンタジー小説連載中

     
     

    栞字

     
     
    心は現役!草履にスカイブルーの爪でおしゃれを楽しむレディです。自営業を営みつつ晩ご飯を作り、休日は大好きな縄文のロマンを訪ねる日々。noteも2年目、「チャレンジは諦めない!」をモットーに、拙くも溢れる想いを綴っています。読んでくださる皆様に感謝を込めて

    あなたへのおすすめ