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【恋愛小説】 天女 第四十話(最終話)

    ※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません ※この作品はR18向け恋愛小説です。
    上記ご理解のうえ、お楽しみください。

    「君とセックスしたいんだ…けど…ダメ?」
    俺の不器用でストレートな告白から
    一年が過ぎた。

    あの日のように昨夜も
    いち早く春を告げる雨が降り出していて
    まだ肌寒い夜だった。

    「明日、天気になぁれ」
    子供の頃、遠足前夜に願った。
    しかし殆ど叶うことはなく、翌日も雨だった。

    ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡

    子供の頃、先生たちが
    「シンデレラ」を読み聞かせてくれた。
    『シンデレラは王子様と結婚しました。
     めでたし、めでたし。』
    しかし現実は
    結婚後、自動で余生の『幸せ』が
    確約されるわけじゃない。
    それ以前に恋愛も「人魚姫」のように
    恋破れることのほうが圧倒的に多い。

    人間の「セカイ」なんて嘘だらけだ。

    人生なんて
    なけなしの努力をしても
    「思い通りにいかないことが多すぎる」

    この「セカイ」の「現実」を突きつけられ
    歳を重ねていくごとに
    目の前に咲く花さえ鬱陶しくなっていった。

    「人として生きていく」とはそんなものだろう

    割り切った頃、年老いた俺のもとに
    天女の素質を持つ
    「みにくいあひるの子」が現れた。

    当時の俺と同じ瞳(め)をしていた。

    ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡

    「みにくいあひるの子」が「白鳥(天女)」だと
    気づいたときから
    俺の人生が色鮮やかになっていった。

    天女に心を寄せるごとに
    道端に咲く名も知らぬ花が
    可愛らしく思えるようになっていった。

    なんで大事な日は「いつも」雨なんだ!
    憤る俺に「龍神さまのご加護だよ」と
    教えてくれたのも彼女だ
    。

    その後なんとなく調べたら
    龍と天女の関係は親和性が高い言い伝えが多く、
    なかには
    龍と天女が夫婦になった話もあるらしい。

    まさに明日の俺と彼女じゃないか!

    ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡

    翌朝、外は霧雨だった。
    「お昼頃には天気が回復します」
    テレビの天気予報が伝えてくれた。

    「大切な女性と生涯を共にする」
    龍神ゆかりの神社で誓いたい。
    俺の願いを天女は快く受け入れてくれた
    。

    但し、やはり正式な女性の和装は
    着付けに時間がかかる。
    それを踏まえて受け入れてくれた彼女に
    心の底から感謝の気持ちでいっぱいだ。

    俺の着付けが終わり
    彼女を待つ間、
    三分咲きほどの社殿の桜の木を眺めた。

    彼女と出逢い、愛し愛されて
    ようやく俺は
    桜一輪それぞれの
    尊い生命の美しさに気づく男になれた。


    俺の目から涙が溢れていく。
    俺の涙が溢れるごとに
    外の雨は徐々におさまっていった。

    空は曇ったままだったが
    雨が止んだとき
    白無垢の妻が姿を見せた。

    あまりにも美しくて…
    心が感動で満ちあふれて
    涙をボロボロこぼして
    「綺麗だよ…」
    そのひと言が精一杯だった。

    「もう(笑)イケオジ台無しぃ〜」
    彼女はスタッフさんからハンカチを借りて
    俺の涙を拭ってくれた。
    思わずその手を優しく握った。
    「ふふふっ♡」

    その成り行きを式場カメラマンが連写した。
    そうだ!挙式のアルバムも依頼していたんだ!
    「こ…こんな格好悪いシーン写さないでくれよ!」
    スタッフさん、そして妻もハハハ!と笑い
    カメラマンが
    「ベストショットですよ!」
    写した画像を見せてくれた。
    これがアルバムに残るのか!?
    「あなたらしくてイイネ♡
     アルバムに入れてください!」

