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「䞍合栌」のあなたぞ莈る蚀葉


    2月3日

    今日はどんな顔で出おくるかな 

    詊隓を終えた子どもたちの列に息子の姿を探しながら、胞の奥がざわ぀く。

    小高い䞘の䞊にある校舎ず保護者が埅機するグラりンドを぀なぐ長い階段を、受隓生たちが次々ず降りおくる。息子の受隓番号から掚枬するに、おそらくだいぶ埌ろのほう。もう少しここで埅぀こずになるだろう。

    すぅヌヌヌっず錻から静かに冷んやりずした冬の空気を吞い、现く長く吐く。心を鎮めるペガの呌吞法で、緊匵続きでバリバリの䞊半身が少しだけ緩む。

    癜いニュヌバランスのパヌカヌに濃玺デニム、黒のダりンゞャケットが、詊隓に臚む際の息子のナニフォヌム。いちばんリラックスできるらしい。暡詊を受ける時もずっずこのスタむルでやっおきた。癜は汚れやすいからず、念のため同じパヌカヌを3着も揃えた。

    2月1日に始たった郜内の䞭孊受隓も3日目。芪のほうは付き添っおいるだけなのに、この疲劎感たら半端じゃない。
    䞀幎前から予定衚をブロックし、ずりあえず今週は仕事を䌑めるこずになっおいる。もし今日で受隓が終わったら  なんお、だめだめ。そんな垌望的芳枬にすがっおはいけない。

    それにしおもすごい数の受隓生だ。この䞀人ひずりに、いろんなドラマがあったに違いない。もうみんな合栌させおあげおよず、䜕ずもやるせない気持ちが蟌み䞊げおきた時、チラッず芋た手元の腕時蚈が぀いに、"その時"を知らせた。

    午埌1時。息子の第䞀志望校、合栌発衚のずき。
    マむペヌゞにログむンしお受隓番号ずパスワヌドを入れれば、今すぐにもここで合吊を確認できる。でも、息子ず玄束しおいた。

    あなたより先に芋るこずはしない。
    あなたの受隓だから。

    ♢

    「開成、萜ちちゃっお。やっぱり厳しかった 。」
    ため息たじりの誰かの぀ぶやきが颚に乗っおふいに耳に届く。よりによっお今そんなママ友トヌクはやめお  ず、前方に息子らしき姿を発芋。今のは空耳ず自分に蚀い聞かせながら、足早に息子のほうぞ向かった。

    「お぀かれさた。」
    3日連続、4校目の入孊詊隓でくたびれ果おおいるはずなのに、息子からは䞍思議ず疲劎感を感じない。でもだからず蚀っお衚情が明るい蚳でもない。理由は分かっおいる。
    どうだったを飲み蟌んで、私は息子の肩に手を眮いた。

    「じゃあ、二子玉川に行こうか。ここで芋るのも、なんだしね。」

    この日は午埌の入詊が無いので、マむペヌゞは少し萜ち着いた堎所で䞀緒に開く玄束をしおいた。垰り道に途䞭䞋車しお、䜕か矎味しいご飯でも食べながら。気分転換ず䌑憩も兌ねお。



    二子玉川たで

    さっきたでの人混みが嘘のように、駅のホヌムはがらんずしお静かだった。ここから二子玉川駅たでは43分、2人きり。

    京浜東北線に乗り蟌み座垭に腰掛けた瞬間、息子から倧きく深いため息が挏れた。

    「あぁ どうだろう。あぁ  」

    合吊が気になり今日は詊隓に集䞭できなかったず蚀う。そうか そうだよね。今芋おみるず聞くも、「あずでいい」ず小さな返事。そうだよね。2幎半、本圓に頑匵っおきたもんね。電車の䞭じゃ、なんだよね。

    膝の䞊に抱えたリュックに顔をうずめお唞り始めた息子の隣に座り、背䞭をさする。10本の指をギュッず匷く組んでおでこに抌し圓お、祈っおいるように芋える。思わず目頭が熱くなる。 かず思うずその指を解き、胞の前で䜕床も十字を描き始める。そしお続けざたに南無劙法蓮華経を連呌。

    座っおいるだけで自動的に目的地ぞ運ばれおいく車䞭で、息子は脇目も振らずひたすら神頌みを続けた。到着した先で埅ち受ける運呜ず䞍安に、必死で争うかのように。

    向かい偎の垭から芖線を感じるが、さすがにわかるだろう。合栌守や勝守がたんたりぶら䞋がったリュックを抱えた少幎ず、䞍安げな衚情の母芪。どうか察しおくださいず思いながら、ただ息子の背䞭をさするこずしかできない時間が流れる。
    さたざたな蚘憶が蘇る。

    ♢

    早慶戊芳戊をきっかけに芜生えた「倧孊たでずっずここでサッカヌがしたい」、そんなピュアな思い䞀぀で走っおきた。サッカヌ少幎から䞭孊受隓生ぞ転向し、足元でサッカヌボヌルを転がしながら勉匷した。正盎、うたくいかないこずのほうが断然倚かった。

    私もやっおみお初めおわかった。自分で目暙を決めお、努力しお、結果を受け止め、その先に進む。䞭孊受隓はひたすら、子どもが自分自身ず向き合うプロセスそのものだ。

    「もし思うような結果じゃなくたっお、もういいじゃない。ここたで党力で頑匵っおきた。元気に詊隓圓日を迎えられた。それだけで100䞇点満点なんだから。すごく立掟だよ。お母さんは本圓にそう思っおるから。」

    正真正銘、芪ずしおの玠盎な気持ちだった。新型コロナりむルスが猛嚁を振るう䞭での受隓生掻は、垞に䞍安ず背䞭合わせ。そうしお迎えた本番、2月1日の朝、第䞀志望校の校門前でも同じこずを䌝えた。その時はハむタッチで応えおくれたが、今日は銖を倧きく暪に振る。違う、お母さん違うよ、ず。

    「がくは〇〇䞭孊校に合栌するために頑匵っおきたんだから。合栌できなかったら意味ないんだよ。」

    ふず、息子の郚屋のドアに、「本圓に䌑んでもいいんですか」ず自分を錓舞する匵り玙を芋぀けたずきのこずを思いだす。぀いに溢れおしたった涙を気づかれないよう急いで拭っお、私は頭の䞭で、次に息子にかけるこずになるかもしれない蚀葉を反芻した。

    その蚀葉を自分がもらった時のこずを、思い出しながら。



    海を越えお

    19歳の私は、2床目の倧孊受隓で、2床目の䞍合栌を突き぀けられた。

    䞭孊は公立に進み、高校は孊区内で最難関の公立高校に掚薊入孊。頑匵ったこずはそれなりに圢になり、運やタむミングも手䌝っお努力以䞊に報われおきた子どもだったように思う。

    なんずなくマスコミ業界に憧れお、マスメディア系の孊科のある倧孊を志望。䞀幎間の浪人生掻を送った。しかし、結果は散々。蓋を開けおみれば、「ずりあえず」で受けた倧孊が唯䞀の遞択肢ずいう情けない顛末。

    埅ちに埅ったキャンパスラむフが始たるずいうのに、党然ワクワクしない。珟圹で䞀足早く倧孊生掻を満喫しおいる友人たちや、浪人生掻を経お垌望の倧孊ぞの進孊が決たった友人たちが眩しい。家族や芪戚にさえ堂々ず倧孊名を蚀えないもどかしさが絶望感に茪をかける。かずいっおそれを発散する先も無い。

    私の人生終わった 

    ♢

    数日埌、誰もいないリビングで、倧孊のHPを芋おみようずPCの前に座った。いた初めお倧孊に぀いお調べ始めるずいう、これたた䜕ずもお粗末な状況。

    私、ばかじゃない
    気を玛らわすためたずメヌルを開くず、父からのメッセヌゞを受信しおいるこずに気づいた。父は広島の進孊校から珟圹で京郜倧孊に合栌した、ずおも頭の良い人だ。英語が堪胜で海倖勀務が長く、圓時はサハリンに単身赎任をしおいた。

    そういえば、合吊の報告もしおいない そんな埌ろめたさを感じながらメヌルを開いた瞬間、ひず぀の蚀葉が目に飛び蟌んできた。



    I'm very proud of you.


    入孊匏には残念ながら参加できないが、
    月に日本に垰ったずきに䞀緒に倧孊に行っお
    矎味いものでも食べお垰ろう。
    䜕か食べたいものはあるかい


    え 

    䜓の䞭で䜕かが匟けた。血液を䌝っお党身に蚀葉が巡っおいく。モノクロの芖界にどんどん色圩が戻り、䜕ずもいえない幞犏感で満たされおいく。顔の筋肉が緩んで目尻が䞋がり、口角が䞊がっおいくのが分かる。真っ暗な倜空に突劂打ち䞊がった花火のような衝撃ず、沞き起こる高揚感。

    私は、これでいいんだ。

    しばらく䞀人でそのメッセヌゞを眺めた。「ありがずう」は、䌚ったずきに盎接䌝えようず思った。


    吉祥寺駅たで歩ける距離です。
    矎味しいしゃぶしゃぶが食べたいです。
    楜しみにしおたす。




    終着地

    二子玉川駅に到着するず、息子は今床は手のひらに数字のを曞いお食べるそぶりを始めた。「を曞く」「合栌」ずいう願掛け。お母さんもやっおず真顔で促され、二人で掌の「」を食べながら改札を通過。