    ちょっと…美咲…止めようとしたら
    「おお!サイコーじゃん!!
     コレ入れないでどの写真入れんだよ!」
    いつの間にか優花が合流していた。

    そして優花の側には…母さん。
    この冬をよく乗り越えてくれた…。
    生きているうちに親孝行できて良かった…。

    俺は車椅子で参列してくれたお袋の手を取り
    年甲斐もなくワアワアと男泣きした。
    その様子に
    白無垢の妻もポロポロと涙を流し
    スーツ姿の娘も目に涙を溜めた。

    カメラマンが何度もシャッターを切って
    俺たち家族の幸せをカメラに収めた。

    お袋の涙を娘が拭うと
    「おばあちゃん。良かったね。」
    優花のひと言に
    年老いた母は
    その目に涙を浮かべながらも
    満面の笑みを浮かべてくれた。

    ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡

    「雨が止んだので
       参道を歩いて社殿へ向かいます」

    祝宴は美咲が勤めているレストランで行う。
    ディナー貸切にして頂き
    俺の職場の方々をお招きして
    更に美咲のレストランの上司方々にも
    そちらでお披露目する。

    お袋の身体が心配だったし
    挙式は家族水いらずでしたかった。

    俺の我儘を受け入れてくれた
    全ての人に感謝した。

    なので花嫁行列の参列者は木内家4人のみ。
    人数が少ないからか目立ってしまった。

    だが、かえって参拝者の方々からは
    「神社でも家族のみで挙式できるんだ〜!」
    「リーズナブルかもよ!後で調べる?」
    そして何より
    「花嫁さん!綺麗〜っ♡!!」
    嬉しいお言葉をいただいた。

    社殿への道中はゆっくり、ゆっくり、進む。
    すると…

    美咲が「あっ!お父さん。」
    優花も「本当だ!!龍だ!おじいちゃんだ!」
    雲の合間から神秘的な光が差して
    天(てん)に白い龍が現れた。

    親父…来てくれた…!!
    お袋も空(そら)に現れた白い龍を見て
    在りし日の親父に向けていた笑みを浮かべた。

    やはり家族だけにして良かった…!!

    ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡

    木内家全員の前で
    一夫と美咲は神に夫婦の愛を誓った。


    ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡

    結婚(夫婦となること)はゴールではない。
    これから先
    「思い通りにいかないことが多すぎる」人生を
    二人で思いやり・力を合わせて
    生き抜いていくスタートだ。

    セックスも
    どちらかが一方的に
    パートナーに性欲をぶつけて
    相手が嫌がる行為を強要することではない。

    二人で晩酌してリラックスして語り合う
    二人で花を愛で、映画を観て、
    プラトニックで楽しいひとときを共に過ごす
    互いの心と身体を慈しむ
    それがセックスだ。
    それがメイクラブだ。

    俺は美咲より20年老いているから
    どうしても身体「だけ」では
    誤魔化しが効かない。
    だからこそ大切なことに気づき
    美咲と絆を深めることができた。

    いずれ迎える俺の最期に
    美咲がこの手を握り

    親父や会長のもとへ送ってくれるだろう。
    それもまた俺たちにとっては
    愛し愛されるセックスだ。

    最期に最高のセックスをしながら
    愛しい女性(ひと)の側から旅立てるよう
    パートナーへの感謝と敬意を
    常に持ち続けていきたい。

    「私、木内一夫は『男神』となり
     これから先もずっと
     妻、美咲を愛し守ることを誓います」

    社殿で誓った今日この日を
    胸に刻み込んで生きていく。
    愛し愛され
    美咲と生涯を共に生きていく。

    天女から俺の妻になってくれた
    木内美咲は
    このうえなく美しい笑顔を咲かせて

    決心した俺を讃えてくれた。

    完

    ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡

    【恋愛小説】天女
    これにて完結です。
    ありがとうございました。

    赤井龍

    ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡ ♡♡♡♡♡

    画像
    【恋愛小説】天女 イメージイラスト
    挿絵:赤井龍(Raycoh)

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