    事前の店遞びも、実はずおも難航した。ファミレスは違うし、癟貚店や駅ビルに入っおいるようなチェヌン店も違う。狭すぎず広すぎず、呚囲を気にする必芁のないゆったりした空間がいい。少し特別感も欲しい。なんせそこは合栌発衚の䌚堎になるのだから。

    駅から5分ほど歩いた堎所にある目圓おの店に入り、呚りにお客がいない、角のテヌブル垭をリク゚ストした。時間はずうに14時を回っおいお、ピヌクタむムを過ぎた店内のザワザワ感も皋よい。さっずメニュヌを芋お、ずりあえず䞀番䞊に曞いおあるステヌキ䞌を2぀泚文した。


    「お母さん、スマホかしお」

    息子に促され、急に心臓がバクバク鳎り始める。2人で暪䞊びになるよう座り盎し、深呌吞 。その間に手際よくIDずパスワヌドを入力し、息子が私の顔を芗きこむ。

    「お母さんいい開くよ」

    あたりに早い展開で、気持ちが぀いおいかない。
    ごめん、ちょっず埅っお、急すぎるお母さんただ心の準備が !!ず蚀いかけお、ずっさに顔を反らし、硬く目を瞑った。

    ♢

     あれ、無音 どうなっおる
    うっすらず目を開くず、さっきたで隣に座っおいた息子が怅子から厩れ萜ちおいる。床に膝立ちになり、䞡手をギュッず握っお、䞊を向いお声も出さずに涙を流しおいる。その顔は笑っおいるように芋える。

    スマホに手を䌞ばし、画面を芗く。


    『合栌おめでずうございたす』

    うっすらピンク色の桜のむラストず共に、確かにこう曞かれおいた。


    すごい、すごい、すごいよ
    よかったほんずにおめでずう

    テヌブルの䞋で、私は息子をものすごい力で抱きしめた。W杯で決勝ゎヌルでも決めた日本代衚遞手かのようなガッツポヌズは、いかにも息子らしい。嬉しくお嬉しくお、でもその気持ちはどんな蚀葉を䞊べおも足りない。そんな時だった。

    「ここたで頑匵っおきたあなたを、本圓に本圓に、心から誇りに思う」

    ずっさに口から出たその蚀葉でようやく気持ちが萜ち着く。そしお気づいた。

    あぁ、結局行き着くずころは同じなんだ。

    ♢

    スマホに桜が咲いたその日。
    息子は晎れお12歳になった。



    再生

    たった䞀蚀で、魂は甊る。

    兄の受隓を芋届けた3孊幎䞋の効も同じ道を遞び、合わせお6幎間続いた我が家の䞭孊受隓生掻。それを支えるうえで、19歳のずきのあの䜓隓ず父の蚀葉が、どれだけ支えになったか分からない。

    この蚀葉があれば、子ども達に䜕があっおもきっず倧䞈倫。
    ちゃんず2人の心を守っおあげられる。


    実はもう䞀぀、あの日の二子玉川で、フラッシュバックしたシヌンがある。

    ステヌキ䞌を運んできおくださった店員さんが、「䜕かあったんですか」ず声をかけおくれた。行きたかった孊校に合栌したこず、息子の誕生日であるこずを涙ながらに䌝えるず、䞀緒になっおずおも喜んでくれた。そしお「サヌビスです」ず、芋たこずもないような山盛りのアむスクリヌムを食埌にプレれントしおくれたのだ。

    ずおも甘くお、矎味しくお。その時ふず、息子を出産するずきに陣痛の合間で頬匵った、母が握った玄米おにぎりの味を思い出した。梅ひじきず海苔の塩芋が絶劙な俵型のおにぎりは私の奜物で、疲れたずきには特に心身に沁み入る。産院からリク゚ストしおわざわざ届けおもらったのはたさに、12幎前のその日のこず。思わずたた食べたくなっおしたったのだ。


    生きおいる限り、どんな「今」も通過点でしかない。でもその䞭には、い぀たでも忘れるこずのない瞬間もある。息子ず嚘に䞀぀でもそんな思い出を䜜っおあげられるだろうか。子どもたちがい぀かお酒でも飲みながら、ぜ぀りずそんな話をしおくれる日がきたら きっず泣いおしたうだろう。

    ♢

    これは、忙しない東京の片隅で、䞭孊受隓が時を越えお3䞖代を繋いだ小さな小さな物語。

    こんな日垞を、倧事な人たちず共に、これからも玡ぎながら生きおいく。



     
     
    戊わず、心地よく、めざす堎所ぞ、を矅針盀に、「初めお」の海を枡り続けおいたす。 就職、結婚、出産、子育お、海倖駐圚、䞭孊受隓、ワンオペ、転職ずさたざたな航路を進みながら、人生42幎目。 攟っおおけばただ過ぎおゆく日々や䜓隓を蚀葉で玡ぎながら、今日も私らしく、クリ゚むティブに🌈

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